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    けいおん部でライアーゲームをするようです!

     ファイナルラウンド


ファイナルラウンド


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@ファイナル!

唯 ライアーゲームを5戦終え、今日は日曜日。
  今日は何もないはずでしたが、携帯が鳴って起こされました。

唯「ふぁ〜い……」

 電話の相手はさわちゃんでした。
 その内容は……



律「さわちゃん、何だよ急に! 日曜日なのに、こんな朝っぱらから学校に集まれだなんて!」

紬「休みの日の学校って、なんだかワクワクするわ!」

唯「だよね! 私なんてデジカメ持ってきちゃったよ!」

憂「私まで持ってくる必要なかったんじゃないかな、お姉ちゃん」

唯「ダメだよ! 貴重な休みの学校、収めたいに決まってるよ!」

律「だよな、唯! なんか神聖なかんじがするよな〜」

梓「休みの日でも学校は学校なんですから……ですよね、澪先輩」

澪「……」

梓(すでに構えてたー!!)

純(眠い……)

さわ子「はいはい、まだ皆集まっていないから、少し待っててね」

律「皆……って、これで全員じゃねーかー!」

さわ子「ううん、違うわ……あ!」

和「先生、お待たせしました。皆集まりました」

律「和!? 皆っていうのは……?」

恵「みおたん! また会いにきちゃった!」

姫子「今日は人数が多いね〜」

いちご「……」

エリ「差し入れ持って来た!」

アカネ「コーラです」

さわ子「これで皆集まったわね」

澪「皆って……先生以外に13人もいるんですけど……」

梓「まさか先生……」

さわ子「そう、この13人でライアーゲームをしてもらいます」

憂「これまでの倍以上の人数……」

紬「どうなるのか想像もつかないわ!」

純「ちょ、ちょっと待ってください。13人でやるってことは……
   私も参加するってことですか!? ディーラーは!?」

さわ子「今回のルール説明役、ディーラーはすべて私がやるわ」

純「そんなぁ……」

和「……憂、澪」

憂・澪「……?」

和「負けないわよ」

澪「……望むところだ」

憂「私も負けません、和さん」

唯「このゲーム、どうなっちゃうんだろう……!」

さわ子「さて、今回皆にやってもらうのは……

    3色の扉ゲーム

    今回も、リハーサルをしながら説明するわ。
    まずは皆、このカードを受け取って」

唯「白、黒、赤……のカード? あ、3色だ!」

憂「裏はトランプの裏面に似てるね」

梓「というか、トランプの上に紙を張り付けてあるだけみたい……。
   あ、下の方に自分の名前が書いてありますよ!」

澪「自分専用ってことか……交換防止?」

さわ子「そんなことろね。今回の『3色の扉ゲーム』は、
     エデンの園ゲームを参考にして作った、
     そのカードを使う変則的多数決ゲームといったところかしら。
     カードはそれぞれの色の扉を開けるためのカギで、
     より多くのカギが集まった扉だけが開く、そんなかんじね」

律「多数決か……」

さわ子「今まではこの部室だけを使っていたけど、今回は投票室として、
     3−2教室を使用します。
     投票室には1人しか入れない、というか、
     本番では部室を出られるのは1人だけで、
     その人が戻ってきたら次の人が投票に行く、といった形になるわ。
     でも今はリハーサルだから、皆で投票室に行きましょう」


-投票室(3−2教室)-

澪「あ……生徒会選挙で使ってた箱がある……」

さわ子「それが投票箱よ。じゃあ皆、その箱に、白か黒のカードを入れて。
     名前が書いてあるから、誰が何色を入れたかすぐに分かるわ」

唯「は〜い」

さわ子「……。
     はい、皆入れたわね、じゃあ開票します。
     見て分かるとおり、この投票箱は中を覗いても中身は見えないし、
     開けるには私だけが持っている鍵が必要。
     強引に中を見ようとしたり、開けたりしようとすれば、
     その時点で失格とします。

     だから、他の人が投票したカードの色は分からない。
     念のため、投票しなかったカードも私が預かるわ。
     このカードは1ゲームごとに返却するからね。

     じゃあ、リハーサルの結果を発表します。
     白、5。黒、8。赤、0。
     この場合は、黒が多数派だから、黒に入れた人は1P得ることができます。
     これは白が多数派でも同じよ」

律「おっしゃー! 私は黒に入れたぜー!」

紬「私は白に投票しちゃった……」

梓「それで、赤はどんな意味があるんですか?」

さわ子「投票されたのが白と黒だけの場合は、さっきみたいに単純な多数決が採用される。
     でも、赤だけは変則ルールが加わるわ。
     赤が多数派になった場合に得られるポイントは3Pなんだけど、条件がある。
     それは、赤以外の2色のうち、投票されたのが1色以内に収まっていること。
     例えば、こういう場合なら、

     白:2 黒:0 赤:11

     赤が多数派で、赤に投票した人は3P得られる。
     だけどこの場合だと、
 
     白:4 黒:2 赤:7

     赤以外に、白黒両方に票が入ってしまっているから、
     赤が多数派でもポイントを得られないし、赤に投票した人は2P没収されてしまう。
     この場合、白黒に入れた人は、その2つの中で多い色のほうが、1P獲得できる。
     それと赤は、こういうふうに少数派になってしまっても、

     白:11 黒:0 赤:2

     2P没収される」

和「赤はもろ刃の剣ね」

さわ子「それと、赤以上にポイントを失ってしまう場合があって……
     それは、どの色でも、その色に投票した人が1人になってしまった場合よ。
     多数決なのに1人しかいないって、最悪の結果だからね。
     例えば、こんな場合なら、

     白:1 黒:12 赤:0
   
     白の人は、5P没収。
     だから、こんなことになった場合、

     白:1 黒:1 赤:11

     白と黒の人は5P没収、赤の人は2P没収されるわけ。
     この場合は、白と黒の人は1P得ることはできないわ。
     没収が優先ということね」

憂「だいたい分かりました。
   票が黒と白だけなら単純な多数決だから、基本的にはこの2色を使うことになる。
   でも、一気にポイントを得られる赤……この色にいつ投票するかが鍵ということですね」

さわ子「そうなるわね。で、この投票を1ゲームとして、
     インターバルを10分、投票時間を30分とるから、
     みんな30分の間に投票を完了させてね。
     で、20ゲームを行って、最終的に最もポイントが高かった人の勝利」

純「20ゲーム……!?」

さわ子「それと、もう1つの大事なこととして、結果発表の方法。
     結果発表はさっきみたいに、各色に投票した人数だけを発表して、
     そこに誰が投票したか、ポイントの変動がどうなったかは発表しない。
     皆のポイントを発表するのは、5ゲームごとだけ」

澪「……ポイントの発表があるのは4回だけってことか」

さわ子「最後に、今回は契約書や携帯電話の使用は禁止するわ。
  
     ということで、ルールをまとめます」


『三色の扉ゲーム』

 ・変則的多数決
 
 ・1人につき、白、黒、赤の3色のカードが1枚ずつ配られる
 ・それぞれにプレイヤーの名前が書かかれている

 ・部室を出られるのは1人のみで、1ゲームごとに、2度以上外に出ることはできない
 ・投票室では投票箱にカードを投票、カードは1ゲームごとに返却される

 ・票が白と黒のみの場合は通常の多数決が適用される
 ・多数派になった色を選んだプレイヤーは1P獲得

 ・赤は多数派になり、かつ、白か黒の、どちらか一方にしか票がない、
   または、票が赤のみの場合3P獲得
 ・赤が少数派か、多数派でも白黒両方に票がある場合、2P没収
  この場合、白と黒のうち、多数派のほうが1P獲得

 ・どの色でも入れたプレイヤーが1人の場合5P没収

 ・結果発表では個人の名前は明かされず、各色に投票した人数のみが表示される
 ・5ゲームごとに途中経過を発表する

 ・契約書などによって投票する色を縛る行為は禁止

 ・20ゲーム行い、最もポイントを獲得したプレイヤーが勝者


さわ子「このゲームは今から1時間後に開始するわ。
     このゲームはかなり時間がかかるから、休日に集まってもらったってわけ」

律「んでも20ゲームで、1ゲームに30分の投票時間があるってことは、
   軽く10時間以上かかるってことだろー……さすがにやばいな」

紬「大丈夫よ! 今日はお菓子とお茶、それにお昼と夕ご飯も、
   私が準備させてもらうわ〜。斎藤! 部室に用意を!」

梓「おお……さすがムギ先輩……」

さわ子「あ! 大事なことを2つ言い忘れていたわ!」

澪「なんですか?」

さわ子「1つ! このゲームを、ライアーゲームのファイナルラウンドにするわ!」

唯「ファイナル……」

憂「……ラウンド」

さわ子「そしてもう1つ……今回のゲームの賞金だけど、ファイナルに相応しいものを用意したわ。
     その額は……200万円!」

律「に、200!?」

澪「いったいどうやって用意したんですか……?」

さわ子「なんやかんや集めたのよ」

純「なんやかんやってなんですか……」

さわ子「なんやかんやは……
     なんやかんやよ!
     さて、部室に戻るわよ。そこからなんやかんや1時間後にスタートよ」

-部室-

唯「おお! お菓子がたくさん用意してあるよ!!」

和「……」

和(さて、澪と憂……2人がどう動くか……。
   あの2人なら恐らくもう、気づいてい可能性があるわよね……)

澪「……」

澪(ファイナルラウンドか……絶対に負けられない……が……。
   和達……これまでゲームをやっていなかった7人……。
   後から揃って集まった、ということは、部室に来る前に、7人で話合いができた可能性がある。
   さらに5ラウンド目のときの和の発言……次のゲームのために見学、と言っていた……。
   恐らく和は……)

憂「……」

憂(和さんは恐らく、これまでゲームをしていなかった7人でグループを組んでいる……。
   そしてたぶん、今日集まるように仕向けたのも和さん……。
   昨日私達が帰った後も、和さんと先生だけが残っていたし……
   和さんなら、生徒会長権限で何かできそうだしね)

澪・憂(だから、私のやるべきことは……!)

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A

澪(和は恐らく……)

憂(これまで参加していなかった7人でグループを組んでいる……!)

澪・憂(だから、私のやるべきことは……!)

唯「憂ー、私達はどうしようか?」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん、私にまかせて!」

律「ぬー……」

律(なんだか動き辛いな……多数決なんだから、過半数のグループを作ればいいに決まってるんだけど……
   空気がピリピリしてて行動に出られない……)

紬「皆、お菓子やお茶の追加が欲しかったら言ってね」

梓「ムギ先輩は落ち着いていますね……200万円なんて、私には……」

和「……」

和(さて、ゲーム開始前に行動に出ておこうかしらね……)

和「姫子さん、ちょっといいかしら?」

澪「……!」

憂(和さん、動いた……!)

澪(だけど今、私が動くことはできない……まだ和がグループを組んでいるというのは、
   私の推測にすぎないから。
   でも、もし和が7人グループをすでに組んでいるというならば、
   私がすべきことは1つしかない。

   現状、私が今からグループを作ることは何の意味もない……
   和が7人で組んでいるならば、すでに過半数は取られているということになり、
   残り全員で組んでも6人組にしかならないからだ。
   そうなると、和グループ……それを利用すべきだ)

和「あ、律」

憂(和さんは、新しい参加者である、和さん以外の6人だけでなく、
   全員に話しかけている……これはグループをバレないようにするためか、逆に今組んでいるのか……。
   だけど、こういう誰と話していてもおかしくない、という空気は利用できるかな)


-1時間後・1ゲーム目開始-

さわ子「それじゃあ、1ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だけど、皆の投票が終わったら、その時点で開票するわ。
     私は投票する人についていくからね」

憂「……」

憂(誰も動かない……か……。当たり前といえば、そうなのかな……)

澪「……」

澪(少なくとも、和が動くまでは、こちらも動けない……。
   ゲーム開始前の様子を見ているかぎり、ほぼ間違いなく、和はグループを組んでいるからな。
   ……別の意味で動いている奴らはいるけど……)

唯「あ、りっちゃん! それ私のだったのに〜!」

律「もう食べちまった! あ、梓! それは私が育てたケーキ!」

梓「焼肉みたいなこと言わないでください!
   それに律先輩こそ、それは私がさっき食べたいと言ったじゃないですか!」

律「ライアーゲームだから嘘だと思っちゃいましたわ☆」

紬「まだたくさん用意してあるから、大丈夫よ〜」

澪(梓まで……。200万円の重圧に耐えきれなかったか……)

和「……皆行かないなら、私が最初に行ってもいいかしら?」

さわ子「和ちゃんが一番手ね。このまま硬直状態が続いたらどうしようかと思ったわ。
     あ、言い忘れていたけど、30分以内に投票しなかったら、
     ペナルティで5P没収だからね。ちなみに、投票室での立て籠もりは禁止だから」

和「じゃあ、行ってくるわ」

澪(和が投票に行った……!)

憂(今がチャンス……!)

澪「恵先輩」

憂「純ちゃん」

-数分後-

エリ「ただいまっー!」

憂「次、私が行ってもいいですか?」

唯「じゃあその次は私ね!」

さわ子「じゃあ憂ちゃん、行きましょうか」


-投票室-

憂「……」

憂(……さっきの、和さんが投票に行っているとき、私は純ちゃんと組んだ。
   純ちゃんはやっぱり和グループの1人……その純ちゃんと組めば、
   確実に多数派になる色に投票できる。
   和グループは全員で7人……ということは、和グループが投票する色は、
   多数派になる。だから、そこに私も投票してしまえばいい。

   純ちゃんからは毎ゲーム、和グループが入れる色を教えてもらうことになっている。
   そしてこの1ゲーム目……和グループが入れるのは黒だから、私もそうする。
   もっとも、このままだとずっと同点になってしまうから、別の計画もたてないとね……)

憂「先生、終わりました」

さわ子「じゃあ戻りましょうか」

憂(あとは、お姉ちゃんにこのことを伝えるだけ……)

-数分後-

澪(今回投票する色は黒……和グループである恵先輩から、
   和グループが投票する色を、毎回教えてもらうことになっているからな……。
   憂ちゃんも同じような動きをしていたようだけど……今はいい。

   だけど、あとあと憂ちゃんも和も、出し抜かないといけないな。
   
   この投票箱は確かに、中を覗くことや、開けることはできなみたいだ……。
   いずれ、今私がしている、和グループの1人から情報を流してもらっていることはバレる。
   だけど、誰が何色に投票したのか、その一部でも知ることができればいい。
   一応、律に借りたこれを……)


-1ゲーム目投票終了・部室-

さわ子「それでは、1ゲーム目の結果発表を行います。
     ルール説明で言ったとおり、ここでは各色に入っている票数しか言わないからね」

憂(お姉ちゃんに黒に投票するように伝えたし、
   澪さんも私と同じような動きをしていた……となると、黒に投票したのは10人以上か……。
   さすがに、赤に投票する人はいないと思うしね)

澪(律にも伝えておくべきだったか? ……いや、不用意に組むのはよくないか)

さわ子「1ゲーム目の結果は、
     白、9。黒、4。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

澪・憂「……。
     ……!?」

澪(白……? 多数派が白……!?)

憂(そんな……まさか純ちゃん……!)

和「……ふふ」

澪・憂「!」

和「残念ね、2人とも。
  分かっていたのよ、2人が、私が7人でグループを組んでいることに気づいていること……
  そしてそれを利用しようとしていることも。
  先に言っておくわ、あななたちと組んだ人は、嘘は言っていない……
  あなた達が話しかけた段階では、の話だけどね」

澪「……最初は黒に入れるように指示していたけど、
   私達の動きに気づいて、後で白に入れるように変更した、ということか……」

憂「……もしかして私達に、和さんがグループを組んでいること、
   わざと気づかれるように動いていたってことですか?」

和「いえ、そんなことないわ。でも私は、あななたち2人の力量を知っている。
   だから、私の行動はある程度バレていると思って、動いていたわ」

憂「だけど、教えて欲しかったよ……色を変えること。せっかく組んだのに……」

純(憂が私の名前を出してないってことは、ここで私が返事したらダメなんだろうな……)

和「……それはできなかったのよ」

澪「……できない? 契約書は禁止のはず……票を縛ることは……」

和「違うわ。
   考えてもみて。私達は7人……つまり、放っておいても多数派なのよ。
   私が投票する色を後で、しかも突然変えた、ということは、
   裏切り者の存在に気づいている可能性がある、と考えることができるわよね。
   となると、続いて裏切り者はこう考えるでしょう。

   もしかしたら、自分が裏切り者だとバレているかもしれない。
   ここで投票する色を変えるということを、憂や澪に伝えれば、
   グループから切られてしまうかもしれない……ってね。

   だから、裏切り者は何もできず、私の指示どおり動くしかなかった……ってこと。
   もしグループから切られでもしたら、孤立してしまう可能性もあるわけだしね」

恵(すごい……当たってる……)

澪・憂「……」

梓「そんなことがあったんですか……じゃあ白に入れていた私はラッキーだったんだ……」

紬「何もせず黒に入れてしまっていたわ……」

和「……」

和(もっとも、私は裏切り者が誰か、までは分かっていなかった……。
   だけど、グループのメンバーからすれば、そんなことは関係なく、不安にかられる。
   だからこそ、私の変更した指示どおり、黒ではなく白に投票した……。

   これで、憂と澪とは1P差ができた。この差は小さいようで大きい。
   それに、次の憂と澪の動き……これでだいぶ絞ることができる……。

   このゲームはいかに他のプレイヤーを支配できるか……それが勝負を左右する。
   グループ内の他の6人……純ちゃん、恵先輩、姫子さん、いちごさん、エリさん、アカネさんは、
   完全に私に従うということが、このゲームで証明できた。
   ゲーム開始前からグループを作っていたから少しずるいといえばそうだけど……
   私はゲーム自体に参加するのが初めてだから、これぐらのハンディはもらわないとね。

   さて、憂、澪……あなな達はどう動く?)

憂「……」

憂(最初はまんまと和さんにやられちゃったな。
   とはいえまだ序盤だから……挽回はできるよね。
   ……だけど、過半数を占める7人組……これはあまりにも厄介な存在。
   これをどうするべきなのか……1人でも裏切らせることができればいいけど、
   それがなかなか難しいということは、1ゲーム目にして分かってしまった。

   だけど、付け入る隙もいくつかある……。
   例えば、和さんは、後で指示を変えたと言っていたけど、この1ゲーム目、
   和グループの方の中に、和さんが投票から戻ってきた後に会話をせず、
   投票に行った人がいた……にもかかわらず、和グループは全員同じ色に投票した。
   このことから言えるのは……)

澪「……」

澪(和グループは完璧に見えるが、隙はいくつかある。
   しかし、それを突くのは後でもいい。
   とりあえず、1ゲーム目に仕掛けたことが、上手く機能しているかどうか……
   それを確かめないとな……)

-----16.4 8.1

B

和(憂、澪……あなな達はどう動く?)

憂(和さんにも付け入る隙はある、そこを突けば挽回できる……!)

澪(1ゲーム目で仕掛けたことの確認をしないとな……)

さわ子「それじゃあ、2ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

律「……」

律(何かよく分からんけど、このままじゃ和に負けちまうってことだよな。
   私は1ゲーム目は白に入れていたからポイントは取れてるけど、
   でかいグループがあるってんじゃ、これから先どうしようもない。
   ……よし!)

律「おい、唯、ムギ、梓、それに澪と憂ちゃんも、聞いてくれ!」

和「……」

律「6人でグループを組もう。向こうもグループを組んでいるなら、
   私達1人1人で動いたって、まず勝ち目はない」

梓「でも、向こうは7人、こっちは6人……これじゃあ勝ち目はないですよ……」

紬「……でも、1人でも寝返ってくれれば……こっちは7人になるわね」

律「そう、それだ! さっきの和の話だと、和グループから切られて孤立するのがまずいってことだろ。
   だったら、こっちのグループに引き込んじまえばいいんだよ」

梓「なるほど! あ……でも、そう簡単に行くでしょうか……また裏切られでもしたら……」

紬「2人に頼んでみるのはどうかしら。万が一片方に裏切られても、1人でも寝返ってくれればいいんだから。
   1人でも寝返ってくれれば、こっちが多数派……そうなれば、後からもっと仲間になってくれる人が増えるかも」

梓「それがいいですね! あとは、誰に頼むかですが……」

澪「……さっき私が組んだのは恵先輩だった。憂ちゃんは、純ちゃんかな?
   やるなら、その2人以外がいいと思う」

澪(もっとも、これは……)

憂「いちごさんとエリさんはどうでしょう?」

憂(和さんがこれを読んでいるかどうか……)

律「うん、まあそのあたりがいいかな。いちごにはヤダと言われそうな気がしないでもないが……」

梓「私はほとんど面識がない状態ですので、律先輩とムギ先輩、おねがいします!」

紬「いえっさー!」

律「よし、和が投票に行ったら作戦実行だ!」

和「……また誰もいかないのね? 私、行ってくるわ」


-数分後・投票室-

憂「投票終わりました、先生」

さわ子「あとは唯ちゃんと澪ちゃんね?」

憂「はい、そうです」

憂(……お姉ちゃんには伝えてある……あとは、和さんの動き次第かな)

-数分後-

澪「……」

澪(仕掛けはこうなったか……となると、こっちのパターンを採用かな……。
   上手くいけば、こちらのほうが良いかもしれないし……まあ、やるしかない)

-数分後・部室-

さわ子「それでは、2ゲーム目の結果発表を行います」

紬「……」

紬(和ちゃんが投票に行っているとき、私はエリちゃんと、りっちゃんはいちごちゃんと、
   こちらのグループに入らないか交渉を行った。
   どっちも悩んでいたみたいだけど、なんとか交渉に応じてくれて、
   私達が投票する、黒に投票してくれることになった)

梓「どうなるかな……」

梓(これで形勢逆転だ……私達のグループが8人、和グループが5人。
   私達が多数派になった……!)

さわ子「2ゲーム目の結果は、
     白、0。黒、4。赤、9。
     となりました」

律「……。
   ……な……!?」

紬「黒……4……?」

梓「な、何、これ……!」

さわ子「多数派は赤で、他は黒にしか投票されていないから、
     赤に投票した人は3P獲得ね」

律「な、何でだよ、2人とも! なあ、いちご! エリ!!」

いちご「……」

エリ「……」

和「……律、残念ね。分かってたのよ、あなた達がグループを作っていること。
   そして、私のグループから裏切り者を出そうとしていることも。
   だから、私は自分が分かっているということを、私のグループに伝えた。
   これで裏切ることはできない。
   さっきも言ったけど、私達はもとから多数派なんだから、
   どっちについていたほうがいいかなんて明白」

律「……! くそ……」

和(どこかのタイミングで、誰かが6人組を作る……その行動をとることは分かっていた。
   だからこそ、私は7人組であることを明かし、焦らせた……。
   なぜなら……)

和「でもありがとう律、あなたのおかげで、迷わず赤に投票することができたわ。
   だって、あななたちが6人組を作った時点で、黒と白に票が分かれることはなくなったんだから。
   そうなれば、多数派の私達が赤に投票することは、何のリスクもともなわない。
   だけど……」

憂「……」

澪「……」

和「どうやら、その私の動きを読んでいた人が、2人いたようね。
   そうでなければ、こんな結果にならないもの。

   白:0 黒:4 赤:9

   ……ねえ?」

憂「……」

憂(名前は結果に出なくても、誰がやったかはバレバレ……か。
   律さんの取った、6人でグループを組むというもの……
   これを私がしなかったのは、和さんにそれを読まれた場合、
   今みたいな結果になることは分かっていたから。

   そして、和グループから裏切り者を作ってこちらのグループに入れる……これは恐らく無理。
   だって、すでに和グループは多数派。裏切る意味がない。

   ……とはいえ、今回和さんが、律さんの計画に気づいているかどうかは不明……確証がなかった。
   だからこそ、私はお姉ちゃんと投票する色を分けることにしていた。
   お姉ちゃんが黒、私が赤。そして、ここでポイントを得られた方が勝つように動く、
   そういう計画だった。

   このことは、もちろんお姉ちゃんには伝えてあった……廊下に隠したメモを通して。
   このゲームは、投票室に行くまで距離がある。
   なぜ投票箱を部室の外に置く、そういうことをしなかったのか……と考えたとき、
   1ゲーム目の和さんの行動が映った。
   1ゲーム目では、和グループの方は、全員最初に決めた色と違う色を投票していた……見た目上、和さんの指示はなしで。
   このことから、部室から距離のある教室が投票室になったのは、この間の区間にメモを置くためだと気づいた。
 
   そして私もそれを利用し……今後のゲームでは、メモを通してお姉ちゃんに動いてもらう。
   メモの場所は毎回変えればいい……次の隠し場所も、メモに残せばいいからね)

和「……まあ何にしても、これで分かったでしょう、裏切り者を作ることはできない。
   あなた達にできることは、もうない」

澪「……」

澪(……和……お前は自分で、自分の首を絞めていることに気づいていない……)

澪「……ふふ」

和「……? 何を笑っているの?」

澪「和……私が何で、この2ゲーム目、赤に投票したか分かるか?」

和「それは、私の行動を読んでいたから……
   私が、あなた達がグループを組んでいることに気づいた場合に取る行動、
   それを澪は想定したんでしょう」

澪「……違うよ、和」

和「違う……?」

澪「見えているんだよ、私は……和達の……いや、全員が投票したカードの色が」

和「……何を言っているの?」

澪「この2ゲーム目、私は最後に投票を行った……それは、皆が投票した色を確認するためだ。
   そして私は、和グループが赤に投票すること……いちごさんとエリさんが和グループを裏切っていないことを知った。
   だから私も、赤に用票したんだ」

和「そんなこと、あるわけないでしょう? あの投票箱は、中身を覗くことなんてできないんだから」

澪「……ふふ、和。もう一度言う。
   私には投票されたカードの色が、見えている」

和「……!」

和(そんなはずはない……これはハッタリ……。でも、でもしかしたら……)

-----

C

澪「私には投票されたカードの色が見えている」

和(そんなはずはない……ハッタリに決まっている……)

和「……澪、ハッタリはバレてしまったとき、信用を失うわよ?」

澪「ハッタリじゃないさ」

和「……。
   まあ、本当に見えているのだとしたら、その事実を組んだ他の5人にも伝えるはずよね?
   それをしなかったのは、何でかしら?
   もちろん、今回は最後に投票したからできなかったとしても、その策自体を伝えることはできたはず。
   ということは、自分だけが勝つため……賞金を1人占めするため……違うかしら?」

澪「……いや、それは違う。
   いくら見える方法が分かったとはいえ……1度はそれが確実か確認したかったからな。
   しかも赤だ、ポイントを失うリスクを伴う。
   さすがに、戦略を思いついたとはいえ、使えるか分からないものを、
   他の奴にも押し付けるわけにはいかないからな。
   だから5人とも……私を信じて、また6人グループを組んで欲しい。
   そして、皆でポイントを取ろう」

憂「……私も澪さん同様赤に投票していたので、弁解しておきます。
   私は澪さんと違って、和さんの動きを読んで、赤に入れました。
   ですが、確証がなかったため、それを皆さんに言うことができず……
   お姉ちゃんだけにそれを伝え、2人で票を分けることにしました。
   なので、皆さんを裏切るつもりはありません」

唯「憂の言うとおりだよ!」

和「……口だけならなんとでも言えるわ……。
   まあ、あなた達がそれでいい、っていうなら止めないけど」

和(そちらのほうが都合がいいからね……赤に票を入れやすくなる……)

さわ子「……それじゃあ、3ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

和(……だけど、さっきは澪にああ言ったとはいえ、念のため確認しておくべきね……
   澪の言ったことの真偽を……)

和「また私が最初に投票に行かせてもらっていいかしら?」

澪「私はかまわないよ。
   ……さて、和グループの皆、私が言ったことは本当だ。
   さあ、これからどうする?」

和「……行ってくるわ」

憂「……」

憂(澪さんの発言……それが真実か否か……)

憂「さすがですね、澪さん。私にはそんな術があったとは思えませんよ」


-同じ頃・投票室-

和「先生、ここでしばらく澪の言ったことの真偽を確かめていても、
   立て籠もりにはなりませんよね?」

さわ子「……まあ、あまり長いと、他の子が投票できないなんて事態になりかねないから、
     そうなりそうなら止めるわ」

和「分かりました」

和(さて、澪の言っていたこと……あれがハッタリかどうか……それは分からない。
   だけど、もし本当に何か澪に策があるのだとしたら、早めに潰さなくてはならない)

和「投票箱……」

和(この中身を見ることは、どう考えても無理……。
   細工された様子もないし、そんなことをしたら先生が止めるはず。

   ……。
   となると……あのあたりかしら……)

和「……。
   ……!」

和(やっぱり、ね……かなり分かりにくくはなっているけど……。
   それが分かれば話は簡単……向こうはまだ6人グループのまま……票が分かれることはない。
   だったらここは、もう一度赤に投票しようかしら。
   それはメモで残すとして、もうひとつ……澪の策のことについても書いておこうかしらね)


-数分後・部室-

さわ子「それでは、3ゲーム目の結果発表を行います」

和「……」

和(澪の策は分かっている……対策はしたから、これで澪は私達がどこに投票したかは分からない……。
   だからこその赤。
   ここで3P取ることができるのは、本当に大きい。
   そうなれば、憂や澪とは4P差になる……簡単に逆転することはできない数字)

和「……澪、あなたの策は分かっているわ」

澪「……」

律「な……! 澪、どうすんだよ!?」

梓「澪先輩……!」

紬「和ちゃん……!」

和「私達が投票したのは赤……色が分からなくなった澪は、赤に入れることなんてできない……
   それはあまりにリスクが高いわよね?」

さわ子「3ゲーム目の結果は、
     白、0。黒、0。赤、13。
     となりました」

和「……え?」

さわ子「多数派は赤で、他には投票されていないから、全員3P獲得ね」

和(待って……澪の策……それは、
   投票室にデジカメをしかけ、私達が投票するところを動画で撮影することのはず……。
   投票用カードは、トランプの数字が書いてある面の上に、それぞれの色を貼ったもの……
   つまり、片面にしか色はついていない。
   だから、そう簡単に投票する色を見ることはできない……けど、
   投票する瞬間……どうしてもカードは、手で触れる部分はカードの端だけになり、
   色を隠すことはできなくなってしまう。

   投票するときは、普通は色が付いている面を自分の方に向くようにする。
   だから、カメラは投票箱の正面に対し、斜めの位置にあった。
   真後ろだと胴体で完全に隠れてしまうからでしょうけど、カメラの隠し場所が若干だけど不自然になってしまっていた。
   いくら箱や本で偽装していても、カメラの存在を想定した時点で、私には分かってしまった。
   だから、そこからは映らないように体で隠して、皆には投票してもらった……。
   それなのに、どうして……!)

澪「残念だったな、和」

和「……あれはトラップだった、ってこと……?」

澪「さあ、何のことだか分からないな」

和「……」

和(……じゃあいったいどうやって……偶然だとでもいうの?
   それはありえない……赤に入れるのはリスクが高い……。
   7人組……多数派の私達ならともかく、向こうは6人……
   私達が黒か白に入れていたら、2P没収になってしまう。

   つまり、澪は確実に策を持っている……!)

律「……何だかよく分からないけど、さすが澪だぜ!」

紬「本当ね!」

澪「……とはいえ、まだ和と私のポイントの差は、1Pある。
   だけど、必ず逆転して見せるから」

梓「おお……澪先輩が自信に満ちている……ライブでもこうあってほしいです」

和「……」

和(……この自信……策があるのは間違いない。
   1ゲーム目、澪は私のグループの誰かと組み、私達が投票する色を知ろうとしていた。
   つまりこの時点では、澪が今使っている策は無かったことになる。
   そして2ゲーム目……澪は策を考えだし、実行に移した……。

   ……仕方ない、ここはグループの皆にも協力してもらって、
   もう一度投票室を洗ってみることにしましょう。
   もしかしたらもう1台、カメラを巧妙に隠してあるのかもしれない。

   1台だけ見つけて喜んでいるなんて、とんだバカね、私は……)


-数分後-

さわ子「……それじゃあ、4ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

和「お先に」

和(必ず澪の策を暴いて見せる……!)

唯「和ちゃん行ってらっしゃい!」

憂「……」

憂(さて、計画は立てた……後はしばらく、様子見かな……)

-数分後-

さわ子「それでは、4ゲーム目の結果発表を行います」

和「……」

和(結局、新たなカメラもなし、他に仕掛けもなし……。
   そして今回、私達が投票したのは黒……。
   一応、澪が言ったことはハッタリ、という可能性も残っていないわけではない。
   だけど、2、3ゲーム目、澪はリスクのある赤に2回連続で投票をし、ポイントを得ている。
   これは、偶然で片づけることはできない……やはり、ハッタリなどではないということになる……)

さわ子「4ゲーム目の結果は、
     白、0。黒、13。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、全員1P獲得ね」

和(やっぱり……。
   これで3連続……偶然などでは、決してなくなった……。
   投票室に仕掛けはなかった……となると澪は、一体どうやって……!)

-----

D

和(澪は3連続で私のグループと同じ色に票を入れた……。
   澪は確実に策を実行している……!)

和「……皆、本当に投票室に怪しいところはなかったのよね?」

純「たぶん……あのカメラはそのままですけど……」

恵「見つけられたら、みおたんの秘蔵写真50選がもらえたのに……!」

エリ・アカネ「コーラ一年分が……」

純(こういうのも、忠誠ポイントっていうのかなぁ……)

いちご「参加すると、意外と難しいものね」

姫子「そうだね〜」

和「……」

和(いくらなんでも、この人数で探して何もないとなると……)

-数分後-

さわ子「それじゃあ、5ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね。
     このゲームの後、途中経過を発表します」

律「何だかんだで、もう5ゲーム目か……」

梓「澪先輩のおかげで、今のところは接戦ですよね」

紬「本当ね!」

澪「……ああ」

澪(とはいえ、そろそろ……かな……)

さわ子「和ちゃん、投票に行く?」

和「……いえ、少し待ってください」

澪「……」

澪(和は、これまでの4ゲーム、常に最初に投票していた。それも、迷いなく。
   それは、自分が多数派グループに属しているからなんだろうけど……
   ここに来て様子見か。やっぱり、そろそろバレるかな……)

唯「タコスウマー」

憂「お姉ちゃん、ちょっと食べ過ぎだと思うよ?」

梓(……しまった……私も食べ過ぎてるかも……)

和「……」

和(私達が動かなければ、動かない……動けない……か……。
   私達の投票した色が見えると言っている以上、それは当然なんだけど……。
   澪達が動くまで、私達も動かない、という手もあるけど、
   それでは全員ペナルティ5P……1ゲーム無駄にしてしまうことになる。

   澪の策はだいたい分かった……後は、私がどうすべきか……。
   とりあえずこのゲームは変わらずやるしかないとして……)

和「先生、お待たせしました」

さわ子「じゃあ、行きましょうか」


-数分後-

さわ子「それでは、5ゲーム目の結果発表を行います。
     5ゲーム目の結果は、
     白、0。黒、13。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、全員1P獲得ね。

     最初に行ったとおり、5ゲーム経過したから、途中経過を発表するわ。

     5ゲーム目終了時のポイントは、
     唯ちゃん、ムギちゃん5P。りっちゃん、梓ちゃん6P。
     澪ちゃん、憂ちゃん8P。純ちゃん、恵ちゃん、姫子ちゃん、
     エリちゃん、アカネちゃん、いちごちゃん、そして和ちゃん9P。     

 和、純、恵、
 姫、瀧、茜、苺:9P
 澪、憂    :8P
 梓、律    :6P
 唯、紬    :5P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

     となっているわ」

紬「あ……澪ちゃんや憂ちゃんに注目していたから気にしていなかったけど、
   私と唯ちゃんって最下位だったのね……」

梓「私も大して変わりませんよ……でも、澪先輩が勝ってくれればそれでいいです」

澪「……期待に応えられるように頑張るよ」

-数分後-

さわ子「それじゃあ、6ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

律「……ところで澪、このままじゃ和グループとの1P差は埋まらないよな……
   どうするんだ?」

澪「……今はまだ、このままでいいよ」

律「……まあ、澪がそう言うなら……」

和「……」

和(……さて、ここはすぐに動くことにしようかしら……。
   すでに、策は考えてある……!)

和「じゃあ投票に行ってくるわ」


-数分後・廊下-

律「……今回投票する色は白か……」

律(私達、和グループ以外の奴らは、毎ゲーム澪から、今回投票すべき色……
   和グループが投票する色を、メモによって教えてもらっている。

   しっかし、澪の作戦が、私のデジカメをトラップとして利用するものだったなんてな……。
   でも、その後の作戦は聞いたから、なぜ和グループが投票する色が分かるのかは知っている。
   それに、澪のあのときの言動……”自分は投票された色が見える”というものから、
   澪の作戦は和にとって想像し辛いものになっているとも思う。

   だけど、和だって澪や憂ちゃんと同じくらいキレそう……いつかは澪の作戦はバレるはず。
   それなのに澪は、このままでいい……だなんて……)

さわ子「りっちゃん、あんまり長いこと立ち止まられると、他の子が困るわ」

律「ああ、悪い悪い!」

律(まあ、私に作戦があるわけじゃないし……結局は澪頼りか……)

-数分後・部室-

さわ子「それでは、6ゲーム目の結果発表を行います」

梓「……」

梓(澪先輩がしかけたトリック……正直、先輩に教えてもらうまで、私は気づいていなかった……。
   それを、和先輩が気づけるかどうか……。
   それに、気づいていないとしても、律先輩も言っていたけど1P差……これは埋まらない。

   澪先輩のことだから、何か考えているんだとは思うけど……。
   後は、和先輩が気づくのが先か、澪先輩が別のトリックを実行するのが先か……)

さわ子「6ゲーム目の結果は、
     白、9。黒、2。赤、2。
     となりました」

梓「!!」

梓(何……この結果……? 和先輩が先に動いたってこと……?
   とりあえず、白に投票した私達は1P獲得できた……それは間違いない。
   でも、なんで黒と赤に、2票ずつ入っているの……?)

さわ子「多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね。
     赤に投票した人は、2P没収されます」

恵「真鍋さん、これはいったい……?
   私達が投票するのは、赤っていう指示だったわよね?」

純「私も赤って言われたんですけど……」

いちご「私は黒と言われた」

エリ「あ、私も黒だった!」

和「……澪。
   あなたなら、私が取った行動の意味……分かるわよね?」

澪「……私の戦略に気づいたということか。
   そしてこの結果……これは、あぶり出し。裏切り者を見つけ出すための……!」

和「そう……さすが澪ね。
   私は、あなたの言動にまんまと騙されていた……。
   私達の投票した色が見える、そう言われれば、私が最初に疑うのは投票室となる。
   澪が何か細工したんじゃないかと思ってね。

   そして実際、私は澪にそう言われた後の3ゲーム目……すぐに投票室に向かい、
   あなたの策が分かった……と、思わされた。でも、それはトラップ。

   あなたの本当の狙いは、私を長時間投票室に留めることだった……
   そして私がいない隙を狙い、私のグループの誰かを説得……組んで、
   私達が投票する色を、裏切り者から伝えてもらっていた……」

紬「……!」

紬(澪ちゃんの作戦、読まれてた……! これじゃあこれから先、どうすれば……!)

和「そして、裏切り者の存在に気づいた私は、この6ゲーム目、策を打った。
   私のグループは7人だけど、私は裏切り者じゃないかから、残りの6人のうち誰かが、
   裏切り者だということになる。

   だから私は、この6人の票を、3色に2人ずつ分けた……そして、
   澪達が投票した色と同じ色に投票していた人が、裏切り者……!

   今回、澪達が投票したのは白……そして、私のグループで同じく白に投票したのは、
   私、姫子さん、アカネさん……よって、姫子さんかアカネさんの、どちらかが裏切り者……!」

和(私が最も裏切り者だと疑っていたのは、もともと澪とそれなりに交流があった、純ちゃんと恵先輩。
   だからこの2人は赤に入れるように指示した。
   黒と白に分かれて票を入れることにもなっているから、
   もし2人が裏切り者なら、澪達も赤に投票することになり、ポイントが没収となる。

   逆に、裏切り者だと思っていなかったのは、エリさんといちごさん。
   澪の性格的に、この2人には話しかけ辛いはず。
   そして残ったのは、姫子さんとアカネさん。私は、この2人と同じ票に入れた。
   それによって、もし澪と組んでいるのがこの2人の場合、私もポイントを得られるから、
   澪や憂とのポイント差は変わらない)

和「さて……裏切り者は判明したわ……」

澪「……」

和(これで澪の策は封じた……それも、ゲームの中盤よりも前に。
   後はこの隙に、いかに差を広げられるか……ね)

-----

E

和(裏切り者は分かった……これで澪の策は封じたことになる。
   後はこの隙に、いかに差を広げられるか……ね)

和「姫子さん、アカネさん。あなた達2人の、どちらかが裏切り者であることは分かっている。
   早く自白してくれれば、今回のことはなかったことにするわよ?
   グループから切られたくはないでしょう?」

姫子「私じゃないって」

アカネ「私も……」

澪「……」

澪(私は和の言うとおり、3ゲーム目に、和が投票室で私の戦略を探っているとき、
   和グループの奴と組んでいた。
   だから票が見えるなんて嘘をつき、和を投票室に縛り付けた。

   まだ組んでいない2ゲーム目に、私が和グループと同じ赤に投票できたのは、
   憂ちゃん同様、和の動きを読んだからだ。
   カメラは、本当は実際に使うつもりだったけど、他の奴が投票した色は、
   手が影を作り、確認することはできなかった……だから、トラップとして利用することにした。

   和は1ゲーム目、私が今回と同じ戦略、つまり裏切り者を作るというものを破ったとき、隙を見せていた。
   それは、”和が裏切り者に気づいているからこそ、裏切り者は作れない”、というようなことを言ってしまったこと。
   ここで大事だったのは、そのセリフを、全員が聞いていたことだった。

   そのセリフの裏を返せば、和が気づいていなければ、裏切っても良い、
   ということになる。若干のこじ付け感はあるが、和グループの奴を説得するには十分だった)


-3ゲーム目(和が投票室にいる間)-

澪「姫子さん」

姫子「お、何?」

澪「さっき私が言った、投票する色が見える……どうやっているか分かる?」

姫子「今は分からないけど、和さんが調べていっているし……
    和さんもすごそうだからな〜」

澪「……そっか」

澪(和がいない間に、和グループ全員に話しかける必要がある……。
   そうしないと、いつか私が誰かと組んでいるとバレたとき、
   裏切り者が誰なのか、すぐに分かってしまう。

   さて……次は本命かな……)

澪「アカネさん」

アカネ「ん……何?」

澪「単刀直入に言う、私と組まないか?」

アカネ「え……組むって……」

澪「和グループが投票する色を、私に教えて欲しい」

アカネ「……それって、1ゲーム目にもやっていたよね?
     それは、和さんにバレてしまうんじゃ……?」

澪「いや、今和はいないし、すぐには帰ってこないから、バレることはない。
   それに、1ゲーム目にその戦略を取ったらこそ、逆に和は想定できなくなる。
   そして1ゲーム目は、和が気づいているからこそ、私や憂ちゃんが組んだ奴は裏切れなかった。
   だけど……今はそれがない」

アカネ「でも……」

澪「よく考えてみて、アカネさん。
   アカネさんは、私と和、どちらにもついてくれればいいんだ。
   そうすればアカネさんは、どちらが勝っても、分け前を得ることができるだろう?」

アカネ「それは……」

澪「それに、だ。たぶん和は、メモを使ってアカネさん達に指示を出しているはずだ。
   アカネさんも同じように、メモで私に色を教えてくれれば、この後も和にすぐバレるということはない」

アカネ「……」

澪「頼む、他に頼める奴がいないんだ」

アカネ「……分かったよ」

澪「……ありがとう!」

澪(よし……!
   ……後話しかけていないのは、いちごさんだけか……話かけづらい……。
   あ……むしろ私が話しかけるのは不自然だよな……やめておこう……)


-6ゲーム目後に戻る-

和「そろそろ自白したら? このまま黙っていても誰も得をしないし、
   言ってくれれば、私はこれ以上追及しないわ」

姫子「私は裏切り者じゃないんだけどな……」

アカネ「私も裏切っていないよ」

澪「……」

澪(……アカネさんには、実は、この戦略がいつか和にバレる……それも伝えてあった。
   それはもちろん、組んだときじゃなく、その2ゲーム後。
   そのときメモを書いて、その場所をアカネさんに伝えていたから連絡できた。
   この時点でアカネさんは裏切り者になってしまっている状態……和にバレるという話を聞いても、もう後には引き返せない。
   そしてそのとき、絶対にしてはいけないことも書いておいた。

   それは、自分が裏切り者だとバラさないこと。

   和が私の戦略に気づいた場合、あぶり出しをするために、
   和グループの和以外の6人を、3色に2人ずつ、投票するようにすることは分かっていた。
   そしてこの場合、疑わしい奴が2人出てしまう。
   確かに容疑者は絞れる……が、確定はできない。これでいい)

姫子「アカネじゃないの? 秋山さんと組んでいたのは」

アカネ「違うよ」

和「そろそろ7ゲーム目が始まるわ。これ以上かかるようなら……」

澪「和」

和「……何?」

澪「その2人に疑いを持ったまま、グループを組むなんてできないよな。
   また裏切られるかもしれない。だからこそ、自白するのを待っている」

和「それは当然よ。だって……
   ……!」

和(……待って、考えてみれば、裏切り者に対し、今自白すればペナルティもなく、
   グループに戻すと言っているのに自白しない……これは意味があること?
   もちろん、これはライアーゲーム……私が行っていることは嘘と考えるのは仕方ないけど、
   下手をすればグループから完全に切られてしまうのに。

   でも、もし、澪から自白は絶対にするなと言われていたとしたら……!)

澪「そして姫子さんとアカネさん。
   2人は疑いを持たれたまま、グループに戻るなんてことはできないよな。
   もしまた裏切りがあれば、まっさきに疑われるのは2人になってしまう」

姫子「そりゃ……ね」

和「……!」

和(間違いない……澪が裏切り者を作った理由……それは、
   私達が投票する色を知るためなんかじゃない!
   裏切り者が1人でもいることによって、裏切りという行為は可能、そういう状況を作るため……!
   分かっていたのね澪……私が裏切り者をあぶり出しすることを……!)

澪「2人とも、こちらのグループに入らないか?
   2人のうち1人は、確かに私と組んでいるから、
   こちらのグループに入れば裏切り者ではなく、仲間だ。
   そして組んでいなかったもう1人も、私は歓迎するよ」

姫子「……!」

アカネ「……本当?」

和「これがあなたの狙いだったのね……澪!」

和(2人に対しここまで疑いをかけた私が、2人をこちらに戻す術はない……!)

澪「……これでグループの人数は逆転だな、和!」

澪(これこそが私の狙い……少数派である私のグループに1人か2人加え……人数を逆転させること……!

   もし和が、1人の裏切り者を確定させたとしても、その人……アカネさんをこちらに加えれば、
   人数は、私のグループが7人、和グループが6人となり、それでもグループの人数は逆転できる。

   ここで大事だったのは、2ゲーム目では和グループを裏切ったらその時点でアウト、
   という空気があったが、それを払拭すること。

   そしてこのゲーム……実際に裏切りが起こった……)

和「……」

恵「ま……真鍋さん……」

和「……策を考えます」

澪「……さて、これでこっちは、私、律、ムギ、梓、唯、憂ちゃん、そして姫子さんとアカネさんで、
   8人組になった。残り14ゲーム、協力して頑張ろう」

律「澪、お前が、今は何もしなくていい、って言ってたのは、和が動くのを待っていたからだったのか!」

梓「なるほど……」

澪「ああ、そうしないと、いつまでたっても和と1P差のままだからな」

アカネ「あ、えっと……おねがいします」

姫子「しまーす」

唯「最初からこれを待っていたって……澪ちゃんすごいよね、憂」

憂「そうだね。
   ……澪さん……澪さんは、こうやってグループの人数が変わる……
   そのために、和さんが動くのを待っていたんですよね?」

澪「……そうだよ」

憂「……実は……
   私もこうなるのを待っていたんです。
   澪グループの人数が増えるのを」

澪「……憂ちゃんは私の戦略に気づいていたわけか……」

憂「はい。そして……
   私とお姉ちゃんは、澪グループを抜けさせていただきます」

澪「……え?」

律「はああ!?」

梓「どういうこと……憂……?」

紬「……それじゃあ、憂ちゃん達は2人組になるってこと……?」

憂「そういうことですね」

唯「ええええ!? ちょっと待ってよ憂、それじゃあ……私達すっごく不利になっちゃんじゃ……!?」

憂「……確かにこれで、和グループは5人、澪グループは6人、そして私達は2人……。
   圧倒的に不利に見えます。

   ですが……これでまず、3グループに分かれたことによって、赤には投票し辛くなりますよね。
   2グループなら2色にしか投票されませんが、3グループだと3色になってしまう可能性が出てきます」

和「……それはそうよね。本当に憂が澪グループを抜けるなら、白か黒に投票していくことになるわ」

憂「ですよね。
   じゃあ、こういう場面を想像してみてください。
   澪グループが白、和グループが黒に投票し、
   このようになっている状況。

   白:6 黒:5 赤:0

   この時点では、澪グループが投票した色が、多数派となります」

澪「……!」

憂「ですが、まだ私達がいます。私達もグループなので、2人まとめて、1つの色の票が入ることになります。
   そして、私達が黒に投票したとすると……
   こうなる。

   白:6 黒:7 赤:0

   ……逆転で、黒が多数派となります」

梓「あ……!」

憂「もちろん、私達が白に投票した場合は、白が多数派です。
   つまり……私達が投票した色が、多数派になるんです。
   だから……私達は澪グループを抜けます」

和「憂……!」

澪「憂ちゃん……」

憂(なんて、それはどのグループに置き換えても言えること……
   結局、2つ以上のグループが投票した色が多数派になるというだけ。
   だけどここで大事なのは、私達が少人数なのに、他のグループと五分になっているということ。
   さて……ここまではあえて何もしていなかったけど……
   ここからは、私がゲームを支配できる……お姉ちゃん……一緒に勝とうね!)

-----46.0 7.9

F

憂「私は澪グループを抜けさせていただきます。
   これで、私達のグループが投票した色が、多数派になります」

和「憂……!」

澪「やってくれるね、憂ちゃん……」

さわ子「それじゃあ、7ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

唯「ねえ憂、さっきはああ言っていたけど、本当に大丈夫なのかな?
   赤には入れられないって言ってたよね……赤が危ないのは分かるんだけど、
   絶対に投票されないとはいえないよね?」

憂「ううん、赤に入れられることはまずないよ。
   赤に投票……例えば澪グループが赤に投票して、和グループが黒に入れた場合、
   こうなるよね。

   白:0 黒:5 赤:6

   ここで、私達が黒に入れると、黒が多数派となるから、

   白:0 黒:7 赤:6

   赤に投票した澪グループはポイントを没収されてしまう。
   私達が白に投票した場合は、白黒赤、すべての色に投票されたことになり、

   白:2 黒:5 赤:6  

   赤は多数派でもポイントは没収される。
   私達が赤に投票すれば、

   白:0 黒:5 赤:8

   澪グループもポイントを得られるけど、私達は赤に投票することはない。

   これは和グループが赤に投票した場合も同じこと……
   私達が赤に投票しない以上、澪、和グループが両方とも赤に投票しない限り、
   赤でポイントを得ることはできないんだよ。
   それは和さんも澪さんも分かっているから、赤に投票することはほぼない」

唯「よく分からないけど、赤に投票されることはないっていうのは分かったよ。
   あ……でも、赤で和ちゃん、澪ちゃんグループが同じになることはなくても、
   黒か白で、同じ方に投票することはありえるよね?
   そのとき、2つのグループが投票していない方に私達が投票しちゃったら、
   私達だけがポイントを取れないんじゃない?」

憂「それも大丈夫、計画のうちだよ」

唯「そっか!」

憂(……これまで澪さんの計画に乗っていたのは、このためだったからね……。
   最初の状態……和グループが7人、こちらが6人の状態でグループを抜ければ、
   ”和:澪:憂=7:4:2”になり、和グループの有利は動かなかった。
   だからこそ、私は澪さんの計画に気づいていても、何もしなかった……
   グループの人数が変わるのを待つために)

唯「安心したのでお菓子を食べることにします!」

憂「うん!」

憂(もっとも、実際、現状はどのグループから見ても同じ状態……。
   2つ以上のグループが投票した色が多数派になるという状態にすぎない。

   だけど、私のあの宣言によって……そして、澪さん、和さんの計画を破ったことによって、
   一時的ではあるけど、澪さんと和さんは冷静な判断はできない。

   そして、それに気づいたとしても、私達は2人という少人数でありながら、
   澪、和グループと五分の関係になるだけ……。
   ううん……私の計画では、私達が支配権を握ることになる……。

   私の計画、澪さんと和さんは、すぐには気づくことはできないはずだからね……。
   それに、気づいたとしても、それだけ……)

和「……」

和(何をやっているのかしらね、私は……。
   多数派グループを最初から持っているという絶対的有利な状況から、
   私のグループは5人となり、さらに一番人数が少ない憂達に主導権を握られる始末……。

   考えられる策としては、澪と組むことだけど……それはあまりにも……)

和「……投票に行ってくるわ」

澪「……」

澪(私の戦略が憂ちゃんに読まれていた……か……。
   確かに3ゲーム目、和と違って憂ちゃんは部室にいた……
   つまり、私が和グループの奴らと話していることは見ていたということ。
   読まれていてもおかしくはない……が、こんな行動に出られるとは……。

   憂グループはたったの2人……しかもあの2人だ、裏切らせることは絶対に無理。
   となると、和グループから1人以上こちらに加えるか、いっそ和と組むか……。
   いや……それでも……)


-数分後-

さわ子「それでは、7ゲーム目の結果発表を行います。
     7ゲーム目の結果は、
     白、8。黒、5。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

澪「……」

澪(私達のグループがポイントを得られたか……そして、憂ちゃん達も。
   私達は6人、和達は5人、憂ちゃん達が2人ということは、黒に投票したのは和グループということ。
   そしてこれによって、私、和、そして憂ちゃんのポイントが10Pで並んだ……!

 姫、茜    :11P
 和、澪、憂  :10P
 瀧、苺    : 9P
 律、梓    : 8P 
 唯、紬、純、恵: 7P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   まあ、姫子さんとアカネさんが11Pでトップではあるんだけど……。
   だけど、たぶんこのアドバンテージはあまり意味がないし、
   契約書が使えない以上、裏切られることも考えないといけない。
   そうなると、グループ内で投票する色を分けることもあまりよくない。

   だったら、やっぱり自分がトップになることを考えるべきなんだけど……)

さわ子「……」

さわ子(これまでリードを保っていた和ちゃんが、ついに澪ちゃん、憂ちゃんに並ばれたわね……。
     それにしても、憂ちゃんはさすがね……。
     投票のとき、全員についていっている私には、この先どうなるか少しは想像がつく……けど、
     澪ちゃんや和ちゃんだって黙っていないはず……だから、まだこの先何が起こるかは、未知だといえる。
     だけど恐らく澪ちゃんと和ちゃん……この2人が考えていることは同じ……。
     他グループから裏切り者を出し、自分のグループの人数を増やすか、
     澪ちゃんと和ちゃんが組み、澪和グループとするか……。

     もっとも、裏切り者を作るのはこれまで以上に難しいし、
     澪ちゃんと和ちゃんが組むのも、現状はベストな選択ではない……こんなことは、2人なら分かっていることでしょう)


-20分後-

さわ子「それでは、8ゲーム目の結果発表を行います。
     8ゲーム目の結果は、
     白、6。黒、7。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね」

和「……」

和(今回は私達と憂達がポイント獲得……。
   7ゲーム目では冷静じゃなかったわね……憂のことばに踊らされてしまったけど、
   現状、私のグループ、澪グループ、憂グループは、有利不利だけ見れば、五分五分だと言える。
   ポイント的には、私、憂、アカネさんと姫子さんが、11Pで並んでいて、
   澪が10Pで次いでいる……こちらも、まだ五分といったところね……。

 憂、和、姫、茜  :11P
 澪、瀧、苺    :10P
 唯、律、梓、純、恵: 8P 
 紬        : 7P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   ただ……問題は憂……現状五分とはいえ、多数決の性質上、少人数グループは不利になる可能性が高い。
   ということは……)

澪(あの憂ちゃんのことだ……まだ戦略を隠しているはず……それが分からなければ、
   裏切り者を作ったり、和と組んだりすることは意味を成さない……。
   だけど、今は観察するしかない……!)

-25分後-

さわ子「それでは、9ゲーム目の結果発表を行います。
     9ゲーム目の結果は、
     白、0。黒、13。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、全員1P獲得ね」

さわ子「……」

さわ子(さて……澪ちゃんと和ちゃんが、いつ動くか……どう動くか……。
     何にしても、最初から分かっていたこととはいえ、
     これで、澪ちゃん対憂ちゃん対和ちゃん……三つ巴の構図がはっきりとしたわね)

-30分後-

さわ子「それでは、10ゲーム目の結果発表を行います。
     10ゲーム目の結果は、
     白、5。黒、8。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね。

     それと、また5ゲーム経過したから、途中経過を発表するわ。

     10ゲーム目終了時のポイントは、
     純ちゃん、恵ちゃん、ムギちゃん9P。唯ちゃん、りっちゃん、梓ちゃん10P。
     エリちゃん、いちごちゃん11P。和ちゃん、澪ちゃん12P。
     姫ちゃん、アカネちゃん、憂ちゃん13P。     

 憂、姫、茜:13P
 和、澪  :12P
 瀧、苺  :11P
 唯、律、梓:10P 
 紬、純、恵: 9P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

     となっているわ」

純「うわー……思い切り負けている……」

梓「でもたぶん、私達のポイントはどうでもいいんだろうなー……」

紬「澪ちゃん、和ちゃん、憂ちゃんの戦いってかんじだものね」

唯「おお! いつのまにやら憂がトップになってる!
   おめでとう〜〜」

憂「ふふ、ありがとうお姉ちゃん」

憂(……これで澪さんと和さんに1Pずつ差ができた……。
   この後も、ジワジワと離していく……そして、勝つのはお姉ちゃんと私!)

-----

G

さわ子「10ゲーム目終了時のポイントは、
     和ちゃん12P、澪ちゃん12P、憂ちゃん13Pとなっているわ」

憂(……これで澪さんと和さんに1Pずつ差ができた……。
   このゲームで勝つのは、お姉ちゃんと私!)

澪「……」

澪(憂ちゃんが実質の単独トップになったわけか……しかし、これは……)

澪「もしかしたら……」

律「どうした、澪?」

紬「さっき、憂ちゃんなら何か作戦がある、みたいなことを言っていたけど……」

梓「それが分かったんですか!?」

澪「いや、まだ推測程度……もう少し様子見をしないといけない……。
   それに、もし私の考えどおりだとしても、すぐには動けない」

さわ子「それじゃあ、11ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

和「……私、行きます」

和(……憂の策は、もう分かった……分かったけど、それだけじゃ、どうしようもない。
   憂もそれが分かっているからこそ、こんな単純なことをやっているということでしょう)

-投票室-

和「……」

和(憂が投票するのは、7ゲーム目以降、常に最後。
   このことやポイントの結果から、憂の策は分かっている……けど、やはり肝心なことが分からない。
   私は一度それで失敗しているから、なおさら注意しなくてはならない……)

和「今回は、黒かしらね……」

和(……毎回メモの位置を変えるのも面倒ね……全員バラバラの位置にしないといけないというのに……)

和「……!
   メモ……!」


-10分後・部室-

純「……真鍋先輩、遅いですね」

恵「そうねえ……」

憂「……」

憂(確かに遅い……これまで、あの3ゲーム目以外の投票時間は、長くとも5分程度だった。
   あの部屋は、プレイヤーは1人しかいられないから、集中して考えるには持って来いだけど、
   何もしていないと、先生から注意を受けてしまう……つまり、和さんは何かしているってことだ)

憂「お姉ちゃん」

唯「……ふえ?」

憂「……お姉ちゃん、口にクリーム付いているよ。
   あと、食べ過ぎ!」

唯「大丈夫だよ〜、ごはんはちゃんと食べるし、私は太らないし〜」

澪「なんだと!?」

紬「唯ちゃん!」

姫子「唯!」

いちご「……!」

エリ「聞き捨てならないよ!」

唯「おおう……なんかすません……まさかこんないっせいに……」

憂「……えっと、これからしばらく、私が投票言っている間、
   和さんと澪さんの動きに注意してもらっていいかな?」

唯「大丈夫だよ、憂。
   憂がいないときも、いるときも、皆の動きだけは注意しているからね。
   私は作戦を考えるのはできないから……それくらいはしないとね!

   ちなみに、今のところは、澪ちゃんと和ちゃんが組んだ、ってことはないと思うよ。
   でも、2人とも何か気づいているような感じがするかな」

憂「そっか、ありがとうお姉ちゃん!」

憂(そうだよね、お姉ちゃんだってこれまで一緒に戦ってきたんだから、
   そんなことは言われなくても分かってるよね……。

   お姉ちゃんがそう言うなら、まず間違いなく、2人は私の計画の一部には気づいているはず。
   だから、どこかで2人は動いてくるだろうけど……そろそろ私も準備を開始するべきかな……?
   ただ、和さんと澪さんの私の動向に対する監視も厳しい……そう簡単には動けない……。

   どちらにしても、2人はすぐには動かないはずだけどね……)

唯「このシュークリーム美味しいよ〜」

憂「お姉ちゃん、めっ!!」

-20分後-

さわ子「それでは、11ゲーム目の結果発表を行います。
     11ゲーム目の結果は、
     白、6。黒、7。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね」

憂「……」

憂(10ゲーム目の時点で、和さんと澪さんには1P差をつけていたけど……
   このゲームで姫子さんとアカネさんとも1P差になり、完全に単独トップになった……。

 憂      :14P
 和、姫、茜  :13P
 澪、瀧、苺  :12P
 唯      :11P
 律、梓、純、恵:10P 
 紬      : 9P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   とりあえずは、一安心かな……)


-数分後-

さわ子「それじゃあ、12ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

和「……」

和(さっきのゲームは、私達のグループと憂のグループがポイント獲得ね……。
   憂グループだけは、確実にポイントを獲得している……これはやっぱり……)

-投票室-

和(今回も黒にするとして……。
   ……!
   よし……やっぱりね……これは使えるわ。
   15ゲーム目までに見つけることができれば……!)


-25分後・部室-

さわ子「それでは、12ゲーム目の結果発表を行います。
     12ゲーム目の結果は、
     白、8。黒、5。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

澪「……」

澪(このゲームで、憂ちゃんは、私と和に、それぞれ2P差をつけることになった……。

 憂    :15P
 姫、茜  :14P
 和、澪  :13P
 唯、瀧、苺:12P
 律、梓  :11P
 紬、純、恵:10P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   ここまでくれば確信していいだろう……私と和のポイントに、ここまで差が出ていないなんておかしいんだから。
   しかし問題は、この後のこと……これが分かったところで……。

   いや、もう足踏みしていてもしょうがない……!)

-10分後-

さわ子「それじゃあ、13ゲーム目を開始します」

和「投票、行ってくるわ」

澪「……」

澪(私がやるべきことは、和と組むこと……やはりこれしかない。
   憂ちゃんに勝つには、和グループから裏切り者を出すだけではダメだ。
   このゲームの間にメモを残し、憂ちゃんが投票に行っている間に、
   和にメモの場所を伝える……。和だって、憂ちゃんの戦略に気づいているだろうしな)


-数分後-

憂「じゃあお姉ちゃん、投票行ってくるね」

唯「いってら!
   ……憂がいない間にお菓子食べちゃおっと!」

澪(さてと……)

澪「和、ちょっといいか?」

唯「姫ちゃん、これおいしいよ?」

姫子「……美味しいのは分かってるの! でも……」

唯「食べればいいのにな〜」

唯(……澪ちゃんと和ちゃんが話してる……珍しい。
   他の子は特に変わった様子はないかな……)

-数分後-

唯「憂おかえり〜」

憂「あ、お姉ちゃん! またお菓子食べたでしょ!
   口のまわりに、またクリームがついてるよ!!」

唯「拭いて拭いて〜!」

憂「しょうがないな、お姉ちゃんは」

唯「……憂、たぶん澪ちゃんと和ちゃん、組んだよ」

憂「……!」

憂(口にクリームをつけたのはわざとだね、お姉ちゃん。
   ……ついに2人が組んだ……か。
   ということは、私がやっていること……2人は確信を持ったってことかな。
   いつ2人が動くか分からなかったから、2人とのポイント差が均等になるように投票していたけど、
   さすがにバレちゃうよね……。

   私の計画。それは、和グループ、澪グループのそれぞれ1人ずつと組み、
   2つのグループが投票する色を知り、澪さん、和さんとのポイント差を均等に離すこと。
   2人はどちらも警戒すべき対象だから、片方だけポイント差を付けても意味がない。
   だから、2つのグループから1人ずつ裏切り者を作り、あるときは和グループと、
   あるときは澪グループと同じ色に投票することで、まんべんなくポイントを振り分けていた。
   両グループが同じ色に投票した場合は、当然私もそれに入れる。

   この裏切り者を作ることは、言ってしまえば、澪さんがやっていたことと同じ……さらに言えば、1ゲーム目に、
   私がやったことと同じ。
   だけど、それが分からないように、私は発言していたつもりだし、3回も同じことをする……
   それは、すぐには考えないのが普通。
 
   私がある2人と組んだのは、澪さん同様、和さんが投票室で澪さんの計画を探っていた、3ゲーム目。
   あのとき、和さんは当然部室にはいないし、澪さんは、自分が組む相手を探していたから、
   私には注目できなかった。
   そして私はあの時点で、澪さんの計画は気づいていたから、それを利用させてもらうことにした。

   もちろん、私の計画が気づかれるのは承知の上……だけど、そんなことは問題ではない。
   肝心なのは、裏切り者が誰かは、分からないということ。

   お姉ちゃんと私は、投票するのは常に最後……よって、順番から裏切り者を割り出すのは不可能。
   連絡にはメモを使い、メモの最後に、次の隠し場所を書くことで、その場所は毎回変えているから、
   裏切り者との直接的な接触も行っていない。

   そして裏切り者候補は、和さんと澪さん以外の9人……あぶり出しは不可能に近い。
   絞りきれないし、和さんは、それで一度失敗しているからね)

憂「あれ、お姉ちゃんってまだ投票行ってないよね?」

唯「あ、しまった!! あと3分しかない!!」

憂「転ばないように気を付けてね」

憂(……和さんと澪さん……2人がやってくることは恐らく……)


----

H

憂(和さんと澪さんが組んだ……か。
   ということは、私がやるべきことは……)

さわ子「それでは、13ゲーム目の結果発表を行います。
     13ゲーム目の結果は、
     白、6。黒、7。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね」

憂(13ゲーム目に澪さんか和さんの片方がメモを置いたとすると、他方がそれを確認するのは14ゲーム目……。
   私がやるべきことは、和、澪グループの、私と組んでいる方にこのことを伝えるということ。
   これまで、裏切り者が誰かバレないようにすることに、最も注意していたから、
   メモは、組んだ方から私への一方通行で、それも伝えるのは投票する色だけ。

   だからなんとかして、私がメモを置いたことを伝えないといけないけど……)


-数分後・投票室(14ゲーム目)-

和「……今回も黒に投票するとして……」

和(澪のメモを見る限り、憂が、私のグループと澪グループのそれぞれ1人以上と組んでいるということは、
   澪も分かっている。だからこそ、私と組むことにしたということ……。

   そして、この後とるべきことも、私とほぼ同じことを考えていた。

   1つ違うことは、私の考えている策ならば、100%成功するけど、
   澪の策では70〜80%程度の成功率しかないし、そのあと大きな問題が発生するということ。
   現状、憂が16Pでトップ、私が14P、澪が13P……。
   差は少なくないけど、まだ慌てるようなゲーム数じゃない。

   それに、澪の策だとすぐに実行できるけど、それだと私が困るのよね……)

和「……!」

和(これで私の策は完成と言っていいわね……!)


-数分後-

憂「……」

憂(このゲーム、和グループが黒、澪グループが白に投票することになっている……か。
   2人が組んだということは、黒、白に投票すると見せかけ、
   実は全員赤に投票している、ということを計画していることが考えられる。
   お姉ちゃんと私は、黒か白、どちらかに必ずまとまって投票しているから、
   ポイントが没収される心配はないからね。

   だけどそれを行うには、私と組んでいる人を断定していて、
   裏切り者だけに、赤でない色に投票することを指示する必要がある。
   でも、裏切り者を断定することは、まず不可能。

   よって、和さんと澪さんの計画はまだ立てられていないと考えるのが妥当。
   ただ、こちらもまだ組んだ方に、私が置いたメモのことは伝えられていない。急がないと……!)

憂「……白に投票しようかな」

-数分後・部室-

さわ子「それでは、14ゲーム目の結果発表を行います。
     14ゲーム目の結果は、
     白、8。黒、5。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

憂(やっぱりか……。
   だけど、安心なんてしていられない。
   なんとか接触をはかりたいけど……下手に動くと裏切り者である2人が明らかになってしまう。
   それだけは絶対に避けないといけない……)

憂「お姉ちゃん、なんとか隙を見つけないとね……」

唯「そうだね!」


-数分後・投票室-

憂「……和さん達が黒、澪さん達が白、か……」

憂(14ゲーム目と同じ……ということは、さっきと同じように、まだ計画はたてられていない、
   と考えるのが妥当かな。
   和さんと澪さんは組んだものの、意見がまだまとまっていない、ということかもしれない。

   確かにメモは、他の人には絶対に見られないというメリットがある。
   だけど、直接話すよりははるかに意見の交換が難しい。
   でも、直接話すのは部室ということになるけど、他の方の目が気になり、
   それもできない……こんなところかな。

   そして、それは私にとっても同じことが言えるけど……)

憂「今回は黒だね……」


-数分後・部室-

さわ子「それでは、15ゲーム目の結果発表を行います。
     15ゲーム目の結果は、
     白、6。黒、7。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね。

     それと、また5ゲーム経過したから、途中経過を発表するわ。

     15ゲーム目終了時のポイントは、
     ムギちゃん11P。純ちゃん、恵ちゃん、りっちゃん、梓ちゃん、12P。
     エリちゃん、いちごちゃん、澪ちゃん、14P。
     唯ちゃん、和ちゃん、姫子ちゃん、アカネちゃん、15P。
     そして憂ちゃん、18P。   

 憂      :18P
 和、唯、姫、茜:15P
 澪、苺、瀧  :14P
 律、梓、純、恵:12P 
 紬      :11P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

     となっているわ」


梓「憂、18P……」

純「圧倒的だね……」

憂「えへへ……」

憂(残り5ゲーム、か……。
   澪さんとは4P、和さんとは3P差……。
   あと数ゲーム凌げば、私の勝ちは確定する。

   だけど、そんなことはお2人も分かっているはず……
   あの2人が、確実ではなく、問題点もある計画を取ってくるとは考えにくいけど、
   そうは言っていられない状況に追い込まれているのも確か……。

   少なくとも、2人が動くならもう、ここしかありえない……
   逆に言えば、私が動けるリミットもこのゲームまで……!)   

さわ子「それじゃあ、16ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね。

     あと5ゲームよ、みんな頑張ってね」


-数分後・投票室-

和「さて……そろそろね」

和(私と澪が組んでいること、そして、私達が動くこと……それは憂も分かっているはず。
   だけど、それを分かっているということは、私も分かっていること……
   憂に動かれるわけにはいかなかったから、部室での憂の監視は怠っていない。
   それは澪もそうだから、憂は動くことはできていないはず。

   だけど、それでも憂はまだ自分の優位を信じている……
   そしてそれによって、こちらの策にハマることになる……)


-数分後-

澪「……ようやく、か……」

澪(この時点で和と憂ちゃんの差は3Pになってしまっている。
   だけど、私と和が組んだのは13ゲーム目……。

   私の戦略では、14ゲーム目から動く予定だったんだが……和に止められていた。
   確かに、私の戦略は確実じゃない……けど、ほぼ成功していたはずだったのに)

澪「……まあ、逆転にはまだ間に合うゲーム数が残っている、か……」


-数分後-

憂「……動かれてしまった……」

憂(……組んだ方と接触をはかることはできなかった……。
   和さんか澪さんは必ず部室に残る状況下で、気づかれずにそんなことをするなんて至難の技。
   そんな状況下なら、裏切り者がバレないように、私が動くことはやめた。

   そして今回、予想どおり、和、澪、両グループが赤を投票することになっている……。
   こうされることは分かっていた。
   だから、裏切り者の2人には、赤に投票することを指示されたら、赤ではなく白に投票するようにしてほしかった。
   そうすれば、お姉ちゃんと私が黒に投票すると、この状況ができる。

   白:2 黒:2 赤:9

   これなら、赤に投票した方のポイントを奪うことができたのに……。

   でももうそんなことを考えてもしょうがない……。
   この場合考えられるのは2つのパターン。
   1つ目は、和さん、澪さんの2人と、裏切り者ではないと確定できる2人を使い、
   私とお姉ちゃん以外の投票で、こうすること。

   白:2 黒:2 赤:7

   どの色でも1人になってしまえば5P没収だから、
   和さんと澪さん以外に、少なくとも2人は裏切り者ではない人を見つける必要がある。
   この場合、お姉ちゃんと私が赤に投票するとポイントが没収になるから、白か黒に揃って投票すればいい。

   2つ目は、さっきの私達の行動を2人に読まれている場合に起こるパターン。
   澪さんも和さんも、予告どおり赤に投票……

   白:0 黒:2 赤:11

   この場合は赤が多数派になってしまい、和さんと澪さんは3P獲得……
   一気に3P差がなくなってしまう。

   じゃあ私達も赤に投票する……とした場合は、
   1つ目の、和澪グループのうちの4人が、2人ずつ白と黒に分かれて投票するパターンをされると、
   赤に投票した私達は2P没収、和さん達は1P追加で、同じく3P差がなくなってしまう)

憂「どちらも3P差をなくされる可能性がある……だけど……」


-数分後・部室-

さわ子「それでは、16ゲーム目の結果発表を行います」

憂「……」

憂(お姉ちゃんと私が投票する色は、結局すぐ決まった。
   確かに、さっき考えたどちらのパターンも、私から見たら同程度のリスクがあったけど、
   逆に和さん、澪さんの視点から考えれば、
   2人にとってどちらのリスクが大きいかなんて、一目瞭然だからね)

和「……」

澪「……」

さわ子「16ゲーム目の結果は、
     白、2。黒、2。赤、9。
     となりました。多数派は赤だけど、残りの票が白と黒に分かれています。
     なので、赤に投票した人は2P没収、白と黒に投票した人は1P獲得ね」

憂「……!」

唯「……! あ、あああああ!
   憂、ポイント取られちゃったよおお!?」

憂「……そうだね……」

憂(……リスクが大きい方を取ってくるなんて……)

和「……やっぱりこちらの策にハマってくれたわね、憂」

憂「……まさか、上手くいく確率が低い方を取ってくるとは、思いませんでした」

憂(私が赤に投票した理由……それは、和さん達から見て、そちらのパターンの方がリスクが少ないから。
   私達が赤に投票することを読み、和さん、澪さん、そしてあと2人が、
   白黒に2票ずつ投票するパターンでは、和さんと澪さん以外に、裏切り者ではない2人が必要となる。

   だけど、私と組んでいる裏切り者が誰かなんて分かる術はないのだから、
   その2人は、完全に読みで当てる必要がある。
   だから、今回みたいにする場合、

   白:2 黒:2 赤:9

   @裏切り者ではない2人を選ぶ
   A私達の動きを読む

   という2点つの関門があった。だから、こちらのほうがリスクが高い。
   よって、そちらではなく、Aの関門しかないパターンである、
   私達に白か黒に投票させ、自分達は赤に投票するパターンでくる……そう読んだからだったけど……)   

和「残念ね、憂。分かっていたのよ、憂がそういう考え方をするのは。
   だって、あなた達は裏切り者を確保し、さらにポイントでは大量リード……
   そうなると、自分達はリスクが大きい行動はとらない。

   そして逆に……相手も同じように考えていると、思い込んでしまう。
   つまり、私達は、リスクが低い方を取る、と考えてしまうということ」

憂「……」

憂(……なるほど……ね)

憂「……確かにこの16ゲーム目によって、私と澪さんは1P差、
   和さんとは同点になりました。
   だけど、それだけ……まだ私の計画は終わっていません。
   裏切り者によって、グループが意味をなさなくなるんですから」

憂(和さん達が今回みたいな投票の仕方をしたということは、
   裏切り者でない人が数人は分かっていても、裏切り者が断定できていないということになる。
   それが最重要……裏切り者がバレることはまだない……私の計画はまだ終わっていない……!)

-----

I

憂「確かにこれで、私と和さんは16Pで並び、澪さんは15Pで1P差に迫られました。
   ですが……まだ私の計画は終わりではありません」

和「……」

憂(私の計画において最も重要だったのは、和グループ、澪グループにそれぞれ1人ずつ潜む裏切り者が、
   誰であるかバレないようにすること。
   確かにポイントは奪われ、追いつかれてしまったけど、
   まだ逆転は許していない。これが重要)

憂「和さん達ならすでにお分かりだと思いますが、
   私は、和グループ、澪グループのそれぞれに、複数人の裏切り者を作っている……
   つまり組んでいます。

   16ゲーム目では、うまく裏切り者ではない2人を選ぶことができたようですが、
   果たしてこの後も、それが続くでしょうか?」

律「複数人……!?
   澪、分かってると思うけど、私は違うぞ!?
   だって今私は黒に投票したけど、それが憂ちゃんにはバレていなかっただろ!?」

紬「私も違うわ!」

澪「……」

エリ「私も黒に投票したけどバレてないってことは、裏切り者じゃないって信じてもらえるよね?」

和「……」

憂(もちろん、私が作った裏切り者は、各グループ1人ずつ……
   だけど、いかにもたくさんいるようにすることで、グループの崩壊を生むことになる……。

   それと、いいことを聞いてしまった。
   和さんと澪さん以外に、誰が赤に投票しなかったか、それが気になっていたけど、
   どうやら律さんとエリさんらしい。

   これは私が、ほぼ組むことのない2人を選んだということ……)

憂「……確かに、律さんとエリさんは私とは組んでいません」

律「……!」

憂「ですが……今、澪グループは、澪さん、律さん、梓ちゃん、紬さん、姫子さん、アカネさんの6人。
   そして、和グループは、和さん、純ちゃん、恵さん、エリさん、いちごさんの5人。
   このうち、澪グループは裏切り者である可能性があるのは4人、和グループでは3人です。

   どちらのグループにも、半数以上の裏切り者候補がいる……絞ることができますか?
   いえ……これ以上グループを組み続けることができますか?

   それとも、裏切り者ではないと確定している、和さん、澪さん、律さん、瀧さんの4人グループを作りますか?

   それもいいです……が、私とお姉ちゃん、そして裏切り者……それを合わせたグループに、
   勝てると思いますか?」

梓「な……!
   澪先輩、これはまずいんじゃ……。
   私は裏切り者じゃないですけど、それを信用してもらう方法はないですし……
   憂グループが何人になるのか分からない……下手をしたら、過半数を取られているのかも……!」

恵「みおたん……真鍋さん……!」

憂(とはいえ、このまま和澪グループとして存続する可能性もある……けど、
   それならそれで、投票する色を教えてもらうだけ。
   現状、私と和さんが同点トップなんだから、最低でも負けはない。

   和さん達が16ゲーム目と同じ方法をとってきたとしても、
   この状況下なら、強引にでも組んだ方との接触をはかることができるから無意味)

和「……ふふふ」

唯「……? 和ちゃん?」

和「……やっぱりそういう考えだったのね、憂。
   だからこそ、16ゲーム目に私の策にハマった……そして、それが命取り。
   ここでミスをしなければ、憂の勝利は確定だったのにね」

憂「……どういう意味ですか?」

和「あなたは大きな勘違いをしているわ。
   そしてそれによって、あなたは負ける……!」

憂「勘違い……?」

和「そう……勘違い。
   憂はたぶん、16ゲーム目に私が取った策は、

   @裏切り者ではない2人を選ぶ
   A憂の動きを読む

   この2つの問題があった、そう考えたんでしょう?」

憂「……」

和「だけど、憂がリスク分析をすることは分かっていたから、
   Aは解決されていた。

   そして……残念ながら、@もリスクではなかったのよ」

憂「……言っている意味が分かりませんね」

和「分かっていたのよ……あなたと誰が組んでいるのか……
   裏切り者が誰なのか……!」

憂「……ハッタリですね。
   そうやってあたかも裏切り者を特定したかのように振る舞うことで、
   グループのメンバーに安心感を与え、グループを存続させる……それが狙いですね?」

和「……憂と唯は、常に投票するのは最後だった。
   だから、順番から裏切り者を特定することはできなしい、
   まして、直接話すなんて愚かな真似は絶対にしていない。

   よって、裏切り者を特定するのは不可能……そう思っているわね?」

憂「……」

和「私は裏切り者を完全に特定することができなかったせいで、一度失敗しているのよ?
   それを二度も繰り返すと思う?

   ねえ?
   純ちゃん、姫子さん。あなた達はどう思う?」

憂「……!」

憂(……純ちゃんと姫子さんは、お姉ちゃんと私が組んだ方達……!
   まさか、本当に……?

   いや、違う。動揺しちゃダメだよ。
   これは、私の動きを見ているだけ……このあと、純ちゃんと姫子さん以外も、
   同じように名指しに……)

和「あなた達が裏切り者ね、純ちゃん、姫子さん」

憂「!」

憂(まさか……私は動揺を見せていないはずなのに……!)

和「憂、残念ながら、私は確信、確証を持って、この2人を裏切り者だと言えるわ」

憂「な……何で……」

和「さあ、憂グループはこれで明らかになったわ。
   澪、あらためてこれからの動き方を決めましょう」

澪「……そうだな」

梓「澪先輩、本当にあの2人で間違いないんですか!?」

澪「ああ、和がそう断定した」

唯「憂……」

純「……」

姫子「……」

憂(何で……何でバレたの……!?
   まずい……これじゃあ、今は同点でも、残りは4ゲームもある……確実に勝ち越される……!)

和「さて、まずは現在のポイントを確認しましょう。
   今のポイントは、こうなっているわね」

 憂、和    :16P
 澪、瀧    :15P
 唯、律、茜、姫:13P
 苺      :12P
 梓、純、恵  :10P
 紬      : 9P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

和「私達9人で組む以上、全員のポイントの動き方は同じになる。
   だから悪いんだけど、今一番ポイントが多い、私が勝つことになってしまうわ。

   だけど、私が勝ったら、みんなに賞金を分ける。
   契約書を書くことはできないけど、これだけは約束するわ」

律「まあ、当然そうなるよな」

和「それと……これが最も大事なことなんだけど、
   私達は絶対に、憂グループの4人が投票に行くまで、
   投票はしないわ」

澪「万が一裏切り者を作られたとしても、私達が投票する色が分からなければ意味がないからな。
   よって、裏切り者を作ることはできなくなる」

梓「……待ってください! それだと、憂達が投票に行かなかった場合、
   私達は投票に行けない……結果皆5P没収で、
   これが続いたら、結局憂と和先輩は同点で終わってしまうんじゃ……ううん、皆さん0Pに……」

和「……それは問題ないわね。
   最低でも私だけは投票に行けばいいことだし、
   それに憂……憂がそんな卑怯な策、取るはずないわよね……?」

憂「……!」

唯「う、憂……」

憂「……先生、もう17ゲーム目は始まっていますよね?」

さわ子「あ、ええ……ちょっと宣言する隙が見当たらなかったから困っていたんだけど……」

憂「私が最初に投票に行きます」

さわ子「分かったわ」


-投票室-

憂「……」

憂(なんでバレたのか……分からない……)

憂「……どうしよう、かな」

憂(だけど、お姉ちゃん達に何か残さないと、申し訳が立たない……。
   せっかく私についてくれたのに……)

憂「何色にいれるべきなのか……どんなメモを残すべきなのか……」

憂(……メモ……?
   ……!
   待って、そうだ、そういえば……。

   3ゲーム目の澪さんの計画、それは和グループから裏切り者を作ることで、
   そのために和さんを投票室に縛り付けていた。
   だけど澪さんと同じく部室にいた私は、すぐに澪さんの計画に気づけたから、
   澪さんが投票室に何を仕掛け、和さんをひっかけたかなんて、考えていなかった。

   だけど、もしそれが私の考えているとおりだとすれば……!)

-----

J

憂(そうだ、メモを利用すれば、裏切り者を特定することができる……!)

憂「……あれ……?
   だけど、そうだとすると、おかしな点がある……」

さわ子「憂ちゃん、そろそろ投票してくれないと、他の子に迷惑になってしまうわ」

憂「あ、すいません……」

憂(……急がないと……)


-同じ頃・部室-

和「……」

和(時間がかかっているわね、憂……私がどうやって裏切り者を特定したのか考えているのでしょうけど……
   それが分かったところで、もう遅い)

和「で、これから先投票する色なんだけど、まず、赤に投票はしないわ」

梓「それはそうですよね。
   あっちは4人グループなんですから、白と黒に2人ずつ投票される可能性もある。
   そしてそれをやられたときに私達が赤に投票していたら、ポイントが没収されてしまいますから」

和「それで、残った白と黒、どちらに投票するか、なんだけど、これを誰が決めるか……それが問題よね。
   たとえば色を決めることになった人が憂と組んだらとんでもないこと……それは防がないといけない」

紬「それじゃあ、絶対に憂ちゃんとは組まないであろう、澪ちゃんか和ちゃんが決めればいいんじゃないかしら」

和「それは確かにそうなんだけど、私が決めると澪が納得しないんじゃない?
   逆に、澪が決めるとなると、私は納得できないわ」

澪「……まあ、な」

恵「じゃあどうするの?」

和「そうね……これまで一度も裏切っていなくて、憂が話しかけにくいであろう、
   いちごさんかエリさんが色を決める、ということを私は提案するわ。
   けいおん部の皆は、当然除外する」

律「……なるほど、それがいいかもしれないな……。
   じゃあ、いちごでいいんじゃないか?」

和「どう? いちごさん」

いちご「別にいいけど」

澪「……決まりだな。
   それで、私からも提案があるんだけど、これまでメモの位置はみんなバラバラにしていただろ?
   それを、全員同じにするんだ。特に意味はないけど、これなら1人だけはぶられる、
   なんていう恐れがなくなる」

梓「あくまで裏切り者の警戒は怠らない、ということですね、それでいいと思います」

和「メモの隠し場所は、いちごさんにまかせるわ。
   憂グループの投票が終わったら、まずいちごさんが投票に行き、投票する色を決めてメモを残す。
   そのメモには色以外に、次のメモの隠し場所も書く。
   そして、次に投票に行く人だけに、メモの場所を伝え、その人はすぐに投票に行く。
   あとはこの繰り返しになるわ。最後の人はメモを回収することを忘れないように」

律「いよっし、これで決まりだな!」

憂「……お姉ちゃん、次投票おねがいね。
   ちょっと私時間をかけちゃったから、悪いけど、急いでもらっていいかな」

唯「……う、うん、分かったよ」

和「……長かったわね、憂」

憂「和さんの計画、考えていたんです。
   そして、なぜ裏切り者……私が誰と組んでいるのか、分かったのか」

和「そう。
   それで……私の策は分かったのかしら?」

憂「はい。和さんが行ったのは、澪さんがしかけたトラップを利用することですね」

律「……澪の? そういえば、私らってなんで和が裏切り者を特定できたのか知らないんだけど……」

憂「澪さんは3ゲーム目、和グループと組むために、和さんを投票室に縛り付ける必要があった。
   そして、そのとき利用したのが……箱や本の影にあって分かりにくくなっていましたが、
   澪さんのカメラ。
   恐らく澪さんは、それを本当に使うという計画をたてていたけど、
   うまくいかなかった……そこで、トラップとして利用することにした」

澪「……そのとおり。一個違うところがあるとすれば、あれは律のカメラだけどな」

憂「ですが、あのカメラはそのままになっていた……誰も回収する意味がないですからね。
   そして……次にそのカメラを利用したのが、和さん」

和「……」

憂「和さんは11ゲーム目、やけに投票に時間がかかっていました。
   あれはあの時点で、私の計画の一部である、裏切り者の存在に気づいていて、
   それを発見するのに、カメラを利用できると考えたからですね?」

和「……さすが憂ね。この短時間でそれに気づくなんて」

憂「実は、私もカメラを使おうと思っていた……というか、
   実際にしかけていたんです。澪さんが仕掛けたカメラのちょうど反対側ですね」

和「……!
   へえ、そうだったんだ。やっぱり長いこと2人は戦っていたから、同じようなことを考えてしまったのかもね。
   でも、そんなこと言ってしまっていいの?」

憂「はい、どうせそろそろ回収しようと思っていたので」

紬「だけど、カメラなんかでどうやって?
   投票室は1人しかいけないんだから、憂ちゃんと誰かが話しているところを撮るなんて無理……。
   あ……まさか、憂ちゃんと先生が話しているところを撮った……?」

憂「いえ、私は必要以上のことは話していません。
   撮影したのは……純ちゃんと姫子さんが置いたメモ……それを私が見たという現場」

純「あ……!
   そういえば、メモは廊下に置くことが多かったけど、一回だけ教室の中にメモを置いたことが……」

姫子「私も……。メモの場所は毎回変えないといけないからしょうがなかったけど、
    まさかそこを突いてくるなんて、すごいね」

和「そういうことよ。もし一度も投票室でメモの交換がなかったらどうしようかと思ったけど……。
   だけど、少なくとも純ちゃんと姫子さんと、憂は情報交換を行っている、それは確かだった。
   よって、憂と組んだ裏切り者はその2人だと分かったのよ。
   もちろん、他に裏切り者がいる可能性もあったけど、多くてあと1人だと思ったし、
   やっぱり一度くらいは教室にメモが置かれる可能性が高い……だから私は2人だけだと判断した」

憂「やはりそうでしたか……やられました……」

澪「……」

澪(……それにしても、なんで憂ちゃんはそのことをわざわざ……せめてもの抵抗か?
   いや……憂ちゃんに限ってそんな……)

唯「ねえ澪ちゃん」

澪「ん……唯、戻ってきてたのか」

唯「うん、今は姫ちゃんが行ってるよ。憂は何をやっているの?」

澪「和がどうやって憂ちゃんと組んでいる奴を特定したのか、
   それを憂ちゃんが分かったらしいんだ」

唯「本当に? でもなんか解説終わった雰囲気だ……」

和「さて、憂。
   今の流れで、裏切り者は純ちゃんと姫子さんである、と完全に認めてしまったようだけど……
   これからどうするつもりかしら?」

憂「……今はまだ同点ですから。
   和さん達は、皆さんが同じ色に投票する……そして、こちらが4人組……白と黒に2:2で
   投票する危険性がある以上、赤には投票できない。
   つまり、黒か白に、投票することになりますよね」

和「それが分かったところで、どうしようもないわよね。
   まさか、残り4ゲームを私達と同じ色に投票して、
   なんとか同点で終わらせよう、なんて考えていないでしょうね?

   もしくは、これから新たに裏切り者を作るか、実はまだ、こちらのグループに裏切り者がいるか……。
   だけど私達は、現状憂グループだと認識している4人が投票しない限り投票しない。
   これではどうしようもないわよね?」

憂「……」

憂(……私達のグループは、和さんの言うとおり、4人組……。
   そして現状、圧倒的有利になった和、澪グループから抜けて、私達と組もうなんて、
   普通は考えない……いくら分け前が多くなろうとも。

   こうなれば、後は賭けるしかない……信じてくれるか否かに……!)

純「終わりましたー」

唯「純ちゃんお帰りー」

和「4人とも終わったみたいね。じゃあいちごさん」

いちご「うん」
  
和「次は私が行くからね」 

-数分後・投票室-

和「いちごさんのメモは……。今回は白ね」

和(こちらの策の準備はほぼできたと思っていたけど、まだ懸念事項があったとはね……。
   ……。
   確かに、もう1台カメラがある……序盤に投票室を洗ったときはなかったから、
   仕掛けられたのはその後ということね……。
   データはすべて消されているようね……なら問題ない。……よかったわ)

和「先生、終わりました」

和(あと4ゲーム、憂がすべてのゲームで、私達と同じ色に投票するのは恐らく不可能……
   これで憂は勝利者争いから脱落……。

   あとは澪……ね。
   いくら組んだとはいえ、澪にも勝たないとね……)

-----

K

和(憂は勝利者争いから脱落……あとは澪だけね……!)

さわ子「それでは、17ゲーム目の結果発表を行います。
     17ゲーム目の結果は、
     白、9。黒、4。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

和「……あら、憂……早速違う色に投票してしまったようね」

和(私達のグループは9人、憂グループは4人だから、投票結果を見れば一目瞭然)

憂「……」

律「おお! これで和が逆転だ!」

紬「和ちゃんが17P、憂ちゃんが16Pね!」

 和    :17P
 憂、澪、瀧:16P
 律、茜  :14P
 唯、苺、姫:13P
 梓、恵  :11P
 紬、純  :10P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

梓「この後も、私達は黒か白にしか投票しないので、
   もう憂が逆転することはできない……私達の勝ちですね!」

和「この後のメモの位置は、みんな覚えているわよね?
   間違っても口にしないこと」

澪「もちろんだ」

憂「……」

唯「憂、これは……」

憂「……まだ分からない……」


-数分後-

さわ子「それじゃあ、18ゲーム目を開始します。
     投票時間は30分だから、それまでに投票してね」

憂「行ってくるよ、お姉ちゃん。投票はさっきと同じだよ」

唯「……うん」


-投票室-

憂「……!」

憂(これが嘘じゃないとすれば……)


-数分後-

澪「……今回も白か……」

澪(あと私がするべきことは……)


-数分後-

和「あと1ポイント……」

和(残すところ3ゲーム……これだけあれば、まず問題ないわね……)


-数分後・部室-

さわ子「それでは、18ゲーム目の結果発表を行います。
     18ゲーム目の結果は、
     白、9。黒、4。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、白に投票した人は1P獲得ね」

和「もらったわね……これで逆転……」

律「ん? 17ゲーム目でもう逆転してただろ」

和「ああ、違うわ。澪が、よ。
   それに、残り2ゲームで私と憂は2ポイント差……赤に投票はしないから、
   どうあがいても逆転は不可能……。
   まあそもそも、私がポイントを取れず、憂がポイントを取るなんて無理な話だけどね」

律「そうだな!」

唯「憂……私達はこのままでいいのかな?」

純「……ここから先、やることは?」

憂「……これまでと変わりなく、かな」

唯「だけど……」

姫子「私達にやれるのは、今やってることだけかな……」

憂「そうなります。何かあるとしたら、20ゲーム目でしょうね」


-30分後-

さわ子「それでは、19ゲーム目の結果発表を行います。
     19ゲーム目の結果は、
     白、13。黒、0。赤、0。
     となりました。多数派は白だから、全員1P獲得ね」

梓「差は広まらなかったですけど、縮まってもいないですね!」

紬「あと1ゲーム……逆転は不可能ね!」

梓「あれ……賞金って200万円ですよね……私達は9人組なので、
   1人20万円以上……? あ……現実味を帯びてくると急に震えが……」

律「今までって、1人で勝っても5万円だったもんな……段違いだ……」

和「……それじゃあいちごさん、よろしくね」

いちご「うん」

唯「……最後のゲームだよ、憂……」

憂「……」

恵「みおたん、あとちょっとね!」

澪「……」


-数分後・投票室-

澪「……」

澪(一応、頼んでみるか……)

澪「先生、ちょっと頼みたいことがあるんですが……」

さわ子「え? 手助けになるようなことは絶対に言えないわよ?」

澪「はい、分かってます。ゲーム終了後の話なので、
   ゲーム自体に影響はないことです」

さわ子「それならいいけど……」


-25分後-

さわ子「それでは、20ゲーム目の結果発表を行います」

律「アッー! やっと終わったぜ!」

梓「10時間くらいですもんね……」

紬「なんだか私、食べ過ぎちゃったかも……」

梓「20ゲーム目がどうなっているかは分からないですけど、
   憂は澪先輩と1P以上、和先輩は2P以上の差がある……
   和先輩の勝ちは確実ですね!」

律「だなー……というか私達、やっと終わったとか言っているけど、
   実際に戦ってたのって、主に澪、憂ちゃんと和なんだよな……」

エリ「私達が疲れたって言っているのは間違いかな?」

アカネ「同じ緊張感の中にいたんだし、いいんじゃないかな」

律「何にしても、これで終わりだぜ!
   あ、すまんさわちゃん、20ゲーム目の結果発表頼むぜー」

さわ子「はいはい、じゃあ20ゲーム目の結果ね。
     20ゲーム目の結果は、
     白、2。黒、11。赤、0。
     となりました。多数派は黒だから、黒に投票した人は1P獲得ね。
     これで全ゲームが終了、皆おつかれさま」

律「……あれ?
   白が2……だと……?」

梓「唯先輩達が、白と黒に分かれて投票した……?」

紬「だけど、いまさらそんなことをして意味があるの……?」

エリ「……違うよ……白に投票したの私だもん……。
    いちご、どういうこと!? 私が見たメモには、白って書いてあったのに、
    この結果はいったい……」

いちご「……」

律「え? 白に投票したのはエリなのか?」

梓「私達が見たメモには黒って書いてありましたよね……。
   あれ、じゃあもう1人の白に投票した人は……?」

澪「私だよ、梓」

紬「澪ちゃんが……? どういうことなの……?」

和「……2人ともごめんなさい、若王子さんにそう指示をしたのは私なの」

エリ「……どうしてかな?」

和「ひとことで言うなら、念のためね。
   憂からすれば、エリさんといちごさん……このあたりと接触するのは難しい。
   だけど、それは私達も想定するでしょうから……逆にその2人は憂から狙われる可能性があった。
   ただ、いちごさんはメモを置く仕事があるし、それは私も隠していない。
   よって、私との繋がりが強い……憂からしたら狙うのが難しくなる。

   そして、澪はこれまで私と敵対関係だったのだから、何かされても困る。

   だから、万が一に備えて、私達が組んだときから、
   実は澪とエリさんの2人だけ、メモを置く位置を変えさせてもらっていたの。

   最初に皆、いちごさんからメモの位置を教えてもらっていたと思うけど、
   澪とエリさんだけは、別の場所を伝えるように、私が指示をしておいたの」

律「……とりあえず、憂ちゃんからの攻撃を防ぐためにやったってことか?」

和「ええ、そう思ってくれていいわ」

梓「だけど……澪先輩……」

澪「……和がそう言うなら、そういうことなんだろ」

和「……澪、悪かったと思っているわ、騙すようなことをして。エリさんもね。
   だけど大事なのは、私が勝つこと……私が勝ったら、グループ全員に分け前を払う。
   そういう約束だからね。だから、石橋を叩いておいた」

律「……まあ、どうあっても和が勝ちさえすればいいのか……」

梓「それはそうですけど……何か釈然としない……」

澪「……まあ、終わったことは仕方ないさ」

さわ子「それじゃ、結果発表を行うわよ。皆、覚悟はいいわね!?」

律「よっしゃー、来いさわちゃん!」

梓「うわぁ……結果は分かっているはずなのに、ドキドキします……」

エリ「うーん、やっぱり見ているのとやるのとは違うね〜」

アカネ「そうだね」

さわ子「じゃあ、1人ずつ最終的なポイントを発表していくわ。
     まず純ちゃん、12P。おめでとう、最下位よ!」

純「わーうれしいなー。
   ……やっぱり私はディーラーがいいです……」

憂「……」にこにこ

純「……わ、私ディーラー失格でした、サーセン……」

さわ子「続いて、ムギちゃん、13P。アカネちゃん、17P。恵ちゃん、14P。
     エリちゃん、18P。唯ちゃん、15P。梓ちゃん、14P。
     姫子ちゃん、15P。りっちゃん、17P」

梓「あれ、律先輩17P……律先輩にしては何気に検討してますね」

律「中野ぉー! お前の方がかなり得点低いくせにー!!」

梓「……どちらにしても、和先輩が20Pなんですから、
   同じことですよ」

律「まあそうだけどなー」

さわ子「和ちゃん、17P」

律「……」

紬「……」

梓「……え?」

律「はああああああ!? 和が17P!?」

紬「和ちゃんのポイントは20のはず……!」

和「……」

梓「まさか、憂が……それとも、澪先輩が……!? 2人とも18Pですよね!?」

律「待てよ、ありえないだろ、そんなこと!
   今までの結果を見ても、仕組まれてたゲームなんてなかったぜ!?」

紬「でも、実際和ちゃんのポイントが……」

律「いったい、何が起こったってんだよ……!!」

-----

L

さわ子「和ちゃん……17P」

律「はあああ!?」

紬「和ちゃんは20Pのはずじゃ……」

梓「まさか、憂か澪先輩が何かした……!?
   2人は18Pなんですよね……!?」

恵「真鍋さん、これって……」

和「……」

澪「……」

憂「……」

律「と、とりあえずだ、他の奴の結果も聞かないと……
   何か仕組んだなら、他にもポイントが私達の予想と違う奴がいるかも……」

梓「でも、今までの結果を見るかぎり、仕組まれた様子なんて……」

さわ子「いちごちゃん、19P」

エリ「……」

アカネ「……」

律「い、いちごおおおお!?
   待て待て、澪と憂ちゃんは18Pで、トップのはずの和が17P……
   ってことは、いちごがトップに!?」

いちご「……」

梓「憂でも澪先輩でも、和先輩でもなく……!?」

紬「……!
   ううん、違うわ! だってさっき言ってたじゃない、
   いちごさんに指示を出していた、って……!」

和「……。
   そう、そのとおりよ、ムギ。
   いちごさんに指示を出したのは私……そして、この結果になったのは、
   私の策が成功したから……!」

律「和の策……!?」

梓「いったい、どうやったらこんな結果になるんですか……!?
   それに、私達のグループが勝ったことに変わりはないんじゃ……」

和「残念だけど梓ちゃん、私達は別に、本当の意味ではグループを組んだわけじゃないの。
   グループというのは、その中の誰かが勝った場合、グループ全員に分け前を払うというもの。
   だけど思い出してみて……私達が組むと決めたとき、私が言ったことを」

梓「あ……
   ”私が勝ったら、みんなに賞金を分ける”
   って言っていただけ……他の子が勝った場合のことは言及していない……!」

和「そういうことよ。この意味では、契約書はあったほうがよかったわね」

律「勝ったのは和ではなくいちご……そしていちごは、分け前を払う必要はない……和以外には……!
   いや……それは分かったけど、どうやったらこんな結果に……?」

和「私が16ゲーム目に実行した策、そしてその結果、覚えてる?」

恵「それって、憂グループの動きを見抜いて、ポイントを奪った……」

アカネ「あのときはこうだった……」

 白:2 黒:2 赤:9

エリ「白が秋山さんと真鍋さん、黒が私と律で、他の皆が赤だったよね」

和「……それよ」

律「……どれ?」

和「そこの認識が間違っているのよ、あなた達は」

梓「どういうことですか……?」

和「違うよの、その結果。合っているのは、黒に投票した人だけ。
   白と赤に投票した人は、そうじゃなかった」

紬「……!」

いちご「白に投票したのは私」

律「いちごが白に!? じゃあ、ってことは、和が赤に投票していた!?」

和「そう。だから16ゲーム後のポイント……あのとき私は、
   こう言った。

 憂、和    :16P
 澪、瀧    :15P
 唯、律、茜、姫:13P
 苺      :12P
 梓、純、恵  :10P
 紬      : 9P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   だけど実際には、私が赤に投票してポイント没収、
   いちごさんが白に投票してポイントを得ていたのだから……
   本当のポイントはこうだった!」

 憂     :16P
 澪、苺、瀧 :15P
 和、唯、
 律、茜、姫 :13P
 梓、純、恵 :10P
 紬     : 9P

梓「和先輩が憂と同点ではなくなって、いちご先輩がトップの憂と1P差になってる……!」

紬「和ちゃんは13P……トップとはほど遠い……」

和「そう、つまりあの16ゲーム目に私といちごさんが入れ替わって投票したことによって、
   この状況を生んだ!
   実は、憂と組んだ裏切り者……それは14ゲーム目の時点で分かっていたのよ。
   だけど、もし14ゲーム目に今の策を実行したとすると、
   15ゲーム目の途中経過でポイントがおかしいことがバレ……結果私の策がバレる。

   だから私は、15ゲーム目の後に、裏切り者が判明したことにして、
   16ゲーム目に動くことにした!」

梓「確かに、16ゲーム目から最後までは結果発表がない……
   だから、投票結果が私達の予想と違うものであっても、気づくことができなかった……」

紬「あ、そうか……だから20ゲーム目に……!」

和「そういうこと。
   このままいくと、19ゲーム目終了時のポイントは、
   こうなる。

 澪、苺、瀧:18P
 憂    :17P
 和、律、茜:16P
 唯、姫  :14P
 梓、恵  :13P
 紬    :12P
 純    :11P

   これだと、いちごさんと、澪と瀧さんが同点トップになってしまう。
   だから私は、いちごさんが皆の色を決めることになったときから、
   20ゲーム目は、澪と瀧さんだけ、違う色を投票するように書かれたメモを見せるようにしておいたのよ」

梓「そういうことか……憂対策に、というのは納得できなかったんですけど……」

律「いや、ちょっと待てよ!
   和といちごが組んでたのって、メモを置く奴を決めるより前だった、ってことだろ?

   だけど、メモを決める奴を決定したのは私達全員……もしそこでいちごにならなかったら……。
   それに、和自身が色決めをすればよかったのに、和はそれを断っていた……それはおかしいだろ?」

和「まず私が色決めすることは論外ね。
   あのときも言ったけど、やっぱり澪は納得しなかっただろうし、
   ゲームを通して目立った動きをしていた私が色決めを行うと、何か策があると思われる可能性があった。

   だから私は自分がそれをやることを断る代わりに……色決めする人を2人まで絞った」

紬「確かに、裏切る可能性が低いからといって、いちごさんとエリさんの2人に絞ったけど……
   それでも、エリさんになってしまう可能性もあったんじゃ……」

和「それはないわね、その2人ならいちごさんになる確信があった。
   万が一そうならなくても、私が若王子さんになるように誘導すればいいし、
   後でエリさんと組むことだってできる。

   大事なのは、あそこで私が何か企んでいる……そう思われないことだった」

律「結局、私達と組んだのはこのためだったってことか……!
   賞金の200万円は2人で分けるのか……ひゃ、100万円……」

和「ごめんなさいね。
   ……憂も澪も。残念だけど、私の勝ちよ」

澪「……。
   ……和」

和「何?」

澪「おかしいと思わなかったか? 今の結果発表」

和「……何が? どれも私の思っていたとおりのポイントよ」

澪「そうじゃない……結果発表の順番だよ。
   今まで途中経過を発表するとき、先生はポイントが低い奴から順番に言っていたけど、
   今回はランダム」

和「……それが何か問題あるのかしら?」

澪「問題はないけどな。でも、そうしてくれるように、私が頼んでおいた」

和「……確かに、澪のポイントはまだ発表されていないわね。
   澪のポイントが最後になるように頼んだということかしら?
   だけど、それは意味があること?」

澪「……」

和「……」

和(何かあるというの……澪……?
   いや、ありえない……澪が勝つ可能性はつぶした……。

   私に油断はなかった……常に憂や澪が他の誰かと接触していないか観察をしていた……。
   もちろん、このゲームにはメモという連絡手段が存在するけど、
   それでさえ、最初に置いたメモの位置を教えるために、接触をはかる必要がある。

   まさか、澪……憂と接触した……!?
   そうよ、澪もそうだけど、憂のポイントもまだ発表されていない……。
   どこかで、万が一憂とつながりがあるとすれば、澪がトップになるように動く……それはできたかもしれない。

   澪のポイントは、19ゲーム目の時点でいちごさんと同点……
   よって、例えば20ゲーム目……憂と澪の投票が逆だったとすると……澪は20ゲーム目でポイント獲得……
   つまり、いちごさんと並びトップということに……!

   いや、だけど、やっぱり澪と憂の接触はなかったはずだし……唯や純ちゃん、姫子さんだって……。
   ……じゃあいったい、この澪の態度は……!?)

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M

和(澪は何か策があったの……?
   まさか、いちごさんと澪が同点トップに……!?)

和「……まあ澪なら、私が20ゲーム目にしかけた策……それに気づき、
   同点トップに持ち込むことは可能よね……」

澪「……いや、残念だけど、それはない」

和「……」

和(まさか……逆転されている……?
   いちごさんのポイントは19P……澪は20P以上あるというの……?
   いや、それはありえない……)

さわ子「……次いくわよ。
     澪ちゃん……」

和「……」

さわ子「16P」

和「……!
   なんだ……同点どころか3P差……
   話にならな……い……?」

和(……16P?
   なぜ澪のポイントがそんなに低いの……?
   今の澪のポイントは18Pのはず……19ゲーム目まではいちごさんと澪は18Pで同点……
   そして20ゲーム目にいちごさんだけがポイントを獲得し、1P差になっている……
   そうじゃなければおかしい……!)

和「どういうこと……?」

憂「……安心しました、この結果を聞いて」

唯「本当だよ……途中の投票結果が分からなかったから、最後までどうなっているか不安だったよね」

姫子「ね〜」

純「……怖かった……」

和「……!」

和(まさか……)

さわ子「最後ね。憂ちゃん……
     20P」

いちご「……!」

梓「……!」

律「は、はああああ!? 憂ちゃんが20P!?
   おかしいだろ、憂ちゃんは18P……!」

紬「まさか……」

律「……どういうことだよ、ムギ」

和「……分からない……私は分からない……」

憂「……何が起こったかは分かる、でも、なんでこんなことが起こったか分からない……そういうことですね」

和「……私の策に気づいていたというのね……憂……」

憂「……はい。それに気づいたのは、和さんも分かっていると思いますが、私と組んだ方が暴かれた16ゲーム目……
   投票室に長くとどまって、和さんの計画を考えていたときでした。

   和さんは言いましたね、16ゲーム目以降にならないと、自分の計画は実行できない……
   だから、本当は14ゲーム目に裏切り者が分かっていたにも関わらず、気づいていないふりをした。

   和さんが裏切り者を暴くのに使ったのはカメラで、私が見たメモを置いた方が裏切り者……
   そういう特定の仕方でした。
   そうなると、私からすれば、カメラを使って裏切り者を暴いたと分かった時点で、
   どのゲームで和さんに裏切り者がバレたのか、私も分かるということになります。

   メモを見てそれを撮られたのは私なんですから、投票室にメモがあったゲームを思い出せばいい。
   そして、私が投票室でメモを見たのは11、13ゲーム目であったことから、
   和さんがカメラでそれを確認した……つまり裏切り者を特定したのは、その次の、12、14ゲーム目で
   あると分かりました」

和「……」

憂「そしてそれに気づいたとき、明らかにおかしいことに気づく。
   和さんが計画を実行に移したタイミングです。

   なぜなら、あのまま裏切り者が明らかになっていない状態が続けば、
   私とのポイント差がさらに開く可能性がある……だから、
   裏切り者が分かった時点ですぐに計画を実行に移さないのはおかしい。

   そして実際に実行されたのは、もう途中経過の発表がない、16ゲーム目……
   これによって私は、和さんと誰かが入れ替わって投票し、自分以外の方を勝たせようとしている……
   その可能性に気づきました。

   となると、誰と組んでそれを行うか……それが問題です。
   まず、15ゲーム終了時点での結果は、
   こうでした。

 憂      :18P
 和、唯、姫、茜:15P
 澪、苺、瀧  :14P
 律、梓、純、恵:12P 
 紬:11P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ
 
   この時点では、私に次いで、お姉ちゃん、和さん、姫子さん、アカネさんが並んでいます。
   和さん以外の誰かを勝たせるのですから、和さん以外の3人……お姉ちゃんは論外なので、
   姫子さんかアカネさんと組むことが考えられます。

   しかし、和さんはその時点で裏切り者の1人が姫子さんであることは分かっていますし、
   アカネさんは一度自分を裏切り、澪さんと組んだ……よって、この2人の可能性は低くなります。

   すると、次にポイントが多い3人……澪さんはないでしょうから、残りの2人、
   いちごさんとエリさんが考えられることになります。
   とはいえ大事なのは、ここで組んだのが、あの時点で私と4P差以上ある人だということなので、
   それを特定する意味はなかったんですが……
   16ゲーム目に私が部室にいない間、和さん達は話し合いをしていましたね。
   和さんからすれば、それを私のグループに聞かれても問題ない……そう考えていたのかもしれませんが、
   純ちゃんからその話を聞き、和さんから組んだのはいちごさんと分かりました。
   色を決めるメモを置くのがいちごさんだったからです。

   また、そちらの9人で和さんを勝たせ、和さんはそうなったら分け前を払う……その話も聞いていたので、
   和さんが自分以外の誰かを勝たせようとしている、そのことに確信が持てました」

和「……確かに、憂ならそこに気づける可能性と証拠を持っていた……だけどまさか……ね。
   あの時点で4P差以上あればよかった……というのは、それより差がない子の場合、
   この20ゲーム目で、憂が同点になったりポイントで負けたりしてしまうから……ね……」

憂「とはいえ、私は確信を持てましたが、当然私達のグループだけではどうしようもありません。
   しかし、これを他の方にも信じてもらうには、何か証拠が必要だと思いました」

和「証拠……そんなものが作れるとは思えないけど……」

憂「はい、確たる証拠、というわけにはいきません。
   ですが、ここまで和さんの計画の概要が分かっていれば、少しでも和さんを疑うことができるようなもの……
   それで十分だったんです。
   そこで、私もカメラを利用することにしました」

和「カメラ……?」

和(カメラといえば、澪がしかけたもの、そして憂がしかけたものの2つがあり、
   その両方をチェックしたけど、私の策につながるような証拠なんてなかったはず……)

憂「和さんは2つのカメラの存在を認識していたと思いますが、
   実はさらにもうひとつ、お姉ちゃんのカメラがあったんです。
   これは、16ゲーム目にメモを残し、しかけてもらっていました」

和「さらにもうひとつ……!?」

憂「私は、和さんがどうやって裏切り者を特定したのか明らかにし、それを語りましたが……
   本来そんなことをする必要はなかった。
   私がわざわざそんなことをした目的のひとつとして、私がその直前にしかけたばかりのカメラを、
   いかにも長い間仕掛けてあったように見せ、その存在を明かす……というものがありました。

   和さんは危惧したはずです。
   和さんは恐らく、14ゲーム目で2人の裏切り者が分かった段階で、
   澪さんのしかけたカメラを見ることをやめたと思います。
   しかしその自分の行動を、私がしかけたカメラに撮られたかもしれないと。
   そして、私のカメラの存在は澪さん達もいる場で私が明かしたことから、
   他の誰かがそれをチェックしてしまうかもしれないと。

   そうなると、14ゲーム目の時点で裏切り者が分かっていたのに、すぐには行動に映らなかったということを、
   私以外の方にも気づかれてしまうかもしれませんよね。
   私は組んでいないのだし、完全に少数派となっていたので問題なかったかもしれませんが、
   組んだ方にそれを知られるのは大きな問題……だから和さんは、いちごさんの次に、すぐに投票室に向かった。
   ですが結局、カメラにはデータが残っていなかった……当然です、あのとき初めて置いたんですから」

和「そいうこと……確かに私は、それを危惧し、憂のカメラを発見……内容を確認したわ。
   だけど、その場面を唯のカメラで撮っていた……。
   本来その程度のことは、何の証拠にもならない……けど、あのとき私は少し焦っていた……。
   それに、私が皆に言った策では、カメラの有無なんて問題ではなかった……だけど、私は即座に確認してしまった……。
   よって、本当にわずかだけでも疑いが生まれ、あとは憂の考えを伝えた……これが揃い、私が裏切ることを信じさせた……。

   ……。
   いや、待って。確かにそれは分かったけど、いつそれを伝えたの……?
   私はずっと警戒していた……憂グループが私達と接触をはかることを……。
   そして、それはなかったはず……」

憂「確かに、それはできそうにありませんでした。
   だからこそ、16ゲーム目に、和さん達がやってくることは予想できていたのに、
   対策をとることができなかった。

   ですがその後……和さんが唯一その警戒を緩めた瞬間があったはずです。
   それは、和さんがどうやって裏切り者を特定したのか、それを私が明らかにしたとき。
   そのひとつの目的はさきほどのカメラの件です……が、本当の目的はこちらです。
   ああやって和さんが行ったことを私が語ったのは、一種私が負けを認めたようにも取れる……
   だからこそ、和さんはそのときだけ油断した……。
   そしてそのとき、お姉ちゃんが動いてくれたんです。お姉ちゃんが、メモの位置を澪さんに伝えました」

和「……!」

和(あのとき……確かに私は憂の方や、カメラに注意が向いていたし、あれによって、
   憂は勝利者争いから脱落したと思い込んだ……。
   もちろん、その後も警戒を解いたつもりはなかった……けど、
   あの瞬間だけは、確かに油断してしまっていた……!)

律「あ、あのー……」

憂「はい?」

律「非常に恐縮なんですが……2人は今の会話だけでいろいろ成立してるのかもしれないけど、
   私らからしたら何が何やら……」

梓「憂が和先輩のトリックを、早い段階で見抜いていて、その根拠とか証拠とか……
   そういう話は分かったんですけど、結局なんで憂のポイントが20Pになっているんですか……?
   今の話の流れだと、憂と誰かが組んでいた……というかんじですけど、それだけじゃダメですよね?
   だって、仮に憂が誰かと組んだところで、憂達の投票は私達よりも前……。
   和先輩みたいに投票を入れ替えるのだって不可能……」

澪「……それは私が説明するよ。
   憂ちゃんと組んでいたのは私だからな」

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N

梓「なぜ憂のポイントが20Pに……。
   和先輩みたいに誰かと組んで投票を入れ替えるのは不可能なはず……」

澪「憂ちゃんと組んでいたのは私だ。
   私と憂ちゃんが何をしたのかは、私から説明する」

律「澪が……か……」

梓「組むとしたら澪先輩しかいない……そうは思いましたが、やっぱり憂と澪先輩が組むなんて驚きですね……」

澪「……和は気づいているのか?
   私達が何をしたのか……どうやって憂ちゃんのポイントを20Pにできたのか」

和「……投票の入れ替え以外はないわよね……。
   16ゲーム目終了時のポイントはこう……。

 憂     :16P
 澪、苺、瀧 :15P
 和、唯、
 律、茜、姫子:13P
 梓、純、恵 :10P
 紬     :9P

 ※ 姫→姫子 苺→いちご
   瀧→エリ 茜→アカネ

   だから17ゲーム目の時点から1Pでも逃したら、憂は今20Pに達していない……。
   そして、17ゲーム目からの投票結果は、
   こうなっていた。

17ゲーム目 白: 9 黒: 4 赤:0
18ゲーム目 白: 9 黒: 4 赤:0
19ゲーム目 白:13 黒: 0 赤:0
20ゲーム目 白: 2 黒:11 赤:0

   私達は17、18ゲーム目では、憂グループが4人であることから、
   当然憂グループは黒に投票したのだと思っていたけど、
   そのうち1人……憂と澪が入れ替わっていたのなら、この結果は納得できる」

梓「いや、ですから、憂達は私達より先に投票していたんですよ!
   澪先輩と票を入れ替えるなら、お互いの投票する色を示しあわないといけません。
   ですが、澪先輩は投票室に行ってメモを確認するまで、どの色に投票するか分からないんです。
   澪先輩でさえ分からないのに、それを憂が知る術なんてあるはずがない……不可能ですよ!」

澪「……梓、お前は投票室までに、物を置けることは知っているよな?」

梓「そりゃ……メモがなかったらとてもやっていけるゲームじゃないです……」

澪「じゃあ、もう一度ルールを思い出してほしい。
   このゲーム、投票室には一度しか行けず、そして、投票後に残りのカードは回収される」

律「……そんなことは分かってるって……」

澪「このルール……投票室に行ったら必ず投票しろ、とは言っていない。
   そして、投票後にカードが回収されるということは、逆に言えば、投票しなければ回収されない」

恵「……まさか……」

澪「……憂ちゃんは置いたんだよ、メモと一緒に、投票カードを。それも、3色全部。
   そしてそれは、憂グループ全員分あった」

紬「……そして澪ちゃんは、自分の分、憂グループ4人の分を投票した……」

澪「そういうことだ。
   17、18ゲーム目では、いちごさんの置いたメモは白だった。
   だから、私、唯、純ちゃん、姫子さんの分は白に投票し、憂ちゃんの分だけ黒に投票した。

   こうすることで、あたかも憂グループの4人全員が黒に投票してしまって少数派……
   ポイントを逃したように見えるが、憂ちゃんだけはポイントを獲得していた。
   逆に私はポイントを獲得できていないから、16Pでゲームを終えることになった」

梓「澪先輩が5人分投票していた……!」

律「確かにこれなら、投票する順番なんて関係ないな……」

唯「でも結果を見るまで、本当に澪ちゃんが投票してくれているのか私達には分からなかったから、
   本当にドキドキだったんだよね〜」

姫子「本当だよね、秋山さんが妹さんの作戦に同意したっていうメモはあったけど、
    それだけで完全に信じることはできなかったし」

純「澪先輩、ありがとうございますっ」

和「……私の策をここまで読んでいたということは……当然20ゲーム目の投票は……」

澪「そう、和が20ゲーム目に、私とエリさんの投票する色だけ、違う色を指定することは分かっていた。
   なぜなら、これは和も言っていたことだけど、19ゲーム目終了時のポイントは、
   和から見ればこうだった。

 澪、苺、瀧:18P
 憂    :17P
 和、律、茜:16P
 唯、姫  :14P
 梓、恵  :13P
 紬    :12P
 純    :11P

   もしこのまま、これまでと同様にグループ全体で同じ色に投票してしまうと、
   私、いちごさん、エリさんが同点トップとなってしまい、和の戦略が意味を成さなくなってしまう。
   だから、私に与えられたメモに書かれた色は、どこかのタイミングで和やいちごさんが投票する色とは
   違うものが書かれることを確信していた。

   白: 2 黒:11 赤:0

   そこで私は、自分はメモに書かれたとおりの色である白を投票し、憂グループの4人は黒に投票した。
   和が裏切る行動に出る……それをするなら、20ゲーム目以外はありえない。それより前のゲームでそんなことをしては、
   グループに亀裂が入る可能性が高いからな」

和「……。
   ……負けたわ、憂、澪。
   お疲れ様」

憂「……いえ、和さんこそお疲れ様です」

澪「というより、皆お疲れ様」

和「ただ……2人に聞きたいことがある。
   憂は、なぜ投票カードを全部置いておくなんていう暴挙ができたの?
   そして澪は、なぜ憂を信用できたの?
   2人はこれまでの5つのゲーム、ずっと争っていたのに……」

憂「私への問の答えは簡単です。
   あのままだと私達の敗北は決定的でしたから、あの行動は暴挙ではないです。
   何もしないまま終わるよりは、何かするべきでしたから」

澪「憂ちゃんをなぜ信用できた……か。
   まずは、憂ちゃんが置いたメモ……和の戦略の解説……それが論理的であり、筋が通っていたということ。
   そして、あのカメラによる証拠……唯のカメラに映った、
   憂ちゃんや私がしかけた律のカメラの内容を慌てて確認する和の姿……これも和に疑いをかけるには十分なものだった。
   私達がグループを組んだ時点で、カメラの存在はそう問題になるものではなかったからだ。
   カメラで投票内容を確認することは不可能であることは分かっているはずだったからな。
   となると、他に何か確認しないといけないことがあった……それは当然、後ろめたいことになる。

   それにそもそも、私は和を疑っていた……確かに、順当にいけば和の勝ちは確定的だったが、
   どうも和が何か企んでいる……そんな素振りが何度かあったからな。

   そして何より、これまでずっと争ってきたからこそ、憂ちゃんの読みの能力を、私は知っている。
   その憂ちゃんが出した結論……和の戦略を破るために、私と組んで動くという方法……
   それが正しいかどうかは、憂ちゃんと争っていた私だからこそ、信じることができた」

和「……なるほどね……ありがとう」

梓「……さっきも言いましたけど、やっぱり憂と澪先輩が組むなんて驚きです。
   これまで一度も組んでいなかったですから……」

澪「別にケンカしていたわけじゃないんだ、組んでもおかしくないだろ」

律「だけど、2人で組んでようやく和を倒せる……か。
   和が最初から参加していたら、どうなっていたんだろうな」

和「まあこのゲーム、私には最初からアドバンテージがあったからね。
   経験値が、なんて言い訳にもならないわ」

さわ子「……さあて、じゃあ賞金授与タイムに入りますかー!」

唯「おおお、現ナマだよ現ナマ、お札が2センチだよ!」

姫子「あれは束ねたら立つね、間違いなく」

純「縮毛矯正……」

憂「……。
  ……お姉ちゃん、姫子さん、純ちゃん……そして澪さん。
   ……ごめんなさい」

澪「……いや、たぶん私も憂ちゃんと考えていることは同じだ」

唯「ん?」

憂「その賞金、いただけません」

律「え、えええ? に、200万円だぞ!?」

梓「あわわ……」

澪「……ムギ」

紬「……なあに?」

憂「この賞金を用意したのって、紬さんですよね」

澪「そして恐らく……あの50万円だって、ムギが用意したんじゃないか?
   あの楽器屋、ムギのパ……お父さんの系列のお店だったんだろ?」

紬「……。
   ……すごいわね、2人とも。ちょっと恐いくらいに」

梓「どういうことですか?」

紬「……先生にライアーゲームをやって欲しいと頼んだの、私だったの〜」

唯「えええええ!?」

憂「……なんというか……3ラウンド目あたりから思っていたんですけど、
   紬さんはそれなりにゲームには臨んでいましたが、どれも後半になると何もしていない……。
   本気を出していないというか、ゲームに勝つ気がないように感じたというか……」

澪「そうだな……ロシアンルーレットのとき、ムギは自分の戦略……律以外の5人で組むというものの穴、
   気づいていてもおかしくなかった。
   今思えば、ムギだけは1円も賞金を手にしていない。
   このゲームだってそう、1人だけあまり結果に驚いていないようだった……
   私や憂ちゃん、和の戦略、実は気づいていたんじゃないか?」

紬「それは買い被りすぎよ。
   でも……勝つ気がなかったというのは本当かもしれないわね。
   だって、皆が戦うの見たかったから〜」

唯「それにしても、ムギちゃんは”何が起こってるか分からない”
   ってかんじの素振りをよくしていた気がするんだけど……」

梓「ま、まさか……」

紬「これはライアーゲームよ! 嘘を付いて何が悪い!
   ……これを言うのが夢だったの〜♪」

律「……おいまさか、それを言うためだけに、こんな大金をかけたゲームをやったってんじゃ……」

紬「……♪
   何にしても、いい勝負を何度も見せてもらったわ。
   だから、その賞金はもらってほしいの」

憂「いえ、いただけません」

澪「そうだな、これまでのゲームでもらった賞金も返すよ」

エリ「いらないなら私がもらってもいいんだけd」
アカネ「こら」

いちご「……」

紬「……。
   分かったわ。
   そしてごめんなさい、皆」

唯「なんでムギちゃんが謝るの?
   すっごく楽しかったよ、このゲーム!」

梓「そうですよ! 先輩方や憂のいつもと違った一面を見られましたし!
   ……そして憂のあまりの活躍に少し落ち込みましたし……」

憂「私も自分がこんなことをできるなんて思っていなかったので……
   発見ができて嬉しかったです」

澪「それは私もだな……」

律「そそそ、そうだぜ!」

律(な、何だこの流れは……。やばい、やばいぞ!
   私がもらった賞金、結構使っちゃったんですけどー!?)

紬「……皆ありがとう!」

唯「やっぱり楽しかったな〜、またやりたいよね!」

さわ子「……!
     唯ちゃん、いいこと言った!」

唯「へ?」

さわ子「みんな……
     ライアーゲームをするわよ!」

律「……は?」

梓「……え? これってファイナルラウンドだったんじゃ……?」

さわ子「いいからいいから、皆を驚かせてみせるわよ〜?
     ムギちゃん、この賞金は私が預からせてもらうから!
     絶対に使わないから、安心してね!

     じゃあ皆お疲れ様!」

律「あ、ああああ! さわちゃん持ち逃げ!!」

唯「追いかけるよ、憂、あずにゃん!」

憂「わあ、待ってお姉ちゃん!」

梓「引っ張らないでください!!」

紬「待て〜♪」

澪「あ……私も行くー!」

和「……まったく、けいおん部は慌ただしいわね」

純「無限ループって怖くね?」

唯 こうして、6ラウンドに及ぶ私達のライアーゲームは終わりを迎えました。
  皆の今までと違った一面が見れて面白かったし、たまには恐かったりもしたけど、
  やっぱり楽しかったです!
  結局私達は、あの後さわちゃんを捕まえることはできませんでした。
  さわちゃん何を考えているんだろう?

  ……まあいいか!
  実は賞金の200万円、私がこっそり確保してるしね!

  ……嘘です!


ファイナルラウンド 終

けいおん部でライアーゲームをするようです! 完


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