けいおん部でライアーゲームをするようです!
第4ラウンド
第4ラウンド
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唯 さわちゃんのギターが50万円で売れました!
さわちゃんは、その50万円を、ライアーゲームで勝った人にあげるといいました。
参加者は、りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん、あずにゃん、憂と、そして私です!
これから4戦目の始まりです。
純「次のゲームはどうするんですか? 澪先輩」
澪「私に聞かれても……」
さわ子「もう私は聞かれることはなくなったのね……考えてないけど」
和(待て……まだ出るな……こらえるんだ……
……いや、あと35秒……35秒で宣言しよう……私がゲームを考えていると……!)
唯「もう紹介できる子いないよ〜」
姫子「あ、それなんだけどさ」
和「……唯、私の……」
いちご「私がゲームを考えた。これ」
独走ゲーム
いちご「リハーサルをしながら説明する」
和「」
和(きゃ……神いいいぃぃ!!)
梓(なんか外が騒がしいような……?)
いちご「まず、このゲームは2vs2vs2のチーム戦」
律「もう始まってるのか……ローテンションすぎて分からなかった……」
憂(チーム戦……今度こそお姉ちゃんと……!)
いちご「とりあえずチーム分けをする。本番も同じチームだから」
純(この人恐いんだよな……怒られる前に……っと)
純「それでは皆様、このクジをお引きください」
唯「今度は誰と一緒になるかな〜」
紬「楽しみ!」
梓「本当に、純はいつこういうのを準備してるんだろう……」
律「梓、それはもう考えないことにしたぞ、私は」
澪「……」
憂(お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん……!)
純(お願いだから憂と唯先輩同じチームになって……!)
純「チーム分けが決定いたしました。
このようになります」
A:唯、憂
B:澪、律
C:梓、紬
憂「やった! 純ちゃんありがとう!
……あ……大きな声を出してすいません」
唯「憂、よろしくね!」
憂「うん!」
純(マジで一緒になってくれてよかった……第2ラウンドのときはずっと睨まれてたし……)
いちご「1人ずつに、1〜3の数字を配る。使用回数に制限はないから、1ゲームごとに返却する。
とりあえず、1人1枚カードを出して」
律「え……まだ何も説明されてないんだけど……」
いちご「……」
澪「……出そうか」
梓「……はい」
純「皆様のカードが提出されました。
Aチーム、唯先輩2、憂2。
Bチーム、澪先輩1、律先輩3。
Cチーム、紬先輩3、梓3となりました……が、どうすればいいんでしょう?」
いちご「他のチームが出していない数字を出していたら進める……独走できるゲーム。
数字分進めて……6人だし……6マス先に進んだチームの勝利」
澪「……」
梓「……」
いちご「……」
律「……説明終わり?」
いちご「終わり」
紬「……えっと、他のチームが出してない数字ってことは、唯ちゃんと憂ちゃんみたいに、
同じチームで同じ数字っていうのは問題ないのかしら?」
姫子「しょうがない、私が補足しておくよ。
琴吹さんの言うとおり、チーム内で同じ数字っていうのは問題なくて、
出した数字の合計分進めるよ。
で、もう一回ルールを説明すると、チーム内で同じ数字がかぶってもいいけど、
他のチームと同じ数字を出したらダメ。
たとえば今のゲームだったら、Cチームは2人とも3を出しているけど、
Bチームが1と3を出しているから、3は単独の数字じゃない。
だからCチームは進むことができない。
逆にAチームは2人とも2を出しているけど、B、Cチームは2を出していないから、
2マスを2回、つまり4マス進める。
あと、Bチームが1を1枚出してるけど、A、Cチームは出していない、つまり単独だから、
1マス進めるってことね。
それで、先に6マス進んだチームの勝ち!」
唯「も〜、全部姫ちゃんが説明してくれればよかったのに〜」
いちご「……」
律(唯……ある意味さすがだが、触れたら負けだ……)
澪(……目を合わせないでおこう)
純「……把握いたしました。
このゲームの結果、単独の数字は1、2となります。
よって、Aチームが4マス、Bチームが1マス進みます。
……っていうか結果をさっき言われてしまったから私の立場が……」
いちご「……一応ルールをまとめた」
『独走ゲーム』ルール
・2vs2vs2のチーム戦
・1人ずつに、1、2、3のカードを配る。私用回数に制限はない
・1ゲームごとに6人が1枚ずつカードを提出する
・他のチームが出していない数字(単独)を出した場合、その数字分進める
・チーム内で同じ数字を出しても非単独にはならない
・チーム内の2人の出した数字が両方とも単独のものの場合、
合計分進むことができる
・先に6マス進んだチームの勝利
さわ子「じゃあゲームは明日ってことで」
梓「……先生、どんどん出番がなくなってますね」
律「澪、裏切るなよー?」
澪「律こそ。とりあえず作戦会議だな」
紬「ねえ、梓ちゃん!」
梓「そうですね……私達も作戦会g
紬「私、作戦会議をするのが夢だったの!」
梓(食い気味で……)
唯「じゃあ帰ろうか、憂〜」
憂「うん! お腹すいたでしょ、お姉ちゃん」
いちご「……」
姫子「じゃあ、明日ね」
-平沢家-
唯「ただいまー」
憂「おかえり、お姉ちゃん。私もただいま〜。
……それでお姉ちゃん、明日のことなんだけど……」
唯「あ、私も明日のことを考えたよ!」
憂「そうなんだ、聞かせてほしいけど、とりあえず私の……」
唯「えー、だって憂、負けてばかりだもんなー」
憂「え……そ、それは……でも第1ラウンドでは……」
唯「あのときは結局私の言ったどおりだったじゃん」
憂「それはそうだけど……でも、第3ラウンドではお姉ちゃんが梓ちゃんに騙されて……」
唯「あれだってさ、ムギちゃんの言うとおりにやっておけばよかったのに」
憂「え……」
唯「だからさ、私の考えた作戦で行こうよ!」
憂「でも……」
唯「いいじゃん!」
憂「……」
唯「ういー」
憂「……」
唯「……。
分かったよ」
憂「お姉ちゃん……。じゃあ私の作戦を……」
唯「……違うよ憂。分かったっていうのは、私と一緒にやるのは、
憂じゃない、ってことだよ」
憂「え?」
唯「じゃあ私は部屋に行くから。絶対来ないでね」
憂「お、お姉ちゃん!?」
-田井中家-
澪「組むならやっぱりムギか梓かな? さすがに憂ちゃんは危ないだろうし」
律「そうだなー。でも組むとしたら、他のチームのうち1人だよな。
賞金が減っちまう」
澪「そうだな。
……ん? 電話だ……」
律(電話……誰かが私達と組むためにかけてきたってことかな?
どうせあと1人は必要だったんだからちょうどいい……けど、
もし唯か憂ちゃんのうちの片方だったら……組むのはやめたほうがいい……。
この2人はまず間違いなく、互いを裏切ることはないだろうから……)
澪「……そんなこと信じられると思うか?」
律「……ん?」
律(何だ……? 誰なんだ、電話の相手は……?)
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-翌日・部室-
いちご「それじゃ、ゲームを始める」
律「淡泊な割に、しっかりここには来るんだもんなー……」
いちご「言ったはず、ライアーゲームが見たいと」
姫子「私も見学するの面白いからまた来ちゃったよ」
澪「私達は真剣なんだけどな……」
紬「だから面白いのよ、きっと!」
梓「確かに私も真剣ですが、やっていて面白いと感じてしまいますしね……」
純「それでは、カードをお配りします。
1ゲーム目開始は10分後となります」
唯「……」
憂「……」
-Bチーム(澪・律)-
澪「私達が出すのは予定どおりに」
律「ああ、分かってる」
澪「それと、私は唯と憂ちゃんの動きに注意を払うから、律はムギと梓を頼む」
律「ああ。絶対勝つぞ、澪!」
澪「もちろんだ」
-Cチーム(紬・梓)-
紬「じゃあ出すカードは予定どおり、私が2、梓ちゃんが3ね。そして……」
梓「……憂が1ですね」
紬(……昨日、私と梓ちゃんが作戦会議をしているとき、
憂ちゃんから連絡があって、自分と組まないか、と言われた。
どう考えても、憂ちゃん単独というのはおかしいから、唯ちゃんも組むということ……
そう思ったけど、憂ちゃんの話では、唯ちゃんとケンカしてしまったらしい……)
梓「憂、昼休みの時泣いてました……お姉ちゃん……唯先輩に嫌われたって。
本当は仲直りをするために唯先輩と組みたかったけど、
憂が負けたことで、唯先輩はもう信用してくれないから、
唯先輩と組まずに、勝つしかない、って……私のことを認めてもらうんだ、って……」
紬(泣いていた……いくらなんでも、演技でそんなことができるとは思えない……)
紬「……まあ、私達も誰かと組む作戦を取ろうとしていた……
憂ちゃんも同じ作戦を考えていたから、ちょうどよかったといえば、そうなんだけど……」
梓「……やっぱり、唯先輩と憂が仲違いしている、そう思い込ませるためのトリックだと考えちゃいますよね。
だけど、私は憂のこと見ていられなかったですから……」
紬「……でももう組んだんだし、これで勝つことを考えましょう」
紬(だけど、裏切られる可能性がることも考えておかないとね……)
梓「はい!」
紬(私達の作戦……それは、私達以外のもう1人と組むことで、3種類の数字を、常に出すようにするということ。
このゲームは、6マス進んだチームの勝ち……ということは、3を2枚出し、他のチームが出していない場合、
たったの1ゲームで勝負がついてしまう。
もちろん、それを実現させるのは難しいことだけど、大きい数字である3を阻止すること、
あわよくば自分達の歩みを進めるために、毎ゲーム、3だけは絶対に出す必要がある。
でも、そのことを考えると、このゲームで出すカードというのは、
自分達が歩みを進める可能性があるのと同時に、相手の歩みを邪魔することができる可能性がある、ということになる。
つまり、攻守一体のカード。
だったら、チーム以外のもう1人と組み、計3人で
3種類のカード1、2、3を、常に全て出してしまえばいい……そうすれば、
今回組んでいないBチームの、澪ちゃんとりっちゃんの動きは完全に阻害することができるし、
Bチームは2人しかいないのだから、2種類のカードしか出せず、残った1つの数字分、歩みを進めることができる。
後は、私、梓ちゃん、憂ちゃんが、それぞれどのカードを出すか。
でもそれは簡単な問題。私達のチームと憂ちゃんは組んでいる。でも、憂ちゃんのチームが勝った場合、
唯ちゃんも当然賞金を手にすることになるから、賞金は4人で分けることになる。
でも、私達のチームが勝てば、私達2人と憂ちゃん、3人で分ければいい。
だから、私と梓ちゃんが大きい方の2つ……3と2を出し、憂ちゃんが1を出すことにした。
もちろん、澪ちゃんとりっちゃんが大きい数字を出してくる可能性の方が高いんだろうけど、
逆にそれは私達にも言えることで、そう読んだ澪ちゃん達は、あえて小さい数字である1を出してくるかもしれない。
そうなれば儲けもの。
そしてそうならなくても、憂ちゃんのチームであるAチームが歩みを進めることができる。
Aチームが勝っても、少し少なくなるけど賞金は入るわけだしね)
梓「……この作戦、必勝ですよね。ムギ先輩はすごいです。
憂も考えていたみたいですけど……これで澪先輩を出し抜けるはずです!」
紬「そうなるといいわね!」
-Aチーム-(唯・憂)
唯「……」
憂「……」
-10分後・1ゲーム目開始-
純「それでは、1ゲーム目を開始いたします。カードの提出をおねがいいたします」
律「はいよっ」
澪「よろしく」
梓「おねがい」
紬「進みますように〜」
純「皆様のカードが提出されました。
Aチーム:唯先輩1、憂1。
Bチーム:澪先輩3、律先輩2。
Cチーム:紬先輩2、梓3
となりました」
紬「……!」
紬(唯ちゃんと憂ちゃんが同じカード……さっき2人を観察していたけど、相談はしていなかったから、
唯ちゃんが偶然同じカードを出したということかしら……)
純「このゲームの結果、単独の数字は1となります。
よって、Aチームが1を2枚出されていますので、
2マス進みます。
結果
A:2
B:0
C:0
それでは、2ゲーム目は10分後に開始いたします」
紬(唯ちゃんと憂ちゃんの様子を見ている限り……本当にケンカしていると思えてしまう……。
……いえ、それはもう問題じゃない……)
-Cチーム(紬・梓)-
紬「……梓ちゃん、さっきの結果、どう思った?」
梓「どうって……私達のチームが進めなかったのは残念ですけど、予定どおりBチームも進めなかったですし、
Aチームが勝つのは最高ではないとはいえ、悪くはない結果、だと……」
紬「……それはそう……よね……」
梓「……どうかしたんですか?」
紬「うん……ちょっと気になることがあって……。
今、憂ちゃんが1を出すのは予定どおりだけど、唯ちゃんも1を出したじゃない?
それについてどう思う?」
梓「う〜ん、同じ数字を出すと進める確率が低くなりますよね……もちろん、憂は私達と組んでいるんですから、
Aチームの歩をなるべく進めないようにわざとそうしたのかもしれませんが……。
それに、私達が2、3、をそれぞれ出すので、それを邪魔しないように、とも……。
でも、2人は全く話していなかったですし……偶然だと思います。
分かったことといえば、唯先輩と憂、本当にケンカしているんじゃないか……ということです……」
紬「……そうね。そういう考え方もできるわよね」
紬(もし……もし唯ちゃんが1を出した……それが偶然じゃないとしたら……。
憂ちゃんと会話をしていない以上、それが意味すること……1つしかない……!
とはいえ、まだ1ゲーム……これだけじゃ、まだ証拠不足よね……。
今は様子見をすることにしましょう)
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紬(1ゲームだけでは証拠不足……今は様子見をするのが一番よね……)
-Bチーム-(澪・律)
澪「……律、1ゲーム目の結果、どう思う?」
律「ん? まだ序盤だからな……進めなくてもしょうがないとしか……」
澪「じゃあ、唯と憂ちゃんについてはどう思った?」
律「ん……あいつら一言もしゃべってないよな……マジでケンカしてんじゃないか?
2人とも1を出した……同じ数字を出すのは、単独の数字だったとしたら、
そりゃ多く進めるかもしれないけど、バラバラの数字を出すより進める確率が低いよな?
しかも最小の1って……だったら、2を1枚出して、2マス進むことを狙った方がいいに決まってる。
ってことは、2人は本当に、全く話し合ってないってことだろ。
ああなったのは偶然ってことかな?」
澪「その可能性ももちろんある……けど、もしかしたら偶然じゃないかもしれない」
律「……どういう意味だよ? 隠れて2人が話し合ってたってことか?」
澪「いや……まあ、まだ判断するには早い。
でも、もし2ゲーム目も同じようなことが起こったとしたら……」
-Aチーム-(唯・憂)
唯「……」
憂「……」
-10分後・2ゲーム目開始-
純「それでは、2ゲーム目を開始いたします。カードの提出をおねがいいたします」
紬「……」
澪「……」
純「皆様のカードが提出されました。
Aチーム:唯先輩1、憂1。
Bチーム:澪先輩3、律先輩2。
Cチーム:紬先輩2、梓3
となりました」
紬「……!」
澪「……!」
純「このゲームの結果、単独の数字は1となります。
よって、Aチームが1を2枚だされていますので、
2マス進みます。
結果
A:4
B:0
C:0
それでは、3ゲーム目は10分後に開始いたします」
紬(1ゲームと同じ結果……間違いない……これは……!)
澪(憂ちゃんはムギ達と組んでいる……!
唯と組んだ、私達と同じだ……!)
-前日・田井中家-
澪「……」
律「電話、誰からだったんだ? 組もうという話か?」
澪「……唯からだった」
律「……唯?」
澪「私達と組みたいらしい……けど……」
律「いや、唯はまずいだろう……」
律(唯と組むってことは、憂ちゃんとも組むってこと……だから4人組みになっちまうから、
あんまりよくないんだけど……。それに裏切られそう……)
澪「律が何を考えているか分かるんだけどさ……」
律「?」
澪「唯の奴、憂ちゃんとケンカしたって言ってるんだ。だから、私達と組みたいたいって……」
律「……」
律(唯と憂ちゃんがケンカ? 私と聡じゃあるまいし、それは絶対ないだろー……。
どう考えても嘘……憂ちゃんの差し金というのはバレバレ……。
……だけど、憂ちゃんだってそんなこと分かってるだろうし……わざわざこんなことをするだろうか?
澪はどう考える……?)
澪「ケンカして腹が立ったから、私達と組んで憂ちゃんを裏切る……それで勝ちたいんだとか。
で、自分は一人でもやっていけるというのを見せたいんだって。
それで、私達のチームを勝たせるために唯は動いて、私達が勝ったら、
自分1人分だけの分け前を欲しい……そう言っていた」
律「……まあ、唯達のチームが勝っちまったら憂ちゃんにも賞金を渡さないといけないから、
それはそうなんだろうけど……。
それに、私達がムギか梓と組もうと考えていた内容と同じ……」
澪「……私は、唯と組もうと思う」
律「……澪!?」
澪「ただし、条件を付けるんだ……ちょっと待っててくれ」
律(どういうつもりだ澪……憂ちゃんは危険だって言ってたじゃないか……。
唯と組むのは、その危険を伴う可能性が高いってこと……。
っていうか澪、何か書いてる……?)
澪「できた。これ……契約書を書いて、明日契約させる。印鑑は持ってないだろうから、拇印かな。
内容はこう。
”平沢唯は秋山澪の指示に従う。
もし従わなかった場合は、この契約はなかったこととし、
罰金5万円を課す。
この契約を守り、秋山澪、田井中律のBチームが勝利した場合、
賞金の3分の1を支払う。
また、平沢唯の属するAチームが勝利した場合は、
平沢唯は、秋山澪、田井中律のそれぞれに賞金の4分の1を支払う”」
律「……そういうことか……これなら裏切られる可能性はない……か?
それにライアーゲームっぽい……」
澪「……もちろん、これでも完全に裏切りを防ぐことは難しいかもしれない。
憂ちゃんはやはりどう動くかわからない……もちろん、梓やムギも警戒すべきだけどな。
何にしても、裏切られることを前提として動く。
まあ、本当にケンカをしているという可能性もあるわけだけど。
ここで重要なのは、なんであれ唯の動きは縛れるということ……
これは、憂ちゃんの動きの一部を封じたに等しいし、あとは憂ちゃんの動きに注意すればいい。
それに、どうせ仲間が1人必要だったんだ……なら同じこと」
律「……まあ、私は澪に任せるぜ」
-放課後・ゲーム開始前-
唯「私、トイレによってから行くね〜」
澪「ああ」
紬「分かったわ〜」
澪(……よし、あとは私と律も、ムギに感づかれないようにするだけ……私と律、そして唯が組むことを。
こうして先に唯が教室を出ることは予定どおり……そして唯が向かったのは空き教室……私達と契約するために、
そこに行くように昨日連絡しておいた)
澪「ムギ、私は職員室によってからいくよ。というか律が呼び出し食らってるから付き添いだ。
もう梓がいるかもしれないから、先に部室に行ってやってくれ」
紬「了解!」
-空き教室-
律「唯遅いな……
……あ!」
唯「ごめんね、本当にトイレに行きたくなっちゃって」
澪「……遅いぞっ。
……これが契約書だ。私の署名と拇印は終わってる」
唯「とにかく、澪ちゃんの言うことを聞いていればいいんだね?
署名と拇印しました」
律「……」
律(澪に任せるといったものの……やっぱムギか梓と組むべきだったんじゃ……)
唯「……りっちゃん」
律「……ん?」
唯「私と契約して、協力関係になってよ!」
律「……ああもう! 分かったよ。結ぶぞ、その契約! 私も拇印完了!」
澪「唯にやってほしいのは1つだ。1を出し続けてくれ。
ゲーム中に他のチームと話していると、組んでいるのがバレるから、それだけは覚えておいてくれ。
万が一変更することがあったら、たぶんメールをすると思う。もちろん、直接話すかもしれないけど……。
とにかく、もしメールが来たとしても、ムギや梓、そして憂ちゃんには気づかれないようにしてくれよ?」
唯「分かりました!」
澪(唯が1、私が3、律が2……こう出せば、Cチームのムギと梓は動けない……
動けるのは私達か唯達だけになる……!)
-2ゲーム目後に戻る-
律「なあ、澪!」
澪「律、気づいたか? 今ので」
律「1ゲーム目と同じ……これって……もしかして憂ちゃんのほうは、ムギ達と組んでるってことか!?
それで、私達と同じ作戦を取っている……だから唯と憂ちゃんは、2ゲームとも1を出した……」
澪「そういうことだ」
律「……あれ、でも何かする必要はあるのか?
こうなってるってことは、3ゲーム目も同じになる……となると、唯と憂ちゃん達の勝ちで、
私達は分け前をもらえる……そりゃ、私達が勝つより少なくなるけど……」
澪「ああ、確かにそうだ。でも念のため、Cチームに対して、やっておくことがあるだろ?
Cチームも、唯達が勝ったら分け前をもらえる……つまり、利害は一致するんだ。
これまでと同じ動きをとってもらえるように……」
律「組むのか!」
澪「そうだ。
唯達を勝たせることが、私、律、ムギ、梓が賞金を得ることにつながるんだ。
でも、さっき律が言ってたけど、自分達が勝つよりも賞金が減る。だから、ここでCチームが何か動くかもしれないし、
逆にCチームもこのことには気づいているはずだから、私達が何か動く……そう考えてしまうかもしれない……。
そうなると問題だ……っと」
澪(早速メール……たぶんムギか梓だろう……唯と憂ちゃんはこちらを見ていない……)
澪「……ムギか。律、これで決まりだ」
律「ああ!」
澪(唯は私達と、憂ちゃんはムギ達と組んでいた……。
それによって、私達のチームか、ムギ達のチーム……どちらが勝っても、分け前を得られるようにしていた……。
だから、これでいいはず……唯達を勝たせれば、唯達は分け前を払うことで賞金はなくなるけど、
私達とムギ達は賞金を得ることができる……!
結果的に、私達の勝ちだ……!)
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澪(唯は私達と、憂ちゃんはムギ達と組んでいた……。
それによって、私達のチームか、ムギ達のチーム……どちらが勝っても、分け前を得られるようにしていた……。
だけどそれは、唯達のチームを勝たせることで封じることができる……そして、私達、ムギ達のチームは分け前を得ることができる……!)
律「ムギ達と組むのは、メールで知らせればいいよな?」
澪「……」
澪(……しかし、おかしいことがある……)
澪「いや、梓かムギと、直接話したい。
律、悪いが唯と憂ちゃんに話しかけてくれないか。話題はなんでもいい。
私はトイレに行くと言っていったん部屋を出る……それで、梓にも来てもらう。
律に話しかけてもらうのは、他の奴と話すことを不自然にならないようにするためだ」
律「……分かった、じゃあ言ってくるぜ?
おーい、唯ー!」
澪「……梓、私の少し後に外に来てくれ。話の内容は分かるな?
ムギは憂ちゃんの行動に注意していてくれないか?」
梓「分かりました」
紬「分かったわ」
-部室外-
澪「来たか。時間があまりない、手短に話す」
梓「とにかく、1、2ゲーム目と同じようにすればいいですよね。
で、唯先輩と憂を勝たせましょう!」
澪「ああ、それはそうなんだが……。まず、これは間違いないことだが……
唯と憂ちゃんはケンカなんてしてない。私達と梓達、それぞれと組むための嘘だ」
梓「え……で、でも憂は、唯先輩とケンカした内容を話してくれましたよ……」
澪「それは唯もそうだった。たぶん、家でケンカするフリでもして、その内容を話すようにしていたんだろう」
-前日・平沢家-
唯「……分かったよ」
憂「お姉ちゃん……。じゃあ私の作戦を……」
唯「……違うよ憂。分かったっていうのは、私と一緒にやるのは、
憂じゃない、ってことだよ」
憂「え?」
唯「じゃあ私は部屋に行くから。絶対来ないでね」
憂「お、お姉ちゃん!?」
唯「……」
憂「……」
唯「こんなかんじかな?」
憂「そうだね、迫真の演技だったよ!」
唯「ごめんね、私は形から入るたちだから〜」
憂「ううん、これでケンカの内容を聞かれても、困らなくてすむよね」
唯「そうだねー。
じゃあ、私は澪ちゃんに連絡するよ」
憂「うん、私は梓ちゃんにするね」
-当日に戻る-
梓「確かにあの2人ならやりそうですね……」
澪「ケンカが嘘ということは、このB、Cチームの両方と組む戦略……これは間違いなく憂ちゃんが考えたこと。
たまたま、唯と憂ちゃんが別々に組んだ、そんなはずはないんだ。
だから、1つ確認したことがある」
梓「確認ですか……?」
澪「梓達は、なぜ憂ちゃんと組んだ? おかしいと思わなかったか? 唯と憂ちゃんがケンカするなんて。
……私達はそう思って、組むかどうか迷った……けど、契約書を作って、
唯は私の指示に従ってカードを出すように動きを縛っている。破ったら罰金だ」
梓「あ……それ私達も同じです。憂が、信用されないのは分かっていたから契約書を作ってきた……って。
で、私かムギ先輩の言ったカードを出すという縛りを設けました」
澪「……そうか、ありがとう」
梓「はい。じゃあ、唯先輩達を勝たせるということでいいですね?」
澪「……ああ」
澪(……梓達も同じか……。
私がおかしいと思ったこと……それは、自分以外の2チームと組む作戦では、
自分達が勝ってはいけないから、歩を進めるなんてことはあってはならない……。
だから、1ゲーム目はしょうがないとしても、2ゲーム目に同じカードを出すなんておかしいということ。
それをしてしまうと、さらに歩を進めることになってしまう可能性が高いから。
唯は契約によって私の指示した1以外の数字を出すことはできないから、それを出すしかないとしても、
憂ちゃんは1じゃないカードを出し……自分達の歩を止める……そうすることができたかもしれない、そう思っていた。
だけど、憂ちゃんも契約で縛られていたということは、それはできなかったということ……。
つまり憂ちゃんにとって、自分達が4マスも進んでしまう……それは想定外だったということになる……。
それとも、私達と梓達が組まずに、少しでも多くの賞金を得ようと、自分達が勝つように動く……
そう読んでいたのだろうか……?
いや……憂ちゃんにしては読みが浅い……というより、憂ちゃんに都合良く考えすぎているように思える……。
それに、憂ちゃんが梓かムギに、戦略だと言って自分の出すカードを変えてもらうこともできたはずだし……。
……くそ……なんだこの違和感……納得いかない……!)
澪「私の考え方が間違っているのか……? それとも深読みのしすぎなのか……?」
澪(……考え方を変える……そうすれば……何か……!)
-同じ頃・部室内-
紬「今日はティータイムができなそうで残念だわ……」
律「そうだなー」
唯「あ、メール……」
律「おい唯ー、まさか、誰かから組もうなんていうメールが来たんじゃないだろうな〜?」
律(まあ、こっちで4人組ができている以上、そんなこと起こりえないんだけどな)
唯「一文字のおばあちゃんからだ、ほらー」
律「おばあちゃんなのに携帯使えるのか……あれ……これって偏見か?」
唯「……」
澪「おっと……もう9分たってたか……危なかった」
律「澪!」
唯「……おかえりー」
憂「……」
澪「3ゲーム目か……出すカードは決まってるな」
律「おう!」
梓(澪先輩がこっちを見ている……あれは、私達にも言ったってことかな。
分かってますよ、澪先輩。私達の目的は、唯先輩と憂のチームを勝たせることですから)
-3ゲーム目開始-
純「それでは、3ゲーム目を開始いたします。カードの提出をおねがいいたします」
梓「はい」
律「はいよ!」
紬「へい、お待ち!」
澪「……」
唯「……」
純「皆様のカードが提出されました。
Aチーム:唯先輩1、憂1」
律(よっし……これで決まりだ……唯と憂ちゃんのチームの勝ちっ……分け前が手に入るっ……!)
紬(やっぱり憂ちゃんは恐いわね……だけど、今回は私達が上回ったみたい……)
純「Bチーム:澪先輩1、律先輩2」
律「……?」
紬「……!」
梓「……え?」
純「Cチーム:紬先輩2、梓3
となりました」
梓「澪先輩が……1……!? 澪先輩は3を出すはずじゃ……!?」
紬「……澪ちゃん……まさか……裏切った……!?」
澪「……簡単なことだよ、契約を破棄して唯達と組む……
そうすれば、賞金は3人で分けることができるからな。
今の状態より、得られる賞金は多い」
律(待て……さっき唯に来たメール……あれ、まさか澪からか……!?
おばあちゃんからのメールだって言って私に見せてきたけど、私は受信時間なんて見てない……
本当にさっき来たかどうかなんて分からない……!
でも何でだ澪……何で裏切った……!?)
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-3ゲーム目-
純「皆様のカードが提出されました。
Aチーム:唯先輩1、憂1
Bチーム:澪先輩1、律先輩2
Cチーム:紬先輩2、梓3
となりました」
梓「澪先輩が予定と違うカードを……!?」
紬「澪ちゃん、裏切ったの!?」
律「澪……何でだよ……」
澪「……簡単なことだよ、契約を破棄して唯達と組む……
そうすれば、賞金は3人で分けることができるからな。
今の状態より、得られる賞金は多い」
律「……お前……!」
梓「澪先輩……!」
澪「……なんて言うと思ったか?」
純「このゲームの結果、単独の数字は3となります。
よって、Cチームが3を1枚だされていますので、
3マス進みます。
結果
A:4
B:0
C:3
それでは、4ゲーム目は10分後に開始いたします」
律「……あれ?」
紬「進んだの、私達のチーム……澪ちゃん達は0のまま……」
澪「……お前ら焦りすぎだよ」
律「……えっと……つまりどういうことだ?」
梓「で、でも! 唯先輩達を勝たせるんじゃなかったんですか!?」
澪「……順を追って説明するよ。
まず、唯、憂ちゃん。唯は私と律、憂ちゃんはムギと梓と組んでいた……
つまり、Aチームは、B、Cチームの両方と組んでいたことになる。
これは、B、Cチームのどちらが勝っても、Aチームに賞金が入るようにする戦略……
憂ちゃんの戦略。つまり、2人がケンカしたなんて嘘だ」
唯「……」
憂「……」
梓「だから、唯先輩達を勝たせればよかったんですよ……今澪先輩が3を出してくれれば……」
澪「確かにそうだ。そうなれば、唯達のAチームは6マス目に到達、勝利となっていた。
……だけどそれ以前に、この戦略を考えると、明らかにおかしい点があっただろ?」
紬「……。
あ……この作戦、唯ちゃんと憂ちゃんは勝ってはいけないはずなのに、
1、2ゲーム目とも進んでしまっている……。
確かに契約はあったけど、憂ちゃんから新しい作戦があります、
と言われれば、私は指示を変えていたかもしれないのに、憂ちゃんからのアクションは何もなし……」
澪「そういうことだ。この戦略で絶対にするべきことは、自分達が勝たないようにすること。
なのに、それをしなかったことが、まずおかしい」
律「でも待てよ。じゃあ、なおさらおかしいじゃないか。
自分達が勝たないようにする、それをしないってことは、
憂ちゃん達は自分達が勝とうとしてる、ってことだろ?
でもそれじゃあ、私達に分け前を払うことになっちまうじゃねーか!」
澪「そう、そこだ。私はさっき言った違和感を抱えつつも、どうしてもその問題だけは解決できなかった。
そこで、ちょっと考え方を変えた。このゲームに限らず、
今回含めて4回分のゲームを考えて……今回だけ、違う点があることに気づいた」
梓「違う点……?」
澪「契約書だよ。
これまでのゲームでは全部口約束……実際のライアーゲームでは、
互いに信用関係がないから絶対に契約書を使用していたけど、
私達は口約束で十分だった。実際、本当に組んでいる相手との決め事は誰も破ってない。
でも今回は、唯と憂ちゃんが分裂するという異常事態……
これに違和感を抱いた私は、契約書を持ち出すことになってしまった。
そして、逆にムギと梓に対しては、憂ちゃんから契約書を提示した……
憂ちゃんは、私は契約書を出してくると読んでいたということになる」
紬「でもそれは、単にお互いを信用するためなんじゃ……」
澪「さっき私が言ったことを覚えてるか? あれは冗談だったけど、”契約を破棄する”なんて言った。
私が憂ちゃんの目的として考えたのはそのことだったんだけど……
契約破棄なんて、互いの同意がないとできないんだ、私やムギ達が同意するはずがない」
律「じゃあどうしようもないんじゃ……」
澪「律、一つ聞きたいんだが、さっきお前は、唯と話してたよな?
そのとき、何か感じなかったか?」
律「ん……そうだな、いつもよりノリが悪い感じはしたが……
ゲームの最中だし、憂ちゃんとケンカしているんだから、
そりゃいつものようには振る舞えないよな……くらいに思ってたけど……」
澪「……やっぱりそうだったか。
……なあ皆、おかしいと思わないか? この状況を」
梓「そりゃ、おかしいですよ。澪先輩の言っていること、
いまひとつ掴みどころがないんですから」
澪「……そうじゃない。今私は、誰のことについて話してる?
唯と憂ちゃんだろ?
でも、私に質問を投げかけたり反論したりするのは、律、ムギ、梓だけ……。
おかしいだろ、本来それをやるのは、唯と憂ちゃんのはずだ」
憂「あ……」
唯「そ、それは、全部話だけ聞こうと思っただけで……」
紬「そういえば確かに……。
今だけに限らず、唯ちゃんと憂ちゃん、ゲーム中ほとんど口を開いていない……」
澪「そう。あの、2人がケンカしたってこと……あの嘘の本当の目的は、
2人がバラバラに動いているように見せることじゃない。
ゲーム中に、2人がまったく話さないこと……それを不自然に見えないようにするためだったんだ。
私達がケンカは嘘だと気づいても、2人はケンカをしている演技をしているから、
まったく話さないのは当然……私達はそう考えるだろうから」
律「そりゃそうだけど……それ、何か意味があるのか?」
澪「話せない理由があったんだよ。不用意に話してしまうと、ボロが出てしまうかもしれないから。
さっき律と話をしてた時、内心ひやひやしていたんじゃないか? 唯」
唯「……」
澪「実はさっき、唯にメールを送っていたんだ。内容はこう。
”このままだと問題がある。だから私が1を出す。唯はそれに応じて出してくれ”」
律(やっぱりさっきのメール、澪からだったのか……)
澪「唯、お前はこのメールを見て、いろいろ考えただろ?
例えば、私が、憂ちゃんとムギ達が組んでいることに気づき、
このまま唯達が勝ってしまうと、唯達は勝利しても賞金がなくなってしまう。
だから、私達Bチームが勝つように出すカードを変える、とかな。
他にもいろいろ考えたかもしれない……でも、そんなの唯らしくない」
唯「らしくない、って……私だって考え事くらいするよ、澪ちゃん!」
澪「いや……唯は私達と組んでいたんだ……でも、私が訳の分からないメールを送った……。
普段の唯だったら、分からないことがあったらすぐに私や梓に質問していたはずだ……勉強でもなんでも。
今回組んでいたのは私だったから、来るとしたら私。
でも、いくら時間がなかったとはいえ、それがなかった……」
唯「……」
澪「自分でいろいろ考えてしまったんだな……唯。お前らしくもなく。
そしてたぶん……そのうちの1つは、たぶん当たっている……あのメールの真意……!」
律「澪! もったいぶらないで教えてくれよ!」
澪「……いや、ちゃんと説明しないと、私の考えは信じてもらえないだろうからな。
結論を言う。
……憂ちゃんの狙いは、やはり契約を踏み倒すことだった」
紬「でもそれは、澪ちゃんや私の同意がないとできないって……」
澪「……そうだな、確かに言った。よく考えれば、契約を踏み倒す……その表現は間違っていた。
本当は、唯と憂ちゃんは契約なんてする気なんてなかった……だけど契約したんだ。
契約しても、それに従う必要がないから……ふりをするだけでいいから」
律「だから、分かんないってば……」
澪「そして最後に……私はさっき、唯も憂ちゃんも全く話していない、という話をした。
だけど、その話をしたのになお話さない……唯が少しだけ話した程度……。
この理由……それは、今私が言っていたことは、”この”憂ちゃんの戦略じゃないからだ。
そして、本当は反論できるんだ、”この”唯は。だけど、私に確証を与えてしまう可能性があるから、それができない。
もっとも、逆にこの状況こそ確証……私は確信できた。
もうとっくに、私の言いたいことは分かってるよな、唯」
唯「……。
……ふう、分かってるよ、澪ちゃん……
いいえ、澪さん。
正直言って、あのメールをもらった時点でバレていることは分かっていましたが……すべて澪さんが言ったとおりです」髪結ぶ
憂「も〜、
なんかすごくひどいこと言われてた気がするよ〜」髪解く
律「……唯が憂ちゃんで、憂ちゃんが唯……!?」
紬「入れ替わり……!」
澪「……正直言って、私は今の会話をするまでは確信がなかったんだが……話していく中で、
唯と憂ちゃんの反応が見られて、確信が持てたよ」
澪(よし……これで憂ちゃんの戦略は破った……あとするべきこと……。
それはもう決まっている……!)
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律「唯と憂ちゃんが……」
紬「入れ替わっていた……!」
憂「……でも、よく気づけましたね……澪さん」
澪「まあ……ね。
ただ、分からないこともある。
確かに、契約時は入れ替わるって名前を書き、拇印をすることで、
名前と拇印が一致せず、契約は無効にできる……だけど、入れ替わりは契約するときだけでよかったんじゃないか?
なぜゲーム中も入れ替わっていたんだ……?」
憂「……まず、契約は今日行いましたが、これは昨日の時点で行うという方法もありました。
例えば澪さん達と契約するなら、私がお姉ちゃんに成りすまし、澪さんか律さんの家に行く……。
しかしこの場合、澪さん達から見れば、”憂”が家に残っていることになり、
その場にいる”唯”を帰すと、何か計画をたてられる可能性がある……そう考えてしまうと思いました。
ケンカしているという話を聞かされたとしても。
そうなると、私は”唯”として澪さんか律さんの家に泊まり、次の日授業中も入れ替わっていなければならなくなります。
もちろん、休憩時間のどこかで元に戻ることもできたかもしれませんが……泊まるということに問題があります」
律「それは、私でもそうするだろうな……絶対家には帰さないぜ」
紬「りっちゃん、そのセリフ、ライアーゲームをやってないときに言ってほしいわ!」
憂「よって、ゲームをする当日に契約するしかなくなります。
そこで考えられるのは、放課後になったらお姉ちゃんと入れ替わり、澪さん達と契約し、
その後またお姉ちゃんと入れ替わる……つまり元に戻り、ゲームに臨むという方法。
ですがこの方法だと、契約とゲーム開始の間にいったん澪さん達の前から消えないといけない。
そうなると、どこかで澪さんが、私の目的は契約を無効にする……それを一瞬でも考えたとき、
その消えたタイミングでお姉ちゃんと私が入れ替わったという、判断材料にされてしまう可能性がありました」
澪「……ということは、今日の放課後の、契約前……やっぱりあのときか。
私達より先に教室を出たはずの唯が、トイレに行っていたとはいえ、
私達より来るのが遅かった……あのときは大して意識していなかったが……」
憂「はい。お姉ちゃんは放課後、紬さんに怪しまれないために、組む相手である澪さん、律さんとは別に、教室を出たと思います。
そして、トイレで待機していた私と服を交換し、私は”唯”として澪さんと、
お姉ちゃんは”憂”として梓ちゃん達と契約をしました。
こうすれば、契約からゲームまで、一度も澪さんの前を離れることはありません。
とはいえ……やはりゲーム中、無言という不審な行動……ケンカという嘘だけでは隠しきれず、
結局入れ替わりはバレてしまいましたが……今思うと、やはりこちらのほうがリスクが大きいですね」
澪「まあ……何にしても、憂ちゃんが参加すると聞いたとき、もしかしたら唯と入れ替わるかも……
なんて、最初の段階から、冗談ぽくそんなことを考えていたのが、役にたったかな」
憂「……」
澪(さて、これで憂ちゃんの戦略は破った……あとすることは……改めてムギ、梓と組むこと……!
でも、憂ちゃんはこれだけでは終わらない可能性がある……いや、そちらのほうが高いほどだ。
憂ちゃん達はすでに4マス目にいる。つまり、ゴールは目前だ。
そして、私達は4人で組み、賞金を分けることになるが、もし憂ちゃん達に付けば、
3人で組むことになり、私達と組むより多くの賞金を手に入れることができる……
よって注意すること……それはこの後の、憂ちゃんによる接触……!
でも、それを防ぐために私は、3ゲーム目に梓達Cチームの歩を進めておいた……!)
澪「律、ムギ、梓、もう唯と憂ちゃんのチームを勝たせるわけにはいかない。
だから、協力しよう。
3ゲーム目、私はあえて、Cチームが3マス進むように、カードの提出を行った。
だから、Cチームが勝たせるようにするが……念のため、契約書を書こう」
律「……まあそもそも、ライアーゲームってのは契約書を使うべきだったんだよな」
梓「私はそんなものなくても、約束したことは、皆さん守ってくれると思いますけどね」
紬「契約の内容はどうするの?」
澪「今までと同じだよ。
みんな、悪いけど私の指示に従ってもらいたい。こういうとき、1人の指示だけに従うようにしないと、
あとで穴を作ってしまうかもしれないから。
あとは、私の指示に従ってくれて、BかCチームのどちらかが勝てば、2つのチームで賞金は山分け。
もし指示に従わなかったら、5万円の罰金。
……もっとも、4人で組んだ時点で、Aチームの勝利はなくなるんだけどな。
さあ、そろそろ時間がない。みんな、署名と拇印を頼む」
唯「憂……4人で組まれちゃうよ……どうしよう……」
憂「お姉ちゃん……。
澪さんがやってくること、分かってはいるんだけど……」
憂(澪さんのやってくること……それは、3人で組んだ場合の延長……。
3人で組む場合、3人ですべての数字を網羅することによって、組んでいない残り1つのチームが
何を出しても封じ、逆に残り1つのチームが出していない数字で進むことができた。
そして4人で組む場合は、ある1つの数字を2枚出しするという違いがあるだけ。
梓ちゃん達はすでに3マス目にいる……ということは、3進めれば勝ちということだから、
3を出すのはたぶんCチーム……。
そうなると、2枚出しをするカードは2ということになり、それをするのはBチーム……。
もちろんこうじゃないかもしれないけど、どちらにしても、このままでは私達が進むことはもうできない。
これを打破するには、4人のうちの誰かと組むしかない……けど……)
澪「よし……私は書けた。
……あれ、梓って拇印を親指で押すんだな」
梓「……変ですか?」
紬「変じゃないと思うわよ、私は小指だしね」
梓「そういえば、最初に憂に化けた唯先輩と契約したときも小指でしたね」
律「まあ、拇印に決まりなんてないんじゃね?」
澪「そうだな」
憂(だけど、今更その4人と組むことなんてできない……私がそう動くなんてことは、
澪さんからしたらバレバレ……というより、そうするしかないんだから、考えるまでもない……)
唯「憂! いまから誰かに組んでくれるように頼もうよ!
そうだ、澪ちゃんだよ、澪ちゃんが指示を出すんだから、澪ちゃんと組めば……!」
憂「……!
……。
ううん、ダメだよお姉ちゃん。確かに、あの契約は澪さんの指示に従うという条件なんだから、
澪さんだけは契約なんて関係ないような状態になっている。
だけど、そんな大事なこと、私達にも聞こえるように言うかな……?
あれはわざと……澪さんは私をライバルとして認めてくれているみたいだから、
そんな私と組むような真似はしない……つまり、あの4人と今から組むことはできない……それを私達に伝えたんだよ。
……もうやれることはないんだよ……」
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澪(律、ムギ、梓との契約は完了した……3人は私の指示に背けば罰金となり、
私自身は裏切るつもりはない……憂ちゃんに勝ちたいから……。
もう憂ちゃんにできることはない……!)
憂「お姉ちゃん……今から4人のうち誰かと組むなんてできない……
もう、やれることはないんだよ……」
唯「そんな、憂……!」
純「それでは、4ゲーム目を開始いたします。カードの提出をおねがいいたします」
唯「ああああ! 始まっちゃったよぉ!!」
憂「お姉ちゃん、とにかくカードを出そう。お姉ちゃんが3、私が2だよ」
唯「分かったけど……でも……」
憂「失格になっちゃうよ」
唯「……うん……」
澪「私達のカードは、分かってるな?」
梓「はいです!」
律「間違っちまったら罰金5万だからな……」
紬「ムギューン」
純「皆様のカードが提出されました」
澪(私達がすることは、憂ちゃんも当然分かっているだろう……。
私達のやることは、4人で全ての数字をだし、憂ちゃん達の動きを封じつつ、
憂ちゃん達が出さなかった数字で進むこと。
Cチームはすでに3マス目にいるから、2枚同じ数字を出さずとも、3でゴールできる。
だから、梓が3を出していて、ムギは1。そして、Bチームである私と律は、互いに2を出した)
純「Aチーム:唯先輩3、憂2」
澪(……ということは、単独の数字は1か。
これでCチームが4マス目に行く……5ゲーム目はどうするべきか……)
純「Bチーム:澪先輩2、律先輩2」
Cチーム:紬先輩1、梓2
となりました」
澪「よし、皆、次の5ゲーム目に出すカードは考えておいた。
私が指示してばかりで悪いけど、次も頼むぞ」
紬「え……?」
澪「え……って、そういう契約なんだから、しょうがないだろ?」
律「違げえよ澪、結果!」
澪「結果……?」
純「このゲームの結果、単独の数字は3、1となります。
よって、Aチームが3を1枚、Cチームが1を1枚出されていますので、
それぞれ、3マスと1マス進みます。
結果
A:6 (7)
B:0
C:4
Aチームが、6マス目、ゴールに到達いたしました。
よって、独走ゲームの勝者はAチーム……
唯先輩、憂となります」
澪「……。
……?
……は? Aチームがゴール……勝者……!?」
澪(待て……何だ……何が起こった……何でこうなった……?
私達が出す数字……私が出すように指示した数字……
私は2、律は2、ムギは1、梓は3……これで全ての数字を網羅していたはず……。
3……? 単独の数字は1、3……1は憂ちゃん達は出していないから関係ない……
3を出すはずだったのは梓……でも、今梓が出したのは……2……!?)
澪「梓……お前……何で……!」
梓「……すいません澪先輩」
唯「あ、あずにゃ〜〜ん! 私の思いが通じたんだね!!」
梓「そ、そんなもの一切感じてないですから……」
律「でも梓、何で3を出さなかった!?」
澪「く……!」
澪(ここで梓が、私の指示した3、それを出さない意味がどこにある!?
確かに、憂ちゃん、唯、そして梓、この3人で組んだ場合、私達と組むよりも分け前は多くなる……。
だけど!
私達には契約があったんだ……私達を裏切ったら、罰金を払うという契約が……。
梓が自分の名前を書き、拇印を押した……それは私も見ていたし、契約書も私が持っている……。
でも、1つだけ分かっていることがある……。そして、同時に分からないことがある……。)
澪「梓……なぜ憂ちゃんと組んだ? ……いや、いつ組んだ?」
梓「……」
憂「……」
澪(契約書の件ももちろん分からないが……こちらのほうが謎……!
私が憂ちゃんの戦略をやぶったのは3ゲーム目……そして、3ゲーム目以降、
憂ちゃんと梓の接触は許していないはず……。直接話すことはもちろん、
メールをしていないか、メモを渡していないか、細心の注意を払っていた……)
澪「あ……! いや、だけど……そんなことが……」
憂「……少し気づいたみたいですが……やっぱり梓ちゃんが裏切ることによってメリットがあるのか……
それが分からないみたいですね。
今回私が考えた計画は、契約書で組んだ方を安心させ、実はその契約は無効である、
というものでした。実際、お姉ちゃんと私は、その計画を実行していました。
ですが、実は入れ替わりではなく、その前にひとつ、契約書を無効にする方法を考えていました」
澪「……つまり、それを梓が実行した……と……?」
梓「……そのとおりです」
憂「澪さん、サムキャップってご存知ですか?」
澪「さむきゃっぷ?」
憂「以前、クリスマス会をやったじゃないですか。
あのとき私、お姉ちゃんから一芸を披露しろと言われていたので……いろいろ考えていたんです。
その中の1つとして手品を考えていて、結局使いませんでしたが、サムキャップはそのために準備していました」
澪「手品に使うものなのか?」
梓「澪先輩、これです」
澪「……?」
澪(これって、梓は親指をこちらに向けているだけ……。
ん……?
よく見たら、梓の指にしては太いしちょっと黒い……?)
梓「この親指、取れるんで
澪「いやあああああ!?」
憂「澪さん、よく見てください。その親指が、というか、親指を模した、親指にかぶせるためのキャップを、
サムキャップといいます。手品では、これを親指に付け、この中に何かを隠して使います。
とはいえ、そういう本来の用途は関係なくて……重要なのは、このキャップには指紋が付いているということです」
澪「……あ……!」
澪(そうだ、私や律は、拇印に使用したのは人差し指……だけど、梓は親指だった……!
つまりこの契約書の、梓の拇印はサムキャップで付けたもの……梓のものじゃない……!)
澪「契約無効……か……」
梓「あのとき、ムギ先輩が小指で拇印をしていたのは助かりました。
私だけが違う指で拇印をするという状況を回避できましたから」
憂「最初はこれを、私とお姉ちゃんで使うことを考えましたが……澪さんに対して、その程度の計画じゃ、勝てないと思いました。
だから私は、梓ちゃんにこれを使ってもらうということにしました。私達の入れ替わりによる契約の無効化……
こんな大きなしかけの後に、こんな小さいもの……普通は考えませんからね」
紬「……契約が無効になることは分かったから、梓ちゃんが裏切ることのメリットは分かったわ……。
だけど、いつ組んだの……? ゲームの間はひとことも話していないはず……メールも、メモもないはず……」
梓「ムギ先輩、その裏切るということばが、そもそも間違っています」
澪「……最初から……ゲームが始まる前から組んでたってことだろ……。
さっきまでの話を総合すると、憂ちゃんは、入れ替わりに私が気づくことまで読んでいたということ……」
梓「そのとおりです。
私は昨日の段階から、憂に組もうと言われ、唯先輩と憂が入れ替わるトリックを聞いていました。
そして憂は、入れ替わりトリックが気づかれた場合、澪先輩がさっきみたいな行動をとることを読んでいました」
澪「……今にして思えば、梓はやたらと、”唯先輩達を勝たせましょう”というようなことを言っていたが……
こういうことだったのか……」
紬「……あ! そうだ、梓ちゃん……今日の昼休みに、憂ちゃんが唯ちゃんとのケンカのことを
泣きながら話していたと言っていたけど……ケンカは嘘だったんだから、当然それは嘘……!」
梓「はい。あれ、言った少し後に、しまったと思っていました。
憂が……いえ、憂に化けている唯先輩が仲間になっている……そう信じさせたかったので、思わず言ってしまいました」
澪「……そうか、憂ちゃんは唯に扮して私達に接触した……結果、それに気づかず契約してしまった。
でも梓達は、憂ちゃんに扮した唯と接触していた……唯がそこまでうまく演技ができるとは思えない。
だけど梓がそれをごまかしていたということか……」
梓「あ、それなんですが……確かに私もそう思っていたので、ムギ先輩にバレないように、どうフォローするか考えていたんですが……
唯先輩をフォローすることは一度もありませんでした。意外です」
唯「……2人ともひどいよ……。
それに憂……”もうやれることはない”って言ってたのに……絶対負けたと思ったよ……」
憂「……ごめんね、お姉ちゃん。あれことば、本当は、”やれることはやったから”もうやれることはない、って意味だったんだ」
澪「……ふう、やっぱり、最初に唯……というか憂ちゃんと組むという選択をしてしまったのが間違いだったのかな……。
でも、何か裏があると分かった上で組んで……憂ちゃんを上回りたかったのかな、私は」
律「……もう澪と憂ちゃん、実際にライアーゲームに出てもやっていけるんじゃないか……?」
いちご「賞金授与。おめでとう」
姫子「唯〜、妹さんに助けられてどうする〜」
唯「私も頑張ったんだからね!」
憂「お姉ちゃんがいないとできないことでしたから、そういうふうに言うのはやめてください」
姫子「……す、すいませんでした」
梓「唯先輩のことになると本当に冗談が通じないんだから……」
澪「憂ちゃん……やっぱり憂ちゃんに勝つには一筋縄ではいかないな」
憂「いえ……これで五分五分じゃないですか」
憂(でも……次に倒すべきは梓ちゃんでもあるんだよね……覚悟しておいてね……)
梓(……何? 寒気が……)
紬「皆おつかれさま」
純「もう最後になるのは確定だと思い、ディーラーモードで待機しておりました。
皆様おつかれさまです、次の戦いも楽しみにしております」
第4ラウンド 終
独走ゲーム 終