TOP   3   



    けいおん部でライアーゲームをするようです!

     第3ラウンド



唯 さわちゃんのギターが50万円で売れました!
  さわちゃんは、その50万円を、ライアーゲームで勝った人にあげるといいました。

  参加者は、りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、憂と、そして私です!

  これから3戦目の始まりです。

律「じゃあいっくぜー! 3戦目ー!!」

純「先生、次のゲームは考えたんですか?」

さわ子「ん〜、私はそもそも最初のゲームしか考えてなかったから……」

唯「ねえさわちゃん、そのことなんだけど、やるゲームを紹介したいって子がいるんだ、
   同じクラスに!」

澪「そうなのか? っていうか私達がライアーゲームやってることを話したのか……」

唯「えへへ。じゃあ、入ってきて〜!」

和「今度こそ私の出番が

唯「姫ちゃんです!」

姫子「どうも〜」

いちご「……」

紬「あら、よろしくね」

梓「えと、よろしくおねがいします」

憂「おねがいします」

姫子「あずにゃんと唯の妹さんね。聞いてるよ、唯から」

梓「あ、あずにゃん……」

さわ子「じゃあ立花さん、お願いするわ」

姫子「はい。えっと、皆にやってもらうのは……」

6連射ロシアンルーレット

姫子「まあロシアンルーレットといっても、さすがに拳銃は用意できないから、
    これを使うんだけどね」

律「ん? あー、シリンダーの形だな、これ」

澪「1〜6の数字が書いてある……ここに弾を入れるってことか」

梓「でも6連射ってどういう……」

姫子「普通のロシアンルーレットって、何人かで1発ずつ弾を撃ちながら
    回してくじゃない? だけどこのゲームは、6発全部を自分で打つんだよね」

唯「全部撃っちゃうの!?」

姫子「そうだよ。だけど、普通のロシアンルーレットって、被弾すると思ったら、
    天井に向けて打つものらしいんだ。このゲームでも、それをしていいんだよね。
    とまあ、とりあえず、リハーサルをしてみよっか」

紬「は〜い」

姫子「このゲームは、1ゲームごとに、2人が銃弾を込める役で、
    残りの4人が銃を撃つことになるんだよ。だから、3ゲームしたら1巡ってことだね。
    で、誰かに銃弾を込める役をやってほしいんだけど……」

唯「」「」「」ふんすふんす

姫子「はい、じゃあ唯ね。あとは……じゃああずにゃんにやってもらおうか」

梓「あ、あずにゃんていうのやめてもらえますか……」

姫子「いいじゃない、カワイイよ。……とにかく、2人が銃弾役、
    あとの4人が、ロシアンルーレットをやるってことね。
    じゃあ、唯とあずにゃんは、このシリンダーの好きなところに
    1発弾を込めて。紙を塗るってことね。だから、シリンダーには2発弾が込められる。
    で、他の4人は、何発目を自分に向けて打つか、何発目を天井に向けて打つか決めるんだ。
    6発中、3発は自分に、3発は天井に向けないといけなくて、
    今から渡す紙に、自分に向けて撃つシリンダーの位置の番号を書いてね」

唯「あずにゃん、どこに入れよっか」

梓「え……これって相談していいんですか?」

姫子「別にいいけど、基本的にはなしかな。撃つ方の4人も、基本的には相談なしだよ。
    でもライアーゲームだし、どうせ組むんでしょ?」

澪「どうせ、って……」

律「まあ、そうなのかな?」

憂「……」

紬「自分に向けてうつ3発を書く……と、できました!」

姫子「よし、いいかな。じゃあ、えーっと、紙を回収するんだけど……」

純「それは私がやります。込め役2人、撃ち役4人の方々はそれぞれ用紙を提出してください」

姫子「込め役に撃ち役か。短くていいね。っていうか、なんかあなたすごいね、オーラが」

純「私はこのゲームのディーラーを務めさせていただいています」

姫子「そっか、よろしくぅ」

律「もう鈴木さんのプロぶりには誰もツッコまなくなったか……」

姫子「それで結果なんだけど、込め役が弾を込めた位置で、
    撃ち役が自分に向けて弾を撃っていたら、被弾ってことになるんだよね。
    だから、込め役が書いた番号と撃ち役が書いた番号が1つでも同じだったら被弾。
    じゃあ結果発表よろしく」

純「それでは結果発表を行います。シリンダーの番号順に、弾が入っているかいないかを
   発表し、被弾された方がいたらお名前をお呼びします。
   @、不発。A、不発。B、発砲。
   紬先輩、律先輩が被弾されました」

紬「あ〜れ〜、自分を撃っちゃった♪」

律「ムギもBで撃ってたか……。で、これ、被弾したらどうなるんだ?
   っていうかこの銃声……」

純「こういうゲームもあるかもしれないと思って、用意しておきました」

梓「……純、もうね、私、本当に純のことすごいと思うんだ」

憂「梓ちゃんが素直に褒めるってことは、相当ってことだよね……」

姫子「被弾したら、当然ゲーム的にマイナスだよ。
    3回被弾したら脱落、ゲームオーバー。それで、最後に残った1人が勝者になるんだ。
    あと、1ゲームの間に1度被弾したら、そのゲームの間に引き金は引かない……
    というか、被弾したら普通動けないからね、頭撃ってるんだし。
    だから基本的には、1ゲームの間に2発被弾することはない。
    今だったら、律と琴吹さんはC番以降にもう一度被弾していても関係ないってことだね」

純「……では続けます。C、不発。D、不発」

澪(あ……私被弾しなかった……私が自分に撃ってたのは、A、C、Dだったから……。
   本番でもこうなればいいな……)

純「E、発砲。憂が被弾されました」

唯「う……憂、死んだらダメだよ、憂!」

憂「お、お姉ちゃん……最後にお姉ちゃんの顔が見れてよかった……が……ま……」

梓「憂、乗らなくていいんだよ……Eに入れたのは私だけど……」

純「このゲームの結果、律先輩、紬先輩、憂が被弾1、
   澪先輩、唯先輩、梓が被弾0となりました」

姫子「とまあ、1ゲームの内容はこんなかんじかな。さっきも言ったけど、
    これを続けていって、最後に残った1人が勝者になるんだよね。
    ただし、1巡の間に全員脱落することがあったら全員復活、仕切り直しだよ」

憂「あの、ひとつ気になることがあるんですけど、いいですか?」

姫子「何?」

憂「込め役は1人1発込めるんですよね。もし2人が同じ場所に弾を込めたらどうなるんですか?」

姫子「ああ、それか。さっき言ったみたいに、1回被弾したらその後は撃たないから、
    基本的には1ゲームでは1回しか被弾しない。
    だけど例外として、もし込め役が同じ場所に弾を込めていて、そこで被弾してしまった場合は、
    被弾2とみなすんだよね」

律「うわ、一気に瀕死じゃねえか!」

澪「気を付けないとな……」

姫子「じゃあルールをまとめるよ」

『6連射ロシアンルーレット』ルール

・通常のロシアンルーレットと違い、6発全てを1人で打つ
・3発被弾したら脱落、最後に残った1人が勝者

・1ゲームごとに、込め役2人、撃ち役4人に分かれる
・3ゲームで1巡し、1巡ごとに弾役の順番を決める

・弾は1人1発込めることができ、シリンダーには計2発込められる
・2人が同じ場所に弾を込めた場合、そこには2発両方が入っているとみなす

・撃ち役4人は、6発中3発を自分に向けて撃ち、3発を天井に撃つ
 つまり、自分に撃つ3箇所を選ぶ
・1発被弾した時点で、そのゲームで銃を撃つことをやめる
・ただし、2発入った場所を自分に打ってしまった場合、2発被弾したとみなす

・1巡の間に全員が被弾3となった場合、全員復活してリスタート


姫子「こんなかんじかな。割と単純だと思うけど、大丈夫かな? 唯」

唯「なんだ私だけー」

姫子「いやあ、なんとなく心配で」

唯「もー」

澪(立花さんの言うとおり、確かに誰かと組むことになるんだろうけど……
   どうするか……自分から組むよりは……)

憂(……自分から組むよりは、誰かから声をかけられたほうがいいかな……
   何にしても、最初は様子見したほうがいいかも)

律「ムギ、組もうぜっー!」

紬「いいわよ〜。でも、組んでどうするの?」

律「お互いが込め役のとき、どこに弾を込めるか決めておくんだよ。そうすれば、少なくとも
   1発は弾の位置が分かるだろ?」

紬「なるほど〜」

澪・憂(こいつ(この人)はほんとに……)

さわ子「皆、今日は遅いから続きは明日にしましょう」

唯「よーし、頑張るぞ〜!」

梓「どうしようかな……」

澪「……」

憂「……」

姫子「先生、さようなら」

律「あれ、今更だけどいちごは何しに来たんだ?」

いちご「見学」

紬「見学?」

いちご「ライアーゲームが好き。実際に見られると聞いたから」

和「……私は見学することすら許されていないのか……!」

-田井中家-

律「くくく……ふっふっふ……」

律(澪も憂ちゃんも、私のことをたぶんバカにしてたんだろうな……懲りずにまた皆の前で組んでたから……。
   でも残念、違うんだよ! あれはわざとなんだからな!)

律「必勝法……必勝法だっ……必勝法を見つけてしまったっ……!」

律(……。
   よし……とりあえず澪かな……)

-秋山家-

澪「……」

澪(律からメールだ……)

澪「……」

澪(なるほど、そういうことか……一応律なりには考えているみたいだけど、
   これはもしかしたら……。まあとりあえず、のってやってもいいが……)

澪「ん」

澪(またメール……律か?)

澪「……。
   ……なるほど、じゃあやることは決まったな……律と組むべきだ……!」

-----

-翌日・部室-

姫子「よし、じゃあいってみようか!」

いちご「……」

純「それではまず、込め役の順番を決定するための抽選を行います。
   皆様はクジを引いてください」

唯「よし、来い!」

梓「当たりがあるわけじゃないんですから……」

律「頑張ろうぜ、ムギ!」

紬「むぎゅ!」

憂「……」

澪「……」

純「順番が決定いたしました。1巡目の込め役は、このようになります」

1ゲーム目 : 梓、憂
2ゲーム目 : 唯、澪
3ゲーム目 : 律、紬

姫子「唯、ルールは覚えてるかな?」

唯「覚えてるに決まってるじゃん! 6連射すればいいんだよね!」

姫子「連射って……確かにゲームの名前はそうなんだけどさ、
    3発自分に撃って、3発ははずすんだよ。まあ撃つっていうか紙に書くんだけど」

唯「……。
   そうだよ、りっちゃん、3発だけ自分に撃つんだよ!
   全部自分に撃ったらダメなんだよ!」

律「当たり前じゃねぇか……全部撃ったら絶対被弾するだろ……」

純「それでは、1ゲーム目は30分後に開始いたします」

いちご「……。待って」

純「何でしょうか?」

いちご「30分は長い。3ゲームやるのに、間だけで1時間半もかかるんだけど」

純「ですが、これまで常にインターバルは30分で……」

いちご「長い」

純「……」

いちご「長い」

純(逆らえる気がしない……)

純「……それでは、1ゲーム目は10分後に開始いたします。
   ただし、1巡終わった後の休憩時間では、30分取りたいと思います」

澪(……気持ちは分かるよ、鈴木さん……)

律「……」

律(さて……私がやることは決まっている……。私には必勝法がある……!
   下手な詮索をされても困るし、時間が短くなったのは好都合だな……)

紬「りっちゃん、せっかく組んだのに、込め役が同じ3ゲーム目になっちゃったね……。
   これじゃあ、弾の位置を教えあうことができない……」

律「そうだな……まあでも、2巡目では組んでることは絶対有利になる!
   今はとにかく、1巡目で脱落することはないようにしないとな!」

梓「……」

梓(……ムギ先輩の言うとおり、組んだ人どうしの込め役が同じゲームの時になってしまうと、
   組んだ意味がなくなってしまう。
   だから、昨日の段階であんなふうに、込め役の順番が決まっていない状態でグループを組むのは
   間違っている。それにそもそも、2人だけでグループを組むのはあまり意味がない。

   このゲームで誰とも組んでいない場合、つまり弾の位置が全く分からない状態での
   被弾確率は80%。もし込められた弾の位置が同じだったら50%。
   弾の位置が同じじゃないと、かなりの確率で被弾してしまう。
   ここで、込め役の1人と組んでいて、弾の位置が分かるとしたら、
   被弾確率は40%になるけど……それでも低いとはいえない確率だ。
   しかも、それも1ゲームの間だけ……だから、2人だけではあまり意味がない……)

律「いっくぜー!!」

紬「おっー!!」

-10分後・1ゲーム目開始・込め役:梓、憂-

純「それでは、1ゲーム目を開始いたします。
   梓、憂は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

梓「……はい、これおねがい」

憂「純ちゃんよろしくね」

律「……」

律(よし……私が撃つのは、@、A、Bだな……)

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします。
   @、不発。A、不発。B、発砲。
   澪先輩、唯先輩、律先輩、紬先輩が被弾されました。
   なお、B番には2発弾が込められていたため、2発被弾となります」

律「うわ、全員被弾かよ! っていうか2発とか……」

澪「梓も憂ちゃんもBに弾を込めていたのか……」

唯「Bってさ、なんか選びたくなっちゃうよね!」

紬「それ分かるわ!」

憂「ごめんねお姉ちゃん……お姉ちゃんを撃っちゃうなんて……」

梓「撃ったのは唯先輩自身だけどね」

純「このゲームの結果、澪先輩、唯先輩、律先輩、紬先輩が被弾2、
   梓、憂が被弾0となりました。
   2ゲーム目は10分後に開始いたします」

律(まさか全員被弾するなんてな……確率的にどんなもんなんだ、それ?
   ……まあ、私の必勝法にはあまり関係ないか)

澪「……」

澪(……弾の位置が同じで、かつ全員被弾する……か……。
   ……シリンダーの同じ位置に弾が込められる確率は約17%。
   で、弾が同じ位置にある場合の被弾確率は50%だから、
   4人とも被弾する確率は約6%。
   よって、撃ち役の全員が2発被弾する確率は約1%。
   かなり低いけど、起こりえない確率じゃあない。

   もしこれが2ゲーム目にも連続で起こったなら、確率はその2乗……つまり約0.01%。
   よほどのことがない限り起こらないだろう。もしこんなことが偶然で起こるようなら、
   帰りに皆で宝くじでも買って帰った方がいいだろうな。でも、律の作戦を考えると……)

-10分後・2ゲーム目開始・込め役:唯、澪-

純「それでは、2ゲーム目を開始いたします。
   澪先輩、唯先輩は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

唯「えっと……これかなー? う〜ん……」

律「おい唯ー、私が言うのも変だけど、間違っても弾を入れる位置を口に出すなよー」

澪「……。
   ……じゃあ私はBに入れるぞ」

律「ってをい!」

澪「別にいいだろ、本当はBじゃないかもしれない、でもBかもしれない。
   ライアーゲームに心理戦はつきものだ」

唯「あ! じゃ、じゃあ私もBに入れます!」

紬「じゃあ私はBで自分に撃ちます!」

律「いや、私がBで撃つ!」

姫子「いや、私が〜」

梓「……はいはい、どうぞどうぞ」

憂「梓ちゃんそれ言うの早いよー……ダチョウさん……」

梓「やりたかったんだ、憂……」

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします。
   @、不発。A、不発。B、発砲。
   紬先輩、律先輩、梓、憂が被弾されました。
   なお、B番には2発弾が込められていたため、2発被弾となります。
   このゲームの結果、澪先輩、唯先輩、梓、憂が被弾2となりました。
   また、律先輩、紬先輩の被弾が3を超えたため、脱落となります。
   3ゲーム目は10分後に開始いたします」

律「また全員被弾ですかい!」

澪「唯、本当にBに入れたんだな」

唯「澪ちゃんこそ〜、でも助かったよ」

澪「ん……そうだな、私達も2発被弾しているから、梓と憂ちゃんも被弾して、
   みんな同じラインに立ってることになる」

律「ムギ……せっかく組んだのに、まさか2人ともこんなに早く脱落するなんてな……」

紬「うん……残念ね、りっちゃん……。
   でも、まだ大丈夫、皆被弾は2だから、すぐに脱落させることができるわ。
   なんとしても、復活しましょう!」

律「ああ!」

律(……なんてな、私が脱落したのはわざとだ。
   これが私の必勝法……さて、後は見てるだけだな!)

-----

純「2ゲーム目の結果、澪先輩、唯先輩、梓、憂は被弾2、
   律先輩、紬先輩は被弾3を超えたため脱落となります」

律(私には必勝法がある……だから私はわざと脱落した……後は見ているだけだ……!)

律「ムギ、ここは当然、弾を入れる場所は分けたほうがいいな」

紬「そうね、皆被弾2なんだから、1発でも当てれば皆脱落よね」

律「じゃあ、ムギがB、私がDってことにするか」

紬「分かったわ」

律(まあ、今決めたように見せたが、これは昨日から決めていたことだからな……
   ムギがB、私がD。これは別に、私とムギの込め役が同じじゃなくても、
   こうするつもりだった。
   そして、1、2ゲーム目……ここで私はわざと被弾し、脱落した……
   これは、どこに弾があるか分かっていたからできたこと。
   そしてこの3ゲーム目……1巡目の最後で、被弾する奴はいない……!)

律「よっしゃムギ、頑張るぞ!」

紬「おー!」

-10分後・3ゲーム目開始・込め役:律、紬-

純「それでは、3ゲーム目を開始いたします。
   律先輩、紬先輩は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

律「じゃあムギ、さっき決めたとおりに行くぜ」

紬「ええ」

唯「撃っちゃうよ〜」

梓「はい、書けたよ」

いちご「……今更だけど、銃がないと迫力がない」

姫子「いや、一応準備はあったんだけどさ、みんなでやると、
    銃声でどこに弾があるか分かっちゃうと思ってさ」

いちご「ここ軽音部。音を消すことならいくらでもできる」

姫子「……。
    ……これはライアーゲームです」

いちご「……準備してなかったってことね」

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします」

律(今残っているのは、澪、唯、梓、それに憂ちゃんか。
   とりあえずここでは誰も被弾しないけど、
   私としては唯と憂ちゃんは早めに脱落してほしい……
   私の入れる弾の位置を変えるか……? いや、今それをするのはよくないか。
   そもそも私が動く必要はない)

純「@、不発。A、不発」

律(まあ、誰が残ってもいいか。結局それが、私の勝ちに繋がるんだから)

純「B、発砲。澪先輩、唯先輩、梓、憂が被弾されました」

律(しかし私も冴えてるぜ……前のゲームからこの作戦を取っておけばよかったんだ。
   何せこの作戦は、自分が勝たなくていい……そして、他の誰が勝ってもいい……。
   誰か1人でも残れば……)

律「……? 1人でも残れば……?」

純「このゲームの結果、澪先輩、唯先輩、梓、憂の被弾が3となったため、脱落となります。
   全員脱落となりましたので、2巡目からは全員復活となります」

律「え……な、何で? 何で被弾してるんだ……? しかも全員……!」

律(私とムギが弾を入れる場所、澪も唯も梓も憂ちゃんも知っているはずなのに……
   私が昨日、そこに入れると言っておいたのに……!)

紬「……りっちゃん」

律「!」

紬「何で被弾してるんだ、って言ったわよね?」

律「……言ったけど……」

紬「その理由は、1ゲーム目、2ゲーム目のりっちゃんと同じよ」

律「同じ……?」

紬「そう、同じ。……わざと被弾したのよ。
   皆、私がB、りっちゃんがDに弾を込めることを知っていたから」

律「……は?」

律(わざと……って、何でだよ……わざと脱落して意味があるのは私だけだ……だって私は皆と……)

紬「りっちゃん、昨日私と組んだよね。だけど、ルールを聞いていたら分かるけど、あのタイミングで、
   しかも2人しか組まない……それはおかしなこと」

律「……」

紬「だから私は、昨日皆に連絡したの。……りっちゃんが私を裏切るために、
   他の誰かと組んでいないか確認をしたかったから。
   でも驚いたわ……まさか、全員と組んでいたなんて……!」

律(く……確認されていたなんて……!
   私の必勝法……それは、全員と組むこと。ただし、ムギには私だけと、他の皆には私とムギとの3人でしか組んでいないように見せ、
   その状態で自分が負けることで、誰が勝っても分け前が入るようにすることだった。

   本来は、皆に対し、私と2人しか組んでいないよう見せたかったけど、この作戦では、私自身が脱落する必要がある。
   だから、皆にはこう言って、組んでいた。

   ”私とムギが入れる弾の位置を教えるから、お前が勝ってくれ。私が勝ってしまうと、私とムギとお前の3人で賞金を分けないといけない。
    でもお前が勝てば、2人だけで賞金を分けることができる。だから、私はすぐに脱落する”

   こうやってムギを、悪いけど利用することで、私の脱落を当然のものにしていた)

澪「昨日の夜、律からメールが来た後、ムギからもメールがあったんだ。
   私は律からの、組まないかというメールを見たとき、おかしいと感じた。
   さっきムギも言っていたけど、このゲームに関しては、ゲームが始まる前から組むというのはおかしい。
   このゲームで重要なのは、弾の位置を把握するということだ。だから、1巡目の律とムギのように、
   込め役が被ってしまったら意味がない。もちろん、2巡目以降どうなるかは分からないけど……
   少なくとも1巡目の順番が分からない状態で組むのはリスクが高い。

   だから律は、何か企んでいる……私を裏切る可能性がある……そう考えていた。
   そしてムギの連絡……ムギはすでに唯と憂ちゃんと連絡を取っていたみたいで、
   律が2人にも組まないかという話を持ちかけていたことを知った」

憂「実は、律さんから連絡をもらったとき、私も澪さんと同じことを考えていました。
   私達の場合、私がお姉ちゃんと組むことは律さんも分かっていたみたいで、
   律さんは姉ちゃんと私、両方と組むことを申し出てきました。

   私はこのことを紬さんに伝えて、梓ちゃんと連絡を取りました。
   そして……梓ちゃんも、律さんに組まないかと言われていたことが分かりました」

梓「そのあと、私達は集まりました」

唯「ケーキ美味しかったよね!」

梓「……唯先輩……私のターンだったのに……!」

姫子「よ〜し、唯はちょっとこっちに来てようね」

紬「全員と組んでいることが分かれば、話は簡単。
   りっちゃんは自分で、自分が脱落することを言っていたから、りっちゃんの目的は、
   誰が勝っても、自分に分け前が入るようにすること。

   確かにこの方法なら、誰が勝ってもりっちゃんは賞金を得る……ようにみえる。
   だけど、1人でも疑いを持てば、すぐにバレてしまうことだし、
   それにただ1人、勝ってはいけない人がいるわよね?」

律「ぐ……!」

律(分かってた、それは分かってた……だからすぐに脱落したのにっ……!
   私だ……私が勝ってしまうと、みんなに分け前を払わないといけないっ……
   でも、貰える賞金だけでは到底足りないっ……!!)

紬「だから私達は、りっちゃんと組んでいるふりをした。本当は、5人で組んでいたんだけどね。
   でもりっちゃん、澪ちゃんに感謝しないとね」

律「……何がだよ……」

紬「よく考えてみて。りっちゃんだけを残し、私達5人が脱落することは、今の1巡目でもできたことなのよ。
   たとえば2ゲーム目、唯ちゃんと澪ちゃんは、りっちゃんに言われたとおり、Bに弾を込めていた。
   でもそこで、2人がCに弾を込めることに変更すると、りっちゃんには伝えずに決めたとすると……」

律(私は被弾できない可能性が高いが、ムギ、梓、憂ちゃんは確実に被弾できる……そして3ゲーム目に、
   私以外全員脱落ということに……!)

唯「あのときさ、Bに入れるのド忘れしちゃってね〜、本当に助かったよ澪ちゃん」

澪「まったく、唯が困った顔でこっちを見たときは、どうしようかと思ったよ」

律(2ゲーム目、澪は自分はBに入れると嘘っぽく言っていたが、これは唯に教えるためだったのか……
   あの時点で、あの澪の行動がおかしいと気づいていれば……! 澪と唯のつながりに気づけていれば……!)

紬「でも1巡目で終わらせなかったのは、澪ちゃんが、”律に少し痛い目を見せて反省させるだけでいいかな”、って言ったからよ。
   ……とはいっても、あまり状況は変わらないわよね、りっちゃん。私達5人は組んでいるんだから……りっちゃんを勝たせるためにね」

澪「……」

憂「……」

律「……く……」

律(くそ……私の必勝法……それは昨日の時点でとっくに破綻してたってことかよっ……!
   どうすればいいっ……どうすればっ……!)

-----

純「それでは、休憩時間に入る前に、2巡目の込め役の順番を決めます。
   皆様、このクジを引いてください」

唯「もう順番あんまり関係ないよね〜」

紬「うふふ、そうね」

梓「……う〜ん」

律「くそ……」

憂「……」

澪「……」

純「順番が決まりました。このようになります」

1ゲーム目 : 澪、梓
2ゲーム目 : 紬、憂
3ゲーム目 : 唯、律

純「それでは、2巡目は30分後に開始いたします」

紬「じゃあみんな、お茶を入れるから少し待っててね〜」

さわ子「私レモンティーね」

唯「あれ、さわちゃんいたんだ」

姫子「これが噂のティータイム……」

いちご「……このための30分のインターバル……」

紬「はい、2人も好きなケーキをどうぞ。あと、りっちゃん……」

澪「……ムギ、律はそのケーキだと思うんだ、渡してくるよ」

憂「あ、紅茶持ちますね」

澪「おい、律」

律「……うるせー……」

澪「いいから、このケーキを見ればやる気も出るだろ」

憂「紅茶もありますよ」

律「ケーキを見たら、って……。
   ……とりあえず食うけど、1人にしてくれ。外で食べる」

憂「……じゃあお盆持ってきますね」

律「ああ、ありがとう……」

澪「……」

梓「……」

唯「ん、あずにゃん、どうしたの? ぜんぜん食べてないけど……」

梓「あ、いえ……」

梓(なんか……ライアーゲームも3回目になるけど、いつも先輩方の作戦に乗ってばかりで、
   自分では何もしてない……こんなことでいいのかな?
   ……ううん、よくない。最初の頃……けいおん部に入りたての頃を思い出して!
   そうだ、こんなのは私じゃない……練習してないのは問題だけど……
   でも……戻らなきゃ……自発的だった私に!)

梓「そうだ、カムバック私!」

唯「おお!?」

紬「かむばっく!?」

澪「……!?」

憂「?」

姫子「おお、あずにゃん!」

いちご「……」

さわ子「ムギちゃん、おかわりちょうだい」

梓「……!」

梓(え、あれ? あれええぇ!? 声に出てた? もしかして!?)

梓「あああああ! え、えっと、トイレに行ってきますううう!!」

梓(え、何、バカなの私!? さっきの声ハーモニクスだったし、ビブラートかかってたし!!
   恥ずかしすぎるうううう!)

唯「あ、あずにゃんにゃん!」

紬「はやてのようだわ」

澪「かわいいな梓……」

憂「かむばっく梓ちゃん……」

純(梓のケーキは私がもらっておこう、おいしすぎる)

さわ子「ねぇ、おかわりまだー?」

-30分後・2巡目1ゲーム目開始・込め役:澪、梓-

純「それでは、1ゲーム目を開始いたします。
   澪先輩、梓は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

紬「さて、澪ちゃん、梓ちゃん、よろしくね」

澪「ああ」

梓「……はいです」

紬(さっきの休憩時間、りっちゃんが外に出て行った後に、私達5人は、2巡目に込める弾の位置を決めておいた。
   りっちゃんを残し、自分達が脱落するために。こうすることで、それぞれ入るはずの分け前を、りっちゃんから貰える。
   もちろん、りっちゃんが払いきれる額ではないけど……ね)

紬「りっちゃん」

律「……何だよ」

紬「ひとつだけ、ヒントをあげるわ」

律「……」

紬「私達は、早く脱落したい。だから、込め役にりっちゃんがいない、1、2ゲーム目では、
   弾を込める位置は2人とも同じにするわ」

律「そんなこと分かってるっつの……」

紬「弾が同じ位置だった場合の被弾確率は50%……脱落するために1、2ゲーム目で両方とも被弾する……その確率は25%。
   無理な数字じゃないわよね」

律「……」

紬(そして、それを達成できなければ、私達は全員脱落……残るのはりっちゃん……つまり勝者はりっちゃん。
   試合に勝って勝負に負けるって、こういうことよね、りっちゃん)

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします」

紬(さて、りっちゃんは被弾できたのかしら……)

純「@、不発。A、不発。B、発砲。
   唯先輩、紬先輩、律先輩、憂が被弾されました。
   なお、B番には2発弾が込められていたため、2発被弾となります。
   このゲームの結果、唯先輩、紬先輩、律先輩、憂が被弾2、
   澪先輩、梓が被弾0となりました
   2ゲーム目は10分後に開始いたします」

律「とりあえず、最初の50%は引いたぜ……次のゲームでも引けばいいんだろ?」

紬「……そうね」

紬(でもねりっちゃん、さっきのは、本当はヒントでもなんでもないのよ。
   だって、私達5人は常に脱落できる……対してりっちゃんは、25%しか、その確率はない。
   だけど、同じ1巡の中で全員脱落した場合は仕切り直し……この繰り返しになる……
   つまり、りっちゃんが脱落できる可能性は0%なのよ。
   何だかおかしいわね、生き残るゲームのはずが、皆、脱落することを狙っているなんて……)

紬「次の込め役は私と憂ちゃんね。みんなよろしく」

唯「は〜い」

澪「分かってるよ、ムギ」

律「……」

紬(りっちゃん、足掻いてもしょうがないんだから、早く楽になってね)

-----

紬「私達は皆脱落する……りっちゃんを勝たせるために。
   そして、分け前を手にするために」

律「私も脱落すればいいんだろ……確率が低くても……!」

-10分後・2ゲーム目開始・込め役:紬、憂-

純「それでは、2ゲーム目を開始いたします。
   紬先輩、憂は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

紬(さて……今回込める場所は、私も憂ちゃんも、Dになっている。
   これまでずっと、Bに入れていて、りっちゃんもそこで撃っていたから、
   そろそろ変えないとね……。
   りっちゃんの被弾は2……つまり、あと1回でも被弾したら、りっちゃんは脱落となる。
   同じ場所に弾を込めるから、被弾確率は50%……だから、半々の確率でりっちゃんが脱落するか、
   りっちゃんは脱落せず私達5人だけが脱落して、結果的に私達の勝利になるか決まる。
   もっとも、仮にここでりっちゃんが脱落できたとしても、3ゲーム目で私達は脱落……
   3巡目で仕切りなおすだけ……)

憂「はい純ちゃん、弾を込めました」

紬「私もよ〜」

律「行ったれ!」

紬(りっちゃんに勝ち目はない……勝ちを認めて欲しいわね。
   ……勝ちを認めるって、変な表現!)

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします」

紬(……この5人で組む作戦の最大のメリットは、裏切りが意味を成さないことね。
   例えば唯ちゃんと憂ちゃんが組んで裏切り、勝ったとする。
   でもそれでは、もともと全員が組んでいたりっちゃんに分け前を払う義務が発生し、
   得られる賞金は変わらない……いえ、むしろ減ってしまう。
   だから、裏切りの意味はない……裏切られることはない……)

純「@、不発。A、不発。B、不発。C、不発。D、発砲。
   澪先輩、唯先輩、律先輩、梓が被弾されました。
   なお、D番には2発弾が込められていたため、2発被弾となります。
   このゲームの結果、紬先輩、澪先輩、梓、憂が被弾2となりました。
   また、唯先輩、律先輩の被弾が3を超えたため、脱落となります。
   3ゲーム目は10分後に開始いたします」

律「……ふう、とりあえず脱落できたみたいだな……」

紬「そうみたいね、おめでとうりっちゃん。
   でも、分かってると思うけど……3ゲーム目は私達全員が脱落する。
   この意味は分かるわよね?」

律「……」

唯「あずにゃああああん、私死んじゃったよ〜〜!!」

梓「死んだ人間がここまでピンピンしてるわけないでしょう!」

澪「お前らはあいかわらずだな……」

憂「律さんは脱落しましたが、3巡目ではこうないかないでしょう」

紬「そうね〜、1巡分だけ勝負がつくのが伸びただけね」

澪「そうだな。……ところで、3巡目の弾の込め方はどうする?」

紬「えっと……あえて2巡目と同じということも考えられるけど……
   どちらにしても、今はりっちゃんに聞かれてしまう可能性が……」

律「……」凸

澪「律は落ち込み状態になったらそう簡単には復活しないさ」

憂「……正直なところ、どこへ入れても確率は変わらないですから、どこでもいいですけどね」

紬「それもそうね〜」

澪「そうだな……。
   ……ん?」

唯「……」

梓「……」抱き着いたまま

澪「話に入ってこないと思ったら、お前らまだやってたのか……」

紬「あらあら〜」

-10分後・3ゲーム目開始・込め役:唯、律-

純「それでは、3ゲーム目を開始いたします。
   唯先輩、律先輩は弾を込め、他の方々は自分に撃つシリンダーの番号をご記入ください」

紬(……このゲーム、りっちゃんが弾役にいるから、同じ場所に弾を込めることはできない。
   もちろん、偶然ということはあるけど……。
   でも、まだ脱落していない私、澪ちゃん、憂ちゃん、梓ちゃんの被弾は2。
   唯ちゃんの弾に被弾できればそれでいい。唯ちゃんが弾を込めるのはCだったわね)

律「……」

唯「込めました!」

姫子「あれ〜、唯は死んじゃったんじゃなかったっけ〜」

唯「むー、姫ちゃんあれだよ、赤いリボンを付けて、小さいライオンを持たせちゃうよ?」

姫子「えらい古いネタ持ってきたね……っていうか、分かる人いるの?」

唯「大丈夫、私もほとんど分かりません!」

姫子「じゃあいいか!」

さわ子(……ここでノったら負けだわ……!)

純「皆様の提出が完了いたしました。これより結果を発表いたします。
   @、不発。A、発砲。紬先輩が被弾されました」

紬(あら……りっちゃんの込めた弾に被弾したみたいね……
   まあ、脱落できればどちらの弾に被弾しても関係ないわね)

紬「唯ちゃん、私も死んじゃった!」

唯「くせ毛仲間だもんね〜、一緒だよ!」

純(……あの程度でくせ毛だと……ふざけているのか……!?
   2人がくせ毛って……じゃあ唯先輩は髪止め取ったら前髪がシュバババッってなるんですか?
   紬先輩なんて髪すごく綺麗だし……なめてるし……くせ毛をなめてるし! 爆発するんだぞ、爆発しちゃうんだぞ私の髪は!!)

純「ぅぅぅうう……どかーん!!」

紬「!?」

唯「うおお!?」

純「あ……すいませぬ……」

律「……」

律(ムギは私の弾に当たったのか……。まあ、ムギは私の込めた弾の位置を知らないから、
   そうなっても別におかしくないか。これでムギは脱落……っと。
   でも、私の弾の位置、知っている奴がいる……私の弾に被弾しないために。

   そして逆に、1、2ゲーム目で込められる弾の位置、それを教えてもらっていた。
   だから、ムギが言うような確率、何も意味がない。私が被弾したのは当然だったから。

   さて、変なことにならないうちに、さっさと決めてくれよー)

澪「……」

澪(これでムギが脱落か。あとは梓と憂ちゃん……この2人は、唯が入れた、Cの弾に被弾し、脱落する。
   そういう決め事だからな、私達5人の戦略は。
   ……でも私は被弾しない。
   昨日、律を除く5人で集まったとき、私は”律を反省させるため”とか適当なことを言って、
   1巡目で勝負をつけることをしないように仕向けた。
   でもそれは、私の勝利のため……律と組むため……1巡目が終わった後、改めて律と組むためにそう言っていた。
   そもそも反省させるなら、律を勝たせることによって、皆に分け前を払わせる……それで十分だしな。
   2ゲーム目に弾を避けなかったのは、皆を信用させるため……裏切りなどないと。
   でも、ここで全員脱落にはならず、私だけ残る……。

   私は、1巡目と2巡目の間の休憩時間……あのティータイムのとき、私は律にケーキを渡していた。
   そしてそれと同時に、あらかじめ用意してあったメモを渡した……だから私は律に、”ケーキを見ればやる気が出る”という表現をしていた。
   あの真意は、ケーキを見るのではなく、ケーキと一緒にあるメモを見ればやる気が出る、ということだった。

   メモの内容は、ゲーム開始前の律との契約……どちらかが勝てば、賞金を半々にするというもの解除するということ。
   そして律の分け前を無しにする代わりに、律を脱落させるというもの。そして、勝つのは私。
   そのために、私は律に、私達が込める弾の位置を教え、逆に律は、律が込める弾の位置を教えてくれる。
   まあ、律が弾を込める位置はメモで私が指示していたんだけど。
   逆に、私達の込める弾の位置は、携帯のバイブを利用し、その振動回数によって教えていた。
   こうすることで私が勝ち、賞金の半分ではなく、全ての賞金が手に入る。まあ、律に全く渡さないっていうのも悪いな。少しくらい分けてやるか)

澪「……」

純(どかーんどかーん、リア充ならぬ髪充は爆発しろ! 澪先輩以外!!)

澪「……鈴木さん、続きいいかな?」

純「あ! すいません……!」

澪(私が自分に撃つのは、律と唯の弾を避けた、B、D、E。なんとなく@番って嫌だからな……。
   まあ、どこで撃っても同じこと。律と唯の弾がないところならば……!)

-----

澪(私は律と組み、お互いに弾を込める位置を教えあっていた……。
   そして、ムギの戦略のように律を勝たせるのではなく、私が勝つ……律との契約は解除しているから、
   賞金は全て私のものだ!)

純「それでは、続けていきます。B、不発」

律「……」

律(それにしても、ホントにムギの作戦を1巡目に実行されなくてよかったぜ。
   澪が止めてくれたみたいだけど……まあ、澪は自分の作戦を実行するために、そう言ったんだろうな。
   結果的に私の賞金はなくなったけど、とんでもないマイナスを抱えるハメになるところだったんだから、
   よかったということにするしかないか。それにしても、驚いたよな……)

澪(さようなら、梓、憂ちゃん)

純「C、不発」

澪(……。
   ……あれ、銃声……は?)

澪「す、鈴木さん、銃声を鳴らすの忘れてるぞ」

純「……銃声は発砲したときにしか鳴らしません」

澪「え……それはおかしいだろ、だってCには唯が弾を込めているはずだろ?」

純「いいえ、Cに弾は込められておりません」

澪「な……に……?」

澪(ちょ、ちょっと待て、私が自分に撃つのは、B、D、E……まだ弾が一発残っていることは、私は被弾してしまう……!
   でも、何で……!?)

律「……」

律(……本当に驚いた、こういうことか。
   何が驚いたって、休憩時間のとき、私の分け前を無しにする代わりに、私と再び組むという提案……
   それをしたのが、澪だけじゃなかったってことが、だ)

澪(まさか唯が裏切って……いや、唯はすでに脱落してるから意味がない……じゃあ、私の動きを読んで……。
   ……そんなことをできる奴、1人しかいない……!)

憂「……澪さん」

澪「……!」

憂「残念でしたね。1人だけ抜け駆けしようだなんて、甘いですよ?」

澪「やっぱり憂ちゃんの仕業か……よく気づいたね……私が裏切ること……」

憂「はい。……ですが、もしかしたら今、逆の立場だったかもしれません。
   昨日5人で集まったとき、澪さんは1巡目で勝負を付けることはやめよう……そう言いましたね。
   どういう理由であれ、本当に5人で賞金を獲得しようと思っているのならば、1巡目で勝負をつけることはしない、
   そんなことを申し出るのはおかしいです。となると、1人の賞金が多くなる計画を考えていることになる。
   ですけど、実はその1巡目で勝負をつけることをしない、というのは、私も言おうと思っていたんです」

澪「……つまり憂ちゃんも、2巡目から改めて律と組むつもりだったということか。
   でも、私が先に動いてしまったばかりに……」

憂(本当に澪さんが先に動いてくれてよかった……下手をしたら、今狼狽していたのは私だったかもしれないから……。
   でも、お姉ちゃんが込め役にいるから、その状態でも有利に動けたかもしれないけど……。
   いや、それだと私以外に律さんと組んでいる方がいること、それに気づけないか……)

憂「ただ、確かに昨日の段階から澪さんが裏切ることは分かっていましたが、1巡目以降のどのタイミングで組むのか、
   それが分かっていませんでした。もしかしたら、1巡目で全員脱落することを5人で計画している、
   そのことを昨日の段階から律さんに言い、組んでおく可能性も考えられましたが……
   律さんの様子を見る限り知らなかったようですし、そもそも、自分以外の5人が組んでいる、
   その事実を、ことばではなく実際に突きつけていない段階で、律さんの賞金を無しにして組む、
   そんな理不尽な条件を提示できるとは思えません」

澪「……つまり、私をずっと観察していた……と。今思うと、1巡目と2巡目の間の休憩時間、
   憂ちゃんはやけに私の近くにいた……私がケーキを律に運ぶとき、紅茶を持ってきたのは憂ちゃんだったし、
   律が外で食べるといったとき、お盆を持ってきたのも憂ちゃん……。
   普段から憂ちゃんは、気を利かせることが多かったから不自然に感じなかったけど……あのときか……」

憂「……さすが澪さんです、気づくのが早いですね。
   私が最も注目していたのは、澪さんが、すでに打ってあるメールを律さんに送信することでしたが、
   どうもそれをする様子はない。
   そうなると、直接話すか、メモのようなものを渡すかの2択。
   でもそれは、律さんが、外で一人で食べる、それを言ったことで明らかになりました。
   そのことから、澪さんがあのケーキと一緒に、メモを渡したと分かったんです。
   そして私も、あらかじめメール文やメモを用意していたので、お盆と一緒に、そのメモを渡しました」

紬「あれ……今更だけど、どういうことだってばよ……? 澪ちゃんが私を裏切っていて、憂ちゃんはそれに気づいていて……?」

姫子「琴吹さんは犠牲になったんだ……2人の作戦の……その犠牲にね……」

いちご「今いいところ。邪魔しないで」

紬「むぎゅ……」

澪「……いや待って、1つ分からない……憂ちゃんは、律の込める弾の位置をいつ知った……?
   弾の位置を指示したのは私……さすがに私のメモを読むことは不可能だろうし……。
   あ……いや、まさか……!」

憂「……その反応は、やっぱり澪さんも同じ方法で律さんに伝えていたんですね、私達た込める弾の位置を。
   携帯電話のバイブ機能で、律さんから教えてもらいました。振動が2回だったので、弾の位置はAと分かりました。
   逆に私達の弾の位置は、澪さんが教えていると思ったので、伝えませんでしたが。
   律さんにとっては、自分が勝たなければマイナスは発生しないので、誰でもいい、誰かが勝ってくれれば、それでよかったんです」

澪「あとは唯に、本来入れるはずだった、Cではない位置に弾を込めさせる……」

憂「そのとおりです。澪さんはAとCを避けて自分に撃っていると思うので、
   被弾確率は75%ですが……澪さんのその様子を見ていると、D、Eの両方とも、自分に撃っていますね?」

澪「……」

憂(どうやら当たっているみたいだなあ。お姉ちゃんが込めた弾の位置は、本当はE……だから、私が自分に撃つ位置は、
   @、B、Dにしている。
   あとは、梓ちゃんがEを選んでいるかどうかだけど……梓ちゃんの場合、少なくともCは選んでいるはずだから、
   被弾確率は70%……澪さんよりも少し低い数字になる。まあ、梓ちゃんなら、脱落しない場合は組んでもいいかな。
   梓ちゃんは脱落するために、Cを選んでいるんだから、裏切るつもりはなかっただろうし……)

憂「あ、ごめんね純ちゃん。止めちゃってたみたいだね」

純「いいえ、それではDから続けます」

憂(梓ちゃんが、どこで撃つのか……)

純「D、発砲」

憂(梓ちゃんがEで撃っていれば被弾……残るのは私だけとなって、勝利になる……)

純「澪先輩、憂が被弾されました」

澪「……!」

憂「……!?」

憂(あれ……銃声……? まだEじゃない……よね……? それに、私が被弾……!?)

唯「……」

憂「お、お姉ちゃん……?」

憂(裏切った……!? お姉ちゃんが、私を……?? な、何で……そんな……!)

憂「そんな、嫌だよ……お姉ちゃん、お姉ちゃん……おねえちゃあん……!」

-----

-3ゲーム目-

純「D、発砲。澪先輩、憂が被弾されました」

唯「……」

憂(お姉ちゃんが弾を込める位置はEのはず……裏切られたの……? 私が……? お姉ちゃんに!?)

憂「お、お姉ちゃん……何で? 私はEに入れてね、って言ったよね……?
   裏切ったの……? 嫌だよ……そんな……お姉ちゃん……おねえちゃあん……」

唯「……? あれ、何で憂はDで撃っちゃったの? Dで撃ったから被弾しちゃうんだよ〜」

憂「な、何言ってるのお姉ちゃん……お姉ちゃんが弾を込めるのはEって言ったよね……?
   だから私はEでは自分に撃ってないけど、Dでは自分に……」

唯「え、だって……」

純「このゲームの結果、澪先輩、紬先輩、憂の被弾が3となり、脱落となります。
   よって、6連射ロシアンルーレットの勝者は、梓となります」

憂「……!」

澪「……!」

紬「……!」

梓「……憂、唯先輩は裏切ってないよ」

憂「梓……ちゃん……。梓ちゃんの仕業……だった……の……?」

憂(そうだよ……お姉ちゃんが裏切るわけないよ……。疑ってごめんなさい、お姉ちゃん。
   でも……梓ちゃんが……どうやって……?)

律「……澪、憂ちゃん、悪い。私、梓とも組んでたんだ」

澪・憂「……!」

梓「憂、言ってたよね。律先輩にとっては、自分以外の誰かが勝ってくれれば、それでよかった、って。
   ……とはいっても、私は澪先輩や憂みたいに、計画的に組んでたわけじゃないんです。
   私、休憩時間のとき、トイレに行ったじゃないですか。
   もちろん、あれは本当にトイレに行ったわけじゃなく、ただ飛び出したかっただけなんですが……
   あのとき、外で何か読んでいる律先輩を偶然見つけました。
   私はあのとき初めて、昨日5人で集まったときの、澪先輩のおかしな発言に気づいたんです。
   やっぱり、本当に組んでいるのなら、1巡目で勝負を付けないというのはおかしいです。
   だから、私も律先輩と組む、そう考えたんですが……」

-1巡目と2巡目の間の休憩時間・部室外-

律「梓……」

梓(律先輩……何か読んでる……だから外で食べるなんて言ったんだ……。
   こんなことをしてるってことは、裏切るつもりの人がいるってことだ……律先輩と組むってことは、
   やっぱり澪先輩かな……ううん、あのおかしな発言……あれを考えると、澪先輩しかいない。
   ここで改めて組む意味は……律先輩の分け前を少なく……いや、無い状態にして、
   律先輩を脱落できるように、弾の位置を教え……そして自分が勝つ……。
   だったらそれを私も……! この現場を見られたんだ、律先輩は、澪先輩と組むことを否定しない。
   なら、私のやることは……)

梓「律先輩、澪先輩と同じ条件で私とも組みませんか?
   2人と組めば、律先輩が勝ってしまう確率は減りますよ?」

梓(なんて、澪先輩が裏切るんだったら、確率なんて関係ないんだけど……)

律「いや、でも……」

梓(……渋ってる……? この条件、律先輩にとって、たくさん組んだほうが有利になるはずなのに……
   分け前が入らないとはいえ、律先輩が勝ってしまうよりもいいに決まっているのに……)

梓「じゃあ、賞金5万円のうち、1万円を律先輩に渡すというのはどうでしょう」

梓(さすがに、律先輩と折半っていうんじゃ、何も変わらないわけだし)

律「……それならまあ、いいけど……」

梓「ありがとうございます。じゃあ、律先輩が込める弾の位置、教えていただけませんか?
   代わりに、律先輩が脱落できるように、私達が弾を込める位置をお教えしますから」

律「いや、それは他の奴からも教えてもらえるからいいよ。
   私が込める弾の位置はAだ」

梓「あ、ありがとうございます。じゃあ契約しましたよ?
   あまり長い間ここにいるのは不自然ですので、私はこれで失礼します」

律「……ああ」

梓(……なんだろう……何か気になる……。
   ”澪先輩”と言わず、”他の奴”と言った……。
   それと、昨日の澪先輩の発言のおかしさ……私でさえ気づけた不自然さ……)

梓「……!」

梓(……憂! そうだ、憂も気づいてたんだ……しかもたぶん、昨日の段階から……!
   よく見れば、律先輩はメモのようなものを2枚持っている……片方は澪先輩、そして他方は憂の……!
   私が勝つためには、律先輩に、澪先輩に伝えた弾の位置とは違う位置に込めてもらう必要があったけど……
   あの律先輩の様子じゃあ、それは無理……でも、憂も澪先輩の動きに気づいて、何かしているのであれば……!)

-2ゲーム目終了後(唯が梓に抱き着いたとき)-

唯「あずにゃああああん、私死んじゃったよ〜〜!!」

梓「死んだ人間がここまでピンピンしてるわけないでしょう!」

梓(澪先輩以外で律先輩と組んでいるとすれば、憂しかいない……そして憂が律先輩以外で組むとすれば唯先輩に決まっている……。
   どこかで唯先輩と話せるタイミングが欲しかったけど……今しかない……! 今なら私達に注目は集まっていないから……。
   ……これが日常的な風景になっているのってどうなんだろう……って、今そんなことはどうだっていい!)

梓「唯先輩、もっと抱き着いてください」

唯「おお! あずにゃん、ついに落ちたねぇ〜」

梓「時間がないので、私の質問にだけ答えてください」

唯「……うん?」

梓「実は私、憂と組んでます。唯先輩は憂と組んで、本当はCに込めるはずの弾を、別のところに入れますよね。
   でも、さっき憂から言われたんです、その弾の位置が、澪先輩にバレてます。
   えっと……唯先輩が弾を込める位置って……Dでしたっけ……?」

唯「あれ、違うよ。……でも澪ちゃんが気づいてるって……すごいね……」

梓(憂が澪先輩の動きに気づいている時点で、憂が、唯先輩に弾を込める位置を変えるように言っていることは分かっていた。
   唯先輩は、自分と憂しか知らないはずの事実を私が言ったことで、私を信じるとはいかないまでも、
   冷静な判断はできなくなる。
   込める位置をDかと聞いたのは、カマをかけただけ……もちろん、言い当てられる方がいいに決まってるけど……
   こっちのパターンでも大丈夫……)

梓「すいません、間違えました。Dは、さっきに憂に言われた、唯先輩に込めて欲しい弾の位置でした。
   さっき言ったように、弾をEに込めることは澪先輩にバレています。だから、弾はDに込めてください」

唯「そうだよ、EだよE〜。そっか、じゃあ弾はDに込めるよ」

梓(よし……! このゲーム、番号が遅い方が後に言われるから、こういう仕掛けをするんだとしたら、
   最後に相手を落胆させることができる、後ろの番号に弾を込めるのが定石。
   そして、Cはもともと唯先輩が込める位置だったから、残るはDかE……Dが違うと分かれば、Eしかない
   これで唯先輩は完全に私を信じたはず……!)

-ゲーム終了後に戻る-

梓「澪先輩と憂が、お互いをライバル視していることは分かっていました。
   だから、それ以外に敵がいるとは考えられない。
   そして特に憂は、唯先輩を信用しているから、自分が指示を出した動き以外のことをするとは想定できない。
   今まで私はあまり目立っていなかったので、逆にそれを利用させていただきました。
   もっとも、これは確実な方法じゃないのは分かっています。弾の位置を1つだけ変えたところで、
   被弾確率は75%……2人とも被弾するのは、約56%だったので……賭けでした。
   本当は律先輩の弾の位置も変えてもらいたかったんですが……律先輩を見ているかぎり、それはできなそうでしたので。
   でも、私以外にも生き残った人がいた場合は、その人と組むつもりでした」

唯「……ってことは、あずにゃん私を騙したんだね!? この泥棒猫!」

梓「泥棒って……」

唯「言いたかっただけです!」

律「猫の方は認めてるんだな……梓……」

憂「梓ちゃん……お姉ちゃんを騙すなんて……」

姫子「じゃあ賞金5万円はあずにゃんに贈呈〜おめでとう〜! あ、1万円は律に、だったかな」

いちご「おめでとう」

梓「ありがとうございます」

律「まあ、私にとっては、作戦が失敗した以上、最前の結果だったってわけか」

澪「梓……次から要注意だな」

純「あああ! オチは二度とごめんなので、お先に!! おつかれさまです!!」

さわ子「そろそろ私もゲームを考えないとね〜」

紬「次も楽しみね。またね〜」

純「ラストはそんなのでよかったんですか! って……またオチに!?
  うううううう、
  ど、どか〜〜〜ん!!
  さよなら!」

6連射ロシアンルーレット 終


TOP   3