カイジ・夜神月・ルルーシュがライアーゲームに参加するようです。
一回戦
-23:30・一回戦会場-(月)
レロニラ「では、ライアーゲーム第一回戦、”限定ジャンケン”のルールを説明させていただきます」
くそ……なんで僕がこんな下らないゲームに参加しないといけないんだ……。
そもそも父さんが悪い……幼女にさえ手を出さなければ、警察を追われ、
借金を背負うことなんてなかったのに……!
ミサ「ジャンケンだって、簡単そうだね、ライト!」
月「……まったく、なんで付いてきたんだ、ミサ」
レロニラ「まず参加者は、グー・チョキ・パーのカードを四枚づつ、合計12枚のカードと、3つの星、
そして1億円を持っていただきます。この1億は、ゲーム終了時に返却していただきます」
1億……!
そうか、そんな大きな金が簡単に動くんだ……。このゲーム、勝者は大きな利益を得ることができる!
このゲーム……必ず僕が勝つ!
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レロニラ「参加者同士でそれらのカードを用い、ジャンケンを行っていただきます。
ジャンケンに使用したカードは、その場で失うことになります。
つまり、一度ジャンケンを行うごとに、カードが1枚ずつ減っていきます。
また、カードの残り枚数は、種類ごとに電光掲示板に表示されます」
カードが12枚……その中で行うから、”限定”ジャンケンというわけか。
ミサ「なんかよく分からないけど、デスノートを使えば楽勝だよね」
月「バカを言うな。こんなところでノートを使うわけにはいかない」
ミサ「何で?」
月「……ここにいるのは、ざっとみて100人程度だ。
こんな限られた中で不自然な死……そしてそこには、夜神月と弥海砂がいた……。
そうなったらどうなる?」
ミサ「そっか……さすがライトだねっ」
……やはり連れてくるべきじゃなかった……。
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※補足 レロニラ……ライアーゲームのディーラー。
※注 限定ジャンケンは”カイジ”で出てくるものですが、ルールを若干変えて、ライアーゲームとして進めていきます。
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-同じ頃-(ルルーシュ)
レロニラ「ジャンケンの勝利者は、敗者から星を1つ奪うことができます。
あいこの場合は、星のやりとりはなしで、互いにカードを失うのみです。
それを繰り返し、最終的にカードを全て使い切った時点で、
星が3つ以上あれば、このゲームの勝利者となります。
ただしカードを捨てる、燃やすなどの行為を行った場合、強制的に敗者となります」
……なるほど、つまり最初の状態で、勝利への50%以上の条件はクリアしていることになる。
満たしていないのは、カードの存在か……星はすでに3つあるからな。
C.C.「お前にとっては有利でしかないな、この状況は」
ルルーシュ「バカを言うな。こんなところでギアスを使うわけにはいかない」
C.C.「ほお、ギアスにおんぶにだっこな坊やが言えたことか?」
ルルーシュ「……ここにいるのは、おおむね100人といったところだろう。
オレを監視しているやつがいないとはいえない。そんな状況でギアスを使うことなどできない。
……それに、戦略はもうある」
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C.C.「ふん……まぁ私は、ピザでも食べながら見させてもらうさ」
ルルーシュ「あまり目立ったことはするなよ」
C.C.「分かっている」
レロニラ「なお、ゲームには制限時間として、四時間を設定させていただきます。
これが過ぎた時点で星が2つ以下の者は、敗者となります。
また、星が3つ以上あっても、カードを全て使い切っていなければ、
同様に敗者となります」
四時間……そんなにいらないな。こんなゲーム、10分もあれば事足りる。
活動資金を集めるために参加したが、どうやら楽勝のようだ……。
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-同じ頃-(カイジ)
レロニラ「勝者には、持っている星ひとつにつき、1000万円を与えます。
例えば、星3つの状態で勝者となった場合は、3000万円を得ることになります。
逆に星2つ以下……敗者は、1億円の負債を負っていただきます。
この1億は、どんな手段を使っても回収したします」
な……バカな……1億の負債だとっ……!
古畑「か、カイジさん、頑張りましょうね!」
カイジ「ああ……」
そうだ、勝てばいい……勝てば、最低でも3000万を得ることができる……!
古畑のせいで受けた借金……なんとしても返済し、利益を得てやる……。
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レロニラ「勝者は、他の会場でも開催されているライアーゲーム一回戦の勝者と合わせた、
二回戦に進む権利を得られます」
他のところでも開催……。
どうなってやがるんだ、このライアーゲーム事務局ってやつは!
とにかく、鍵はこのカード……そして星っ……!
レロニラ「なお、最初に配布される1億の使い道は、自由です」
自由……1億が自由だと……。
いや、最後に回収すると言っていた……それは自由なんかじゃない。
レロニラ「では、カードなどを配布後、会場に移動してもらいます」
もう、やるしかないんだ……!
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-0:00・一回戦開始-(月)
ミサ「ねえねえライト、何か考えはあるの?」
月「ああ、もう策はある。だが……すぐには実行できない……。
そうだな、だいたい30分くらいたったら行動に出る」
ミサ「30分……」
月「そうだミサ、お前のカードと星を2つ、僕に預けてくれないか?」
ミサ「え、いいけど……そんなことしていいの?」
月「あのレロニラとかいう仮面の男は、カードを捨てるな、とは言ったが、
それ以外のことは基本的に何も言っていないに等しい。つまり、してもいいということだ。
お前のカードは、僕が処理してやる」
これで僕の星は合計5つ……僕の策は実行しやすくなる……。
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ミサ「それで、どんなことやるのっ!?」
月「売るんだよ」
ミサ「……売る?」
月「そう、カードを売るんだ。1億は、こういうことに利用するためのものだ」
ゲーム開始後30分も経てば、何も考えずにジャンケンして、カードをすぐに使い切ってしまった者が、
何人かは出る。そういうやつらはたいてい、星を3つ以上保持できていない。
そしてそいつらは総じて、このゲームのルールをしっかりと理解していないんだ。
だから、自分が持っていたカード、最初の12枚を使ってしまったら終わりだと思っている。
そんなバカどもに僕が声をかける。
”僕は星を5個持っていて、もう勝ち抜けは決定だ。だからお前達にカードを売ってやる。
これで星を獲得しろ” と。
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ミサ「そんなこともしていいんだ……確かに仮面の人、ダメだとは言ってなかったね」
月「そうだ。このゲームはジャンケンで勝負するためのものじゃない。
このゲームのルール……いや、本質を、いかに早く理解するか、というものなんだ」
ミサ「あ、その星5個ってのはなんで?」
月「それは、僕が星3つの状態でそんなことをすれば、負けたと思っているバカどもに、
”あいつは勝負すらしていない”
と思われるだろう? だから、4つ以上持っていることで、
”あいつは勝負に勝ち、そして自分達に慈悲を与えようとしている”
そう思わせることができるんだ」
ミサ「そっか! さすが月!
……ところで月、このゲームなんだけど……リュークが相手のカードを見ればいいんじゃない?」
月「いや、リュークはそんなことしないだろ」
リューク「ああ、しないな。面白くないからな、そんなの。俺は何も手伝わない」
ミサ「なーんだ、ケチ。レムならしてくれただろうけどなー」
……。
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-0:05-(ルルーシュ)
C.C.「で、お前の戦略とやらを聞こうじゃないか」
ルルーシュ「ふ……まぁ見ていろ、話しているのを誰かに聞かれたらまずい。
ただし、これは仲間がいると思われると実行できない……。少し離れていろ」
さて、カモは誰にするか……。
古畑「か、カイジさん……俺、星があと一つに……」
カイジ「な、バカかお前は!? もうそんなに勝負しちまったのか!?」
古畑「ちょ、ちょっとブレイクルームに行ってきます……」
……。
無駄にリーダー風を吹かせる男……カイジ、か。
こういうやつこそ乗せやすい……!
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-0:07-(カイジ)
ルルーシュ「カイジ……といったか。少しいいか?」
カイジ「あ?」
なんだ、こいつ……外国人……か?
それよりなんで俺の名前を……さっきの古畑との会話を聞いていたのか……?
カイジ「何だよ」
ルルーシュ「このゲーム、100%勝利で終わらせる方法があるんだが、乗らないか?」
カイジ「!」
何言っているんだこいつは……そんな方法あるわけねぇ。
カイジ「バカ言ってんじゃねぇ。仮にあったとしても、これはライアーゲームなんだろ?
だったら、お前は嘘はつくかもしれねぇ」
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ルルーシュ「くくく、はっはっは……違うな、間違っているぞカイジ……」
カイジ「な、何だとっ……!」
ルルーシュ「確かにこれはライアーゲーム……嘘をつくゲームだ。
だが、必ず勝てる方法、それが実在するのに、それを使わない手はあるか?
しかし、それを実現するためには、オレ以外にもう一人必要……。
さっきから見ていれば、お前はリーダーとしての才気もありそうだし、優秀だ。
オレは、そんな男と組みたい」
カイジ「……」
ルルーシュ「ならば、先にその方法をお話ししよう」
二人必要……? 協力しろってことか……!
カイジ「……話だけなら聞いてやる。やるかやらないかは、その後だ」
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-0:10-(ルルーシュ)
カイジ「……分かった」
やはり乗ってきたなバカが!
オレが話した戦略は、互いに出すカードをあらかじめ決めておき、”あいこを繰り返す”ことだ。
あいこの場合は星のやりとりはなしでカードを消費することができる……。
星は最初から3つあり、クリア条件も3つ……つまり、カードさえなくなればそれでいいということになる。
そして、カードを出す順番は、グー・チョキ・パーとした。
ルルーシュ「行くぞ」
カイジ「……ああ」
ルルーシュ「……」
カイジ「……」
さて……互いに九枚出し、残るカードはグー・チョキ・パー、それぞれ一枚づつとなった。
そろそろ、仕掛けるか……。
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カイジ「次」
バカめ……。
カイジ「……! な、パーだと……。今はグーのはずっ……!」
カイジが出したのは、順番どおりのグー。オレが出したのは、パーだった。
ルルーシュ「ああ、すまない! 間違ってしまった……。
次にオレがグーを出すから、カイジはパーを出してくれ。
それでプラスマイナスゼロにしよう。行くぞ!」
次にカイジが出したのは、オレの言ったとおりのパー。
そしてオレは……チョキを出した。
カイジ「……! な、何だこれは……!」
ルルーシュ「……ふ……あーっはっはっは! オレの勝ちだ、さっさと星をよこせ!」
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-0:15-(ルルーシュ)
C.C.「どうやら上手くいったみたいだな」
ルルーシュ「まぁな。相手にならなかった」
オレの本当の戦略は、あいこで終わるとみせかけ、後半で間違ってカードを出したと言い、ジャンケンで勝つことだった。
最初にあいこを続けたのは、自分のカードを減らすという目的もあるが、相手を信用させる意味もある。
これがなければ、一度間違った時点で、相手はジャンケンをやめるだろう。
信用したからこそ、オレが”間違った、帳尻を合わせよう”と言ったことばを信じ、
もう一度ジャンケンを行った。これにより、二度の勝利を得ることになった。
C.C.を遠ざけたのは、相手に、”なぜ仲間とやらないのか”という疑惑を持たせないためだ。
この時点でオレの残りカードはグー1枚……。次の勝負は戦略などなく、運だけで勝負しても、
星の数は4以上……オレの勝利は確定した。
ルルーシュ「C.C.、お前のカードを貸せ。オレが使ってきてやる」
C.C.「私は勝手にやる、ピザもなくなったしな」
ルルーシュ「おい……」
C.C.「心配するな、星を失うような無様なことはしない」
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-0:20・ブレイクルーム-(カイジ)
俺はっ……なんであんなやつを信じちまったんだ……!
おかげで星はあと1つ……カードは残り1枚……!
古畑「か、カイジさん……」
気づけば、オレは古畑同様、ブレイクルーム……いや、負け濃厚の者達の、
吹き溜まりのような場所に来ていた。
カイジ「くそ……くそ……!」
あと一回、勝負に負けたらオレは1億の負債を負う……!
なんでこんなことになっちまったんだ!!
あの外国人の……あの外国人のせいでっ……!
……。……。
……いや、悪いのは俺だ。これはライアーゲーム……そんなことは分かっていたはずなのに……。
それに、古畑を差し置いて……。
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-0:30・ブレイクルーム-(月)
さて、そろそろ策を実行に移すか……。
ここにいるのは……本当にカスばかりだな。いつかは裁きの対象になるだろうが、
今は利用してやる。
何人かは星が1つでカードが残っている瀕死の状態だが、星が2つや1つで、
カードを失っている者もやはりいる……。予想通りだ。
月「ここにいる諸君、聞いて欲しい。僕は星を5つ確保して、もうカードはいらない。
だから、カードをお前達に売ろうと思う」
男A「……! 本当かその話!」
月「ああ、嘘をついてどうする。これはライアーゲームだが、ここに嘘はない」
男B「頼む、売ってくれ!」
男C「いくらだ!?」
やはり食いついてきた……自分で考えられないバカどもが。
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-0:31-(カイジ)
何だ、あいつは……! カードを売る、だと……バカげてる!
男D「お、おれにも……!」
何だよこいつら……カードなんて買うもんじゃねぇ! そこらへんのやつから貰えばいいんだ!
古畑「か、カイジさん……俺達は二人合わせてもカードは5枚……。
あの人から買いましょうよ……あんないい人、他にはいませんって……!」
カイジ「ば、バカ言ってんじゃねぇ! いい人なわけねぇだろ!!
カードはこっちから声をかければいくらだってもらえるはずだ。
星が3つ以上のやつなら、カードは邪魔でしょうがないはず!
それを売ろうだなんて、ありえねぇ!!」
月「……!」
男A「!」
ざわ……ざわ……。
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-0:31-(月)
何だこいつは……隣の男がカイジと呼んでいたか……?
くそ……こんなゴミの溜まり場にも、少しは自分の頭を使う奴がいたってことか……。
月「言ってくれるね、カイジさん。でも、本当にそうなのか?
例えば、星が3つ以上あったとしても、そいつはさらに金を稼ぐために、
カードを手放そうとしないかもしれない。そして、それが僕以外全員だとしたら……」
カイジ「ああ、そうかもしれねぇ。でも、そうじゃないかもしれねぇ!
他の奴らの考えがお前に分かるのか? 分からねぇだろ!?
だったら、可能性はいくらだってあるはずだ!」
月「……僕には、カイジさんが僕の策を邪魔しようとしているとしか思えないな」
本当に邪魔な男だ……。こいつさえいなければ、今頃僕はカードを全て売っていたのに……!
カイジ「そんなことは知らねぇ。だが、俺は絶対にお前からカードは買わない!」
カイジ……この報いは必ず受けてもらう……お前は、必ず倒す!
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-同じ頃・ブレイクルームの外-(C.C.)
C.C.「おい、お前」
男C「な、何だよ」
C.C.「中が騒がしいが、何かあったのか?」
男C「ああ、カードを売るという奴が現れたが、別の奴と口論になってるんだ」
カードを売る……? 欲をかいたバカがいたということか……。
C.C.「そういうお前は、カードがないのか?」
男C「ああ……星は2個……もう終わりだ……」
C.C.「終わりではない。私のカードをやる」
男C「ほ、本当か!?」
C.C.「ああ」
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-0:35・会場-(ルルーシュ)
ルルーシュ「C.C.! どこへ行ってたんだ!」
C.C.「どこだっていいだろう。それより、カードを使い切ったぞ」
ルルーシュ「何……?」
確かにカードはないようだ……しかし星は3個のまま……。……まさか……。
ルルーシュ「お前、まさかカードを捨てたんじゃ!?」
C.C.「そんなことはしていない。そこらへんのやつにカードをやっただけだ」
やった……だけ……。
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C.C.「それよりお前はどうなった?」
ルルーシュ「見てのとおり……最後の1枚も勝ちで終わったよ……」
オレの星は6個になった……運もオレを味方したようだ。
C.C.「そうか……なら、さっさとこんなところ出るぞ。ここの空気は嫌いだ」
ルルーシュ「二回戦はどうするんだ?」
C.C.「さあな……お前次第だ」
0:36 ルルーシュ、C.C. ライアーゲーム一回戦突破。
獲得賞金
ルルーシュ 星6個により6000万。
C.C. 星3個により3000万。
合計9000万円。
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-0:40-(月)
ミサ「らーいとっ、どうだった??」
月「うるさい! 計画変更だ」
ミサ「え……」
カイジ……お前は僕がどん底まで突き落としてやる……。
実際、あの場でカイジの話を聞いていない者を相手にカードを売ることはできる……が、
もうその策はやめた。
僕の邪魔をしたあのカイジに、苦渋をなめさせないと気がすまない。
そしていつか、クズどもを裁く時がきたら、真っ先にお前を殺してやる……。
月「……ミサ、カイジという男の動きを見ていてくれないか?
長髪の、若い男だ。珍しい名前だから、死神の目で見ればすぐに分かるだろう。
恐らく、他の男と二人でいるはずだ」
ミサ「いいけど……そのカイジって人が何をしているか月に伝えればいいの?」
月「ああ、そうだ。僕はあいつに覚えられてしまっただろうから、お前しかいないんだ」
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-0:45-(カイジ)
星2つでカードゼロの男……ようやく見つけたぜ……。
カイジ「頼むぜ、安藤。ここからは、俺達三人は運命共同体だ!」
安藤「はい、カイジさん」
俺と古畑……二人では、星が2つだけ……これでは、行動がしづいらい。
だが、安藤が加わることにより、星は4つ……これなら、いくつか方法はある!
とはいえ……やはり星が少ない……なんとか星を増やさねぇとな……。
安藤「カードはチョキ5枚……バランスが悪いですね……」
バランス……? バランスっ……!
カイジ「そうだ、安藤それだ!」
古畑・安藤「え?」
カイジ「お前ら、カードが残り7枚で、その前二戦で、グーとチョキを使ったやつを探せ!」
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カード残り7枚で、その前にグーとチョキを使ったやつ……つまり、残り9枚のとき、
そこからグーとチョキを使ったやつ……。オレの読みが正しければ、そういう人間はバランス型だ!
バランス型は、三種類のカードを、それぞれ同じ枚数になるように、調節して使う。
ということは、残り9枚の時点では、各種3枚ずつ持っていることになる。
そこからグーとチョキを使うと……パーのみが3枚……他の二種類より多くなる!
そいつが次に出すのはパーだ!
カイジ「なんとしても探すぞ!」
古畑・安藤「はい!」
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-0:50-(月)
ミサ「月、カイジって人見つけたよ。でも……二人じゃなくて、三人一緒にいるみたい」
三人……?
星1つずつのクズ同士では不安だから、もう一人増やして、得体の知れない安心を掴もうとした……
そんなところか? バカらしい。
月「そいつはどいつだ?」
ミサ「えっと、メガネで太った安藤っていう人なんだけど……あ、あれあれ!」
古畑「見つかりませんね……」
安藤「こっちもです……」
カイジ「あきらめんな! 必ずいるはずだ!」
確かに三人になっている……もともと三人だったかもしれないが……そんなことはどうでもいい。
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安藤「あの、カイジさん……カードはカイジさんが全部持ってますよね……?
それを1枚俺にも持たせてもらえませんか?」
カイジ「あ?」
……。何だ、もめているのか……?
あの様子なら、もう少し近づいても大丈夫そうだな。
カイジ「……ダメだ」
安藤「な、なんでですかカイジさぁん!」
カイジ「お前の星は2つだ。もし1枚カードを得たら、俺が言ったやつを探すふりして、お前は勝負するだろ?
一回でも勝てば、お前は一回戦を突破できるんだからな」
安藤「そんなことしないですよぉ!」
やはりクズ同士の集まり……仲間意識なんてあったもんじゃないな。
だがカイジ……やはりお前は少しはキレるようだな……こちらもそれなりの意識でいかせてもらう。
それより、あの安藤という男……使えるかもしれない……。
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-1:05-(カイジ)
古畑「やりましたねカイジさん!」
カイジ「ああ!」
俺の読みは当たった……なんとか見つけたバランス型の男はパーを出し、
俺はチョキ……星を獲得した。
カイジ「だが、まだ合わせて5個……ぜんぜん足りねぇ」
そうだ、まだ足りねぇ……あと4つ……星をあと4つっ……!
古畑「あ……さすがに一時間も経過すると、カードも大分減ってきましたね」
カイジ「カードが減った?」
安藤「あれですよ、カイジさん。電光掲示板にカードの枚数が表示されてるんです」
カイジ「そういえば仮面がそんなこと言ってたな」
残りのカードは……どれも250枚ってとこか……。
……!
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カイジ「……お前ら、勝負してるとき、あの掲示板見てたか?」
安藤「少しは気にしてましたけど……あんまり差はないから、気にしてなかったっす」
古畑「俺は存在すら知らなかったです……」
電光掲示板……残りのカードの枚数……それを気にしての勝負……!
何か……何かあるっ……!
カイジ「……例えばだ、パーが残り100枚、チョキとグーが30枚だったら、お前らは何で勝負する?」
古畑「……やっぱり、チョキじゃないっすか? パーが出てくる確率が一番高いわけだし……」
安藤「俺も同じです……」
カイジ「それだ……! それだそれだ! いける……勝てるぞ、俺達!
星4つなんてケチなこといわねぇ、10個……20個だっ……!」
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-1:30-(月)
あれからミサの報告はない……僕は少し前から安藤を監視しているが、ブレイクルームに入ったままだ。
もしかしたらカイジもそこにいるのか?
リューク「いいのかライト、あのカイジってやつ気にしてたら、時間なくなっちまうぜ?」
月「まだ二時間以上ある、それは問題ない。それよりも……僕はあのカイジを許してはおけないんだ」
リューク「プライドってことか……まあ、俺は面白ければなんでもいいけど」
月「……!」
今ブレイクルームに入ったのは、カイジと一緒にいた男……ミサによれば古畑といったか?
ミサ「ライト!」
月「ミサ、動きがあったのか?」
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ミサ「うん、なんていうか、仲間を増やしてるっぽいよ!」
月「仲間を増やしている……?」
ミサ「そうだよ、三人とも他の人に話しかけてた。あ、お金渡してたような……。
あ、後! カードを貰ってたよ!」
月「……」
金で買収しているのか……? いや、ならばカードをカイジ達が貰っている、というのはおかしい。
となると、仲間というのはミサの間違いで……カイジ達はカードを集めている……?
月「ミサ、そのカイジ達が話していた相手の行動は見ていたか?」
ミサ「ううん、見てないけど……」
月「なら今から見てきてくれないか? 僕はここでカイジ達の動きがないか見ている」
ミサ「分かった!」
僕の考えが正しければ、カイジ達が話しかけた相手は、さらに他の奴らから、金でカードを集めているはず……。
そしてカイジ達は、それ以上の金でその集めたカードを買う……つまり、カード買い占めを行っている……!
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-1:45・ブレイクルーム-(カイジ)
カイジ「よし、これだけ集まれば十分だろ」
古畑「これで俺達、勝てるんスね!」
カイジ「ああ! 後は待つだけだ」
俺達がやったのは、カード買い占め……これを始めた時点で一番枚数が多かった、パーのカードの買い占めだ。
同時に、ある程度他の種類のカードを得ることもできた。
……今はまだ買い占めから時間がたっていないから、大して効果はない。
だが!
今から30分もすれば、パーのカードの残り枚数だけが目立って多い、という状況になるはず。
そうなれば、さっき古畑や安藤が言ったように、チョキのカードが使われることが多くなる。
勿論グーやパーも使われるだろうが、チョキの減りが最も早い。
そうなると、今度はパーが一番多く、グーが次に多い、という状況になる。この時点で、チョキの枚数はかなり減っているはずだ。
ここで勝負を行えば、チョキの出る確率はかなり低く、パーが一番高い。
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しかし実際には、そのパーは俺達がほとんど買い占めている。
だから、結局グーの出る確率が一番高くなる……そして俺達だけがそれを知っている状況!
つまり、俺達だけが、パーを出すと、勝てる確率が最も高い、ということを知っているということになる。
そしてそのパーを持っているのも俺達だけ……勝てる確率が高いのは、俺達だけだ。
勿論パーの確率が高いと思ったやつがチョキを出してくるかもしれないが、
その時点でのチョキの枚数はたかが知れている……問題じゃない。
カイジ「勝った……俺達は勝ったんだっ……!」
古畑「俺、カイジさんについていってよかったッス……!」
安藤「俺もっ……!」
カイジ「よし、後は俺達が組んでるってことがバレねぇように、会場で散らばっていよう。
そうだな……あと一時間、一時間たったら、俺達の独壇場だ!」
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-1:50・会場-(月)
あの後のミサからの報告により、カイジ達が声をかけた者は、やはりカードを集めていて、
それをカイジ達に渡していたということが分かった。
自分達が動かなかったのは、カード買い占めを自分達が行っていると分からないようにするため……。
こればバレれば、誰からも勝負してもらえなくなる……こんなところか。
どのカードを集めているのかは分からないが……それは、もっと時間が経てば、電光掲示板で分かるだろう。
月「……!」
掲示板……すでに大分分かるところまできているじゃないか……。
パーは150枚、チョキは117枚、グーは86枚……パーの確率が高い……。
月「ん……?」
……!
これは……。……安藤と言ったか、あの男を利用するときが来たようだな。
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-2:10-(月)
月「ちょっといいか?」
安藤「え……? な、なんだよ」
月「僕は夜神月。……単刀直入に言おう、僕に協力してくれないか?」
安藤「な、なんで俺が……」
月「安藤さん、あなたがカイジさん達と協力して、カードの買い占めを行っているのは分かっている。
そして、勿論ただで協力してくれ、と言っているわけじゃない」
安藤「……!」
月「星……そう、星をやる」
安藤「星……?」
-----
月「そう、僕に協力してくれたら星をやる。見たところ、安藤さんは星2つ……あと1つで勝利だ。
悪い話じゃないはず」
安藤「それは……内容次第……」
やはり乗ってきそうだな、この男……目先の利益に簡単にとらわれるクズの中のクズだ……。
月「安藤さんにやってほしいのは二つ。一つは僕の質問に答えること。もう一つは、
あることをカイジさんに伝えること。しかも、どっちも簡単なことだ」
安藤「……それをやったら、星をくれる……んですか?」
月「ああ。だが、先払いではお前は裏切るかもしれないし、後払いでは僕が裏切るかもしれない。
だから、まずお前にはこの1000万を渡しておく。
そして僕の言ったことを実行したら、その1000万と引き換えに、星を渡す」
安藤「俺は、何をやれば……」
-----
月「まず一つ、お前達が買い占めたカードは何だ? 恐らくパーだとは思うが、確認だ」
安藤「はい、そのとおりです」
月「やはりそうか……。もう一つは……僕がチョキのカードを買い占めていることを、
カイジさんにリークして欲しい、ということだ」
安藤「月さんも買い占め……! しかもチョキってことは、俺達は……」
月「ああ、僕から見たらいいカモってことだな」
安藤「でも、そんなこと言っちゃっていいんですか?」
月「僕はやれと言った。
それと……それを唐突に言うのは明らかにおかしい。
恐らくカイジさんは、僕……いや、誰かがチョキの買い占めを行っていることに気づくだろう。
そのときお前が、”夜神月が買い占めをしているという噂を聞いた”と言えばいい」
安藤「分かりました、それをやれば、星をくれるんですね!?」
月「ああ、ただしそのときは、僕から声をかける。これ以上一緒にいたら、カイジさんに気づかれる」
-----
月「いいか、よく考えろ。お前はすでに無償で1000万得ている。仮に僕を裏切っても、それはお前のものだ。
だが、僕の言ったとおりにすれば、1000万円で売れる星が手に入る。
しかし、星は1000万円では買えない、重要なものだ。僕の言っていることが、分かるな?」
安藤「星は1000万よりも価値がある……俺は月さんの言うとおりにします!」
月「そう、お前は簡単なことをするだけで、勝者になれるんだ。そのことを忘れるな」
安藤「はい!」
これで安藤は僕の手に落ちた……カイジ、お前は終わるんだ……!
ミサ「ライト、いつの間にカードの買い占めなんてやってたの?」
月「やれることをやっただけさ」
ミサ「さすがライト〜!」
感謝しないとな、この策ができることを……。
-----
-2:40-(カイジ)
カイジ「……」
おかしい……今の時点で、カードの残り枚数はパーが95枚、チョキが79枚、グーが32枚……。
思ったよりもチョキの枚数が多い……いや、多すぎる! それにこのグーの枚数は何だっ……!
古畑「あの……カイジさん……」
カイジ「何だ!?」
古畑「いえ、あの、大したことじゃないんスけど……カードの……グーの枚数、
さっきから2枚ずつ減ってません?」
カイジ「!?」
グーの枚数が30枚になっ……いや、28枚に……!
確かに2枚ずつ減っている……!
何だ、これは……何だっ!
-----
カイジ「ああああ!」
ざわ……ざわ……。
古畑「どうしたんスかカイジさん!?」
カイジ「ああ……や、やられた……俺達だけじゃなかったんだ……」
安藤「カイジさん!?」
カイジ「買い占めだ……誰かがチョキを買い占めたんだ……!」
古畑「ええ!? そんな、それじゃあ……」
カイジ「破綻した……俺達の計画は全て破綻だ……」
なんで、なんで気づかなかった……さっきから違和感はあった……それが、こんなことに……!
-----
あいこ勝負……買い占められたパーとチョキ以外が出やすいこの状況……。
グーどうしのあいこ勝負で2枚ずつ減っていく……!
安藤「カイジさん……買い占めのことなんですけど……」
カイジ「……」
安藤「夜神月ってやつが、買い占めをやってる、みたいな噂を聞いたんですけど……」
カイジ「……! な、何!? それを知ってたのに、なんで先に言わない!?」
安藤「す、すいません……だって、ただの噂だと思ったから……」
カイジ「……で、その夜神月ってのはどいつだ!?」
安藤「あ、あれです……金髪の女と一緒にいる……」
あ、あいつは……カードを売ろうとしてたやつじゃねえか!
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カイジ「でかしたぞ安藤! 終わってない……俺達終わってないんだ……!」
古畑「……どういうことですか?」
カイジ「どうもこうもねぇ! カードを買い占めた奴が分かれば、そいつと勝負しなきゃいいだけのこと。
そして、他の奴なら俺達が買い占めたパーで勝てる、グーを持ってる可能性が高い!」
古畑「あ、ホントだ……!」
俺達の行く道はまだ途切れちゃいねぇんだ……!
月「……やぁ、カイジさん」
カイジ「……!」
夜神……月……いつの間にっ……!
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カイジ「何だ。こっちは忙しい」
今一番関わりたくないやつが……さっさと切り抜けねぇと……!
月「……カイジさん、お前達は、カードの買い占めを行っているんだろ……?」
カイジ「……! く……な、何のことだ」
月「とぼけなくていい。こっちも同じだからね」
カイジ「……」
月「そんなに警戒しないでくれ。僕はただ、勝負をしにきただけなんだ。
僕の策……カードを売るのを邪魔した君は、最後の相手に相応しい」
勝負……そんなの乗るわけにいくか……。
……? いや待て、何だ、この違和感……さっき感じていた負の違和感とは違う……何か……。
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古畑「行きましょう、カイジさん……!」
カイジ「勝負……どういうことだ」
古畑「カイジさん!」
ちょっと待ってろ古畑……この違和感……あと少しでぬぐえそうなんだ……!
月「さっきも言ったとおり、僕は買い占め……チョキのカードを買い占めた。
もともとはパーを買い占めるつもりだったんだけど……上手くいかなくてね。
それで買い占めたカードを使った。後は、一回勝負すればいいだけなんだ。
星もかなり稼いだ……今僕は一部しか持っていないが」
買い占めによる利益……俺達が得るはずだった利益っ……!
……取り返せるかもしれねぇ……そして俺達三人は勝利者となる……!
カイジ「いいだろう……ただし、条件がある」
古畑「ちょ……カイジさん!!」
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月「……条件? 聞くだけ聞こうか」
カイジ「この勝負でかける星の数は5……星5個賭けの勝負をしろ!」
月「……!」
古畑「な……!」
安藤「ば、バカなこと言わないでくださいよカイジさん!
俺達の星は三人合わせてやっと5個……もし負けたら……!」
カイジ「……どうするんだ、夜神っ!」
月「……そこの男が言っているとおり、お前達の星は5個……それを全て賭け、負けたら敗者……。
たった一回の勝負にそれを任せるのは、無謀じゃないか?
それに、カイジさんは良くても、他の二人はどうなんだい?」
運否天賦ならばそうかもしれねぇ……だが違う……!
これは勝てる勝負……勝たないといけない勝負っ……!
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-2:45・月から離れた所-(カイジ)
安藤「カイジさん、バカな真似やめてくださいよぉ」
古畑「そうですよ、自分の作戦が取られて腹が立つのは分かりますけど、
今はそんなときじゃないでしょう!」
カイジ「……ここしかねぇんだ……ここしか……!
確かに夜神以外のやつに勝負を挑めば勝てるかもしれねぇ……だが、
掲示板見てみろ、グーの数はもう僅か……俺達が付け入れる隙があるか分からねぇ……。
それに、なんでお前達は負ける方ばかりに考えるんだ!
もし勝てば、俺達の星は10個……勝者じゃないか!!」
安藤「でもあいつだって星は5個しかない……負けたら終わりなんですよ……そもそも乗るはずが……」
カイジ「あ? お前言ってたじゃねぇか、夜神が金髪の女といるって。
それに夜神は言っていた、今ここにはない星がある、ってな。
それはつまり、その金髪が星を大量に持ってるってことじゃねぇか。
だから、あいつはこの勝負に負けても、ライアーゲームの敗者になるわけじゃねぇ」
古畑「でも……」
カイジ「ここだけ……ここだけでいいんだ! ここさえ乗り切れば俺達は勝ち組……! 頼む!!」
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-2:50-(カイジ)
カイジ「おい夜神……考えをまとめてきたぜ」
月「……」
カイジ「お前はここで負けても問題ないんだろ? ここで逃げるような腰抜けじゃねぇだろ!?
だったら勝負しろ……夜神月!」
来い……夜神……!
月「……まぁいいだろう、僕は勝って、ライアーゲームの勝利者となる!」
来た……来たな夜神っ……! お前はここでは勝てない……お前は墓穴を掘ったんだ……!
カイジ「行くぞ!」
月「ああ」
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だが、本当に大丈夫なのか……この理で……。想像だけで塗り固めた理……確証なんてねぇ。
いや……やる……勝負するっ……!
ここで逃げて何になる……ここで勝って、俺達は勝者だ!
カイジ「……!」
こいつ……迷わずカードを出した……俺の考えどおりだ……!
月「早く出したらどうだ、カイジさん」
カイジ「分かってる!」
行け……!
月「……震えているな……カイジさん。負けるのが恐いのか?」
カイジ「……違うな……俺は嬉しいんだ……この勝負に勝てることが」
月「……」
カイジ「夜神……お前は自分の出すカードを、勝負の前に言っちまったようなもんだったんだよ、
お前は気づいてねぇだろうがな!」
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夜神が俺に話しかけたとき、あいつは俺を”最後の相手”だといった。
あいつには協力者の金髪がいる……ということは、カードが大量にあっても、それらが種類ごとに偶数枚ならば、
あいこ勝負で全てのカードを消化できることになる。
つまり、何か一種類のカードが奇数枚になってしまったから……夜神はあと一回勝負しないといけなくなった。
ここで問題なのは、そのカードが何か、ってことだ。
そこで、またあいつのセリフを思い返す……夜神はパーの買い占めに失敗し、チョキに切り替えたといった。
つまり、チョキを勝負に使うために集めていたことになる。
よって、勝負に使わないパーは偶数にして集めるのを止め、グーもあらかじめ偶数にしていたはずだ。
だから、奇数枚になっているのは、勝負に使うために枚数を偶数に合わせられなかったチョキ……!
俺はグーを出せば勝てる……ライアーゲームの勝者になれるっ……!
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カイジ「お前のカードはチョキ……! 俺の勝ちだ!」
月「……」
カイジ「さっさとカードをオープンしろ、夜神っ!」
月「……」
カイジ「夜神!!」
月「……。……バカめ」
カイジ「……!?」
夜神のカードはチョキ……じゃ、ないっ……! パーだと……!
俺の負け……負けっ……!?
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カイジ「そんな……バカなっ……!」
月「残念だったな、カイジさん。さぁ、星を貰おうか」
カイジ「くそ……!」
古畑・安藤「……」
黒服「さぁ、お前達は敗北だ。さっさと退場しろ」
月「待て。カイジさん、安藤さん、古畑さん……あなた達に、僕が手を差し伸べてやる」
カイジ「……!」
何……!?
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月「確かにあなた達の星はなくなった……が、僕がこの場で星を三人に1つずつ売ってやる、
と言ったらどうだ?」
黒服「もし星を買うなら退場しなくてもいい」
月「だ、そうだ」
古畑「い……いくらなんですか……!?」
月「そうだな……一人5000万円で星を売ってやる」
カイジ「な、バカな! 星は1000万の賞金にかわる……それを5000万だと……!?」
月「バカはお前だ、カイジ。それは星を持っている人間にしか関係ないこと。
星を買うには、1000万以上いるのは必然だ。
だが……サービスもしてやろう。僕の持っているカードも全て譲ってやる」
夜神のカード……大半のチョキのカード……!
それと星……命が繋がっていれば、まだあがれるかもしれない……!
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カイジ「ぐ……分かった。買ってやる……」
古畑・安藤「……」
月「そうか、じゃあさっさと金を出せ」
カイジ「……」
月「……確かに。じゃあ、ここに星三つと、僕のカードを置いておく。せいぜい頑張れ」
星三つにカード……。……!?
カイジ「おい待て! カードは23枚しかないじゃないか! 他はどうした!?」
月「僕の仲間の12枚と、僕が持っていた12枚……いや、今勝負で使ったから、
11枚。合わせて23枚……全てだ」
カイジ「お前はチョキを買い占めたはず……こんなに少ないはずあるか!」
それに、これじゃあ勝負する前から、すでに全ての種類が偶数枚……!
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月「これはライアーゲーム……全て嘘だ。バカだな、お前は」
カイジ「な……だって安藤が……」
月「そいつは僕が金で従わせた男……そいつの情報も嘘だ」
古畑「あ、安藤っ!」
安藤「ら、月さん! そ、そうだ、俺に約束の星を……」
月「そんな話、まだ信じてたのか?
お前は自分で言っていた……星は1000万円よりも価値があると。
そんな星を、1000万と交換するなんて、ありえないだろう?」
安藤「な……そ、それも嘘……!?」
ざわ……ざわ……。
月「まぁ、5000万なら譲ってやってもいいがな」
カイジ「く、くそおおおおおおおおおおおおおおお!!」
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-3:10-(月)
ミサ「ライト! 上手くいったみたいだねっ!」
月「ああ、勝負に勝って星5つ、そのうち4つを売って2億の儲けだ」
結局安藤は、僕の条件を飲み、合計2つの星を、1億で買った。
僕の策は、僕がカードの買い占めを行ったと、カイジに思い込ませることだ。
この策を実行する前に掲示板を見たとき、パーのカードが一番多かったが、
同時にチョキのカードの枚数も、グーと比べて多かった。
そして、そのグーのカード。あのとき、グーのカードは時折、2枚同時に無くなっていた。
これはあいこのためであるが、他の二種類よりも明らかに目立って、それが起こっていた。
その時点で僕は気づいた。カイジ達の他にも、カードの買い占めを行っている者がいると。
それが誰かなんて分からないが、僕はそれを利用させてもらうことにした。
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そして安藤……こいつを呼び出し、僕が買い占めを行っているという偽の情報を流させた。
勿論、安藤本人は僕が本当に買い占めを行っていると思っただろう。それが嘘だなんて言う必要はない。
それにより、カイジは自分達の集めているパーをつぶせる、チョキを集めた僕に注目したはずだ。
そして僕はカイジに話しかける……カイジは警戒するだろうが、そのせいで、僕のことばに敏感になる。
そこで僕は、餌をまく。”最後の勝負”、”パーの買い占めの失敗”、”チョキの買占め”。
カードの買い占めをする人間にとって、星を集めた後の、カードの処理は困るものだ。
だから、仲間とのあいこ勝負のために、手持ちの各種類のカードを偶数枚にすることに留意するはずだ。
逆に言えば、カードが奇数枚になっていることなどありえない、そう考えるだろう。
勿論あいこにしなくてもカードは減らせるが、それでは星のやりとりが生じてしまう。
これはライアーゲーム……それで協力関係は簡単に崩れてしまう。
ゆえにカイジは、僕が余ったカード……チョキを使うと思い込み、グーを出す……。
これが、僕の狙いだった。
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月「しかし、あいつもバカだな……星5個賭けなんて……」
ミサ「でも大儲けだよね!」
ここだけは予想外だったよカイジ……僕は次の策を進めるために、一度の勝負は必要だった……。
だが、ここでもこんなに大量の金の元を得られるとは……。
次の策とは、僕の手持ちのカードを売ることだ。
カイジ達は僕がチョキのカードを買い占めていると思い込んでいるから、
僕の持っているカードは是が非でも欲しいはず……。
僕の最初の、カードを売るという策を邪魔したあいつに、買い占めなんてしてない、
ただのカードの束をカイジに売りつける……これが僕の、本当の策だった。
ざまあみろカイジ……これが僕を邪魔する者の末路……そして待つのは死、のみだ。
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月「じゃあミサ、借りていた星2つ、返すよ」
ミサ「うん!」
これでライアーゲーム二回戦進出か……。父さんの借金はとうに返せる金額を得たが、
この調子なら次も楽勝……参加してもいいかもな。
3:15 月、ミサ ライアーゲーム一回戦突破。
獲得賞金
月 星4個により4000万。
カイジ、古畑から5000万ずつ、安藤から1億、ただし1000万を渡しているので結果9000万。計1億9000万を得る。
ミサ 星3個により3000万。
合計2億6000万円。
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-4:00-
カイジ、古畑、安藤。
あれから善戦するも、星は5つしか獲得できず。
カイジは安藤の裏切り、また、安藤にそそのかされた古畑によって、
自分だけ星が2個となってしまう。
獲得賞金
安藤 星3個により3000万。
最初に借りた1億に足りない分、9000万。(月に協力したとき1000万貰っている)
差額、マイナス6000万円。
古畑 星三個により3000万。
最初に借りた1億に足りない分、5000万。
差額、マイナス2000万円。
カイジ ライアーゲーム敗者の負債、1億。
最初に借りた1億に足りない分、5200万。(200万はカード買い占めに使用)
合計、マイナス1億5200万円。
ライアーゲーム一回戦・限定ジャンケン -終-