TOP

前編 中編 後編



    魅上はデスノートが偽物だと気づいたようです。

     前編


-YB倉庫-(月)

松田「し……死なない……。1分は経った……」

月「……!?」

 どういうことだ!? なぜ死なない!

ニア「ジェバンニ、ノートを。自分達の目で確認してください」

 ニアは、ノートを受け取ると、それを広げ、こちらに向ける。

ニア「ここにいて、唯一名前が無いのが……。……!?」

 そこに書かれていたのは、まずSPKメンバーのものであろう名前、次に日本捜査部の者の名前。そして最後に書かれていたのは……夜神月……僕の、名前!?

-------

 待て、これはどういうことだ……? まさか魅上が僕を裏切って……いや、だとしてもデスノートに書かれているはずなのに、なぜ誰も死なないんだ?

相沢「SPKのメンバーは4人……だがそこに書かれているのは3人……」

伊出「ということは……」

 ……! そうか、あのノートは偽者! 理由は分からないが、ノートが偽物にすり変えられ、魅上はそれに気づいた……。そして機転を利かせ、僕の名前を書いた。
そして、魅上はやはり裏切ってなどいない! 仮にニアが魅上をなんらかの形で取り込んだとしても、最も殺したい相手は僕のはず。だが、魅上は最後に僕の名前を書いている。
これは、魅上から僕に対するメッセージ……! ならば……。

月「おや、ニア、これはどういうことでしょうか? 相沢の言うとおり、そちらのメンバーの名前が足りないようだ。Halle Bullookというのはそちらの女性として……
書かれていないのは男性3人の誰かのようですね」

 そう、そしてそれは、間違いなくニア、お前だ!

-------

ニア「魅上……ノートが偽者だと気づいたというわけですか……」

月「……ニア、その言い振りだと、どうやら名前がないのはあなたのようですね」

相沢「まさか……」

松田「お前がキラだったのか!」

 松田はニアに銃を向ける。やれ松田! 撃て! 殺せ!!

レスター「うおおおおおお!」

 次の瞬間、叫び声と同時に銃声が鳴り響く。だが、撃たれたのは松田だった。正確には松田の銃が、だが。

レスター「ニア! ここは一旦引くべきだ!」

ジェバンニ・リドナー「!」

レスター「お前も来い、魅上!」

月「キラ達が逃げます! 追いましょう!」

------

-ニア追跡中の車内-(月)

松田「逃げたってことは、やっぱりあいつがキラってことでもう間違いないッスよ!」

相沢「松田、そうまくし立てるな。まだ話もしていないじゃないか」

 相沢……まだニアを信用しているというのか? いや……魅上の起点のおかげで、あそこにいたものは皆、ニアが自分達を殺すために魅上を呼んだと思うだろう。
勿論ノートをすり変えたのもニア達だろうが、それも含めて、SPK内でも動揺しているに違いない。
 このままキラとして捕まえるのもいいが……あいつは殺すべきだ。……腕時計の中のデスノート……ほとんど書くスペースはないが、ニアの名前を書くくらいなら……。
 ニアの名前……? しまった! SPKの奴らの名前は、あそこに書かれたものは覚えた。しかし、ニアをキラにするために、ニアの名前だけが無かった……。つまり、今の時点では
殺せないということに……。なんてことだ……。

-----

伊出「く……やつら早い……! 俺達だけでは追いつけない!」

松田「でも応援を呼ぼうにも僕達は通信機器を持ってないですよぉ」

 ならばやることは1つ……。人を巻き込む死に方は出来ない……まずは一旦止めて……。

月「相沢さん止めてください! あそこに公衆電話があります! 応援を!!」

 もうどうせ追っても無駄……ならば相沢の持つデスノートだけでも……。

------

松田「月くん! どうだった!?」

月「く……ダメです……やはりキラに対抗しないとする警察は……」

 無論、電話なんてしていない。警察のキラに対する声明は建前……必ず捕まえようとするはずだからだ。そうなってから殺すのもいいが、あのニアのことだ、大人しく捕まるとは思えない。
そしてそうなれば、捜査員は増やされ、僕が動きにくくなるだけだ。
 それはそうと……あと10秒……。

伊出「なんてことだ! 相沢! なんとしても俺達だけで捕まえるんだ! 出してくれ!!」

相沢「分かっ……ぐあ!?」

伊出「相沢!?」

月「相沢さんっ!」

 ここは少し取り乱すくらいのほうがいい。デスノートはコートの下の……。

月「あ、相沢さん!! し……死んでる……。ニア……。ニア! お前だな!!」

松田「ニアがノートを!? こ、殺される!!」

月「くそう! 殺される前にやってやる……!」

松田「月くん! だ、ダメだ!!」

 僕は松田に抑えられる。だが、これでいい。松田、お前は僕の予想どおりの行動を取ってくれた……。

------

-翌日・日本捜査本部-(月)

 さて、これからどうするか。一応ノートは手にしたが、他の3人もそのうち僕がノートを持っていることに気づくだろう。やはりこいつらも殺しておくべきか……。

松田「ら、月くん! 通信が……ニアから!」

月「!」

 通信……!? となるとやつらはやつらの本部に戻ったということか。こちらはその場所を知らない、当然か……。

月「なんでしょうか、ニア。いや、キラ」

ニア『昨日はすみませんでした、L。いや、キラ』

 こいつ……。

月「何を言っているんでしょうか、あなたが……」

ニア『L以外にお聞きします』

 僕の話を遮って……!

ニア『昨日、Mr.相沢が亡くなった、ということはありませんでしたか? もしそうならば、彼の持っていたノートはそこにありますか?』

 読まれている……! いや、それはニアがやったということにしてある……大丈夫だ。だが……ノート……。

-----

松田「相沢さんを殺したのはお前だろうが!」

伊出「松田、落ち着け! ……月くん、ノートはどこへ……?」

月「ニア、一度通信を切ります。……僕の部屋に置いてあります、今から取ってきます」

 ……もういいだろう……。ここまでくれば、やはり用済みだ……。

-------

リューク「ククク……やっと話せるようになったなぁ、ライト。全員、自宅に帰って自殺……か。まぁここに死体が転がってたんじゃ邪魔だしなぁ。それにしても……あの
模木ってデカブツ、空気だったなぁ」

月「リューク、ニアとの通信を再開する。あいつが本物のデスノートを持っているのだろうから、お前の声が聞こえる、黙っていろ」

リューク「さて、どうなるのか見せてもらうぜ」

月「ニア、お待たせしました」

ニア『L……他の方々と変わってもらえますか?』

月「今、警察庁にノートを取りに行ってもらっています」

ニア『なるほど、それはやはり……いえ、あえて言うこともないでしょう』

 ニア……お前が僕の取る行動を予測していることなど承知の上。だが、なんとでもいうがいい。お前をキラとして仕立て上げ、名前を知ることが出来れば僕の勝ち……。
お前が僕はキラだという証拠を出してくれば僕の負け……それだけのこと。今までと何も状況は変わっていない。いやむしろ、僕の周りの邪魔者は消え、ニアの周りの者は、
もしかしたらニアに疑念を抱いているかもしれない……僕がそう仕向ける。つまり、僕の方が有利なんだ!

月「ニア……キラ……あなたのことは、必ず私が捕まえます」

ニア『L……キラ……あなたのことは、必ず私が捕まえます』

月「ニア……」

ニア『L……』

月・ニア「お前がキラだ!」

------

デスノートアナザーストーリー
魅上がノートは偽物だと気づいたようです
------

-数時間後-(月)

 ニアの名前……それを知るにはどうするべきか。一番簡単な方法は、魅上から聞き出すことだ。だが、ニアだってそんなことくらいは分かっているはずだ。あのLの息のかかった
者ならば、隔離して拘束程度のこと、平気でやるだろう。この策は期待できない。

リューク「そういえばライト、あの娘はどうなったんだ?」

月「娘? ……ミサか。あいつは前と同じ部屋にいるよ。そうすれば、SPKもそちらを注目すると思ったからね。この捜査本部はあっちには知られていないし、ミサも知らない」

リューク「ククク……囮ってわけか」

 ミサ……またあいつに死神の目を持たせて、接触してくるであろうSPK達を……いや、これも無理だろう。SPKはミサを注目せずにはいられない。よって、所有権のことを知らないニアはミサの前に
姿を表すことはまずないからだ。

月「ならばやることは……」

リューク「お? 何か決まったのか?」

月「ああ。とりあえずは、ニアがこれからどう動くか考えることだ」

------

 SPKの者の名前は、ニア以外分かっている。いつでも殺せる状態にあるが……利用できる数少ない者達でもある、そう簡単に殺すわけにはいかない。そしてそれはニアも分かっているだろう。
となれば、今まで以上に大胆に動いてくるはずだ。僕は少なくとも、この場所にいることを知られないようにしなくては。となれば……。

prrrrrrr

リューク「おいライト、さっきから電話が鳴ってるぞ」

月「分かってる。でも今はそんな邪魔なものにかまっている場合じゃない」

リューク「だがもう5分近くなりっぱなしだ。そっちのほうがうざくないか? かけてきてるやつは……弥海砂みたいだな」

-----

 ミサ……ホントに邪魔なやつだ……。リュークの言うとおり、囮ではあるが、実際のところほとんど意味はないだろう。ならば、そろそろ殺しておくべきか……?

リューク「いいかげん出てやれよ。というか鳴りっぱなしでうざい」

月「分かったよ……。もしm」

ミサ『月! 大変だよ!!』

 こいつ……本当に殺すぞ。

ミサ『今手紙が届いたの、ライト宛に! 中身を見たらもう大変なんだってば!!』

月「落ち着けミサ。で、その用件は?」

ミサ『それがね、”弥海砂。私はお前の顔と名前を知っている。殺されたくなければ、今日の19時に○×レストランまで来い。” だってぇ!! ねぇ、これってどういうことぉ!?』

 なに……!?

------

ミサ『ねぇライt』 ツーツー

 どういうことだ……? 顔と名前、そして殺す……どう考えてもデスノートの存在を知る人間。思いつくのはSPKだが、これは彼らのやり方とは違うような……。確かに
さっき考えた、ミサに注目すること、大胆に動くことの2点に当てはまるが、何かしっくりこない……。ニアは誰であれノートで殺しを行うつもりはないだろうし、僕がそう分かっていることも、
分かっているだろう……。

リューク「面白いことになってきたなぁ!」

月「少し黙ってろ!」

 くそ……仮にこれがニア達じゃないとしたらどうだ? 新たなノートが人間界に出現したってことじゃないか! いや……だがやはりニア達だということも……。ニア達だとすれば、
確実に僕の居場所を知る、又は揺さぶりをかけてくる策だろう……。だが、やはり何か違う気が……。

リューク「どうするんだぁライトぉ……ククク」

月「……ミサの代わりに、僕が行く」

------

-翌日・SPK本部-(ニア)

ジェバンニ「ニア、大変です!」

ニア「どうしました?」

ジェバンニ「魅上が……心臓麻痺で亡くなりました!」

レスター「心臓麻痺……!」

 魅上が死亡……心臓麻痺で……デスノートか……? ならば夜神月の仕業となるが……。

レスター「これはL……キラのやったことに違いないな」

ジェバンニ「ええ、そうですね」

リドナー「……」

 本当にそうなのか……?

-----

 魅上は、Mr.相沢の言っていた死神の目を持っていると思って間違いない。YB倉庫で日本捜査部や私達の名前を書いたからだ。となると、あそこではノートが偽者だと気づいたためか
書かなかったが、私の名前を知っていることになる。それは当然、夜神月も分かっていることだろう……。

ジェバンニ「魅上から自分がキラだという証拠が出るのを恐れたんでしょうか?」

 魅上から証拠……そんなものが出るとは思えないが……。

レスター「……? ニア、どうした?」

ニア「いえ……これは本当に夜神月の仕業なのかと思いまして」

レスター「ニアは、これがキラのやったことではないと? まさか、偶然な心臓麻痺とでもいうのか?」

ニア「その可能性もなくはないです、が……私が疑問に思っていることは、魅上を殺すことで、夜神月は得をするのか、ということです」

ジェバンニ「それは……」

-----

ニア「魅上が私の名前を知っている、それは夜神月も分かっていることです。ならば当然、魅上を動かし、私の名前を聞き出そうとする」

レスター「だが魅上は拘束されていてどうしようもなかった。そこで殺した……とも……」

ニア「魅上を私達が拘束していることなど彼ならすぐに想像が付いたことでしょう。それならば、SPKメンバーを操り、拘束を解くことを考えるのが普通だと思います。
顔も名前も、私以外は割れているわけですし」

-----

ジェバンニ「確かに……」

レスター「ならばなぜ……? やはり偶然なのか……? それとも魅上があらかじめノートに自分の名前を書いていたとも……」

ニア「皆さんノートは見ましたね? そこに魅上の名前は無かった……。ただ、私の予想では、ノートは切れ端などでも使用できる……はずですが、これは調べようがありません。
それよりも私が危惧していることは……新たなキラの存在です」

レスター「新たなキラ……!」

-----

ニア「はい。私の中で魅上を殺したのが夜神月だという可能性はかなり低い。となれば、そう考えるのが自然です。本当の心臓麻痺が自然でない……というのはなんとも
おかしな話ですが」

リドナー「……ニア」

 リドナー……さきほどから何か考えていたようだが……。

リドナー「その話は少し飛躍し過ぎでは? それに、それではおかしな点が……」

ニア「……新たなキラの仕業として、なぜ魅上がターゲットになったか、ということですか?」

リドナー「……はい」

 それを言ってくるということは、リドナーが疑っているのは……。

リドナー「魅上をこのタイミングで殺せるということは、魅上が捕まったことを知っている、と考えるのが自然です……。そして魅上が死ぬことは夜神月にとって都合のいいことでは
ない……。あの……ニア……すり変えた本物のデスノートはどこへやったのですか……?」

 ……やはり、私か……。

-----

ジェバンニ「リドナー、何を!」

ニア「いいんです、ジェバンニ。リドナー、ノートはその引き出しに入っています。鍵はレスターが持っています」

レスター「ああ、確かに持っているが……」

ニア「……これはあえて言わなかったことですが、魅上の死は、私も含めた内部犯である可能性があります。確かにノートはそこにありますが……その切れ端を持つことは
この中の誰でも可能な状況にありました。ゆえに、誰でも犯行は可能だったということになります」

レスター「確かにそうだが……」

ニア「そして、魅上が死ぬことで、最も都合が良いと思われるのは、私です。彼のみが私の名前を知っていたのですから。リドナーもそう考えたのでしょう」

リドナー「はい……」

-----

ニア「ですが、それならまだよかったです。私が最も危惧するのは、このメンバー内で、私をキラと疑う人間がいるか否か、ということですから。そのリドナーの考えからすると、
私がキラであった場合、仲間であるはずの魅上を殺すことはおかしくなり、矛盾が生じます」

リドナー「私もあのYB倉庫の一件だけでニアがキラだとは思いません……。ただ、夜神月がキラだとも思えなくなってきましたが……」

ニア「今はそれでいいです」

 今考えると、まさかこれは、SPK内をかく乱するための夜神月の策か……? いや……それならばSPKメンバーの誰かを操ればいいだけのことになるか……。これは考えても
分からないこと……分からないことを考えてもしょうがない……。
 何にしても、これからどう動くか……。とりあえず取るべきことは1つ……それをするには、そろそろ彼女の存在を皆に言っておかねばならないか……。

-----

ニア「では、この件はとりあえず保留ということでいいですか?」

リドナー「分かりました……」

ニア「ありがとうございます。ではここからは、今回の魅上殺しは、夜神月の策だった、という考えで進めていきます。いいですね?」

リドナー「……はい」

レスター「分かった」

ニア「まず最初に、紹介したい人がいます。実はSPKメンバーは、ここいる4人以外に、もう1人いたんです」

ジェバンニ「!?」

レスター「どういうことだ?」

ニア「キラ捜査時……特にジェバンニは、死神との接触の危険性があり、よりその行動に注意せねばなりませんでした。そこで、可能な限り皆さんが外で捜査するときの様子を、
そのもう1人に監視してもらっていたんです」

リドナー「そのもう1人とは……?」

-----

ニア「名を……Mといいます。Mのことについては詳しく話せませんし、実際私もよくは知りません。ですが、今まで捜査にずっと協力していてくれました。仮に私が
死んだ場合、この中の誰も知らない存在……ノートで操れられて吐かされたら困りますので……そんな存在に、私の意志を継いでもらう必要があったんです」

レスター「それで私達には黙っていたのか……」

ニア「はい、申し訳ありません。ですが今後は、Mにも皆さんと共に捜査してもらいます。いいですね、M?」

M『分かりました』

ジェバンニ「通信がつながっていたのか」

M『皆さん、よろしくおねがいします』

-----

リドナー「それで、ニアのこれから先の考えは?」

 これからの策で考えられることは2つ……。1つは夜神月の所在を明らかにする……つまり積極策……。もう1つは夜神月の動きを見る受身の策……。ただ前者は、夜神月も予想
しているだろう。私達の名前はほとんど割れているのだから……。
 となれば後者……。以前ただ見ていただけで彼はボロを出した……そう考えると、やはりこちらが得策……。

ニア「夜神月の出方を見ます。私の考えでは、いくら名前が分かっているとはいえ、あなた方をすぐに殺すことはないでしょう。となれば、そのほうが良いと思えるからです」

レスター「だがそれでは結局こちらは何もしないことに……」

ニア「いえ、私の予想では、奴は1ヶ月以内に動きます。そうなればこちらも動くことになる」

 そして今回のことが奴の策であるか否かに関わらず……。

ニア「その行動とは、私達と共に捜査する、と言い出すことです」

-----

ジェバンニ「私達と捜査……!? ですが、もし魅上の死を夜神月が知らない場合、その行動はないのでは……」

ニア「ジェバンニ、最初に言ったはずです。今回のことは夜神月の策だったと仮定すると」

レスター「だが、そうだとしても……」

ニア「私の中では、奴がこの動きをする可能性は80%以上です。現状、彼のできる策は本当に限られている」

 それはこちらも同じことだが……。

ニア「そしてこの先、犯罪者以外の心臓麻痺や不自然な死が頻発するようであれば……99%になります」

リドナー「ほぼ100……」

ニア「はい。初代Lのときがそうであったように、今回もそう出てくると思います。犯罪者以外の死は、その口実です」

-----

ニア「その行動を取った場合、私達はそれを受け入れましょう」

レスター「!」

M『待ってください、ニア。それでは奴にニアの顔をまた晒すことになります。それは危険なのでは?』

ニア「はい、それは避けます。そのために、奴が今私が言った策を取るにしろ取らないにしろ、今後私達は、一緒に捜査するのをやめます」

レスター「どういうことだ、ニア!?」

M『ニア……私の理解が正しいのであれば、その言い方は御幣を招くかと。同じ場所で捜査するのではなく、モニターなどで連絡を取り合いながら、それぞれ別の場所を拠点に
捜査を行う、そういうことでしょうか?』

ニア「はい、そういうことです……すみません」

 これはここで言うことはできないが……仮にノートでレスター達が操られて、居場所を知られたとしても、少なくとも私の場所は分からない……。

-----

ニア「私とMは今いる場所を拠点とし、他の者はそれぞれこのようになります」

M『夜神月が共に捜査をすると言い出した場合、ニア以外の誰かと捜査をさせるわけですね』

ニア「はい。そしてその人物は……レスター……ですね」

レスター「私!?」

ニア「夜神月のこれまでの動き……弥や高田のことを考えると、奴は女性に強い……よってリドナーははずれます。次にジェバンニですが、ジェバンニには主に動いて捜査を
してもらいたい……つまり夜神月と行動することはその妨げになるということです」

レスター「それで私ということか……」

ニア「はい、おねがいできますか?」

レスター「……分かった」

-----

 この策は、レスターは常に死と隣合わせの危険なもの……それはレスターも理解しているはず……。夜神月が来るようになったら、Mにはそこを重点的に見てもらうことになるか……。
リドナーにも一応注意しておかねばならないが……そちらは私がなんとかするしかないな……。

ニア「では皆さん、そういうことでこれからおねがいします。まずは、心臓麻痺で死んでいく者がいるかどうか調べることです」

一同「了解」

 夜神月……キラ……お前はこちらの動きをどこまで読んでいる……? 今回のことがお前の策であるにしろないにしろ、お前なら絶対に利用してくるはずだ……。といっても、
心臓麻痺で死んでいく者が出なければどうしようもないことだが……ほぼ間違いないだろう。
 さぁ、キラ……いらぬ延長戦になってしまったが、必ずお前を捕まえてみせる!

-----

-20日後・日本捜査本部-(月)

リューク「お? ニアに連絡するのか?」

月「ああ、この時期が一番いいんだ」

リューク「へぇ……まぁ、しばらく何もなくて退屈だったんだ、面白いものを期待してるぜ」

月「ニア、Lです」

ニア『……お久しぶりです』

月「なぜ連絡したかは言うまでもないでしょう」

ニア『新たなキラが出現したかもしれない……ということですね』

-----

月「そうです。そのことで1つ言いたいことが……私はあなたをキラだと疑ってかかっていましたが、そうではない気がしてきました。そしてあなたは私をキラだと疑っているが、私はキラではない。
2人とも間違ってしまったんです。ならば……」

ニア『一緒に捜査しよう……そういうことですか?』

月「はい」

 やはり僕がそう言い出すことを読んでいたか……それならそれで都合がいい。もし拒まれた場合はSPKの誰かを操るつもりでいたが、ニアがそう言ってきたとなれば……。

ニア『私もそう考えていました。共に捜査しましょう』

 やはり!

月「ありがとうございます」

ニア『ただ、先に謝っておくことがあります。今少しこちらは立て込んでいまして、そうですね……5日後くらいにこちらから連絡し直してもいいでしょうか?』

月「分かりました。では5日後に」

-----

リューク「この時期が一番いいんじゃなかったのかぁ?」

月「ああ、僕の読みどおりだった」

 ニアはノートで操れるのが23日間であることを知っている……が、操れる範囲を知らない。そこでニアは、僕自身、または僕が誰かを操り、殺しを行っていると読んだのだろう。
となれば、僕と共に捜査をするにしろ、23日間に含まれる日ではできない……そのとき不自然に殺しが止まれば、一緒に捜査するのを止める。そして止まらなければ、
そこからまた23日以内に、僕が何か行うか見ている……。
 それらの理由から、新たな殺しが始まった時から25日後……つまり今日から5日後を選んだ……。これは、やはりまだ僕を疑っている証拠だ。
これでいい。これならば彼女は動きやすくなる……そして僕の策が進む!

リューク「だがライト、一緒に捜査したら俺の姿も奴らに見えるんじゃないのか?」

月「バカだなリュークは。あいつらの持っているノートは偽者……つまり本物に触れていない彼らにはリュークの姿は見えない」

リューク「ああ、そういえばそうだったな」

 本物のノートは、彼女……鷹野三四が持っているのだから! さぁ、しっかり働けよ三四……そして最後は僕の手で殺してやる!

-----

-21日前(ミサの所に手紙が来た日)・○×レストラン-(月)

 僕がミサの代わりに来たはいいが、手紙を送ってきた相手が分からないことには……。相手はミサの顔を知っているのだから声をかけるつもりだったのだろうが、僕では分からないだろう。
やはりミサを連れてくるべきだったか? いや……あいつがいては話がややこしくなるだけ……。それに今回相手がミサに会えなくても、僕に被害が及ぶことはない……
ミサが死ぬだけだ。つまり重要なのは、ミサをここに来させてはいけなかった、それだけだ。僕に取って相手が分からなくても結局何の問題もない。

?「あらぁ? あたしが呼んだのは弥海砂だったはずだけどぉ?」

月「!」

?「まぁいいわ、あたしにとって誰が来ようと問題ではない……それがデスノートの所有権を持つ者であれば」

月「なっ……」

鷹野「ごめんなさいねぇ……あたしは鷹野三四……あなたは?」

月「……! 朝日……陽……」

鷹野「陽くんかぁ、よろしくねぇ」

 な、なんなんだこの女!?

-----

 会って早々デスノートだと!? 念のため偽名を名乗っておいたが……。何にしても、こいつがミサに手紙を送った相手に違いない。しかし……。

鷹野「驚かせちゃったかしらぁ? でもね、それはあたしも同じよぉ。だって現キラは弥海砂だと思っていたのに、まさか違ったとはねぇ」

月「……お前は、何者だ?」

鷹野「あたし? そうねぇ、デスノートの所有者、くらいしか言うことはないわねぇ」

月「……。証拠はあるのか……? ただノートを見せられただけでは信じないぞ……」

 最も、所有権などということばを口にした時点で……。

鷹野「そうねぇ、一応ノートは持っているけど……。今ここにいる誰かを殺してもいいけど、あたしは死神の目を持っていないからねぇ。あ……でもその死神さんと取引
すればいいのかしらぁ? ……しないけどねぇ、くすくす」

リューク「俺が見えているのか?」

鷹野「ええ、だから陽くんが所有者だって分かったのよぉ」

 リュークと会話が出来ている……なぜだ!?

-----

鷹野「くすくす、驚いているようねぇ……あたしにその死神が見えること」

 なぜリュークが見える……? こいつの知っている情報から、少なくともデスノートの存在を知っていて、触れていることは間違いない。だが、それはリュークが見えることには
つながらない。まさか僕やニアの持つノートの切れ端に偶然触って……? いや、それではノートに関する知識があるのはおかしい。

月「なぜ……見える……?」

鷹野「あらあら、答えが見つからなかったぁ? しょうがないわねぇ、じゃあヒント」

 鷹野は持っていたカバンから、黒いノートを取り出す。デスノートだろう。

月「それは……!」

-----

 そのノートは、まぎれもなく、僕が魅上に送ったものだった。間違うはずがない。

月「なぜお前がそれを……!」

鷹野「ふふ……気づいたみたいねぇ。そう、これは魅上照が持っていたノート。だからその死神があたしにも見える」

月「質問に答えろ!」

鷹野「くすくす、熱くなっちゃって。そうねぇ……ちょっとしたことを手伝ったら、とあるノートをすり変えることになって……そのときすり変えたものをさらにすり変えた……
というところかしら?」

 ……! ということはこいつは……。

鷹野「でもねぇ、あたしその手伝ってた相手に嫌気が差しちゃって……でも顔も名前も分からないのよねぇ。通信で指示されてただけだからぁ」

-----

月「……つまりそいつを殺すことを僕に手伝えと?」

鷹野「さっすがキラ様ぁ、話が早いわぁ」

 キラ様……これを認めていいのか……? いや、もはやそんなことは関係ない……。こんな危ないやつはすぐに殺したいところだが……ノートの存在を知っていて、
本名を名乗るはずがない。ならば、こいつの名前も調べなくては……くそ、ミサのときより厄介だ。

鷹野「ねぇ、やるの、やらないの?」

 ここで断るのは……無謀だ……何をされるか分かったものではない。一応偽名で名乗ってはいる……が、鷹野もそんなことは分かっているだろう。

月「分かった……」

鷹野「うふふ……そうよねぇ、そうするしかないわよねぇ」

 こいつ……。

-----

月「で、鷹野さん、具体t」

鷹野「あら他人行儀ねぇ……三四でいいわよ……陽くん。ちなみに具体的な行動も、あなたが考えてねぇ。もう気づいているんでしょう、あたしが言っている相手が、
あなたの宿敵でもある、ってことぉ」

 ……。隠しているつもりかと思ったが、意外にさらりと……いや、魅上のことをいった時点で隠すつもりはなかったということか……。もはやこいつがニアの協力者で
あったことは明白……。

鷹野「ねぇ陽くん……あなたの知っていることはどれくらいあるのぉ?」

月「……奴の名前はニア……顔は一度見たが名前は知らない……」

鷹野「あら……あまり知らないのね」

 ……。

月「だが、名前を知る者なら知っている……魅上だ」

-----

鷹野「やっぱりそうだったのねぇ……でも、そうしたらバッドニュースを伝えないといけないわぁ」

月「?」

鷹野「これを見てぇ……」

”魅上照 心臓麻痺
     YB倉庫に着く直前に受けた助言を信じ、それを実行する。
     そして翌日、その日の午後1時以降に見た名前を全て書き、
     ×××に手紙を送る。その後、死亡”

月「な、に……!?」

-----

鷹野「デスノートにこう書かれたのに、×××まで手紙が来なかったのぉ……」

 こいつ……では魅上は死んでいるということに……! 魅上は恐らく拘束されている……よってデスノートに書いたことに無理が生じ、単なる心臓麻痺に
なってしまったということ……。

月「お前はバカか三四!? なぜ翌日にした!? せめてもっと先なら、方法があったかもしれないのに……!!」

鷹野「また熱くなってぇ……でもよく考えてみて、その助言っていうの……」

 助言……? 確かに書かれているが……。……! そうか、魅上がノートが偽者だと気づき、僕の名前を書いたのはその助言のおかげ……。

-----

月「だとしてもだ! くそ……だいたい、そもそもニアに言われたとおりにノートをすり変えなければよかったじゃないか!」

鷹野「そうねぇ……でも最初にすり変えたのはあたしじゃないのよぉ……一晩くんなの」

月「一晩……? なんだそれは……」

鷹野「まぁいいじゃない、どっちにしても魅上はもういない……」

 ……くそ……確かにそもそも、こいつがデスノートで魅上を操らなければ僕は終わっていたといえる……。ならばもう、ここはプラス思考にいくしかない……。

月「……分かった、なら、お前も協力しろ。それで五分にしてやる」

鷹野「ええ、もともとそのつもりよぉ……」

-----

月「ところで気になっていたんだが……魅上の後に殺している奴らはなんだ?」

鷹野「ああ、これぇ? 魅上と同じ出身校の人を適当に選んで殺したのよぉ……。まぁ、あまり意味はないかもしれないけど」

 一応、魅上を殺したことの隠ぺい……だが三四の言うとおり、まったく意味がない……。魅上はニア達のすぐそばにいるのだろうから、ニア達はまず魅上の死に
気づくからだ……。
 だがまてよ……そこで死んだ奴らは全て心臓麻痺……となればそれはキラの仕業……だがキラは犯罪者しか裁かない……。
 ……。

月「1つ考えがある」

鷹野「もう浮かんだのぉ……さすがねぇ」

月「お前が、新たな第2のキラになる、ということだ」

-----

-数時間後・日本捜査本部-(月)

 結局三四を新たな第2のキラとして、それをニアと捜査することで、ニアに探りを入れるという策にしたが……少し不本意な部分がある。
いくら注意をそちらに向けないといけないからといって、犯罪者ではない人間を殺すなど……。だが、犯罪者では第2ではないキラの裁きとなってしまい、ニアは注目しない……。
仕方のないことだが……。

リューク「で、いつニアのところに行くんだ?」

月「そうだな……とりあえず今から20日は三四が動くのを見るだけだ。僕は犯罪者を裁かないといけないしね」

 僕がニアと共に捜査するようになれば、この日本捜査部に三四を置こう……ここはSPKには割れていないから、三四も拒まないはず……そして僕はこの場所に三四がいることが
分かる。つまり、三四の居場所が常に分かるということだ。

 さて、ニア達はどう出てくるか……。

-----

-同じく数時間後・鷹野自宅-(鷹野)

鷹野「ふふふ……朝日陽くん……ねぇ……。正反対の偽名……」

 夜神月……意外と男前ねぇ……殺すのが勿体なくなっちゃうくらいに……。
 あたしが夜神月にではなく、弥海砂に手紙を出したのは油断させるため……夜神月ならばあたしが自分の本名を
知っていることくらい気づくかもしれないけど……それに気づくことはなんの意味もないこと。デスノートはあたしの手の中にあるんだから……。

鷹野「あたしはこの世界で、神になる!」

 雛見沢なんてちっぽけな場所ではなく、この地球全体の!
 そのためには、邪魔者のニア……そして夜神月を消す……。でも、夜神月にニアを消させるのがあたしにとって一番都合がいい……。

鷹野「さぁて、お手並み拝見といこうかしらぁ、夜神月……いえ、陽くん……」

 もし使えないようだったら、殺すだけだけどねぇ……くすくす……。


TOP

前編 中編 後編