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前編 後編



    ルルーシュはスザクに別のギアスをかけていたようです。

     後編


-少し前、黒の騎士団が敵を発見した直後・黒の騎士団本部-(スザク)

藤堂「ゼロ!」

ゼロ「今度は何だ!!」

藤堂「シュナイゼルが……!」

 まさか、殿下までもがこちらに攻撃を……!

カノン「ゼロ! シュナイゼル殿下に今の状況を伝えて!」

 カノンさん……! 今の状況……? いったいなぜ!

ゼロ「……どういうことだ!?」

カノン「お戻りになられたのよ!」

※補足
 カノン…シュナイゼルの側近。女みたいな男。

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-状況報告後-

シュナイゼル「ふむ……星刻隊長と通信できるかな?」

ゼロ「……繋いでくれ」

 殿下がギアスから開放された……? いったいなぜ? これもルルーシュの策……ない、いや、無理だ……。

シュナイゼル「星刻隊長、君の目的は何かな?」

星刻『……』

シュナイゼル「やはりね……。不自然だと思ったよ、以前星刻隊長の動きを見ていたとき、命令に忠実、自分に厳しい男だったと分かった。
        だが、今回はいつもと陣形が違う……命令にもない。となれば……ギアスにかかっている」

ゼロ「それは強引すぎではないのか?」

シュナイゼル「いいや。これくらいの考えの方が自然……当たり前なんだよ。
        ……悲しいねえ、ルルーシュが断ち切った憎しみの連鎖、それをまた自分から繋ごうというのだから」

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ゼロ「だが、星刻にもっと不自然な動きが見つかってからでないと、その判断は早計……!」

シュナイゼル「ゼロ……君は甘いね。ルルーシュもそうだったが……それ以上だ」

扇「ゼロ! 何か花火のようなものがあがった! 敵からの攻撃かもしれない」

 花火……?

扇「!? 今度は星刻隊長の通信が遮断された!」

シュナイゼル「……カノン」

カノン「はい」

扇「星刻隊……消滅……」

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-時間軸戻り、ルルーシュが退いた後・黒の騎士団本部-(シュナイゼル)

 星刻隊の艦隊には、いつでも消せるように、爆弾をしかけておいた。これは、以前にダモクレスでの作戦が終了したとき、
黒の騎士団を掃除するためのものだったが……こんなところで役に立つとはね。

カノン「殿下……!」

シュナイゼル「心配をかけてすまなかったね。でも、もう大丈夫だ。それとゼロ、いきなり出てきて、命令をしてすまなかった」

ゼロ「いえ……」

 新たなゼロ……ルルーシュに遥かに劣るゼロ……。そろそろ完全に捨てるべきかな、黒の騎士団……。

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ナナリー「シュナイゼルお兄様……」

シュナイゼル「やあナナリー。突然あんなことを言ってしまって、驚いただろう?」

ナナリー「はい、皇帝だなんて……私には……」

シュナイゼル「いや……そんなことはないよ。ユフィと同じ、優しい世界を望む君ならば……」

 ナナリー……ここに居たことは本当についていた。ナナリーがいることで、ルルーシュは動きにくくなるのだから。
 そして今回のことで完全に分かった。ルルーシュの目的はナナリー……。これは利用できるね。
 ルルーシュ……君を、いや、そのギアスという力、利用させてもらうよ……。世界平和のため……に、ね。

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-1時間後・ゼロの私室-(スザク)

ゼロ「ナナリー総督……」

ナナリー「そんな他人行儀な呼び方やめてください……あなたは、スザクさんなのでしょう?」

ゼロ「私は、ゼロ……」

ナナリー「……私は知っています、お兄様とスザクさんが、どんな思いであの場……ゼロレクイエムに居たのか……」

 ナナリー……君は……。

スザク「ナナリー……」

ナナリー「やはり、そうだったのですね。……スザクさん、あなたに聞きたいことがあります」

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-30分後-

 ナナリーは、主にルルーシュのことをオレに聞いた後、次はコーネリア皇帝代理に話があるからと、去って行った。
 またシュナイゼル殿下も、一度本国にお戻りになるとのことで、カノンさんと共に、この艦を去った。

スザク「ルルーシュ……」

 オレは、どうしたらいいんだ……。ユフィの仇……憎しみを背負った皇帝……ナナリーの兄……。

スザク「だがオレには……」

 オレには、2つ目の呪いのせいで、ルルーシュを殺すことが出来ない……。
 それと気になるのは、シュナイゼル殿下のギアスが解けているということだ。ルルーシュの策ならば、
ギアスをかけた星刻隊長を殺す、などということはないはずだから、それはない。

スザク「もしかしたら、オレの呪いも……?」

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-翌日・皇帝謁見の間-(シュナイゼル)

シュナイゼル「コーネリア陛下、報告にあがりました」

コーネリア「兄上……陛下だなんて……私は代理で……」

シュナイゼル「いやいや、今のあなたは間違いなく皇帝……私より目上の存在ですよ。だから堂々として」

コーネリア「はい……いや、分かった」

シュナイゼル「まず、謝罪をしなくてはなりません。以前私はあなたを撃った……謝罪しても許されることではありませんが……
        しかもこんなに遅くなってしまった」

コーネリア「兄上、今はそれよりも大切なことがあるのでは?」

 今は……か、まぁいい。ナナリーを皇帝にすれば、そのあたりのことはどうとでも……。

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シュナイゼル「はい、ルルーシュの件です」

コーネリア「私もある程度聞いてはいるが……生きているとは……」

シュナイゼル「まずこのことを、世界に報道すべきかと。ただし、ギアスのことは触れずに」

コーネリア「報道は同意するが、ギアスの件も報道しなければ、ルルーシュを捕まえようとする者は、
       ギアスの餌食になるのでは?」

シュナイゼル「では、どう報道しろと? ルルーシュは人を操る力を持っているから注意しろ、ですか?
        こちらが頭がおかしいと思われて、人は信じませんよ」

コーネリア「それは、そうだが……」

 ルルーシュのギアスを利用するには、少しでもその存在を知る者が少ない方がいい……。
 そして捕まえようとする者は、ブリタニア軍や黒の騎士団……前者はともかく、後者はギアスに操られるなりして、
死んでくれた方がいい。どうせ掃除する必要があるのだからね。

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コーネリア「では、ルルーシュの件はそのようにする」

シュナイゼル「イエス・ユア・マジェスティ」

コーネリア「それともう1つ……こちらから聞きたいことが」

シュナイゼル「……ナナリー総督のことでしょうか?」

コーネリア「そうだ。さきほどナナリー総督が謁見に来た。一応後押しはしておいたが……」

シュナイゼル「陛下は、代理ではない本当の皇帝になるおつもりはないのですね」

コーネリア「ああ、私は戦場を駆け巡る方が性にあっているようでな……」

シュナイゼル「確かに、あなたが戦場にいる姿はお美しい」

コーネリア「兄上……」

シュナイゼル「はは……。では、これで失礼いたします」

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カノン「殿下」

シュナイゼル「待たせたね」

カノン「いえ……それで、どうなりました?」

シュナイゼル「うん、僕が言っていたとおりになった。……それにしても、あの兄妹はいいね」

カノン「ルルーシュと、ナナリーのことですか?」

シュナイゼル「ああ、彼らは実に役立ってくれる」

 政治の道具として、ね……。

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-翌日・アッシュフォード邸-(ルルーシュ)

ルルーシュ「……」

C.C.「ルルーシュ」

ルルーシュ「……」

 ナナリーがシュナイゼルの手に落ちた……。

C.C.「ルルーシュ、聞いているのか! いつまでそうしているつもりだ!」

ルルーシュ「……」

 ナナリーィ!

C.C.「ふん、こんなちっぽけなことで落ち込むなんて、さすがは童貞ボーヤだ」

ルルーシュ「……」

C.C.「ダメか……」

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C.C.「……ルルーシュ、お前は失敗したことで落ち込んでいるのか?」

ルルーシュ「……ああ」

C.C.「仲間になった星刻が殺され、あまつさえナナリーまでシュナイゼルの手に落ちてしまったことで、
    落ち込んでいるということだな?」

ルルーシュ「……そうだ」

C.C.「ルルーシュ、お前は今まで、一度も失敗しなかったのか?」

ルルーシュ「……」

C.C.「サイタマゲットーでのコーネリアとの戦い、ブラックリベリオン……少し考えただけでも、お前は何度も失敗している」

ルルーシュ「……分かっている」

C.C.「ナナリーのこともそうだ」

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C.C.「以前一度、ナナリーはシュナイゼルの手に落ちたことがあっただろう。ダモクレスの件だ。
    それでもお前は、シュナイゼルを破った。同じことじゃないか」

ルルーシュ「……相手はあのシュナイゼル……同じように行くとは……。
       それにオレがこうしているのは、落ち込んでいるだけだからではない」

C.C.「ではなんだと言うんだ?」

ルルーシュ「シュナイゼルがこれから打ってくるであろう手を考えていた。奴はまず、オレが生きていることを報道するだろう」

C.C.「お尋ね者ルルーシュの誕生だな」

ルルーシュ「ああ……だが、それだけならまだいい。オレが逃げていればいいだけだからな。問題は、次だ……。
       シュナイゼルはナナリーを握っている……。そして、以前は気づいていなかっただろうが、今となっては、
       オレがナナリーのために動いていたことは分かっているだろう。となれば、ナナリーは脅しに使われる……」

C.C.「だが、気づいていないにしろ、ダモクレスの件を考えれば……」

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ルルーシュ「あの時とは状況が違う! あの時のオレは皇帝、今はお尋ね者……脅されたら、終わりだろう……」

 オレだけが終わるならいい……だが、ナナリーまで……。

C.C.「……ルルーシュ。何度もダモクレスの一件を振り返るようだが……あの時お前は、何をした?
    シュナイゼルに対してではない。ナナリーに対してだ」

 ナナリーに……オレは、ナナリーにも嘘をつき、虚勢を張り……。

C.C.「お前は、ナナリーに対しても仮面を被り続けた。その仮面は、スザクに渡してから完全に消えたのか?
    違うだろう? あの仮面はお前だけのもの……ならばそれを貫け」

 仮面……ゼロの仮面……皇帝としての仮面……。

ルルーシュ「ふ……ふははは……。まさか、魔女に慰められるとはな」

C.C.「私はお前の共犯者だからな」

 オレに足りないもの……仮面……つまり、己が意思を貫く覚悟。
 スザクに対して、オレは甘かった。それは今後も変えることはできないだろう……ならば、覚悟を作ってしまえばいい。

ルルーシュ「ジェレミアを呼んでくれ」

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-数分後-

キャスター「元皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが、生きているとの情報が入りました。詳細はまだ不明ですが――」

ジェレミア「遅くなりました、ルルーシュ様」

ルルーシュ「ジェレミア、お前のギアスキャンセラーは、オレが一度ギアスをかけた相手に使えばギアスは解け、
       また新たなギアスをかけられるのだったな?」

ジェレミア「左様でございます」

ルルーシュ「ならば、オレにギアスキャンセラーをかけろ」

 マオが現れたとき、オレは自分にギアスをかけた……。

C.C.「まさか自分にギアスをかけるつもりか?」

ルルーシュ「そのとおりだ」

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ルルーシュ「我に命じる……”枢木スザクと対峙したとき、そいつを殺せ!”」

C.C.「ほう……面白いことをする。さっきまで、シュナイゼルのことで悩んでいたのではなかったのか?」

ルルーシュ「いや……よく考えてみた。さっきのニュースを聞いていたか? オレが生きているとの報道……
       お尋ね者に仕立て上げる報道……。その中に、ギアスということばはあったか?」

C.C.「ある訳がないだろう。そんなことを報道すれば、報道した方の頭が疑われる」

ルルーシュ「そうだ。つまりシュナイゼルは、自分を守護する者に、ギアスのことは言えない。
       ゆえに、シュナイゼルに近づくことはギアスを以ってすれば簡単……敵ではない。
       だがスザク……ゼロの周りには、ギアスのことを知っている人間が多数いる。黒の騎士団がいる」

C.C.「落ち込む原因を作った人物を軽んじる発言……。さっきあんなに落ち込んでいた人間が言うようなセリフとは、
    とても思えないな」

ルルーシュ「今のは建前……要は、覚悟だよ……。オレはいつも、肝心な所でつまらない情が出てしまうからな……」

 何にしても……まずはシュナイゼル……!

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-同じ頃・アヴァロン内-(シュナイゼル)

カノン「ルルーシュは、報道を見たでしょうか?」

シュナイゼル「無論だよ。見ないはずがない。そして、ギアスのことを報道されていないことを知ったルルーシュは、
        必ず自分から僕のところへ飛び込んでくる。そのときが狙い目だよ。
        ルルーシュを探せ……そんな報道は建前に過ぎない……ルルーシュも分かっているだろうけどね」

カノン「ルルーシュがブリタニア本国に? ギアスで操られた人間を送り込むとも……」

シュナイゼル「いや、それはないよ。僕の周りの者にギアスをかけられなければ意味がない。
        突破するにはどうしても戦いになるからね。ギアスがあれば、それは避けられる。
        それと、僕達はもう一度エリア11に戻ろう。ルルーシュが僕を見つけやすいようにね。
        ナナリーも近くにいないと困る」

カノン「分かりました」

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カノン「それで、殿下はどういった策を講じるおつもりで?」

シュナイゼル「簡単なことだよ。ルルーシュが来たら、ナナリーの車イスを押して登場すればいい。
        それでルルーシュは全てを理解することになるだろう」

 ナナリーが人質になっているということをね……。

カノン「ですが、殿下はいつでもナナリー総督にお会いになれるのですから、意味がないのでは?」

シュナイゼル「いや、直接対峙することが大事なんだ。それと、居場所が分からないルルーシュを誘い出すこと。
        ブリタニア兵が多数いるであろう場所で、ルルーシュがおかしな行動を取れると思うかい? ギアスですらね。
        でもあまり目立つところでやってはいけないな……。そう考えると、ナナリーを早く皇帝にした方がいいね。
        ルルーシュが来る、そう言えば、ナナリーは少し無理な命令でも簡単に出すだろう。
        ルルーシュが国を大分壊してくれたおかげで、いろいろ簡単に動けるようになった」

 さぁ、来るがいい、ルルーシュ。

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-1ヶ月後・アッシュフォード亭-(ルルーシュ)

キャスター「100代目神聖ブリタニア皇帝、ナナリー・ヴィ・ブリタニア様が、間もなく現れようとしています。
       会場には、たくさんの――」

C.C.「いいのかルルーシュ。ナナリーが皇帝になってしまったぞ? これでは本当に……」

ルルーシュ「いや、いい。この1ヵ月間、シュナイゼルの動きを見ていた。
       ……これは誘いだ。自分はここにいる。ナナリーを連れている。……という」

C.C.「ならば余計にまずいだろう? それは、お前が来るのを読んでいるということ。
    兵を配備されたら……」

ルルーシュ「それはないな。奴の狙いは、あくまでオレとナナリーを会わせること……
       そしてナナリーを人質として、オレのギアスを利用する、ということだ」

C.C.「ならば単純に、会合を用意すればいいだろうに……」

ルルーシュ「それは最もないことだな。お互いのプライドとしてな……。
       あくまで策の読み合い、ということだよ……」

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ルルーシュ「それに、それをされるとこちらが困る。シュナイゼルがオレの予想どおりに動くとして、
       アーニャやジェレミアを配備出来なくなる。それに、ジェレミアに昨日から会場を調べさせている」

C.C.「なるほど。で、私はどうするんだ?」

ルルーシュ「お前……? お前はピザでも食ってろ。
       ここから先、数は必要ない……それに、お前は何かと目立つからな」

C.C.「まぁ、そんなことだろうと思って、さっき注文しておいた。1人前な。
    ……もう行くのだろう?」

ルルーシュ「ああ、ナナリーを取り戻し、スザクを殺すためにな……!」

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-3時間後・皇帝就任会場-(ルルーシュ)

 この騒ぎなら紛れ込むのは容易い……そしてシュナイゼルも動きやすい……。互いの狙いどおりということだ。
 ジェレミアは無理だったが、アーニャはすでに内部で待機させている。
 アーニャならば、シュナイゼルの側近の存在も分かる……つまり、それらに動きがあれば、こちらに筒抜けということだ。

ルルーシュ「オレを見逃せ」

 いくら騒ぎがあるからといって、ブリタニア皇族の建物に、そう易々と入れるものではない。
裏門の門番にギアスをかけ、中に入った。

ルルーシュ「……」

 中は、人がいなかった。これは、シュナイゼルの差し金か……。

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 こうなってくると、シュナイゼルはオレの予想どおり、ナナリーと共に現れる……いや、待っているのだろう。
 それに迎え撃つのがこちらの策だが……アーニャやジェレミアがどこまでやっているか……。
この状況では、うかつに通信することもできない。

ルルーシュ「……最悪の場合……ギアスを……」

 もっとも、オレがシュナイゼルの策をある程度読んでいることは、向こうも想定済みだろう。
となれば、どのような策を講じてくるか……そこが問題だ。
 ギアス対策もしてくるだろう、だが、そこはなんとしてでも……。

ルルーシュ「ナナリー……」

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-同じ頃・アヴァロン内-(シュナイゼル)

シュナイゼル「そうだ、ルルーシュ、そのままだ」

 このアヴァロンに、あの建物内の監視システムを移行させた。これで僕はルルーシュのギアスにかかることはない。
 そして、今ルルーシュがいる場所、あの場所にはカノンを残した。ナナリーと共に……。
勿論カノンはバイザーを着用している。
 ナナリーには、ルルーシュと会う場所を用意したからと、それらしく言っておいた。
これでナナリーは、それに従うしかない……。
 アーニャがおかしな動きをしていたようだが……ルルーシュのギアスにでもかかったのかな?

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 とはいえ、僕がアヴァロンに乗っていることなど、ルルーシュやアーニャは気づいていないだろう……。

シュナイゼル「さぁルルーシュ、その部屋だよ……そこにナナリーがいる」

 皇帝専用の部屋……普通ならまずそこを探すだろうからね。
 さて……ルルーシュを捕まえたらどうするか……。まずは研究かな?
このエリア11には、クロヴィスの残した研究施設がたくさんある……。
ギアスとはどういうものなのか、興味があるからね。

シュナイゼル「感動の対面の時間……かな……」

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-皇帝専用室-(ルルーシュ)

ナナリー「お兄様!」

ルルーシュ「ナナリー!!」

 やっと……会えた……ナナリー!

ルルーシュ「ナナリー……シュナイゼルはいないのか?」

ナナリー「シュナイゼルお兄様はいません……」

 シュナイゼル、は、……。
 では誰が……いや、待て、シュナイゼルがいないなら、オレの策は……!
 いつも高みの見物をするシュナイゼル……なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ!!

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?「そこまでだ、ルルーシュ」

ルルーシュ「!」

 シュナイゼル……いや違う。その側近か……? 暗がりで見えないが、銃を構えている……。ならばギアスで……。

?「ギアスは効かない」

 ギアスを知っている!? シュナイゼルが話したのか? ……いや、そんなことをすればシュナイゼルは……。

ルルーシュ「な……お前は……!」

 暗がりから一歩、その人物は歩んだ。


-アヴァロン-(シュナイゼル)

シュナイゼル「こ……コーネリア!」

 なぜコーネリアが……カノンはどこに……!

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-皇帝専用室-(ルルーシュ)

ナナリー「お兄様、ギアスはなしです。コーネリアお姉様も、銃を下ろしてください。
      戦う意思などないはずです」

コーネリア「ああ、すまないな、ナナリー。こういうのは建前も必要なのだよ」

 何だ……これは……?

コーネリア「ルルーシュ、お前がナナリーに何かするとは思えないが、今は皇帝……。
       何かしようものならば、容赦はしない」

ナナリー「お兄様、混乱していることでしょうね。ですが、まずは私達を信じてください。
      お兄様が指示を出していたと思われる、アールストレイム卿にも話は通してあります」

アーニャ「間違いない」

 アーニャ……!

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ナナリー「お兄様……そして、どこかで聞いておられる、シュナイゼルお兄様……どうか私達の話を聞いてください」

コーネリア「兄上……先にここへ来ていた、カノン・マルディーニ伯爵はこちらで拘束させていただいた」

 訳が分からない……。ナナリーとコーネリア……そしてアーニャ……。
 まさかアーニャが裏切ったか!? いや、それはない……。
 ……分からないならば、まずはナナリーの話を聞くべきか……。

ルルーシュ「どういう……ことだい……ナナリー……?」

ナナリー「はい、お兄様……。私とコーネリアお姉様は、お兄様が生きていると分かったときから、話していたんです。
      お兄様……ゼロレクイエムのこと」

コーネリア「そして兄上……ダモクレスのこと」

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-1ヵ月と少し前、シュナイゼルとコーネリアが話す直前・皇帝謁見の間-(ナナリー)

ナナリー「お姉様!」

コーネリア「ここでは皇帝と呼べ、ナナリー総督」

ナナリー「はい、すいません……陛下……。あの、お兄様のことで……」

コーネリア「……だろうな。まさか生きているとは……魔王ルルーシュ」

 魔王……! いえ、そう言うのも仕方ない……コーネリアお姉様はゼロレクイエムの真の意味を知らない……。
だったら……。

ナナリー「違うんです……お兄様とゼロ……スザクさんがやろうとしていたことは……」

コーネリア「何?」

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ナナリー「お兄様はがあんな皇帝を演じた理由……それは、世界の憎しみを全て自分に集め、
      そしてゼロに殺されることで、憎しみを全て背負い、その連鎖を自分の死を以って断ち切る……そのためだったんです
      もっとも、幸い亡くなってはいないですけど……」

コーネリア「待て……さっき言ったスザクというのは、亡くなった元ナイトオブゼロの枢木スザクのことか?」

ナナリー「はい……スザクさんは死んでなどいません」

コーネリア「……ここでこれ以上の話はまずいな……。ナナリー総督、後で私の私室に来てくれ」

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-その日の夜・コーネリアの私室-(ナナリー)

コーネリア「なるほど……それがゼロレクイエム……」

ナナリー「はい……。あの、お姉様、今度はこちらからも質問していいですか?」

コーネリア「何だ?」

ナナリー「シュナイゼルお兄様は……どんな方なのでしょうか? ダモクレス……フレイヤで帝都ペンドラゴンを撃ったとき、
      本当にそこの方達は避難されていたのですか……?」

コーネリア「いや……そう言ったのは、兄上の嘘だ……」

ナナリー「!」

コーネリア「そして、様々なことを追求しようとした私を撃った……」

 お姉様を……!? シュナイゼルお兄様……。

ナナリー「……お姉様、私に……いえ、お兄様に協力していただけませんか?」

コーネリア「……」

ナナリー「お兄様は、私がシュナイゼルお兄様の近くにいることで、私が人質になったと考えているはずです……。
      でも、きっとお兄様は何かするはず……その手助けをしたいのです。世界を変えた、お兄様の……!」

コーネリア「……」

ナナリー「シュナイゼルお兄様の動きを追えば、必ず何か掴める……。私はシュナイゼルお兄様の言うとおり、皇帝になります。
      そうすれば、シュナイゼルお兄様は私から離れることはない……」

コーネリア「……」

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-時間軸戻る・皇帝専用室-(ルルーシュ)

コーネリア「そして私は、ナナリーの言うとおりにした……。兄上の行動は、目に余るものだったからな……」

 水面下でそんなことが……。ナナリー……。
 オレは確かに行動した……。だが、それはスザクを殺すため……。お前の好きなスザクを……。

コーネリア「ユフィ……クロヴィス……」

ルルーシュ「!」

 オレが殺した者……コーネリアは、オレを恨んでいたはず……。

コーネリア「私はこう考えることにした。ユフィ達を殺したのは……ゼロだと」

ルルーシュ「それは……」

コーネリア「許したわけではない。恨んでいないはずがない。だが、殺したのはゼロ……あの記号だよ」

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-同じ頃・アヴァロン内-(シュナイゼル)

シュナイゼル「はっはっは。とんだ茶番だね、これは」

 まさかコーネリアがルルーシュ側に付くとは……。ゼロレクイエム……それを聞いたとき、
なぜルルーシュがそんなことをしたのか理解はしたが……あの程度のことで……。

シュナイゼル「一時……退却かな」

 カノンはまぁ、大丈夫だろう。僕の側近だから、僕の起こした行動の一端は彼にもあるが……
コーネリアなら上手くやる。

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?「待たれよ!」

シュナイゼル「……?」

ジェレミア「ジェレミア・ゴッドバルト、推参!」

 オレンジ……。

シュナイゼル「おや、久しぶりだねぇ。僕に何か用かな?」

ジェレミア「覚えていていただき、光栄の極みでございます」

シュナイゼル「光栄、という割りには、僕に剣を向けて……失礼ではないのかな?」

 コーネリアの差し金、か。

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シュナイゼル「なぜ君がここに?」

ジェレミア「コーネリア皇女殿下の命を受け、馳せ参じました。私は昨日、あの式典会場を調査しておりました。
       そのとき、コーネリア皇女殿下に捕まった……。もうダメかと思われましたが、そのときに、
       シュナイゼル殿下が明日、このアヴァロンに乗るという情報を受け、潜伏しておりました」

 コーネリア……僕が遠くから監視することを、読んでいたというわけか……。

ジェレミア「そして私が目立たぬよう、アーニャがわざと怪しげな行動を」

 そういうことか……。

シュナイゼル「確かに、今まで味方だった者がおかしな行動を取れば、そちらを注目せざるをえない。
        ゆえに、明らかにルルーシュに従っている者が、本命だとは考える付かない、というわけか……」

ジェレミア「左様でございます」

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シュナイゼル「それで、僕をどうするんだい? 殺すのかい?」

 コーネリアが僕の行動を読んでいたというのならば……ジェレミア以外にもコーネリアの兵がいるのだろう……。
もしかしたら乗り組み員全員がそうかもしれない。……チェックメイトだね。

ジェレミア「いえ……皇族を殺すなど、私にはできません……」

シュナイゼル「ほう……」

ジェレミア「コーネリア皇女殿下は嘆いておられた。シュナイゼル殿下にもっと欲があれば、卓越した王になっていただろうと……」

シュナイゼル「……」

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ジェレミア「ゆえに、あなたには生きてもらわなければなりません」

シュナイゼル「それは、僕に欲を出せということかい? 人の性格なんて簡単に変えられる物ではないよ」

ジェレミア「はい、分かっております。ですから、それを変えられる方のお力を借りるのです」

シュナイゼル「……ギアス……ルルーシュ……」

ジェレミア「左様でございます」

シュナイゼル「…ふ……っはっはっはっはっは。それは面白いかもね」

 チェックメイト……そんなものはかけられていなかった。
 ゲームは今から始まる、というところかな……。

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-皇帝専用室-(ルルーシュ)

コーネリア「……そうか、ご苦労。兄上を捕えたとの連絡が入った。私はこれで失礼する。
       久々の兄妹水入らず……いや、無粋なことは言うまい」

 シュナイゼルを捕えた……! 結局全てを読んでいたのはコーネリア、そしてナナリーだったということか……。

コーネリア「ルルーシュ、これで私は消えるが、もしナナリーに何かしたら……。
       まぁ、その心配はあまりしていないが。代わりの者もそのうち来るしな」

ナナリー「ありがとうございました、お姉様!」

コーネリア「ふ……またな」

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ナナリー「お兄様、私の話、私の考え、聞いていただけますか?」

ルルーシュ「……」

ナナリー「お兄様はずるいです」

ルルーシュ「……!? どういう意味だい、ナナリー」

ナナリー「自分が死んで、世界を救う……聞こえはいいかもしれません。実際に上手くいったかもしれません。
      ですが、それがずるいというんです。世界を救われた……でも、私は……」

ルルーシュ「ナナリー……」

ナナリー「いえ、すいませんお兄様……ずるいのはお兄様なんかじゃない、私です!
      世界平和なんていらないから……お兄様と一緒にいたいと願ってしまう、私です……」

ルルーシュ「そんなことないよ、ナナリー……それはオレも同じ考えだから……」

 世界平和……何だそれは? 全ての発端はナナリー……お前なんだから……。

ナナリー「……ありがとうございます」

 ナナリー、お前は立派だよ、オレが言えなかったこと、お前は言ったんだから……。

ナナリー「……お兄様、私は皇帝です」

ルルーシュ「……? どうしたんだい、ナナリー」

ナナリー「私は、皇帝直属の部隊……ナイトオブラウンズを持つのを許されることになります……。
      そこにお兄様、スザクさん、そしてカレンさん達を入れたいんです!」

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-同じ頃・廊下-(スザク)

コーネリア「ゼロ……いや、枢木スザクだな?」

ゼロ「……」

 ナナリーの話では、コーネリア殿下は信用していいはずか……。

スザク「そうです、皇女殿下」

コーネリア「ルルーシュとナナリーはあの部屋にいる……頼んだぞ」

スザク「イエス・ユア・ハイネス」

 ルルーシュ……オレはナナリーにかけてみようと思うんだ……!

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-皇帝専用室-(ルルーシュ)

ナナリー「そしてブリタニア人、日本人、そのハーフ……いろいろな人種の方で形成して、合衆国を実現したいんです。
      ラウンズがそうなれば……いずれ世界は……!」

 ナナリー……お前はそこまで考えて皇帝に……。

 そのとき、オレの背後のドアが開く。何者かが入ってきたようだ。

ナナリー「スザクさん!」

ゼロ「ナナリー……ルルーシュ……」

 スザク……ゼロ……。コーネリアの言った代わりの者、というのは、やはりこういうことか……。
 ……? 待てよ、こいつは本当にスザクなのか? もしかしたら、まだ罠という可能性も残っているのでは……。
 油断しないほうがいい……。いざとなったら銃で……。

ナナリー「スザクさん、以前お話したのと同じことを、ちょうどお兄様に伝えたところです」

ゼロ「そうか……。ルルーシュ、君はどうすんだ?」

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 ここは、一端乗ったフリをして……。

ルルーシュ「ああ、オレもナナリーの考えに賛成だよ」

ゼロ「そうか……よかった」

 ゼロが、仮面を取る……。

スザク「オレもそうだ、ルルーシュ。また一緒にやり直そう。オレ達が組んで、できないことなんて、ないだろ?」

 スザク……。

ルルーシュ「……ああ」

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-1ヶ月後-(ナナリー)

ナナリー「どうしてですかお兄様! 今日はラウンズお披露目の日なのに、
      肝心のナイトオブゼロとワンだけは隠したままだなんて……」

 ナイトオブゼロはお兄様、ワンはスザクさん……。

ルルーシュ「オレもスザクも、世界的には死んだことになっている。しかもオレは皇族殺し、スザクは裏切りの騎士……。
       そしてどちらもゼロだ。もう少し時間が必要なんだよ。姉上もオレ達が明るみに出られるように行動してくれている……
       あと少しだけ、待つんだ。そうだろ、スザク」

ゼロ「ああ、そうだな」

ナナリー「スザクさんも、どうしてその仮面を被ったままなんですか!」

ルルーシュ「スザクはまだ、ゼロとしてやらねばならないことがあるからね」

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 いよいよ、就任式典以外に、皇帝として皆さんの前に顔を出す……。頑張らないと……いけませんね、お兄様、スザクさん。
 ラウンズにはお2人の他、カレンさんや藤堂さん、怪我から回復された星刻さんもいる……。
 まだ少しの国の方しかおられないけど……、いずれ……。

ナナリー「時間ですね。行って来ます、お兄様、スザクさん! 私を見守っていてくださいね!!」

ゼロ「ああ、分かった」

ルルーシュ「行ってらっしゃい、ナナリー」

 ああ、本当によかった。お兄様やスザクさんと、また同じ時間が過ごせるなんて……!
 見ていてくださいね、ユフィ姉様……お姉様の意思は、私がちゃんと、継いで見せますから!

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-ルルーシュの私室-(ルルーシュ)

ルルーシュ「お前……いいかげんに口調くらいは変えてくれ……」

C.C.「ああ、そうだな」

ルルーシュ「……魔女に期待したオレがバカだったよ」

 ナナリー、本当にすまない……。オレは……あの時……。

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-1ヵ月前・皇帝専用室-(ルルーシュ)

スザク「オレもそうだ、ルルーシュ。また一緒にやり直そう。オレ達が組んで、できないことなんて、ないだろ?」

 スザク……。

ルルーシュ「……ああ」

 スザク……ナナリー……オレが間違っていたよ……。オレはお前と……お前……スザク……?
 スザクは……殺さないと……。

スザク「ルルー……!」

ナナリー「!」

 オレは、持っていた銃で、スザクを打ち抜いた。

スザク「ルルーシュ……何で……」

ルルーシュ「……! スザク……。スザク!? 何で!?」

スザク「……そうか、君は……が……ま……」

ルルーシュ「スザアアアアアアアアアアアアク!!」

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ナナリー「何で……お兄様……?」

 違う……ナナリー……これは……。

ルルーシュ「違うんだナナリー、オレは、オレは……」

ナナリー「……お兄様は最低です、悪魔です! 私達を信じたフリをして……」

ルルーシュ「ナナリー……聞いてくれ……これは……」

 ……! ナナリーはあのとき、斑鳩に乗っていた……。
そしてキャンセラーを浴び、ギアスが解けたシュナイゼルの近くにいたはず……。となればナナリーもキャンセラーを……!

ルルーシュ「今見たことは忘れ、C.C.をスザクだと思い込め!!」

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-1時間後-

ジェレミア「お呼びでしょうか、ルルーシュ様」

ルルーシュ「遅いぞ……」

ジェレミア「……! 申し訳ございません……。シュナイゼル殿下の処理に時k」

ルルーシュ「オレに、ギアスキャンセラーをかけろ……」

ジェレミア「それは……」

ルルーシュ「いいからかけろ!」

 そして、せめてもの償いを……。

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-時間軸戻る・ルルーシュの私室-(C.C.)

 ルルーシュ、私は知っているぞ、お前がまた自分にギアスをかけたことを……。
 だが私がいる限り……シャルルのギアスの時もそうだったしな……。

C.C.「それでも……」

 こんな生活も、しばらくは悪くない……かな?

-同じ頃・ラウンズ発表会場-(ナナリー)

ナナリー「ナイトオブラウンズを発表したいと思います!」

 いつか、同じ舞台にお兄様とスザクさんも……!

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-1年後-(ルルーシュ)

ナナリー「ついにこの時が来ましたね!」

ルルーシュ「ああ、全て姉上のおかげだ」

ゼロ「コーネリア皇女殿下に感謝しないとね」

 C.C.……すっかりスザク役も板についたな……。

ナナリー「スザクさんは、結局その仮面を被ったまま出るおつもりですか?」

ゼロ「うん、オレはやっぱり、もう枢木スザクとして表に出ることはやめるから。
    名前を発表するときも、ゼロ、と言ってね」

ナナリー「ナイトオブワンなのに、ゼロ、なんて、何か変ですね」

ゼロ「ははっ、そうだね」

ナナリー「じゃあ、行きましょうか」

ルルーシュ「ああ、これから国を作っていこう。皆が住みやすい、皆が幸せでいられるような……」

 そしてギアスなどない世界……全ての元凶、ギアスが……。

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ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが我に命じる……ある言葉を聴いたら、ギアスに関する全てのことを忘れよ!
       その言葉は……」

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ナナリー「ナイトオブゼロ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!」



-完-


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