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    けいおん部でライアーゲームをするようです!

     第2ラウンド


唯 さわちゃんのギターが50万円で売れました!
  さわちゃんは、その50万円を、ライアーゲームで勝った人にあげるといいました。

  参加者は、りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、憂と、そして私です!

  そして、その第2戦が始まります。

唯「じゃあ第2ラウンドいっくよ〜」

澪「でも先生、そんなにいくつもゲームを考えてないでs」
さわ子「次のゲームは、天秤ゲームよ!」

澪「……」

梓「さすが先生ですね……」

律「どんなゲームなんだよ、さわちゃん!」

紬「楽しみね〜」

さわ子「じゃあ今回もリハーサルをしながら説明するわね。使うのはトランプの1〜3と、書くものね。
     そして……今回は3vs3のチーム戦よ!」

唯「チーム戦……!」

さわ子「まずはチーム分けをするわ。リハーサルも本番も今から決めるチームでやるからね。鈴木さんよろしく」

純「はい。皆さん、このクジをひいてください」

律「あいかわらずの従順ぶりですこと」

さわ子「お前も調教してやろうか?」

律「このくだりもういいわい!」

澪「今自分からその流れを誘いにいっただろ……」

さわ子「で、決まったかしら?」

純「はい。チームはこのようになります」

Aチーム:律、紬、憂
Bチーム:唯、澪、梓

唯「あずにゃん、頑張ろうね!」

梓「抱きつかないでください! 頑張りますけども……」

澪(こ、今回はさっきのゲームみたいなことにならなくてよかった……。
   ちゃんと動かないと絶対後悔する……!)

律「よーし、2人とも私についてこーい!」

紬「よっしゃー!」

憂「頑張りましょう」

憂(……お姉ちゃんと違うチームになるなんて……怒るよ純ちゃん……)黒

純(……なんだか悪寒が……)

さわ子「まず、1人につき、1を1枚、2を4枚、3を3枚渡すわね。
     それと、紙と鉛筆を渡すわ。
     あと、今はいいけど、本番では皆の携帯電話を回収するわ。
     これは密談をさせないためよ」

律「しかしなんかカードの枚数が中途半端だな。なんで2だけそんなに多いんだよ。
   っていうかトランプ何セット使うんだよ……」

さわ子「数字の配分の意味は、ルールを聞いたら分かると思うわ。
     このゲームは、1人ずつカードを出し合って、チームごとの合計値で勝負するの。
     このゲームは天秤ゲーム……合計値は天秤に乗せる重さってことになるわね。
     より重い値を出した方……天秤が傾いた方が勝ちになるわ」

唯「この紙は何に使うの?」

さわ子「このゲーム、先攻後攻に分かれて行うの。で、先攻チームは、自分達の出した数字を
     名前と一緒に書いて、後攻チームに見せなくてはならないわ」

澪「見せるんですか……いや、これは……」

紬「嘘をついていいのね!」

さわ子「そうよ。書いた3つの数字のうち、1つだけ嘘を書いてもいいわ。
     じゃあ、実際にやってみましょう。Aチームを先攻にするから、出すカードを相談して決めて。
     決まったら、鈴木さんにカードと紙を渡してね」

律「リハーサルだし、適当でいいよな! じゃあ私はこれ、ムギと憂ちゃんはこのカードだ。
   はい、佐々……鈴木さん!」

紬「私はこれね」

憂「純ちゃん、カードよろしくね。あと、紙は私が書きました」

純「Aチームが記入した用紙はこのようになります」

律さん:3 紬さん:3 憂:2

澪「わざわざ”さん”付けにするとは憂ちゃんらしい……」

純「Bチームの方は提出カードを決めてください」

梓「っていうか純、やっぱり訓練されすぎ……リハーサルからそんなに形になってるなんて……」

さわ子「」

律「梓、その発言はあの流れを誘うぞ」

唯「えーと、皆3を出せばいいよね! 重さがあっちは8、こっちは9になるもん!」

澪「……お約束をありがとう唯」

梓「その数字の中に、1つ嘘があるかもしれないんですよ。憂は2って書いてありますけど、
   本当は3を出したかもしれません。逆に律先輩は3と書いてありますが、
   1かもしれないです」

唯「でも重ければ勝ちなんだよね? じゃあ9にしとけばいいじゃん」

さわ子「唯ちゃん、今はリハーサルだからいいけど、本番でその考え方をすると危ないわよ」

梓「……じゃあカードを出しましょう」

唯「はい純ちゃん、私は3です!」

澪「本番では絶対に言うなよ、それ……」

純「Bチームのカードが提出されました。Bチームのカードは、
   唯先輩3、澪先輩2、梓3で、重さは8となります。
   Aチームのカードは、律先輩3、紬先輩3、憂3で、重さは9となります。
   このゲームはAチームの勝利となります」

唯「憂が嘘をついてたのか〜」

憂「ごめんねお姉ちゃん」

さわ子「それで、このゲームの勝敗の判定は、ポイントによって行うわ。そのポイントは重さの差で付ける。
     例えば今なら、重さの差は、9−8=1だから、Aチームに1ポイントが入るの。
     それで最終的に……そうね、6人だし、先に6ポイントになったチームの勝ちにするわ」

澪「……中途半端なカードの数は、大きい3を使うタイミングと、どうやって不要な1を使うか……
   それを調節するための2……このための設定ですね」

さわ子「そのとおりよ。そのカードが全部なくなったらまた配りなおすわ。つまり、7ターン1巡ってことね。
     奇数ターンになってるのは、最後のターンは残ったカードを出すことになるから、紙を書く意味がなくなってしまうからよ。
     先行後攻の数を平等にしないとね。じゃあ、ルールをまとめるわ」

『天秤ゲーム』
・3対3のチーム戦
・各チームの提出カードの合計値(重さ)が高い方が勝ち。重さの差分のポイントが入る
・先に6ポイントになったチームの勝利

・カードは1人につき、3が2枚、2が4枚、1が1枚配られ、
 7枚すべて使い切ると配りなおされる

・先攻後攻に分かれ、先攻は、自分達が出したカードと名前を紙に書き、
 後攻チームに見せる
・3人のうち1人だけ、嘘の数字を書いても良い
・後攻チームはその紙を見て、自分達の出すカードを決める

・携帯電話など通信機器の使用は禁止

さわ子「じゃあ、本番は明日だから、ルールをしっかりと理解しておいてね」


-翌日-

唯「あずにゃん、澪ちゃん、頑張ろうね!」

澪「ああ」

梓「はいです!」

律「こっちも負けてらんねーぞー!」

紬「おっー!」

憂「お姉ちゃん……」
憂(やっぱりお姉ちゃんと敵になるなんて嫌だよ……どうしよう……)

純「それでは、ゲームを開始いたします。まず、カードと紙をお配りします。
   先攻はAチームです。30分以内にカードを提出をしてください」

-Aチーム(律・紬・憂)-

律「よーし! 二人の考えを聞こうじゃないか!」

紬「私は基本的な戦い方みたいなのは考えたんだけど、これがいいのかどうか……」

憂「えっと、私も基本戦略みたいなものは考えてきました」

律「おお、二人ともさすが!」

紬「りっちゃんは何か考えたの?」

律「聞いて驚け! 何も考えてない!」

紬「……」ぽわぽわ

憂「あ、えっと……」

律「す、すまん! あ、あれだ、紙を書く係りをやらせていただきますのでっ!」

紬「じゃありっちゃんおねがいね。それで、憂ちゃんの作戦聞きたいな」

憂(私が頑張らないといけないかな。私の考えたのは、このゲームの基本戦略……。
   もちろん、これだけで勝てるとはいえないんだけど……)

憂「このゲームで重要なことはいくつかありますが、その1つは、どのタイミングで1を出すか、だと思うんです。
   だからまずこのターン、誰でもいいから1人、1を使います。
   最初の方なら、Bチームの方が大きい数字を出してくるとは思えません」

紬「そうね、私もそれは考えていたわ」

憂「じゃあ紬さんも、これを考えていたと思いますが、先攻側になったとき、
   本当は大きい数字を出したのに、小さい数字を出したと、嘘を書くべきです
   例えば、私が3を出したとしたら、紙には1と書きます」

律「なんでだ? そんなことしたら相手にでかい数字を出されて、せっかくのこっちのでかい数字が意味なくならないか?
   一気にポイントとれると思われちまうぞ」

憂「それは、このゲームの基本戦略を考えると、たぶん起こらないと思います。
   このゲーム、序盤は一気にポイントをとるよりも、相手より少し上回った数字を出すべきなんです。
   それで、なんで嘘で小さい数字を書くかっていうと……例えば、
   お姉ちゃんが3、梓ちゃんが3、澪さんが1、と紙に書いてあったとすると、
   こちらのチームの重さはどうしますか?」

律「んー、嘘をついてないと考えると……あっちの重さが7ってことだろ。
   で、相手より少し上回る重さだったら……8だな」

憂「そうなりますよね。でも本当は、澪さんは3でした」

律「澪が嘘だったってことは重さ9……やべえ、重さ負けてんじゃん」

紬「しかも、相手の重さを1だけ上回ることができるという理想的な展開ね」

憂「そういうことになりますね。もちろん、そこまで上手くいくとは思えませんが……」

律「なるほど……」

紬「憂ちゃん、基本戦略を考えるってことは、平均的な、重さ6になるように出すの?」

-基本戦略-
・相手よりもわずかに高い重さを出すことを目指す
・平均値が6に近いため、基本的には6をだすようにする
・嘘としては、2や3をだしても1とかく。これは、重さを少なくみせることで、
 相手の出す重さを小さくし、結果自分たちの重さを上回らせるため
・1が1枚あるので、これを早めに使い切る

憂「……いえ……最初はどうしても1を使い切りたいのと、
   相手の出方をみたいので、小さい重さにしようと思います。
   たぶん、相手の方も、最初から大きい数字を出すということはないでしょうから」
憂(このゲーム、1巡で勝負がつかなければ、ポイントは同じになる……だから、
   どのタイミングで一気にポイントをとるか、それが重要だけど……)


-Bチーム(唯・澪・梓)-

澪「とまあ、基本的な戦い方はこんなかんじかな」

唯「なるほど……なんとなくだけど分かったよ。重さを9にすればいいってわけじゃないんだね」

梓「相手の重さより1多く……難しいですね」

澪「ああ。でもこのゲーム、どちらのチームも持ってるカードは同じ。
   ポイントはお互いの重さの差分だから、7ターン経過するまでに勝負がついていないと、
   どちらのチームも同じポイントになってしまうんだ。
   そうなると……どこで一気にポイントを獲得し、勝負を決めるか、そこが問題だ」

澪(もっとも、相手も同じことを考えている可能性が高い……だけど私には……)

唯「うう……地道に……だけど一気に……どうすればいいの!?」

梓「私も分からなくなってきました……でも、相手のカードがわかる分、やっぱり後攻はチャンスですよね」

澪「ああ……梓の言うとおり、後攻はチャンス。……というより、確実に勝てる」

梓「確実に……って、相手の嘘が見抜けるんですか?」

澪「分かる……このゲーム、後攻に関しては、必勝法がある」

-----

-30分後・1ターン目:Aチーム先攻-

純「それでは、Aチームの方はカードと用紙を提出してください」

憂(最初は相手の出方を見るためと、1を消費するために、あえて小さい重さを出す……。
   紬さんが1、私と律さんが2……重さは5だから、たぶんこのターンは負けてしまうかもしれない)

律「じゃあ紙を出すぜ?」

憂「はい、おねがいします」

紬「どうなるかしらね〜」

憂(本当のところ、お姉ちゃんと組めればよかったんだけど……
   先生は、そういうのを見越して携帯電話を禁止にしたんだろうなあ。
   ……あ、待って……。そうだ、それだ。携帯電話がないから密談はできない。
   でも、堂々と組んでしまえばいいんだ……。今はまだ早いけど……)

純「Aチームが提出した用紙はこのようになります」

紬1 憂2 律1

純「Bチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

澪「……じゃあこれで」

憂(早い……出すカードをある程度決めていて、こっちのチームが出したものが、
   想定内だったということかな……それなら、たぶん私の予想どおりのはず。
   もちろん、出されたカードを見ないことにはわからないけど、
   このターンしたいことは、確認。澪さんが基本戦略に則っているかどうかの……)

-基本戦略-
・相手よりもわずかに高い重さを目指す
・平均値が6に近いため、基本的には6をだすようにする
・紙には、2や3をだしても1とかく これは、重さを少なくみせることで、
 相手の出す重さを小さくし、結果自分たちの重さを上回らせるため
・1が1枚あり、これを早めに使い切ろうとする

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Bチームは、澪先輩3、唯先輩2、梓1で、重さは6となります」

憂(重さ6……)

純「Aチームは、律先輩2、紬先輩1、憂2で、重さは5となります。
   結果、天秤が傾いたのはBチームです。差の1ポイントがBチームに入ります」

Aチーム:0P
Bチーム:0P → 1P

唯「やったね澪ちゃん!」

梓「です!」

澪「やっぱり憂ちゃんは、律の2を1と、嘘を小さい数字にするようにしたんだな。
   ただ、本当は3だと思っていたからびっくりしたよ。こっちも最初は平均値を出したかったんだ。
   たとえ同じ重さになったとしても、最初は様子をみたいからな」

憂「……」

憂(最初は平均値……6を出したかった……か。基本戦略をとっているように見えるけど……。
   お姉ちゃんと組む前に、確認しないといけないことができたかも……)

純「2ターン目は、Bチームが先行となります。30分後にカードと用紙を提出してください」


-Bチーム(澪・唯・梓)-

澪(1ターン目はうまくいった……狙いどおり、相手の重さより1多い重さを出せた。
   いくら憂ちゃんでも、まだ必勝法には気づいていないはず……)

唯「ねえ澪ちゃ〜ん、そろそろその必勝法ってやつを教えてよ〜」

梓「そうですよ、私達はチームなんですから」

澪「ちょっとは自分で考えないとダメだぞ。それにもし必勝法を知って、それを相手に知られるようなことがあったら
   困るからな。特に唯は、すぐにボロを出しそうだ」

唯「うー、こういう数字がいっぱい出てくるのは苦手なんだよ〜」

澪「じゃあ数学……いや、算数の勉強だと思って頑張るんだな」

唯「う〜、気になるよ〜」

澪(確かにこれはチーム戦。チーム戦だからこそ、唯達に私の作戦を言うわけにはいかない。
   唯達が知らないからこそ、憂ちゃん達に気取られる可能性は薄れるんだから。
   それに唯は、憂ちゃんと組んでいる可能性だったある)

梓「どこかで絶対教えてくださいよ? ……じゃあ、私達が出すカードを考えましょうか」

澪「とはいっても、だいたい決まっているけどな」

唯「基本戦略だよね!」

梓「……唯先輩、絶対理解してませんよね?」

唯「……私は紙を書く係に任命されました!」

梓「……変なこと書かないでくださいよ……
   ってそのシールとってください!」

唯「え〜、かわいいよ〜」

梓「怒りますよ」

澪(シールか……そういうこともできたわけだな……それだとバレてしまう可能性が高くなるけど……)

澪「シールはどっちでもいいから、私達が出すのは、私が2、唯が2、梓が2だ。
   ってことは、どう書けばいいかわかるな?」

唯「こうです!」

澪ちゃん1 あずにゃん2 わたし2

澪「はい、よくできました」

梓「で、何でそう書くかは分かってるんですか?」

唯「……」

(シール増やす)

梓「無言でシールを増やすなー! もう、重さを小さく見せれば、相手がそれにあわせた
   小さい重さを出してくるかもしれないからです!」

澪(もっとも、それは憂ちゃんも分かっていること……だからこそ、あえてこれでいくという考え方もできるけど……。
   いや……どちにらしても私達は、しばらくはそれをとるべきだな)


-Aチーム(律・紬・憂)-

律「本当にこの出し方をするのか……? 心配なんだけど……」

憂「なんだか律さんらしくないですね」

紬「そうよりっちゃん、つっぱしれー、っていうのがりっちゃんっぽいわ」

律「わ、私だって女の子なんでちゅのよ!」

憂(出すカードは決めた……本来これは、後半でやるべきことだけど……今は、気になることがある。
   それに私は、1巡目で勝負をつける気はない……だったら……)

律「……。
   やっぱりツッコミ役がいねーとつらいんですけど……」

-30分後・2ターン目:Bチーム先攻-

純「それでは、Bチームの方はカードを提出してください」

澪「これでよろしく」

梓「純、おねがい」

唯「私はこれ、あと紙はこっちだよ!」

純「Bチームが提出した用紙はこのようになります」

澪ちゃん1 あずにゃん2 わたし2

純「Aチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

憂「純ちゃん、これでおねがい」

澪(早い……まあ、私が基本戦略をとっていること……つまり重さ6にすることを、
   憂ちゃんは予想していたんだろう。ということは、重さ7……。
   それか、私の1が嘘で、本当は3を出したと判断したなら重さ8……。1、2ポイントくらいなら問題ない)

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Aチームは、律先輩3、紬先輩3、憂3で、重さは9となります」

梓「……え?」

澪「……!」

唯「あー! それ私がやりたかったのに〜!!」

純「Bチームは、唯先輩2、澪先輩2、梓2で、重さは6となります。
   結果、天秤が傾いたのはAチームです。差の3ポイントがAチームに入ります」

Aチーム:0P → 3P
Bチーム:1P

梓「3ポイント一気に取られた……」

唯「う、憂! ポイント半分おくれやす!」

憂「お姉ちゃん、自分のチームで取らないとダメだよ」

澪(驚いたな……確かにこのゲームはいかに、一気にポイントを取るか……それが肝要。
   だけど、それをこんなに早いタイミングでやってくるとは……。
   
   好都合だ。

   恐らくポイントを取るという目的よりも、私達を動揺させるために、
   3を3枚出したのだろう……だけど、早まったね、憂ちゃん。
   ……。いや……待て。それは自分に都合良く考えすぎだ。もしかしたら……気づかれたか?
   いや、だとしても、この方法はおかしいし、いくらなんでもこんなに早くは無理だろう……でも、慎重に行くべきか)

純「3ターン目は、Aチームが先攻となります。30分後にカードと用紙を提出してください」

-Aチーム(律・紬・憂)-

紬「6ポイントになるまで後半分ね〜」

律「……そうだな」

憂「はい、ですけど、大事なのはここからです」

憂(そう……大事なのはここから……。確かにポイントでは勝っている……
   だけど、実際には、私達のチームは現状不利になっている。Bチームの方が、大きい数字が多いから。

   大事なのは、ここで相手に疑惑を持たせること……澪さんなら、私がさっきやったこと……それが愚行だと考える……。
   だけど、それ以上に不気味さ……それを感じると思う。私が、何か企んでいる……そいいう不気味さを。

   だけど、今は私自身も、不気味さを感じている……それを拭うまでは、まともに計画を練れない……
   というよりも、練ったところで意味がなくなってしまう。

   だから、これは単なる時間稼ぎ……。この1巡目は4対4くらいで終わってくれればいいんだから。
   そして2巡目に、勝負を決める)

紬「憂ちゃん、次はどうしようか?」

律「まさかまた皆3っていうんじゃ……」

憂「いえ、それをやるのは先行よりも後攻の方が向いています。
   今やるべきことは、基本戦略に、少しだけ背くことです」

紬「背く?」

憂「はい、1ターン目は、嘘で”1”と書きましたが、今回は本当は3を出し、紙には”2”と書きます」

紬「なるほど、さっきは1と書いたことで、その数字が嘘だとバレていたかもしれないのね」

憂「そいうことです」

憂(もっとも、基本戦略からの読みなら、1と書いた数字を3と考えるはずなんだけど……。
   1ターン目、私達は、2、1、1と紙に書いて、実際には2、2、1だった。
   澪さんはそれを1だけ上回ってきた……2、上回るなら理解できたんだけど……。
   ……うん……確かめないと、私は動けない)

-----

-30分後・3ターン目:Aチーム先攻-

純「それでは、Aチームの方はカードと用紙を提出してください」

憂「はい、おねがい」

紬「もってけドロボー!」

律「私はこれで、紙はこいつだっー!」

純「Aチームが提出した用紙はこのようになります」

憂1 紬2 律2

純「Bチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

憂(もし澪さんが、私の1が嘘で、本当は3だと判断したとすると、私達が出したのは、私が3、紬さんと律さんが2と考えるはず。
   つまり、私達の重さは7となって、澪さん達が出す重さは8……。
   だけど、実際の嘘は、律さんの数字……本当は、律さんが3を出した。
   だから、私達の重さは6となっている……澪さん達がどう出てくるか……)

梓「はい、純」

唯「щ(゚д゚щ)純ジュワ〜」

澪「よろしく」

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Bチームは、澪先輩3、唯先輩3、梓2で、重さは8となります」

憂「!」

純「Aチームは、律先輩3、紬先輩2、憂1で、重さは6となります。
   結果、天秤が傾いたのはBチームです。差の2ポイントがBチームに入ります」


Aチーム:3P
Bチーム:1P → 3P

唯「いっえーい!」

梓「これで同点ですね!」

純「4ターン目は、Bチームが先行となります。30分後にカードと用紙を提出してください」

-Bチーム(唯・澪・梓)-

唯「そういえば澪ちゃん、後攻のときは、相手の重さよりも1だけ上回るんじゃなかったっけ?」

梓「もしかして、澪先輩の作戦が破られたんですか!?」

澪「……いや、そうじゃない。実際、今も憂ちゃん達が6を出すことは分かっていた。
   分かっていたんだけど……」

澪(憂ちゃん……嘘の数字を1ではなく、2にしていた……これはたぶん、1ターン目の
   私の動きを見て、何か感じ取ったのかもしれない……。
   そうなると、ここで相手の重さ1上回る7を出すと、憂ちゃんは気づいてしまう可能性が高い……。
   ならば、ここは基本戦略のとおり、嘘で1を出し、本当は3を出したパターンを、
   私が想定したと思わせるべき……。つまり、今あっちのチームが書いた紙は、
   憂1 紬2 律2だったから、憂ちゃんが嘘をつき、本当は3を出した……
   私がそう読んだと、憂ちゃんに思わせる必要があった)

澪「まあでも、憂ちゃんならいつかは気づいてしまうと思うけどな」

梓「憂が気づくってことは、あっちのチームにも見えているもの……後攻なら相手の出した重さが分かる……。
   澪先輩、どういうトリックなのか、私にもなんとなくわかってきました」

唯「えー!? 教えてよあずにゃん!」

梓「といっても、まだ確信がないので……5ターン目に確認します」

唯「いけずー」

澪(私が、相手の重さが分かる……それを知っている梓は、この作戦がどのようなものなのか、
   気づき始めている……。ということは、いくら今こちらがしかけたとはいえ、
   憂ちゃんもいつかは気づくだろう……それはいい。……いつ動く? 憂ちゃん)

唯「んーと、とりあえずここは、皆2を出すんだよね?
   紙はこうしておくよ」

澪ちゃん2 あずにゃん1 わたし2

梓「……シールは貼らないんですね」

唯「貼ってほしいの?」

梓「あ、いえ、そういうわけじゃあ……」

唯「はい、あずにゃん」

梓「え……ってでか!」(梓の顔にでかいシール春)

-Aチーム(律・紬・憂)-

律「同点に追いつかれちまったな」

紬「次はどうする? 憂ちゃん」

憂「……相手はたぶん、さっきと同じ重さ6で来ると思うので、7を出します」

憂(澪さんがさっきのターン出したのは、重さ8……つまり、私が出した1を嘘だと判断し、
   本当は重さ3を出していると考えての行動……。基本戦略に沿っている……。
   
   1ターン目、私達の重さを1だけ上回った澪さん。
   あのとき、嘘の数字は1だったけど、そのとき本当の数字は2だった。
   もし基本戦略に沿っているのだとしたら、2ではなく3と考え、
   結果そのときも、2上回っていたはず……だけど……)

-30分後・4ターン目:Bチーム先攻-

純「それでは、Bチームの方はカードと用紙を提出してください」

唯「紙はこれ! あと純ちゃんにもシールあげる!」(純の顔にでかいシール)

純「Bチームが提出した用紙はこのようになります」

梓「純がリアクションしない……だと……!?」

律「プロだな……もう」

澪ちゃん2 あずにゃん1 わたし2

純「Aチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

憂「純ちゃんこっち見えてる……?」

紬「あの状態で何の迷いもなく憂ちゃんのカードを受け取った……
   斎藤、この子の能力は要チェックよ」

律「斎藤さんここにはいねーから……」

斎藤「かしこまりました」

梓「いた!?」

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Aチームは、律先輩2、紬先輩2、憂3で、重さは7となります。
   次にBチームは、澪先輩2、唯先輩2、梓2で、重さは6となります。
   結果、天秤が傾いたのはAチームです。差の1ポイントがAチームに入ります」

Aチーム:3P → 4P
Bチーム:3P

紬「これでまた勝ち越しね!」

憂「……そうですね」

純「5ターン目は、Aチームが先行となります。30分後にカードと用紙を提出してください」

-Bチーム(唯・澪・梓)-

梓「さて、5ターン目ですね……」

唯「あずにゃんは澪ちゃんの作戦が何か気づいてるんだよね!?
   教えてくれないかな〜」

梓「私もまだ仮説段階なので……間違っていたら恥ずかしいですし……。
   でも先輩だって、なんで先攻だとこの作戦が実行できないかは分かってますよね?」

唯「さ……斎藤さんがいるから……」

梓「……」

澪(今思うと……3ターン目の私の行動はミスだったかもしれない。
   1ターン目と3ターン目で、私の行動には矛盾があった……。
   憂ちゃんにそれを気づかれれば……私が後攻のときに、
   Aチームの側の重さが分かっていることに辿り着く……。
   2ターン目の憂ちゃんの行動……3の3枚出し……
   私は、少し動揺していたのかもしれないな。

   とはいえ、気づかれないに越したことはないけど……
   実際、バレるの覚悟の作戦だったからな……)

-Aチーム(律・紬・憂)-

紬「ここ、重要よね」

律「カードはどう出すんだ? 憂ちゃん」

憂「……重さが6になるように出します。律さんが1、紬さんが3、私が2です」

憂(澪さんの行動には矛盾があった……そこから考えられるのは……。
   だけど、1つ分からないことがある。
   確かに後攻なら、相手の重さが分かる方法はある……
   携帯が使えないんだから、使うものは、1つしかない……けど……。
   あれに、おかしい点はなかったように思う。でも、それしかない……。
   それが分からないと、意味がない。ただ事実を突きつけるだけでは、
   澪さんは動揺しない……澪さんの計画を崩してこそ、意味がある)

律「紙、書けたぜ」

憂2 律1 紬1

憂「ありがとうございます」

憂(……!
   ……待って……1ターン目と3ターン目……それを思い出すと……。
   うん、きっとそうだ。
   これなら、澪さんの裏をかけるはず……!)

-----

澪(憂ちゃんは気づいたのか……? 私の行動の矛盾……そして、あの作戦のことを……)

憂(澪さんの行動の矛盾がある……そして、これ……!)

憂「律さん、じゃあ紙を出しますね」

憂(まず、澪さんの矛盾……1ターン目と3ターン目の違い……。
   私達は1ターン目、紙には紬1 憂2 律1と書いていた。
   だけど、実際には紬さん1、私が2、律さんが2……つまり、律さんが嘘をついていた。
   こちらの重さは5で、澪さん達は6。これは、澪さんは、1が嘘で、本当は2を出していると
   判断したことになる。
   次に3ターン目……紙には、憂1 紬2 律2と書いていた。
   そして実際には、私が1、紬さんが2、律さんが3で、ここも律さんの数字が嘘。
   私達の重さは6で、これに対しての澪さん達の重さは8。
   これは、律さんの嘘を見破ったのではなく、私の数字1が嘘で、本当は3を出したと、
   判断したと考えることができる。

   普通に考えれば、これは矛盾ではなく、ただのきまぐれで、判断の仕方が変わった
   にすぎなように思える。
   だけど問題なのは、判断しているのは澪さんだということ……必ず、何か計画している。
   そしてそれは……澪さんは、私達が出した重さが分かっていること。

   このゲームは、最初は少しだけ勝ってポイントを稼ぎ、中盤で一挙にポイントを獲得
   する必要がある。
   だから、1ターン目は1だけ重さを上回るようにした。

   だけど2ターン目……私達の3、3枚出し……それによって少し動揺し、
   私が、澪さんの計画に気づき始めていると、澪さんは考えた。
   そこで、基本戦略にのっとり、1が嘘、本当は3である、という判断に変更した。
   もしこのとき、1ターン目と同じように、1が嘘で本当は2であるという判断を
   澪さんがしていたのならば、疑惑はほぼ解消されるはずだったけど……)

憂「純ちゃん、はい、紙とカード、よろしくね」

律「私はこれでござんすー」

紬「これでごわす!」

憂(澪さんは私達の出した重さが分かる……それも、後攻のときのみ。
   携帯が使えない今、相手チームとの連絡を取る手段……それは一つしかない。

   提出する紙。

   律さんが書いたのは、
   1ターン目:紬1 憂2 律1
   3ターン目:憂1 紬2 律2
   5ターン目:憂2 律1 紬1

   1つ1つを別々にみれば、一見普通。だけど、そのターンの結果と合わせてみれば……)

純「Aチームが提出した用紙はこのようになります」

律1 憂2 紬1

澪(さて、あっちのチームの重さは……)

唯「ねえねえあずにゃん」

梓「何ですか? 何か作戦でも考えましたか?

唯「ううん、今は後攻だし、澪ちゃんが頑張ってくれるよ。
   だけどさ……このゲーム、私達って何もしてないよね」

梓「え……そ、そんなことないです!」

澪(あっちの重さは……)

紬「唯ちゃんの言うとおりね……完全に澪ちゃん対憂ちゃんになっているもの」

梓「む、ムギ先輩まで……」

澪(重さ……)

唯「ですよね、りっちゃん隊長!」

律「わ、私は仕事してるぞ! か、紙を書くという仕事をな!」

澪「お前らうるさい!」 殴

律「な、なんで私だけっ!?」

純「Bチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

澪(まあもっとも、律は本当に仕事をしている……私にAチームの
   出したカードを伝えるという仕事を。
   律の書いた紙はこうだから……

   律1 憂2 紬1

   今回相手が出したのは……律1、憂ちゃん2、ムギが2で、重さ5ってことだな。
   じゃあこっちが出す重さは6だ)

澪「鈴木さん、よろしく」

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Bチームは、澪先輩2、唯先輩2、梓2で、重さは6となります」

澪(結局憂ちゃんは気づいていないのだろうか……私と律が組んでいることを。
   もし気づいているのならば、このあたりで暴露しておかないと、手遅れになるぞ?)

純「次にAチームは、律先輩1、紬先輩2、憂3で、重さは6となります。
   結果、天秤は動かず、今回ポイントの変動はありません。
   6ターン目は、Bチームが先行となります。30分後にカードと用紙を提出してください」

Aチーム:4P
Bチーム:3P

澪・律「……え?」

澪「重さ6……!」

律「え、あれ!? ちょっと紙見せろ!」

律(待て……私の書いたのと違う……私が書いたのは、
  憂2 律1 紬1
  のはず。でも提出された紙は……
  律1 憂2 紬1
  になってる……!)

憂「……律さん、そのリアクションはよくないと思いますよ」

律「……!」

憂「律さんが書いた紙は私が持っています。
   純ちゃんに渡す前に、私があらかじめ書いておいた紙とすりかえておきました」

律「……な、なんでそんなことをする必要があるんだよ」

憂「……その発言は今更ですよ律さん。律さん……律さんは澪さんと組んで、
   私達Aチームの出したカードを、澪さんに伝えていましたね?」

律「そ、そんなこと……!」

憂「……1ターン目、3ターン目、そして5ターン目……。
   律さんが書いた紙はこうでした。
   1ターン目:紬1 憂2 律1
   3ターン目:憂1 紬2 律2
   5ターン目:憂2 律1 紬1
   そして、各ターン、嘘の数字だったのは、
   1ターン目:律さん
   3ターン目:律さん
   5ターン目:紬さん
   こうでした。
   この2つを比べると……律さんが書いた紙の、右側に書かれた人と、
   嘘の数字だった人が一致します」

律「それはたまたま……全部気分で書いてただけだし!」

憂「では、次に
   1ターン目:紬1 憂2 律1
   3ターン目:憂1 紬2 律2
   5ターン目:憂2 律1 紬1
  真ん中に書かれた人と、右側の人が、嘘ではなく本来出していた数字を比較します。
   1ターン目:律さん → 2
   3ターン目:律さん → 3
   5ターン目:紬さん → 3」

梓「真ん中の人……?」

梓(私も、律先輩が書いた紙にトリックがあって、右に書かれた人が嘘だとは思ってたけど……)

憂「私が真ん中のときは2、律さんと紬さんが真ん中のときは、3が出ていることが分かります。
   ここで基本戦略を考えると、嘘をついて、本来出している数字として最も多いのは3、
   そして1はまずない……それと、私が2年、お二人は3年であることを考えると、
   真ん中に書かれた人の学年によって、数字を示していると考えられます。この方が分かり易いですからね。
   ただこの場合、私が嘘をつき、本当は2を出していたパターンが表現できませんが、
   そのあたりも決めてあったのでしょう。ただ、例がないのでそれは判断できませんが」

律「いくらなんでも、それは強引じゃあ……」

憂「はい、それは分かっています。ですが……私が書き換えた紙を見た澪さんは、
   なぜ重さを6としたんですか?」

律「そ、それは……」

澪「……はあ、さすがだな、憂ちゃん。憂ちゃんが書き換えた、
   律1 憂2 紬1
   これを見て、嘘をついたのはムギで、本当は2を出していると思ったからだ。
   だから、Aチームの重さは5……それを1上回る、6を出した。
   でも、憂ちゃんはそれを見越していた……。
   紙を書き換える前提で、出すカードを決めていたということか……」

律「澪!」

澪「……ここまでバレてたら、認めるしかない……」

梓「これが澪先輩の言っていた、必勝法の正体だったんですね……」

唯「なるほどわからん!」

梓「……。とくかく、律先輩が澪先輩に、Aチームが出したカードを教えていたんです。
   だけど、憂がそれに気づいて、出し抜いてきたってことです」

憂「……」

憂(本当は、澪さんを出し抜いてかつ、ポイントを手に入れたかった……けど、
   1巡目で勝利するつもりはないし、あったとしても、残りカード的に厳しい。
   わざと小さい数字を出し、澪さんにそれより1大きい重さを出してもらうという
   パターンもあったけど、それをやってしまうと、重さが分かる澪さんは、
   1だけ多い重さを出さず、一気にポイントを取りに来て、私達は負けてしまう。

   だったら、澪さんの計画に気づいていないふりをして、
   裏をかくほうが得策……。

   もう、この1巡目で勝負がつくことはない……だから2巡目が勝負。
   計画はできている……あとは、それを実行するだけ……!)

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澪「……律、ここまでバレていたら、認めるしかない。私達は組んでいる」

律「……」

憂(澪さんの裏はかけた……あとは、2巡目が勝負。計画は最初から考えていたから、それを実行するだけ……!)

-Aチーム(律・紬・憂)-

紬「憂ちゃんすごいわ! でも、りっちゃん……」

律「……」

憂「律さん」

律「な、なんでしょーか……」

憂「澪さんと組むことで、賞金を分けてもらうつもりだったんですね?」

律「そ、そうでし……」

憂「ということは、あちらのチームに入っていたも同然なんですから、
   私達の……私と紬さんのチームが勝っても賞金はいらないですね?」

律「え、それはひど
憂「いらないですね?」

律「は、はい……」

憂(……この1巡目、勝負がつくことはもうない。
   まず、私達のチームの残りカードは、3人とも2が2枚ずつ。
   つまり、6、7ターン目で私達が出す重さは6になる。

   そして、Bチームの残りカードで、最大の重さとなる組み合わせは、
   唯3 澪2 梓3
   こうなるから、最大の重さは8になる。
   私達の重さは6で、その差分は2……Bチームの今のポイントは3だから、
   6ポイントにたどり着くことはできない。このとき7ターン目はBチームの重さは5となるから、
   私達が1ポイント得る。よってこの場合は、5vs5で1巡目が終了する。

   それと、Bチームが、重さ8となる最大の組み合わせではなく、重さを7と6になるように
   出してくることも考えられる。そうした場合は、4vs4で1巡目が終了することになる。

   これに関しては、私達に提出できるカードの選択肢がない以上、澪さん次第ということになる)

紬「ねえ憂ちゃん、これからは私が紙を書いてもいいかしら?」

憂「はい、おねがいします」

憂(何にしても2巡目は、互いにあと1か2ポイント獲得で勝利となる……だから、
   2巡目の1ターン目、2ターン目は、3の3枚出しがぶつかる可能性が高い。
   だから、絶対にやるべきことがある。

   Bチームの方と組むこと。

   2巡目の頭に、さっき考えた3の3枚出し……実際、これは起こらない。
   律さんが澪さんと組んでいるから、律さんが3を出さないに決まっているから。
   だから、私もBチームの方と組む……それも、お姉ちゃんと梓ちゃんの2人と。

   私が律さんに賞金を渡さないことを承諾させたのはこのため……。
   お姉ちゃんは絶対に私を選んでくれるはずだし、梓ちゃんも、澪さんの計画を破った私と組んでくれるはず。
   これで勝てるよね……お姉ちゃん、一緒に勝とうね)

-Bチーム(唯・澪・梓)-

梓「澪先輩……」

唯「どうしようか?」

澪「……まず、2人ともゴメン。でも、2人にこのことを言わず、
   私が相手の重さが分かることを不思議がってくれたほうが、
   憂ちゃんに気づかれる可能性が低いと思ったんだ」

梓「それはそうかもしれないですけど……」

梓(憂が澪先輩を上回った……しかも、澪先輩と同じチームの私でも気づけなかったことに気づいて……出し抜いて……。
   この後の6、7ターン目、私達が出す重さはもはや決まったも同然。1巡目で勝負をつけることは不可能だから。

   そうなると、2巡目にどうするか……それが大切だよね。たぶん最初から3の出し合いになる……
   1ポイントでも相手に取られたら致命傷なんだから、相手を牽制して小さい数字を出すことは意味がない。
   そうなると……あっちのチームと組んだ方が有利……? 澪先輩と律先輩が組んでいるから、現状はこちらの方が有利だけど、
   憂ならたぶん、動いてくるよね……唯先輩に対して……そして、もしかしたら私に対しても)

澪「梓」

梓「……! は、はひ!?」

梓(ば、バレた? 私が裏切ろうとしていること……)

澪「頼みがある」

梓(裏切らないで、ってことかな……? もし唯先輩もそうだと約束してくれるなら、私も……)

-30分後・6ターン目:Bチーム先攻-

純「それでは、Bチームの方はカードと用紙を提出してください」

澪「はい、鈴木さん」

純「Bチームが提出した用紙はこのようになります」

澪ちゃん1 あずにゃん3 わたし3

純「Aチームの方はカードの提出をおねがいいたします」

憂「はい、これしか出しようがないからね」

紬「いってらっしゃい!」

律「……」

純「両チームのカードが提出されました。これより結果を発表します。
   まず、Aチームは、律先輩2、紬先輩2、憂2で、重さは6となります」

憂(携帯が使えないなら、お姉ちゃんと梓ちゃんと隠れて話すことは不可能……。
   だったら今、澪さんを破った直後である今、2人に声をかけるべき……!
   本当は休憩時間に話すべきだったけど、しょうがない)

純「次にBチームは、澪先輩3、唯先輩3、梓3で、重さは9となります」

憂「お姉ちゃん、2巡目の話なんだけど……」

唯「ん? なあに、憂ー」

憂「あのね……」

澪「……憂ちゃん」

憂「なんですか澪さん? 私はお姉ちゃんと2巡目に……」

澪「鈴木さんの発表、聞いてたか?」

憂「聞くまでもないじゃないですか……澪さん達の重さは8か7……。
   ……?
   ごめん純ちゃん、もう一回言ってもらってもいいかな?」

純「Bチームは、唯先輩3、澪先輩3、梓3で、重さは9となります」

憂「……。
   ……え?」

純「結果、天秤が傾いたのはAチームです。差の3ポイントがBチームに入ります」

Aチーム:4P
Bチーム:3P → 6P

純「Bチームが6ポイントに達しました。よって、天秤ゲームの勝者は、
   澪先輩、唯先輩、梓となります」

憂「え、待って純ちゃん……それはおかしいよ。だって澪さんは、1ターン目と3ターン目に、3を使ってるんだよ?
   出せるわけない……」

純「いいえ、さきほど澪先輩が提出されたのは、間違いなく3です」

憂「え……? こ、こんなの絶対おかしいよ……!」

澪「……憂ちゃんは、私達の残りカード覚えてただろ? 梓の残りカードはなんだった?」

憂「梓ちゃんの……梓ちゃんは3が2枚でした」

澪「そう。じゃあ唯は?」

憂「お姉ちゃんは、2と3……」

澪「そうだね。だから、私達のチームに、3は3枚存在していた、つまり……」

憂「……! カード……交換……!?」

澪「そう。梓の3と私の2、それを交換していたんだ。
   チーム内で……いや、チーム内じゃなくても、カードの交換の禁止はされていなかった」

憂(カードの交換……待って、なんで私はそれを考えなかったの……?
   相手のカードを思い出したときに……なんで……!?)

律「あれ……勝ったのか……澪……?」

澪「お前も聞いてなかったのか……」

律「だって私の作戦が破られて……あれ……?」

澪「……律、お前にも謝っておかないとな。実は律から組まないかと言われて、
   あの紙を使って重さを教えるという戦略を聞いたとき、こうすることも考えていたんだ。
   憂ちゃんなら、いつか気づく危険性があったから」

律「ま、まじかよ……教えてくれたっていいだろー!?」

憂「……澪さんの計画じゃなかったんですか……?」

澪「そう、あれは律が考えたことだ。そして私は、それを憂ちゃんに気づかれる……
   そこまで計算に入れて動いていた。
   そして、律には私の考えていることを伝えなかった……こうすることで、私が何か企んでいる……
   憂ちゃんはそんなこと考えない」

憂「そんな……まさか……」

澪「むしろ、律の戦略には気づいてくれないと困っていたかもしれない。
   私が欲しかったのは隙……憂ちゃんが自分は優位に立ったと勘違いして生まれる隙が」

憂「……!」

憂(そうか……私が気づけなかったのはそのせいだ……。
   ……ううん、どちらにしても、私達が出せるカードは2だけ……重さ6しか出せなかった。
   こうなるように、澪さんに誘導されていた……もっと前から勝負は決まっていたってことだ……)

澪「もっとも、これは一つの偶然があったからできたことなんだけど……」

憂「偶然……?」

澪「唯と憂ちゃんが別のチームになったってことだ。憂ちゃんが唯を負かす……それは私には想像できなかったから。
   だから、どこかで……いや、最初から2人は組んで、何かしてくると私は考えていた。
   意外だったのは組むのが途中から……さっきしようとしたことだったけどね。
   でも、梓も取り込む必要があったから、あのタイミングがちょうどよかったんだろう」

憂「……そのとおりです。本当は、早い段階でお姉ちゃんに声をかけるつもりでした。
   そして、2巡目の序盤起こるであろう、大きい重さの出し合いに備えるつもりでした。
   ですが、律さんと澪さんの動きが不振だったから……それを暴くまで動けませんでした。
   それで……お姉ちゃんだけじゃなく、梓ちゃんとも組もうと……」

唯「私とあずにゃんを?」

梓(やっぱり考えてたんだ、憂……ごめん……)

澪「それがあったから、必ず憂ちゃんは2巡目に持ち込もうとする……その上でカードの提出を行ってくると考えた。
   2ターン目の3の3枚だしは意外だったし、5ターン目に律の戦略をあんな形で破ったことは驚いたけどね」

憂「……」

澪「私の戦略は、とにかく憂ちゃんを油断させることだった。
   だから、律には悪いけど、律の戦略を利用し、それが破られるという前提で、私の戦略は考えていたんだ。
   そして、普段の憂ちゃんなら可能性として考えてもおかしくない、カードの交換を行った。
   これをどこのタイミングで行うか……それが重要だったけど、6、7ターン目の憂ちゃん達のカードが限定されたから、
   それは簡単だった」

憂「……あは……」

梓「憂……?」

憂「あは……あはは……」

紬「憂ちゃん……」

律「壊れた……?」

憂「あははははは! あはは、負けちゃったよお姉ちゃん」

唯「……。……でもさ、憂」

憂「うん、楽しかった! お姉ちゃんが言ってたこと分かったよ、ライアーゲームって楽しいね!」

純(あの笑い方は壊れたようにしか見えないし……。澪先輩を刺しかねない勢いを感じた……。
   憂は怒らせないほうがいいな……)

澪「ありがとう憂ちゃん、私も楽しかった」

唯「澪ちゃん達、おめでとう! さぁ、賞金を受け取りたまへ!」

澪「そのことなんだけど……」

律「なんだ澪はいらないのか! じゃあ私が全部もらうぞ!!」

澪「5万円だけくれないか? で、唯も50万円全部賞金にするんじゃなくて、5万円だけもらって、
   残りはさわ子先生に返すんだ。で、1ゲームの賞金を5万円に設定する、というのはどうだろう?」

律「スルーですかそうですか」

さわ子「ああ、それいいわね。……でも意外ね、澪ちゃんがそんなこと言うなんて。
     てっきり、そろそろ練習だ! って言うかと思ったわ」

澪「え、いや、それは……」

梓「ハマったんですね澪先輩……私もですけど。今回はほとんど何もしていないですし……次こそは……!」

律「よーし、次も勝つぞー! ……私は負けみたいなもんだけど……」

紬「2人の熱い戦いが見られてよかったわ!」

唯「やっぱり楽しいよね!」

憂「次は絶対負けませんから……」黒

純「あ、あれ、嘘? 私オチですか!? え、えっと……
   普通顔ダブルピース!!
   ……わかってましたよ滑るって……次のゲームでお会いしましょう……」


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