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    魅上はデスノートが偽物だと気づいたようです。

     中編


時間軸が戻ります。
-新第2のキラ出現から21日後(月とニア久々の通信の翌日)・ニアの捜査室-(ニア)

 夜神月は私の読みどおりの行動を取っている……まさかこちらがそれを読んでいると気づいていないのか……? いや、それはない。YB倉庫でもそうだったが、
奴はこちらの策を読んだ上でそれに乗り、それを破ろうとしているはず。
 となればこちらもそれなりの準備をしなくてはならないが……実際の所、こちらはあまり動くことができない……。新たなキラが出現し、これは捜査せざるをえないが、
結局、大元である夜神月に辿り着けるのかどうか……。

ニア「……」

 今私に出来ることは、奴の動きを読むこと、奴がこちらに来たら、レスターやMの監視の報告を受け、そこから得られるものを探ることくらいか……。
 どうせその程度のことしかできないのならば、夜神月が何か動くまで放っておいて、第2のキラを探したほうがいいか……。もっとも、これが夜神月が行っている自作自演である
可能性もなくはない……が、それならば一緒に捜査はしなはず……そうなれば殺しは行えない。
 ……まぁ、それは捜査が始まれば分かることか……。

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-同じ日・レスターの捜査室-(レスター)

 私に出来るのか……夜神月の監視が……?
 彼はキラ……そして私の本名、顔も知っている。下手に刺激するようなことをすれば……。……考えるのはよそう……。

レスター「……」

 どちらにしても、今私が生きていられるのは、ニアが存在しているから……もうニアに従うしかない……。いや……私は望んでニアに従っているんだ。
そして、キラを捕まえる……!

-同じ日・リドナーの捜査室-(リドナー)

 ニア……夜神月……。……メロ。
 私はどうしたらいいのだろうか……。今はニアによって生かされているとはいえ、もしかしたらニアは……。そして夜神月がキラではなかったら、
私は……。

リドナー「……」

 でも、今私に出来ることははっきりしている。少なくとも、あの2人とは関係のない、第2のキラが出現している……それを見つけることだ。

-同じ日・ジェバンニの捜査室-(ジェバンニ)

 この一晩、オレは何をした……? ああ、輝かしいあの一晩……またノートをすり変える策がこないだろうか……!

一晩くん「ひとばああああああああああああああああああああん」

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-同じ日・○×レストラン-(月)

鷹野「初めて会った日から、一週間ごとに会って、今日で4回目……もう付き合っちゃう?」

月「バカを言うな」

鷹野「あら、恐いわぁ」

 あれから連絡を取るために、一週間ごとにこうして三四と会っているが……実際こうして出歩くのは危険なこと……だが、仕方ない。特に今日は、SPKの所へ行く前、最後の
連絡日……。

鷹野「で、向こうに行ったらどうするか考えたのかしらぁ?」

月「策……それはまず、三四の捜査が必要になる」

鷹野「あら、他人任せなのね」

月「……。三四にやって欲しいのは、リドナーがいる場所を探し当てる、ということだ」

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鷹野「それはどういうことかしら?」

月「僕の考えでは、奴らはすでに、一箇所で捜査を行ってはいないだろう。少なくとも、ニアだけは違う場所にいるはずだ。そうしないと、もし僕が死神の目を持った場合、
ニアの名前が分かってしまうからだ」

鷹野「なるほど……でもなんでリドナーの居場所を? 仲間にでも取り込むつもりかしらぁ?」

月「それに近い策を考えている」

鷹野「じゃあなんでリドナーなの? もしかして一目惚れでもしたのかしら」

月「バカを言うな」

鷹野「さっきも言ったわよ、そのセリフ」

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月「高田清美が、メロによってさらわれたのを知っているだろ? あのとき清美の一番近くにいたのはリドナー……そしてリドナーは、清美をさらったバイクの運転手を一度見て、
うなずいたようにしてから清美をたくしたらしい。そしてその運転手はメロ……。これは、同じように近くにいた高田の護衛から得た情報だ」

鷹野「それはつまり……リドナーはニアよりも、メロを信用していたと、いうことかしらぁ?」

月「僕はそう考える。勿論、それによってニアよりも僕を信用するということにはならないが……僕がそうして見せる」

鷹野「大した自信ねぇ……」

月「僕は器用だからね」

 そうだ、女なんて簡単だ……。リドナーにしろ、お前にしろ……な。

リューク「どうせ決めゼリフは”運命”なんだろうな」

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鷹野「でも待って、それならデスノートで操って、居場所を知らせさせる方がよくないかしらぁ?」

月「いや、ダメだ。SPKメンバーの数は少ない……。ならば、少しでも人数は残しておくべきだ。それに、デスノートは一度書いてしまったらもう書き直しはできない。後から
良い策が浮かんでも、それを実行させることができなければ意味がない」

 リドナーの場所が分かれば、少なくとも1度はリドナーに会わないといけなくなる。だが間違いなく、僕を監視する者がいるだろう。
 向こうに行くようになっても連絡のために三四とは会うが、これは三四の存在を知らない向こうの奴らからすれば、三四を第2のキラの可能性があると考えることになる。
しかし、監視がいることくらい、僕が読んでいることは向こうも分かっているだろうから、そんな堂々と会うのは、ニアにとって考えられない。
 だがリドナーは違う。そこで必要になってくるのは、その日に監視者を操ることだ。このとき最低、その監視者1人は殺さなければならない。
もしリドナーも操れば、計2人死ぬことになり、SPKのニア以外のメンバーは1人になってしまう。それはまずい。

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鷹野「でも、リドナーは見つかるのかしらぁ?」

月「それは三四の力量次第だ。僕が向こうに行ったら、日本捜査本部は三四に預ける。あそこならそれなりの捜査が可能だ。場所は僕がSPKへ行く日に連絡する」

鷹野「……」

月「それに、ニアを探すならばともかく、リドナーだ。ニアは絶対に外には出ないだろうが、今までのSPKの捜査法を見れば、リドナーが外に出る可能性は
十分にある。それを利用すればいい」

鷹野「……分かったわ。それで、今後も今みたいにここで会うの?」

月「そうだな……まず最初の1ヶ月程度は会わないほうがいいな……まずは奴らを信用させる……少なくともニア以外のメンバーから、少しでも疑念を晴らしてからだ。そして
会うときは、三四が僕にメールをする。これは当然ニア達もチェックするだろうから……”久しぶりに会いたい”というメールをしてくれ」

鷹野「結局恋人になるんじゃない」

月「まぁ、そっちのほうが目立たない」

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月「そしてそのとき、リドナーの居場所についての話、次に会う時期などを決める。僕の予想では尾行者、盗聴器まではあっても、カメラなどでの随時監視はないだろう。
つまり、筆談はできるということだ」

鷹野「分かったわぁ……とりあえず私は、陽くんがSPKに行ったらリドナー探索……1ヵ月後にメールすればいいわけね」

月「ああ、そうだ。それと、僕は裁きが行えなくなる。第2のキラとしての働き以外に、キラの裁きも行ってくれ」

 ……さて、こちらの準備はだいたい整った……これが成功すれば、ニアの名前、そして三四の名前も掴める……
そして邪魔者は全て消え、僕は新世界の神として、君臨することになる!

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-四日後・日本捜査本部-(月)

ニア『L、ニアです』

月「Lです」

ニア『時間をかけてしまい申し訳ありません。ようやく準備が整いました』

月「いえ、こちらこそ私と捜査することに同意していただき感謝しています」

ニア『では日時ですが……今すぐ、というのは可能でしょうか?』

 今すぐ……やはりあれから23日以上たった今、すぐにでも僕の動きを見たいということ……。

月「大丈夫です。いつでもいいように準備していました」

 この準備という意味……お前なら分かるだろう……。

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ニア『……ありがとうございます。それで、なんですが、実はこちらから2、3取り決めがあります』

月「なんでしょうか。こちらからは特にありません」

ニア『私はあなたをキラだと疑っています。よって、捜査する場所をこちらで決めさせて欲しい』

月「分かりました」

 こちらとしても、そっちのほうが都合がいい……僕を監視した所で何もでやしないのだから。ニア本人が僕をキラではないと証明することになる。

ニア『もう1つ……そちらにあるノートを、こちらに持ってきていただきたい。そしてそれを、私達で管理させて欲しい』

 それを言ってくることも承知の上……さらに身体検査をされることも考え、すでに腕時計のデスノートははずしてある。
 そして持っていくノート……それはもう作ってある偽物だ。ニア達はそれを危惧しているだろうが、それでもあいつのことだ、それを確かめることはしないだろう。
もし確かめられたとしても、僕がいつの間にかすり変えられていた、と言うだけでいい。なぜなら、第2のキラの発生……ノートの流出が起こっているからだ。ニアだけはそれでは
納得しないだろうが……そもそも前者である可能性の方が高い、問題ない。
 また、死神が見えない、ということで追求してくる可能性もあるが、それは魅上の前例がある。この点に関しても問題ないだろう。

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ニア『……では、今指定した時間、場所におねがいします』

月「分かりました。では、後ほど」

 ……さて、あとやることと言えば、三四にこの捜査本部の場所を知らせること、本物のデスノートをここ以外の場所に隠すことくらいか……。

 ニア……お前は恐らく、僕を監視する程度のことしかできないだろう。そして僕がキラである証拠を見つけるために考える。ニア、もっと考えろ、そして悩め……悩み続けていろ……。
もうすぐ楽にしてやる。

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-数時間後・レスター捜査室-(月)

月「初めまして……というのも変ですが、よろしくおねがいします、レスターさん」

レスター「……よろしく。……Lと呼べばいいのか月くんと呼べばいいか困るところだな……」

 やはりSPKはそれぞれ別の場所で捜査を行っていた……。そして僕の監視者はこのレスターというわけか。見た目はそれなりだが……声が震えているな……。
こいつは僕がキラだと確信していて、殺されるのを恐れているということか……。

レスター「ニア、Lが到着した」

ニア『ようこそ、L。通信で言うことではないかもしれませんが。こんな形になってしまい申し訳ありません』

月「いえ、私をキラだと疑うあなたからしたら当然の処置です」

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月「それではニア、まずは共に捜査するにあたり、互いに今まで得た情報を交換しませんか?」

ニア『はい、私もそのつもりでした。まずはお聞きしたい……L……あなたは、第2、のキラの検討は付いていますか?』

 わざと第2、というのを強調してきた……まぁ、だからどうといったことはない。

月「そうですね……これまでと違い、犯罪者以外を主に殺し……しかもそれに一貫性がない……。とてもじゃないが見当が付きません」

ニア『私も同意見です。……では、今回のキラの、始点はどこかお分かりですか?』

月「私の考えでは、20日ほど前の、△△高校、□□大学の関係者が殺されたこと、です」

 魅上の出身校……三四が殺した奴らだ。

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ニア『では、これはご存知でしょうか?」

 魅上のことだな……。

ニア『それらの学校は、共に魅上の出身校であり、同じようにその2つの学校両方に関係していて殺されたのは、魅上以外に2人しかいません。そして、魅上も死んだ……』

 ……三四……もう少し殺す相手を選べ……。だが、これは想定の範囲内。

月「つまり……魅上を殺すことを隠すために、他の者も殺した……」

ニア『私はそう考えます。そしてそうなると、この魅上が拘束されたタイミングで殺したことになり……内部犯の可能性が出てきます』

 ……なるほど、自分でそれを言ってしまうことで、こちらからの追求を逃れたということか……。内部犯だとすれば、動機が強いのはニアだけだ。

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月「となれば……第2のキラ……いや、少なくとも魅上を殺したのは、私や日本捜査部の者、そしてSPK関係者になりますね」

 日本捜査部の者はもういない……ニアもそれは分かっているだろうが、これは建前として必要だ。

ニア『はい。そうなります』

レスター「勿論、それはあくまで可能性だ」

 レスター……そんなこと、言ってどうする……。
 もう誰もが分かっているはずだ、間違いなく関係者の中に、魅上殺し……第2のキラがいることを。

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ニア『ところでL、1人あなたに紹介しなければならない人物がいます』

月「紹介……? それはもしかして、SPKのメンバーはあなたがた4人だけではなかった、ということですか?」

ニア『……そうです、申し訳ありません。少し前まで私しか知らなかった、もう1人がいたんです』

月「……まぁいいでしょう……それで、その人物というのは?」

M『はい、Mと申します』

 別の場所からの通信……M……三四か……。やはりSPK関係者だった……。
 だがこの通信の場所は日本捜査本部ではないな……となれば、SPK関係の施設ということになる。まぁ、実際のところ、すぐに三四の居場所を知る必要はない。三四も
建前上、日本捜査本部にいると言うだろうし、どうせ定期的に会う。

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月「M……Lです。よろしくおねがいします」

M『こちらこそおねがいします』

ニア『ではL……また後ほど連絡をします』

 三四との連絡がこんな所で取れるとは、正直思っていなかったが……これはチャンスだと言える。あまりストレートなことは言えないが、何か暗号のような物を使えば、
危険を冒して会うよりも、確実に連絡が取れる。勿論、それはニア達にも聞かれてしまうことになるが……。まぁ、これは追々でいい。
 とにかくまずは、懸命に捜査する振りをして、僕が少なくとも、第2のキラ本人、またはそれと関係しているなどと思わせないようにしなくてはならない。
 当面はニア達も大きな動きは見せないだろう。ならば僕に出来ることは……レスターに対することだ。

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月「レスターさん」

レスター「……な、なんだ……? L……」

月「ははっ、そんな緊張しないでくださいよ」

リューク「何その明るいキャラ」

 黙ってろリューク! レスターにお前の声が聞こえなくとも僕には聞こえるんだ、気が散る!

月「レスターさんはMって人のこと、どれくらいご存知なんですか?」

 ここは下手に回りくどい言い方をするのはよくない……ストレートだ。

レスター「Mは……さっきニアも言っていたが、つい先日まで私達は知らなかった存在……。私が知っているのは、Mは、私達を尾行していた、ということくらい……」

 どうやら嘘を付いている様子はない……いや、僕を恐れているのか付けないんだろう……好都合だ。

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月「それはあなた達がニアに、キラではないと疑われていたということですか?」

 これはまずないだろう……しかし、これを聞いたことで、”もしかしたらそうなのかもしれない”という疑念が生まれることもある……。いずれニアをキラに仕立て上げるのだから、
伏線は張っておかねば……。

レスター「いや……ノートで操られて不振な動きがないか監視されていたようだ……」

 まぁ、そうだろうな。ニアも、そのくらいのことは僕なら想像が付くと考えた上でMを紹介し、レスター達に尾行のことを話したのだろう。
 しかし、この様子なら案外簡単にSPKの者を信用させることができるかもしれないな……。
 やはり、初代Lもそうであったように、本人以外は皆ぬるい……。……退屈させてくれるなよ、ニア……。

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-20日後・レスター捜査室-(月)

月「ニア、何か掴んだとは本当ですか!?」

ニア『掴んだかどうかは分かりませんが……少し第2のキラの法則性が見えてきました』

 ……それは当然だニア、僕が三四にそう指示していたのだから。そしてこうすることで、内部犯ではなく、全く別の人間が第2のキラ、という可能性を含ませることになる……。
勿論それが有効なのはニア以外に対してだが……もうこの際ニアは関係ない。

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レスター「こちらも頑張らねばならないな、月くん」

月「そうですね、レスターさん」

 気づけばレスターは僕を名前で呼ぶようになった……これは僕を信用してきた証拠だ……。今まで僕が、全く別の人間が第2のキラ、だということを一番吹き込んできた
人物……それによって僕を疑えなくなってきたのだろう。何より、常に自分の目の前に僕がいるのに、犯罪者裁き、第2のキラの殺しは起こっているのだ。頭で僕がキラだと
思い込ませようにも、感情的な面ではそれが出来なくなっているはずだ。僕がそうなるように行動していたんだ、当然だ。
 勿論、この部屋には盗聴器などがしかけられ、ニアは常に僕とレスターの会話を聞いているだろうが……盗聴器はただ聞くための道具にすぎない。そして、一緒に捜査すると
言った以上、通信という公な場所で僕を疑うような言動はしない。
 ニア……やはりお前はLに到底及ばない存在だ……。

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-10日後-

prrrrrrrr

レスター「メールのようだな。すまないがまた見させてもらうぞ」

月「はい、どうぞ」

レスター「差出人”鷹野三四”……内容は、”久しぶりに会いたい”……か……。彼女か、月くん?」

月「まぁ、そんなところです。……こっちに来てから一度も連絡も取ってなかったですからね……」

レスター「そうか……」

月「本当は会ってやりたいのですが……ニアが許してくれるとは思えません……」

レスター「……私からもかけあって見る、当然監視することになるだろうが……彼女と会うことに変わりはない」

月「ありがとうございます、レスターさん!」

リューク「ククク……計画どおりって分けか」

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-30分後-

ニア『ではL、さきほど言ったように監視者を付けさせてもらいます。また、盗聴器などは付けません。カメラなどでずっと見ているのは不可能ですので、筆談されたら
意味がありません。あなたは過去にやっていたようですし……』

月「過去のことは関係ありません。それより彼女に会うことを承諾していただきありがとうございます」

ニア『いえ。……ではこれで』

 さて、ここからどうするか……三四がリドナーの居場所を見つけているのが一番良いが……。だが実際、これまでの捜査の中で、リドナーが外に出る必要があったことは
一度もない。これでは見つけることは難しいだろう。

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 ……何にしても、これから僕が動き、ニアの名前を知ったとき、一番注意すること。それは、僕がニアの名前を知った、ということを三四に知られないことだ。
もし三四がそれを知れば、当然ニアをすぐに殺せと言い出すだろう。そしてニアが死ねば、僕は三四に殺される。SPKの関係者で、しかも通信をいつでも取れる立場に
あったのならば、僕の本名を知らないはずがあるまい。
 つまり、僕はニアの名前を知ること、三四の名前を知ることを両立しないといけないということだ。

 ……だが、しばらくはニアの方に集中すべきだ。三四はニアと違って隠れていない。その気になれば、どうとでもなる。
 ならば今やるべきこと……それは、いずれ殺すことになる監視者が誰か知ることだ。僕の予想ではレスターだろう。彼は僕とずっといるわけだし、逆に僕がいなくなれば
いくらでも動ける。かまをかけてみるか……。

月「監視者……やっぱりレスターさんがやるんですか?」

レスター「まさか。私はここにいて捜査をしなければならない。月くんは私と共に、前にも外に出たことがあるだろう? そういうとき、私すらも監視する者がいなくては
ならない」

 ……! レスターに言われて気づくのも気に障るが……僕の監視者は三四……それはレスターをも監視する、ということばから明かだ。
 これならば……策を変更して、早めることができる!

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-1時間後・○×レストラン-(月)

鷹野「久しぶりぃ……会いたかったわぁ……くすくす」

月「僕はそうは思わないが」

 監視者は三四……それはつまり、実質監視者はいないということだ。ニアは想像できていないだろう、僕とMに繋がりがあることなど。

月「で? リドナーの居場所は?」

鷹野「久しぶりに会った恋人同士っていう設定なのに連れないわねぇ……。……結論から言えば、皆目見当が付かないわ」

月「だろうな……そう思って、計画を変更した」

鷹野「へぇ……どんなのかしら?」

月「リドナーを操る」

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鷹野「SPKのメンバーは取っておきたいんじゃなかったのぉ?」

 それは監視者はお前であり、監視者を殺す必要性がなくなったから、解決した。どうせ1人は殺さないといけなかったんだ……誰が死のうと同じこと。

月「そうだが……もうすでに書いた」

”Halle Bullook
 今から23日間のどこかで可能な限り早く、□□□に自分の居場所を記した手紙を送る。
 そして23日後、自分で自分を追い詰めるような遺書を書き、自殺”

鷹野「あら……まぁいいわ、計画が早くなったってことね? ……でも、あなたに従うような下りをいれなくてよかったの?」

月「そんなことをして、誰かのようにノートの効力に無理を生じさせ、心臓麻痺にさせるわけにはいかない」

鷹野「言ってくれるじゃない……」

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鷹野「そこまで自信満々な陽くんの、完璧な作戦をそろそろ聞きましょう……」

月「簡単だ。ニアの所へ、キラとしての僕に忠誠を誓う者達を突入させ、殺す」

鷹野「……? じゃあリドナーは意味がないんじゃないのかしらぁ?」

月「リドナーは、ニアの居場所を聞きだすために必要だ」

鷹野「ならそれをデスノートに書けば……」

月「”ニアの居場所を書き……”というのはできない。ニアは通称だし、そもそもデスノートは名前が出たら心臓麻痺になるだけだ」

鷹野「……それがあなたの作戦ね。……分かったわ、私は高みの見物とさせてもらうわねぇ」

月「ああ、それでいい」

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 三四……お前には考えられるだろうか……。この策の果てには、お前の死も含まれていることも……。

鷹野「で、作戦実行はいつ?」

月「そうだな……三四に会ってすぐじゃあ、あまりに早すぎる。となれば……半月後……よりSPKの奴らを信用させてからだ」

鷹野「ふふ、楽しみね……じゃあそのときは通信をオンにして、ニアの断末魔を聞かなきゃね……」

月「趣味が悪いな、三四」

鷹野「いいじゃない……」

 断末魔……それはお前もあげることになるんだ!

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-半月後・レスター捜査室-(月)

レスター「捜査はどうだ? 月くん」

月「なんともいえないところです……」

 レスター……最初の1週間こそ僕を疑いの目で見続けていたが……最近は信用とはいかないまでも、疑念は大分薄れているようだ……。これならば、僕の策は実行
可能になる!

レスター「ニアにもどんな具合か聞いてみるか?」

月「そうしましょうか」

 ……今だ……!

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レスター「ニア、捜s……」

キラ信者A『出てこいー!』
キラ信者B『ドアをぶち壊せー!』

レスター「!? な、何事だ!? どうしたニア!!」

キラ信者リーダー『キラを支援する同士諸君! じわじわと彼らを確実に追い詰め、カメラの前へさらけ出し、キラ様へ捧げるのです!』

月「これは……まずいですよレスターさん!」

レスター「ああ……くそ……どうしたら……!」

月「レスターさん! ニアがどこにいるか知らないんですか!? このままではニアが……!」

レスター「……」

月「レスターさん!!」

キラ信者リーダー『第1陣はドアを破って中へ!!』

レスター「く……分かった! 付いて来い!!」

月「はい!」

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-数分後・ニア操作室付近-(月)

レスター「ジェバンニ、リドナー!」

ジェバンニ「ここからでは様子が分かりませんね……」

月「早く行かないとニアが……!」

レスター「……月くん……いや、L、今から私達は突入するが、君はここで待機だ。ニアが無事だったとしたら、君に顔を再び見られることになる。
ニアはそれだけは避けたいと言っていた……」

月「そんな……!」

リドナー「……この通信機を渡します……これで音声だけですが中の様子が分かるでしょう……」

月「く……! 皆さん、おねがいします!」

レスター「行ってくる……!」

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 リドナーに渡された通信器から、彼らの声が聞き取れる。

ジェバンニ『おかしい……ドアが破られた様子はおろか、人が出入りした気配すらありません』

レスター『どういうことだ……?』

リドナー『とにかく一度、中に入ってみましょう』

 ……。

レスター『ニア!』

ジェバンニ『ニア! 大丈夫でしたか!?』

ニア『大丈夫……おかしなことを聞きますね、ジェバンニ』

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ジェバンニ『どういう……ことですか?』

レスター『ここはキラ信者によって襲撃を受けたのでは……?』

ニア『……何のことですか? ここには、あなた達以外入ったことはありませんが……』

レスター『な……に……?』

ニア『皆さん……誰かにイタズラでもされたのでは……?』

月「くくく……ふふ……あーっはっは! そうだ、それは僕がやったことだ! そしてお前は、その後から入ってくる、今度はイタズラなどではない真の兵によって、
僕に殺されことになるんだ!」

 こんなことろで言っても、奴には聞こえないだろうがな……!

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-5日前・○×レストラン-(月)

月「お待ちしてました、リドナーさん」

リドナー「……夜神月……L……」

月「今は月と呼んでください」

 デスノートで操られた人間が、その行動に対しどう思うのか……などは分からないが、少なくとも、僕が、”お会いたい”という手紙を出したことについて、
驚いているようだ。
 僕は、数日前にリドナーから自分の居場所についての手紙を得て、そこに会いたいという旨と、時間、場所などを書いて送った。それは無論、三四も言ったように、
リドナーを取り込むためだ。

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リドナー「それで、私に会いたいとは……なぜ……」

月「リドナーさん、なぜあなたはニアに従うのですか?」

 ここはまず間髪を入れずに、相手に悩ませることが重要だ。そうすれば、考えがまとまらなくなり、結局自分でもよく分からない結論にたどりつく。それでいい。

リドナー「私は……キラを捕まえたい一身で……」

月「そうですよね。……ならば、ニアがキラだと思っている僕を、今ここで捕まえますか?」

リドナー「それは……。確かにニアはあなたをキラだと言っていますが……結局完全な証拠は今まで一度も……」

 やはりな……。こいつは僕をキラだとは思っていない。疑っているレベル……いや、もしかしたら……。

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月「そうですか……。それならばよかった。実は、今から僕の考えをあなたに聞いて欲しかったんです。でも、仮にそれに納得して、僕の考えるキラを
捕まえようなどという暴挙に出られては困る。これはあくまで僕の推測……ニアが僕をキラと考えているのと、何も変わらないものなのですから」

リドナー「あなたは第2のキラの正体が分かった……と……?」

月「推測です」

 ここは下手に推すべきではない……すでにリドナーは混乱している……。口車に乗せるのは簡単だ。リドナーも結局、女だしな……。

リドナー「分かりました……聞かせてください……。勿論それで、そのあなたの言うキラを捕まえようなどとは考えません……」

月「ありがとうございます。……結論から言うと、僕の考える第2のキラは……ニアです」

リドナー「!」

 ……その反応……驚きも感じるが……。

リドナー「な……なぜニアだと?」

月「まず、僕がニアを疑うきっかけになったのは、他でもないYB倉庫の1件です。あれがなかったら、僕はニアを疑うことすらなかったでしょう。だが、あれだけでは、
ニアをはめるために、魅上や、他の者が仕組んだとも考えられる。実際、誰も死なず、ノートは偽者だったのだから」

リドナー「はい……私も同じことを考えました……」

 それを言うということは……そのあともリドナーは、ニアを疑っていた可能性がある……! やはりリドナーを選んだのは正しかった!

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月「本当ですか? ならば、僕の推理を話した後、リドナーさんの話も聞きたいです」

 まぁ、その必要はないがな……。

月「だが、僕がニアを疑う決定的な事態……それが魅上の死だ。ニア自身も言っていましたが、魅上が死ぬことで考えられるのは内部犯ということになる……。僕は第2のキラの動向
から、外部犯だということを推してきましたが……それは僕がニアを怪しんでいると分からせないためだ」

リドナー「なるほど……」

月「そして僕の言っているキラとは……第2のキラ、だけではありません」

リドナー「どういうことですか!?」

月「僕の中では、第2のキラ……そして犯罪者を裁くキラ……どちらもニアです」

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リドナー「そんな……まさか……」

月「ですが、そう考えると、全ての辻褄があってしまうんです! 例えば……今回、ニアは別々の場所で捜査することにした……どうしてだと思いますか?」

リドナー「それは……あなたが死神の目を持った場合を考慮して……」

月「違います。騙されています。ニアは1人になることで……キラとしての行動を起こしやすくしたんです! 今までは犯罪者を裁くだけでよかった……しかし、今回は第2の
キラとしての動きも必要だった。そこで、1人になり、それを可能にした」

 推測とは言ったが……こうして言い聞かせるようにすることで、リドナーは必ず、よりニアに疑念を抱き……そしてリドナーの中で、ニアはキラとなる!

月「考えてみてください……あなたがSPKとして動く中で、ニアがキラだった……そう仮定した場合を……」

リドナー「確かに……そうなればニアはSPKの動きを全て知っていたことになるのですし……自分の推理も当然当たる……」

月「そうです。ニアは推理していたように見せかけ、ただ自分のこれからの行動を言っていただけなんです」

 よし……もう少しだ……。

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リドナー「ですが……それではおかしな点が……。ニアはYB倉庫であなたに会うまで、あなたの顔を知らなかった……だから邪魔となるあなたを殺せなかった……それは
いいとします。でもその後……なぜあなたを殺さないのでしょうか?」

月「それは恐らく……僕が眼中にないのか……よほど自信があるのか……。……ですが、僕の考えでは、ニアは一度、僕を殺そうと僕の名前をデスノートに書いたはずです」

 いくらリドナーといえど、その点には気づいたか……。だが、それもすでに1つのパターンとして考えてある……。

リドナー「……ではなぜ……あなたは……」

月「……ハル・リドナー、いい名前だ。夜神月……これはどうです? 変わった名前だと思いませんか?」

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リドナー「それは……確かに……ムーンと書いてライト……変わっていますが……」

月「それもありますが……僕は、ただでさえ名字が闇を彷彿させる。それにこの名前では、まさに死神のようだ」

リューク「ククク」

月「実はこれ……後で改名された名前なんです」

 こんな滅茶苦茶な話……いくらこいつといえど、普段なら絶対に信じないだろう。だが、僕がこの話をするということは、リドナーが、ニアがなぜ僕を殺さないのか、
という質問をした場合のみだった。そして実際にその質問が来た……この質問をするには、ニアをキラだと疑い始めないとできない。つまり、この段階で、リドナーは
ニアよりも僕を信用したことになる!

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月「僕の本当の名前は……夜神光……読み方は同じです。ですが、日本には画数で人の人生を占うという妙な風習がありまして……それにひっかかったようです。しかもそれは、
僕の戸籍を提出した後だった。何を考えているんでしょうね、僕の親は」

リドナー「……」

月「占って初めて、よくないことに気づいた。そこで親は改名……ライト、という響きは捨てたくなかったようで、結局今の名前に……。ですが、僕の戸籍では、光となっているんです」

リドナー「名前が違ったから、殺されなかった……」

月「はい。だいたい、おかしいと思いませんでしたか? 僕の名前は、学校などのに少なからず残っている……それなのにキラ捜査……それは、これがあったからです」

リドナー「それは理解できます……」

 もういいだろう……。

月「リドナーさん……僕があなたを呼んだ本当のわけ……それは、あなたに頼みたいことがあったんです……」

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リドナー「頼み……ですか?」

月「はい……。……僕の名前は改名されたものとはいえ、ニアはほぼ僕の本名を知っているといえる。つまり、僕はニアに殺される直前といえる……そしてそれは、
リドナーさん達も同じです……」

リドナー「……」

月「ならば少なくとも、ニアの名前だけは知っておきたい……そうすれば僕とニアは対等になるのだから……」

リドナー「ニアの名前を……? まさか……死神の目……?」

月「はい、それをあなたに持っていただきたい」

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リドナー「!? 私……が……?」

月「はい……まずは、この紙に触れてください」

リドナー「……? ……! な……あ……死神……!」

リューク「ククク、リュークだ」

月「彼と取引することで、死神の目を得ることができます。ただその対価として……自分の残りの寿命、その半分が必要になります……」

リドナー「寿命の半分……!?」

月「あなたしかいないんです……!」

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リドナー「……月さん……あなた自身が、その取引というのを行えば良いのでは?」

月「はい、僕も本当はそうしたい……だが……できないんです。ノートには、所有権というものがあります。その所有権は、そのノートの持ち主を指すんです。そして
その取引は、初めてノートの所有権を持ったときにしかできないんです」

 無論、そんなものは嘘だが……。

月「そして出来たとしても、ニアは僕の前よりも、あなたの前ならば姿を現す可能性が高い、いや、僕の前に来ることはないでしょう」

リドナー「……」

月「おねがいします。これは当然、ニアを殺すためのものではありません。勿論、最終手段としては考えられますが……あくまでニアをキラとして追い詰めるのに必要な
武器なんです!」

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リドナー「……」

月「すぐに答えはでないでしょうね……。……このカバンの中にノートが入っています。デスノートです。もしあなたに覚悟があるのならば……その所有権を得て、取引を
してください。そして取引をするしないに関わらず……そのノートはこの紙に記された場所に戻しておいてください。またこの紙に、あなたが取引をしたのか、しなかったのか
を書いておいてください……」

リドナー「……はい」

 ……。

月「あなたの考え、今の会話の中でいろいろと分かりました……それは僕に考えに近いものだった。そんな僕とリドナーさんがこうして会えたのは何かの運命だ!
僕とあなたで、キラを捕まえましょう!」

リューク「ククク……運命……」

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 ……。
 あそこまで追い詰めれば、必ずリドナーは取引する……。そうでなければノートを置いてくるなんて危険な真似、できるはずがない。
 リドナーは、なぜニアに預けたはずのノートがここにあるのか、とうことを追求できないほどだったしな……。
 そして僕がノートを置いてきたのは、取引をした場合、僕の名前が見え、さっき言った改名の話が嘘だとバレる……それはまずい。こういう口車に乗せるときは、
1つでも嘘だと気づかれてはいけないんだ。

月「5日後が楽しみだよ……ニア……」

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-時系列戻る・ニア捜査室付近-(月)

 全ては僕の策……リドナーにニアの顔を見せるための! 
 リドナーに、通信器を渡せと言ったのも僕、しぶるようなら、皆をうながせと言ったのも僕だ!
 そしてあの襲撃されたかのような音声……あれはいつか出目側指揮の下、SPKを襲撃したときの音声を録音したものだ。あのときカメラが回っていた、それを
作ることなど造作もない。
 僕は、1ヶ月半の間に、SPKのシステムに介入できるほどになっていた。そしてあの録音した音声を関係者全員に流し、ニアの下へ終結させた。僕の読みどおり、
全員がニアの場所を知っていたようだ。リドナーに対しては、あれが作戦開始の合図だと、あらかじめ知らせておいた。
 そもそも、僕や三四でさえたどり着けなかったニアの居場所だ、ただの信者ごときに見つかるはずがない。僕が誰とも通信していないこの状況ではな!

月「さぁリドナー! 早くニアの顔を見るんだ! そしてその名前を通信器に向かって叫べ!!」

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リドナー『ニア、なぜさきほどから私達に背を向けているのです……?』

 背を……? 何か見ているのか……?

レスター『何にしても、ニアが無事でよかった』

リドナー『それはそうですが……気になります』

ニア『私も気になります……あなたはなぜ私が背を向けているのを気にするのか。そんなに顔が見たいんですか?』

ジェバンニ『ニア……リドナー……?』

リドナー『か……顔を見ればその人が無事かどうかすぐに分かるということです……』

ニア『なるほど、一理ありますね……では……』

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 リドナー! 早くニアの名前を言うんだ!! すでにお前はニアに不審がられている……!

レスター『ニア……!』

リドナー『え……Lの、仮面……?』

月「仮面!?」

 な、仮面……顔を隠して……!? いったいどういうことだ!?

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ニア『夜神月……L……あなたは今、これを聞いていますね? ……リドナーの口から、私の本名を聞き出すために……』

月「な……なぜそれを……!」

 ぐ……向こうからの声は聞こえても、こちらからの音声は送れないようにしてある……。

ニア『リドナー……あなたは、少しは私を疑っていても、最後は私を信じてくれると思っていました。ですがこれでは……』

 ま、まだだ……リドナーは銃を持っている、それで殺せば……!

リドナー『あ……ぅ……す……すいません……にあぁ……』

 ば、バカな!

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ニア『夜神月、お前はバカな人ですね。お前は監視者……Mがいることをレスターとの会話で知ったはずです。鷹野三四なる女性はともかく、リドナー……そんな人
と会っていては、こちらが注目しないはずがない』

 M……Mだと!? そうか、僕がリドナーと会ったのを見て、そのときの会話を聞いて……! 僕は盗聴器の可能性はないと踏んで、三四が近くにいないかだけ警戒していたが……
リドナーにそれが仕掛けられていたら……迂闊だった……。
 いや、それより三四……! 裏切ったか!? いや、あいつが裏切ったところで何も得はない……むしろニアを殺す機会を失い、損に……。
 だが……!

月「鷹野三四おおおおおおおおおおおおおおお!!」

 あいつだけは絶対に殺す!


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