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    けいおん部がライアーゲームをするようです!!

     第1ラウンド


@

唯 学園祭が始まりました!
  毎年いろいろな出し物で賑わう学園祭ですが、今年は少し様子が違います。
  なぜなら……
  全校生徒と一般来場者を巻き込んだ、ライアーゲーム大会が始まってしまったからです!

オープニング

さわ子「それでは、琴吹グループ主催・ライアーゲーム大会を始めさせていただきます。
     私は総合司会を務めさせていただきます、エリーと申します」

律「なんでエリーなんだ……。
   やまなかさわこ……一文字も合ってねーよ!」

澪「ドラマに出てたからな、エリーってキャラ……」

梓「というか、琴吹グループ主催ですか!?」

紬「うふふ」

さわ子「まず、この大会における基本的なルールを説明させていただきます。
     この大会では、各ラウンドにおいて、このMoneyカード……
     通称Mカードを手にするために争っていただきます」

唯「Mカードだって〜」

憂「クレジットカードみたいな見た目だね」

和「密輸ゲームにああいうカードがあったわね」

さわ子「各ラウンドにおけるゲームで、規定枚数のMカードを獲得したプレイヤーのみが、
     次のラウンドに進むことができます。
     ただし、各ラウンドのMカードは違うものを使用するので、持ち越すことはできません。
     また、Mカードが余れば、各ラウンドごとに換金することも可能です」

純「ふむふむ……通過してさらにカードがあれば、お金を貰えると……」

梓「純、今回はプレイヤーなんだね」

恵「私もまた来てしまいました!」

澪「また制服を着てきたんですね……」

姫子「やほー」

エリ「私達もいるよ〜」

アカネ「クラスの子も結構参加しているみたい」

いちご「……」

さわ子「そして、ファイナルラウンドの勝者には……1000万円を贈呈いたします」

唯「いっせんまん!」

律「うおお……」

さわ子「本日、学園祭1日目におきましては、第1、2、3ラウンドを行います。
     それでは第1ラウンドを開始いたします。
     ここからは、各会場に分かれて説明を行いますので、お手持ちの番号札に対応した会場に移動してください。
     なお、ゲーム中は携帯電話など、通信機器の使用はできなくなります。
     また、皆様にはネームプレートをお配りいたしますので、胸にお付けください。
     内部にはICチップが埋め込まれており、個人を判定いたしますので、紛失しないようにしてください」

唯「皆結構バラバラかな? 頑張ろうね!」

律「おうよ!」

澪「ムギ、今回は本気でやるのか?」

紬「前も十分本気だったけどね〜」

和「またまた……実力が分からないムギは要注意ね」

憂「皆さん、どこかで当たったらよろしくおねがいします」

純「……」

さわ子(……みんなどうなるかしらね……。第1ラウンドだけは、私が万遍なく分けてあるから、
     だいたい結果は見えているけど……)


-会場A-

憂「お姉ちゃん、同じ会場で嬉しいよ!」

唯「私もだよ、憂〜」

姫子「一応私もいるよと言っておこう」

ネアルコ「皆様お揃いのようですね」

長谷川「!」

北村「……」

柴山「……」

唯「これで皆様ってことは、第1ラウンドは6人ってこと!?」

ネアルコ「そうです。私、この会場Aのディーラーを務めさせていただきます、ネアルコと申します。
      早速、第1ラウンドで行うゲームの説明をいたします。
      皆様に行っていただくゲームは……

      目利きゲーム

      リハーサルを行いながら説明いたします」

唯「目利き!? 目利きって、宝石とか絵とかを本物かどうか見分けるってやつだよね!?
   無理だよ、憂〜〜!!」

憂「大丈夫だよお姉ちゃん、これはライアーゲーム。
   実際に目利きするわけじゃないよ」

ネアルコ「皆様に目利きしていただくのは、こちらです」

姫子「あ、Mカード」

ネアルコ「そうです。右側のカードが本物、左が偽物です。
      見分けがつくでしょうか?」

唯「無理です!」

ネアルコ「そのとおり、見た目で判断することはできません。
      しかし、ICチップにより、私共は常に本物か否かの判別ができます。
      まず皆様には、別室に行く順番を決めていただきます。
      別室とは、本物のMカードが置かれている部屋のことです。
      その順番により、最初の3名、1番から3番は先攻、残りの3名、4番から6番は後攻といたします。
      今回はリハーサルですので、順番はこちらで決めさせていただきます」

 1 : 憂
 2 : 柴山
 3 : 北村
 4 : 長谷川
 5 : 姫子
 6 : 唯

憂「1番か……」

唯「憂だけ先攻で、私と姫ちゃんは後攻ってことだね」

ネアルコ「では、先攻となった3番目までの方は、こちらの偽物のMカードを1枚お受け取りください」

姫子「偽物?」

ネアルコ「そして、1番目の方から順番に、別室に行っていただくことになります。
      本番では別室に行けるのは1人ずつとなりますが、今回は6人で移動します」


-別室-

ネアルコ「別室にはこのように、3枚のMカードが台座に置かれております。
      ゲーム開始段階では、これらは全て本物です。
      しかし、ゲームが進むと偽物になっているかもしれません。
      つまり、皆様にはそれを目利きしていただくのです」

憂「この先攻の3人がもらった偽物のMカード……これを使うんですね」

ネアルコ「そのとおりです。先攻側の3名は、この別室において、2つの行動のうちどちらかを取ることができます。

      @ 自分の持つ偽物と、台座に置かれた物を入れ替える
      A 何もせずに別室を出る

      カードを入れ替えず、ただ持ち出すことは禁止ですので、先攻3名が行動されている間は、
      別室のカードは常に3枚存在することになります。
      では、1番目の憂様はこの別室に残り、2つの行動のうちどちらかを取ってください。
      他の5名は、会場にお戻りください」

唯「じゃあ憂、後でね〜」

憂「うん!」

憂(なるほど……確かに見た目では分からないし、トランプと違って固い……傷をつけることは不可能……。
   印をつけることはできるだろうけど、他の方に気づかれずに、というのは難しいよね。
   ということは、やっぱりちゃんと計画を立てて、他の方の行動を読むことで、本物か偽物を判断するしかないか。

   だけど、1番目の私だけは、この別室にあるMカードは全て本物だと分かっている。
   2番目以降になると、1番目の人がどれを偽物と入れ替えたか分からないから、本物であると確信は持てなくなる……か……)


-数分後・会場A-

ネアルコ「先攻3名の行動が終了いたしました。
      次に、後攻3名の方が取ることのできる行動について説明いたします」

唯「待ってました!」

ネアルコ「後攻3名の方には、先攻3名の方とは違い、偽物のMカードはお配りいたしません。
      後攻の方々は、別室にあるMカードのどれかを持ってきていただきます。
      よって6番目の方は、最後に残った1枚を手にすることになります。
      それでは、4番の長谷川様から順番に、別室におねがいいたします」


-数分後-

唯「残り物には福がある! ……だけど、6番目の私はやることがないも同然だったな〜」

ネアルコ「いえ、そうではありません」

憂「……そうですよね。これでは、明らかに先攻3名が有利になってしまいます」

姫子「そういえばそうだよね、先攻3人が別々のカードを選んで偽物と入れ替えたとすると、
    その3人はみんな本物を持っていることになる。
    そうなったら、後攻3人は絶対に本物を取れないし」

ネアルコ「そのとおり。
      そこで、後攻の3名のみ、自分以外のプレイヤーを指名することで、
      そのプイレヤーと自分の持つカードを交換することができるのです。
      この際、指名する順番は、さきほどの別室に行く順とは逆になります」

唯「あ、じゃあ私からか!
   それじゃあ、憂!」

憂「はい!」

ネアルコ「それでは、唯様と憂様はカードを交換してください。
      次に、5番である姫子様、おねがいします」

姫子「ちなみに、この指名をしないってことはできますか?」

ネアルコ「はい。交換するしないは、後攻のプレイヤーの自由です」

姫子「じゃあしない方向で」

ネアルコ「それでは最後に、4番である長谷川様、おねがいします」

長谷川「柴山で」

ネアルコ「後攻3名の指名、カードの交換が終了いたしました。
      ここまでが1ゲームとなります。
      1ゲームごとに、皆様が持っている本物のMカードの枚数を発表いたします。
      それでは、リハーサルの結果を発表いたします。
      結果は、このようになります」

-Mカード所持枚数-

唯   :1枚
憂   :0枚
姫子  :1枚
柴山  :0枚
北村  :0枚
長谷川 :1枚

唯「あ、私が持ってるカードが本物だ!
   ってことは、私とカードを交換した憂が、もともとは本物を持ってたってことだよね!
   1番だとさ、別室にあるカードは全部本物だって確実に分かるから、絶対に本物を持ってると思ったんだよ〜」

憂「うふふ、そうだね」

憂(お姉ちゃんならそうやって考えると思っていたよ、そして、それを言ってくれることも。
   ありがとうお姉ちゃん)

姫子「今のリハーサルの内容を整理するとこんなかんじかな。

 <交換前本物所持>  <交換内容>   <本物所持>
   ・憂        ・唯⇔憂     ・唯
   ・姫子                ・姫子
   ・柴山      ・柴山⇔長谷川   ・長谷川

    私は交換しなくて正解だったってことか」

ネアルコ「さきほども申したとおり、皆様が別室に行って先攻、後攻ごとの行動を取り、
      カード交換をするまでが1ゲームとなります。
      これを3ゲーム行い、最終的に、本物のMカードを2枚以上所持しているプレイヤーが、
      第1ラウンド通過となります。
      なお、各ゲームの別室に行く順番ですが、このようになります。
  
      1ゲーム目:クジで決める
      2ゲーム目:1ゲーム目の先攻、後攻を入れ替える
      3ゲーム目:クジで決める

      各プレイヤーは、必ず先攻、後攻を一度はやっていただくことになります。
      最後に、このゲームのMカードの換金額は、1万円とさせていただきます。
      Mカードが余った方、第1ラウンド通過を棄権する方はご利用ください。

      それでは、ルールをまとめさせていただきます。


第1ラウンド『目利きゲーム』ルール  対戦者数:6人

 ・Mカードが本物か偽物か目利きするゲーム

 ・別室に、3枚の本物のMカードが置かれている
 ・先攻3人、後攻3人に分かれて、先攻には偽物のMカードが配布される
 ・本物か否かは見た目では分からず、内部のICチップで判定する

 ・順に別室に行き、先攻は2つの行動のどちらかを取ることができる
  @ 自分の持つ偽物と、台座に置かれたカードを入れ替える
  A 何もせずに別室を出る

 ・後攻は、別室にある残ったMカードのどれかを取る
 ・その後、自分以外の誰かを指名することで、
   自分の持つMカードと指名された人のMカードを交換できる
   指名する順番は、別室に行った順番と逆順

 ・ここまでを1ゲームとし、3ゲーム行う
 ・最終的に本物のMカードを2枚以上所持したプレイヤーが第1ラウンド通過
 ・Mカードの換金額は1枚1万円

     
      ゲーム開始は今から30分後となりますが、その前に、
      1ゲーム目の順番を決めさせていただきます、皆様、このクジをお引きください」

唯「1番来い!」

憂「どうなるかな〜」

姫子「うーん」

柴・北・長「……」

ネアルコ「1ゲーム目の順番はこのようになります。

 1 : 憂
 2 : 唯 
 3 : 姫子 
 4 : 柴山
 5 : 北村
 6 : 長谷川

      それでは、30分後に」

唯「憂1番だね〜!」

憂「……3人とも先攻になっちゃったね……」

憂(本当は、先攻と後攻に分かれた方がやりやすかったんだけど……しょうがない。
   見たところ他の方は、和さんや澪さんと比べたら……というかんじだしね。
   それに、こんなところで負けるわけにはいかない……!)

-----

A

ネアルコ「1ゲーム目の順番はこのようになります」

 1 : 憂
 2 : 唯 
 3 : 姫子 
 4 : 柴山
 5 : 北村
 6 : 長谷川

憂(お姉ちゃんも姫子さんも私も先攻……本当は先攻と後攻に分かれた方がよかったけど……しょうがない。
   こんなところで負けていては、和さんや澪さんに顔を見せられないしね……)

ネアルコ「1ゲーム目は30分後に開始いたします」

唯「憂、どうすればいいかな?」

姫子「妹さんの指示に従うよ」

憂「……私達は3人とも先攻ですよね。
   ということは、こういうふうに、

 左・憂 中・唯 右・姫子

   私達がそれぞれ別の位置に置かれたMカードを偽物と入れ替えれば、
   3人とも本物のMカードを得ることができますよね」

唯「おお、なるほど!」

姫子「でも、後攻の人に交換されちゃうかも……」


柴山「……なあ、あの女子高生達は組んでいるんだよな?」

北村「私は組まない……」

長谷川「俺は……」

柴山「組むか?」

長谷川「だが、後攻なのに組んでどうするか……」

柴山「……」


-30分後-

ネアルコ「それでは、1ゲーム目を開始いたします。
      まず、先攻となる、憂様、唯様、姫子様に、
      偽物のMカードをお配りいたします。
      1番である憂様は、別室に行ってください」

唯「憂、行ってら〜!」

憂「うん!」

姫子「結局作戦を決めていないけど、大丈夫かな?」

唯「大丈夫だよ、だって憂だもん!
   それに、皆先攻っていうのはやっぱりいいことだよ、
   皆本物のカードを取ることができるんだから!」

姫子「唯はリハーサルで同じような理由から、妹さんとカードを交換したんだよね?」

唯「うん、そだよ。だって最初の人は絶対本物のMカードを持ってるじゃん」

姫子「……まあ、そうなんだけどさ……」

姫子(だからこそ問題があるんだよ……他の3人から見てもそれは分かる……。
    まして、私達が組んでいることはバレバレ……3人とも本物を持っていると読まれて、
    後で交換させられてしまうかもしれないのに……)

憂「ただいま〜」

唯「おかえり〜憂〜」

姫子「……」

憂「お姉ちゃん2番だよね。私は左側のカードを偽物と入れ替えてきたから、それ以外をお願いね」

唯「じゃあ私は真ん中を入れ替えてきます! 姫ちゃんは右側ね!」

姫子「ちょ! 唯、声が大きい!」

唯「ああ、しまった! じゃあ行ってきます!」

姫子「あ、待って唯!」

姫子(……行っちゃった……)

柴山「……!」

姫子(あのまま行ったらバレバレだよ……。
    これで、妹さんが左側、唯が真ん中を偽物と入れ替えていることはバレていることになる。
    唯は私に、右側のMカードを入れ替えてって言ってたけど、私は入れ替えないほうがいいな……。
    私達3人が本物を持っていると思って、後攻の3人は交換をするために指名してくるに決まっている)

唯「ただいま! 次は姫ちゃんだよ〜」

姫子「あ、うん……」


-数分後-

ネアルコ「先攻3名の行動が終了いたしました。ここからは後攻3名の行動となります。
      まず、4番の柴山様、おねがいいたします」

-別室-

柴山「右側だ……右側のMカードは本物だ……」

柴山(あの女子高生達、ちょっと揉めてるかんじだったからな……。
    最初の2人は、あの子らが話していたとおり、左側と真ん中にあった、本物のMカードを持っている。

左・憂=偽物 中・唯=偽物 右=?

    だけど、最後の子……立花姫子って言ったか、あの子は右側を偽物と入れ替える予定だったみたいだけど、
    たぶんあの子だけは本物と偽物を入れ替えていない……

左・憂=偽物 中・唯=偽物 右・無=本物

    だから、右側のMカードは本物のはず……!)


-数分後・別室-

北村「あ、右側のMカードがなくなっている……」

北村(4番の柴山って人が持っていったってことですよね……。
    私は、3番の立花さん……あの子が入れ替えする予定だった、右側のMカードを取るつもりだったのに……)

北村「仕方ない、真中を……」


-数分後・別室-

長谷川「右側のカードないじゃねーか!
    ……まあ6番だとこんなもんだよな……代わりにこの後ある、
    カード交換のための指名は俺からだしな」


-数分後・会場-

ネアルコ「後攻3名の行動が終了いたしました。
      これより、カード交換のための指名に入ります。
      まず、6番である長谷川様、おねがいいたします」

長谷川「僕は、平沢憂ちゃん!」

憂「私ですか……はい、これが私のカードです」

ネアルコ「次に、5番である北村様、おねがいいたします」

北村「平沢唯さんで」

唯「うー、しょうがない……」

ネアルコ「最後に、4番である柴山様、おねがいいたします」

柴山「交換しない」

ネアルコ「……それでは、1ゲーム目が終了いたしました。
      これより、1ゲーム目終了時のMカード所持枚数を発表いたします」

長谷川「……」

長谷川(柴山と北村も、俺と同じようなことを考えていたってことだな……。
     どう考えても、本物のMカードを持っていたのは平沢2人で、
     持っていないのは立花。

     左・憂=偽物 中・唯=偽物 右・無=本物

     で、立花が取る予定だったのは右側に置いてあったMカードみたいだから、
     それを4番だった柴山がいち早くとった……)

レロニラ「現在のMカード所持枚数は、このようになります」

-Mカード所持枚数-

唯   :1枚
憂   :1枚
姫子  :1枚
柴山  :0枚
北村  :0枚
長谷川 :0枚

柴山「そうそう、俺が0枚、女子高生達が1枚……
    って、何いいいいい!?」

長谷川「俺も0枚……!?」

北村「これは……」

憂「……すいません、皆さん。
   すべては私の計画どおりなんです」

姫子「……最初は焦ったけど、やっぱり妹さんについていくのが正解だよね」

長谷川「ど、どういうことだよ!」

北村「そうです、私と長谷川さんはあなた達とカードの交換をしたのに……」

憂「長谷川さんと北村さん、あなた方は、せっかく別室で本物のMカードを取っていたのに、
   偽物を持っていたお姉ちゃんと私と、カードを交換してしまったんです」

長谷川「だってお前ら、自分達が偽物と入れ替えるMカードの位置、教えあってたじゃないか!」

憂「このゲームは、先攻側、特に1番になれば、別室で本物のMカードを得ることは容易です。
   よって後攻の方は、別室で本物を取ることはできませんが、その後の交換を先攻の方と行うことになります。

   しかし、そんなことは先攻側からすれば分かっていることで、あえて本物を取らないということが考えられます。
   この場合、その先攻の方が本物を得るには、本物を取ったことに気づいていない後攻の方が、
   交換の時に自分を指名してくれることが必要になります。
   そうすれば、先攻が持つ偽物と後攻が持つ本物が交換され、先攻の方が本物を持つことになります。

   ですがこれは、結構なリスクですよね。後攻の方が自分を指名するかどうかは分からないですし、
   増して、その後攻の方が本物を持っているとは限らない」

柴山「……」

憂「だから後攻の方からみて先攻の方は、やはり本物を取っている可能性が高いと考えることになります。
   が、それは確信が持てませんよね。
   だからこそ、私は後攻の方に、”先攻の人は本物を持っている”と考えることができる、
   証拠を用意しました。それが、私達が偽物と入れ替えた本物のMカードの位置を教え合うこと。

   もともと先攻は本物を持っている可能性が高いんです、だから、そんな簡単な証拠でよかった。
   しかもあのとき、お姉ちゃんと姫子さんのリアクションは演技ではなかったので、自然なものになります」

長谷川「ま、待てよ! その唯と立花が演技じゃなかったってことは、
     それまでは唯は本物と偽物を入れ替えるつもりだったってことだろ!
     おかしいじゃねーか、その作戦を伝えるタイミングなんてなかった!」

唯「それはね、別室にメモが置いてあったんだよ〜。”カードを入れ替えないで”、ってね!」

北村「メモ……」

柴山「じゃ、じゃあ俺の方はどうなんだ!?
    俺はそっちの2人と違って、お前らとカードの交換はしていない、
    別室のカードを持って来ただけだ!」

憂「……もし仮に、私達3人の会話から、3人で自分が入れ替えたMカードの位置を教え合い、
   3人とも本物のMカードを手にしている……それが読み取れたとします。
   しかし、それはあまりに胡散臭い。
   3人で演技をしている……本当は誰も本物を持っていない……そう見えてしまうかもしれません。

   しかしそこで、1人だけ自分達の会話の危険さを訴える方がいる……
   そんな状況になれば、その胡散臭さは多少払拭できます。
   それが、姫子さんです。
   もちろんこの計画のことは伝えてありませんでしたが、姫子さんならそういう行動を取ってくれると思っていました。

   そしてそうなれば、その危険さを訴えた姫子さんだけは、私達の会話内容と違い、
   1人だけカードの入れ替えをしない……そういう行動を取ったと、柴山さんは考えたことでしょう」

柴山「……!」

憂「ですが、全て逆なんです。
   お姉ちゃんと私は、別室でカードの入れ替えを行わず、
   また、私達の会話では左側と真中にある本物のMカードを入れ替えたことになっていたので、
   姫子さんは残りの、右側にある本物のMカードを偽物と入れ替えたんです。
   皆さんはこのように、

   左:偽物 中:偽物 右:本物

   左側と真ん中のカードが偽物、右側が本物だと思ったんでしょうが……
   全て逆だったんです。

   左:本物 中:本物 右:偽物

   お姉ちゃんと私は偽物を持ち、姫子さんだけが本物を持っていました。
   なので、1ゲーム目の流れはこうなります」

 <交換前本物所持>  <交換内容>   <本物所持>
   ・北村      ・北村⇔憂     ・憂
   ・長谷川     ・西田⇔唯     ・唯
   ・姫子                ・姫子

長谷川「ぐもー……やられたー……」

憂「私はここで負けるわけにはいきませんので」


-職員室-

さわ子「さすが憂ちゃん……有利ではない状況だけど、全員でMカード獲得……。
     澪ちゃんや和ちゃん達も、順調にカードを獲得したみたいだし……。
     ……あら? 梓ちゃん達がいる会場でも、唯ちゃん達のところと同じことが起こったみたいね……」


-会場G-

梓「じゅ、純……」

純「ごめん梓……いちご先輩にそうしろって言われて……」

いちご「……」

梓(やばい……このゲームで純達の演技にやられて、私は本物のMカードを獲得できなかった……。
   獲得したのは、純といちご先輩、あとは2人と同じ先攻だったレスターさん……。
   獲得できなかったのは、私を含む後攻3人……)

梓「……」

純「本当にごめん、梓。だけどさ、やっぱり私、梓と組むよ。
   いちご先輩は裏切るってことになるけど、ライアーゲームだからいいよね」

梓「ほ、本当!?」

純「あんまり大きなリアクションをするとバレるよ。
   ……実は私、このゲームで確実に本物のMカードを得られる計略を考えたんだよね」

-----

B

純「1ゲーム目は梓をハメるようなことをして悪いと思ってる。
   だから、ここからは組もう、いちご先輩は裏切るから」

梓「ほ、本当!?」

純「もちろん。
   実は私、このゲームで確実に本物のMカードを得られる計略を考えたんだよね」

梓「じゅ、純がー……?」

純「なにその不安そうな顔!
   えっとさ、まず1ゲーム目の別室に行く順番って、
   こうだったよね?」

1 : いちご
2 : 純
3 : レスター
4 : 佐藤
5 : 梓
6 : 河合

梓「そうだよ、それで先攻の3人が、自分が入れ替えたMカードの位置はここだ、
   とか言ってるから、私は3人が組んで本物のMカードを持っているんだと思ったのに……」

純「まあ済んだことはいいじゃん」

梓「よくないし。おかげで私はMカード取れなかったんだから」

-Mカード所持枚数-
梓    :0枚
純    :1枚
いちご  :1枚
佐藤   :0枚
レスター :1枚
河合   :0枚

純「だから代わりに2ゲーム目から組もうって言ってんじゃん。
   しかも私の計略付き〜」

梓「純の考えるトリックじゃあ不安だけど……」

純「もう、嬉しいくせに〜」

フォルリ「それでは、2ゲーム目の順番を決めるための抽選を行います。
      ルールのとおり、2ゲーム目では、1ゲーム目の先攻と後攻を入れ替え、
      それぞれでクジを引いていただきます。
      1ゲーム目先攻だった、鈴木様、若王子様、レスター様はこちらのクジを、
      後攻だった、中野様、佐藤様、河合様はこちらのクジをお引きください」

純「……」

梓「……」

フォルリ「2ゲーム目の順番が決定いたしました。
      このようになります。

1 : 梓
2 : 佐藤
3 : 河合
4 : いちご
5 : レスター
6 : 純

      2ゲーム目は15分後に開始いたします」

梓「それで純、その計略っていうのは?」

純「……待って、あまり話していると、いちご先輩にバレちゃうよ。
   このメモを、別室に行ったら見て」

梓「……分かったよ」

梓(純に頼って大丈夫なんだろうか……だけど、私にできることはこれしかないし……。
   あの佐藤さんと河合さんは誰とも組む気はないって言ってたしな……)


-15分後-

フォルリ「それでは、2ゲーム目を開始いたします。
      先攻となっている、中野様、佐藤様、河合様には偽物のMカードをお配りします」

梓「さて、私からか……」

フォルリ「はい、1番の中野様、別室に行ってください」

純「……」


-別室-

梓「純のメモは……と……」

梓(……!
   ……このトリック、本当に純が考えたの……?
   だけど、これなら本物のMカードを得ることができそうだ……!)

梓「よし、これでいいよね……」


-数分後・別室-

純「6番だと残った1枚を持ってくるだけだから、あんまり意味ないよなー。
   どうせこれ偽物だし……」

純(だけど、梓は本物のMカードを持っている……私はそれを貰えばいいんだけどね)


-会場-

純「終わりましたー」

フォルリ「全員の行動が終了いたしました。
      これより、カード交換のための指名に入ります。
      まず、6番である鈴木様、おねがいいたします」

純「梓!」

フォルリ「それでは、中野様と鈴木様、カードの交換をおねがいいたします」

梓「はい純」

純「さんきゅー」

梓(交換と言っても、私が持っている、別室から持ってきた本物のMカードを渡すだけ……
   だけど、私の手元にも、本物のMカードが残る。

   なぜなら、私はMカードを別室から2枚持ってきたから。

   このゲームは先攻の場合、別室にあるカードと自分の持つ偽物を入れ替えないと、
   別室にあるカードを自分の物にすることはできない。
   そしてそのために、先攻側は別室に行く前に、ディーラーから偽物のMカードを貰う。

   だけど……入れ替えに使えるのは、そこで貰える偽物だけじゃない。
   1ゲーム目に手に入れた、邪魔でしょうがなかった偽物のMカード……
   これだって、入れ替えるに使うことができる。
   このゲーム、Mカードが本物か偽物か、という区別はあるけど、同じ偽物どうしなら区別されていない。

   その証拠に、今回私は、2ゲーム目開始と同時にもらった偽物のMカードと、
   1ゲーム目に不本意ながら得てしまった偽物……その両方を使い、
   本物のMカード2枚と入れ替えを行ったけど、ディーラーからは何も言われていない。
   こうすれば、純は交換で本物のMカードを、そして私は、残ったもう1枚の本物のMカードを得ることができる。

   まあもっとも、これは全部、あの純が考えたこと……にわかに信じられないけど……。
   だけど、実際うまくいったし、純は3ゲーム目に使うトリックをすでに考えてあるみたいで、
   本来交換のときに私に渡すべきだった、純がこの2ゲーム目に別室から持ってきた偽物を、
   純がそのまま持っている。
   つまり、実際には交換ではなく、私が本物を一方的に純に渡しただけ。
   ディーラーが何も言わなかったところを見ると、問題ないってことだよね。

   それにしても、あの純に頼ることになるなんて思いもしなかったよ……)

フォルリ「次に、5番であるレスター様、指名をおねがいいたします」

レスター「佐藤さん」

梓「……ふぅ」

梓(ひとつ危惧するべきは、私がまた指名されること。そうなると、本物を交換しなければならないから。
   だけどこのゲーム……同じ人が2回以上指名されることはほぼないと言っていい。
   だって、同じ人を2回以上指名するのはリスクが大きいから。
   例えば、純が本物を持っていて、私といちご先輩が偽物を持っているとする。

   いちご:偽物 梓:偽物 純:本物

   このとき、いちご先輩だけが先攻で、私と純は後攻、指名でカード交換ができる。

   いちご(先):偽物 梓(後):偽物 純(後):本物

   ここでまず、純がいちご先輩を指名、カード交換をする。

   いちご:本物 梓:偽物 純:偽物

   すると、いちご先輩はもともと偽物を持っていたけど、本物を得たことになる。
   ここで、私がいちご先輩を指名する……つまりいちご先輩が2回指名されたことになったとすると、

   いちご:偽物 梓:本物 純:偽物

   私は本物を得られる。
   だけどこれを読む、つまり後攻の誰が本物を持っているか予想するのは、
   先攻の中で誰が本物を持っていたか予想するより難しい。そもそも持っている確率も先攻より低いし。
   だったら、先攻の中で本物を持っているであろう別の人を指名したほうが得策。

   よって、2回以上指名されることはないってことになる)

フォルリ「最後に、4番である若王子様、指名をおねがいいたします」

梓(純、いちご先輩になんて言うつもりなんだろ……あの先輩少し怖いからな……。
   それに、3ゲーム目はどうするつもりなんだろ……偽物のMカードをそのまま持っているってことは、
   それを使うってことだよね……)

いちご「中野さん」

フォルリ「それでは、中野様と若王子様、カードの交換をおねがいいたします」

梓「……?」

梓(あれ……中野さんって私以外にいたっけ……いや、いないよね……。
   じゃ、じゃあ私!?
   待ってよ、なんで私、2回指名されてるの!?
   まさか、いちご先輩は私が2枚本物のMカードを持っているって読んでいたってこと……!?)

梓「な……何で……」

純「梓ー、見苦しいよ、さっさと交換しろー!」

梓「……!? じゅ、純……?」

純「一回言ってみたかったことばがあるんだけどさ、今しかないよね。
   ……梓ってさ、本当に……
   バカだよねええええええええええええええええええええ」

梓「な……」

純「私の話、信じたの?
   いちご先輩を裏切って梓と組む……残念、あれは嘘!
   私はいちご先輩と今も繋がってるんだよね」

梓「じゃ、じゃあ、今のゲームに私がしたことも、いちご先輩の考えたトリックってこと……?」

純「残念! 違うんだよ梓。
   1ゲーム目も2ゲーム目も、計略を考えたのは私だぁ!」

梓「は……はあああ!?」

純「私さ、前に山中先生に鍛えられて、ディーラーやったじゃない?
   あれからまた先生に鍛えられて……今回はプレイヤーとして参加することになったわけだ!」

梓「う……嘘……」

純「これは、本当なんだよね〜。
   で、いちご先輩と私が繋がっているってことは、
   私の持っている情報を、当然いちご先輩も持っているってことになる……
   だからいちご先輩は梓を指名したってこと!」

梓「ぜ、全部自分達が本物のMカードを得るためのトリック……」

純「そういうことだ! おかげで私といちご先輩は、第1ラウンド通過に必要なMカード2枚を手にできた!」

フォルリ「2ゲーム目終了時点のMカード所持枚数はこのようになります」

梓    :0枚
純    :2枚
いちご  :2枚
佐藤   :1枚
レスター :1枚
河合   :0枚

純「それにしてもさ、梓、おかしいと思わないとダメだよ。
   カードを交換ではなくて、3ゲーム目のために、私が持っている偽物を梓には渡さない、
   なんて私が言い出したことをさ。
   もしいちご先輩が指名したとき、梓が偽物を持っていたら、

   梓所持カード:本物x1 偽物x1

   ってなってるから、いちご先輩に偽物を渡されちゃうからね!」

梓「そ、そういうことか……」

梓(や、やばいやばいやばい!
   どうしたらいいの……今私が持っている本物のMカードは0枚……
   だけど、あと残ったのは3ゲーム目だけ……1ゲームで2枚獲得しないといけないなんて……!)

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C

純「全部私の計略だったんだよ! これで私といちご先輩は、第1ラウンド通過に必要なMカード2枚を手にできた!」

梓(やばいよ……あと1ゲームしか残っていないのに、2枚Mカードを獲得しないといけないなんて……!)

フォルリ「それでは、3ゲーム目の順番を決めるための抽選を行います。
      ルールのとおり、3ゲーム目では、1ゲーム目同様全員でクジを引いていただきます」

純「もう何番目でも関係ないかなー」

梓「うぅ……」

梓(このゲーム中に2枚獲得……それは、一応不可能じゃない……。
   だって、今私が持っている偽物のMカードは1枚。ここで先攻になれば、もう1枚もらえるから、
   合計2枚……別室で2枚の入れ替えが可能ってことになる。

   だけどそのためには、まず先攻になること……特に1番にならないと……。
   おねがい、1番きて、1番!!)

フォルリ「3ゲーム目の順番が決定いたしました。
      このようになります。

1 : いちご
2 : 中野梓
3 : 佐藤
4 : 純
5 : レスター
6 : 河合

      3ゲーム目は15分後に開始いたします」

梓「2番……」

梓(先攻になったからまだ勝機はあるけど……いちご先輩の後ろか……。
   だけど、いちご先輩は純の使ったトリックを知っている……
   私が2ゲーム目にやったことと、同じことをされたら、
   私が本物を2枚獲得することはできなくなる……。

   あ、あれ……? 待ってよ……。
   今の、全てのMカードの所持枚数って……
   こうだよね……。

梓   : 本物0枚 偽物1枚
純   : 本物2枚 偽物1枚
いちご : 本物2枚 偽物0枚
佐藤  : 本物1枚 偽物1枚
レスター: 本物1枚 偽物1枚
河合  : 本物0枚 偽物2枚

   純は私が本来持っているべき偽物を持っているから、他の人より所持枚数が多いけど、
   いちご先輩、偽物のMカードを1枚も持ってないじゃん!
   ってことは、3ゲームの目の最初に配られる1枚しか、
   いちご先輩は偽物を持っていないことになる……
   つまり、いちご先輩は別室では、Mカードを1枚しか入れ替えることができない……!

   それにそもそも、いちご先輩の本物のMカード所持枚数は2枚……すでに通過条件を満たしている。
   何もしない可能性だってある……。大丈夫……まだ私は負けてない!)


-15分後-

フォルリ「それでは、3ゲーム目を開始いたします。
      先攻となっている、若王子様、中野様、佐藤様には偽物のMカードをお配りします。
      では、1番の若王子さま、別室に行ってください」

いちご「……」

梓(問題は、いちご先輩がどのカードを取るか……。
   例えばいちご先輩が、左側のカードを、偽物と入れ替えたとする。

   左:偽物 中:本物 右:本物

   そうなると、私が取るべきは真中と右側ってことになる。
   だけど、私が持つ偽物は2枚だけ……いちご先輩が入れ替えた位置と、
   同じ位置を入れ替えてしまったら、得られる本物のMカードは1枚となって、敗北が決定してしまう……)

いちご「終わった」

フォルリ「では、2番の中野様、別室に行ってください」

梓「……はい」


-別室-

梓「……!
   真ん中のカード……」

梓(私は2ゲーム目、1番だったから知っているけど……
   別室に置いてあるMカードは、等間隔に、向きもしっかり揃えられ、きっちりと並んでいた。
   だけど、真ん中のカ−ド……両サイドのカードと違い、わずかに傾いている……
   つまり、いちご先輩が触った……偽物のMカードと入れ替えた証拠……!)

梓「……」

梓(だけど……そんな分かりやすい証拠を残すだろうか……。
   これは、私が2枚カードを入れ替えることは分かっているから、
   両サイドのカードを入れ替えさせるための罠かもしれない……。

   ……でも、やっぱり純といちご先輩の本物のMカード所持数は2枚……
   そんな罠をしかける意味なんてない)

梓「……しょうがない……!」

梓(左側と右側のカード、これを偽物と入れ替える……
   どうせ他に頼れるものなんてないんだから……!)


-数分後・会場-

フォルリ「全員の行動が終了いたしました。
      これより、カード交換のための指名に入ります。
      まず、6番である河合様、おねがいいたします」

梓「……」

梓(私が別室で交換したのは2枚……仮にこの2枚が本物だとしても、
   ここで指名されたら本物を渡すハメになり……私の敗北が決定してしまう。

   だから、ここで指名されるわけにはいかないけど……こればかりは分からない。
   けど、最も指名されやすいのは、1番だったいちご先輩。
   少なくともいちご先輩が指名されないかぎりは、私が指名されることはないはずだけど……)

河合「俺は……」

梓「……」

河合「俺が今持ってる本物のMカードは0枚……どうやったって勝ち目はない。もう交換とかどうでもいい」

梓(ラッキー……!)

フォルリ「では、5番であるレスター様、指名をおねがいいたします」

レスター「すとろべりー」

いちご「勝手に英語にしないで」

フォルリ「それでは、若王子様とレスター様、カードの交換をおねがいいたします」

梓(いちご先輩が指名されてしまった……あとは、4番の純だけ……。
   まずい、純は私を指名してくるかも……)

フォルリ「最後に、4番である鈴木様、指名をおねがいいたします」

純「そうだな〜、いちご先輩が指名されたってことは、次に指名するべきは梓なんだよね〜」

梓「……!
   じゅ、純……もしかしたら純が別室で取ってきたのが、本物かもしれないよ?」

純「梓〜、梓が勝つには、ここで2枚本物のMカードを獲得するしかないんだよ?
   だったら梓は、本物を狙って、別室で2枚カードを入れ替えているに決まってるじゃん。
   だから、少なくとも1枚は本物を持ってるってことでしょ?」

梓「……!」

梓(やっぱりバレてる……当たり前だよね……もともと純が考えたトリックなんだから……)

純「……まあでも、私は2枚本物持ってるしね〜、ここでは交換しなくていいや」

梓「じゅ、純……!」

純「あとは、梓が持っているのが、ちゃんと2枚とも本物かどうかだね〜」

梓(そう、そうだ……ここで指名され、交換することは避けることができた。
   だけど、やっぱり肝心なのは、私が別室で入れ替えたカードが、本当に本物だったかどうか……。
   いちご先輩が入れ替えたのが真中だったら……私の勝ち……!)

ネアルコ「3ゲームが終了いたしました。最終結果を発表いたします」

梓「どうなったの……!?」

純「……」

フォルリ「皆様の、現在のMカード所持枚数は、このようになります」

梓    : 0枚
純    : 2枚
いちご  : 4枚
佐藤   : 1枚
レスター : 2枚
河合   : 0枚

梓「……。
   え……? ぜ、0枚……!?
   ありえない……それは絶対にありえない……」

梓(0枚って……私は最低でも、1枚は持っていないとおかしい……!
   さっきの、いちご先輩は左側のカードを偽物と入れ替えたって例だと、

   左:偽物 中:本物 右:本物

   このとき、私は2枚入れ替えることができるから、真中と右側を入れ替えたとしたら、
   2枚本物を獲得でき、それ以外の組み合わせでも、1枚は獲得していることになる……。

   それに、いちご先輩が4枚所持!?

   おかしいよ……この結果は明らかにおかしい……!)

梓「何で……?」

純「……くくく……」

梓「!」

純「ねえ梓ぁ……まだ気づいてないの?」

梓「……え?」

純「この結果も、私の計略が生んだものだってこと!」

梓「え、ええええ!?」

純「梓さ、いちご先輩が偽物を1枚しか持ってないと思ったんだろうけどさ、
   実は、3枚持ってたんだよね!」

梓「さ……3枚!? おかしいでしょ、いちご先輩は2ゲーム目終了時点で偽物は0枚……
   3ゲーム目にもらった1枚しか、偽物はないはずなのに……」

純「梓……もう忘れたの? 私は2ゲーム目のとき、3ゲーム目に使うからとか言って、
   偽物のカードを梓に渡していなかったでしょ?
   そして、1ゲーム目……私達は、レスターさんを含む3人で組んでたんだよ。

   ……ここまで言えば、ライアーゲームを何度もやってきた梓なら、
   私が何をしたか分かるよね……。
   ライアーゲームのルールの裏をかく、最も簡単な方法だよ」

梓「……純とレスターさん……2人は1枚ずつ、偽物のMカードを持っていた……
   そして、それをいちご先輩に渡すと、いちご先輩の持つ偽物は3枚……!」

純「よくできました!
   そして3枚偽物を持ったいちご先輩は、別室にあった本物のMカードを、3枚とも全部入れ替えた!」

梓(じゃあ私がどれを選んだって、全部偽物……考えるだけ無駄だった……!)

純「そういえばそのとき、真ん中のカードだけ、最初に並べられたものよりちょっとずらしておいてください、
   と、いちご先輩に頼んでおいたんだけど……まさか梓……左と右のカード、持ってきてないよね……?」

梓「!!」

純「いやあ、さっきの指名交換タイムさ、笑いをこらえるのが大変だったよ〜、
   私が梓を指名しかけたときの梓の慌てっぷりといったらね……。
   私はいちご先輩が3枚とも本物を持っているのを知ってたから、
   あそこで交換する必要なんてなかったんだよね〜」

梓「そ、そんな……」

純「それにしても、私のグループだけで本物の獲得枚数8枚……
   全部で9枚あるから、1枚逃しちゃったか〜、残念だなぁ〜」

梓「まさか……純にやられるなんて……」

純「……ひどい言われようだね。
   ……。
   ……ねぇ、ところで梓、私が3ゲーム目に何をしていたか、覚えてるよね?」

梓「当たり前じゃん……今までやっていたんだから……」

純「じゃあ何をした?」

梓「だから、3枚とも全部本物を持ってっちゃったんでしょ」

純「その前」

梓「前……? いちご先輩に純とレスターさんが偽物のカードを渡した?」

純「そう、それ」

梓「……なによ」

純「今私は、Mカード2枚、レスターさんも2枚で、第1ラウンド通過条件を満たしている。
   もちろんそれはいちご先輩もだけど……いちご先輩は4枚持ってる……2枚も余るんだよね」

梓「……Mカードって、1枚1万円に換金してもらえるんでしょ……よかったじゃん、2万円貰えて」

純「……2万円なんて、あってもなくても同じじゃん。だって優勝すれば1000万円だよ?
   それよりさ……この2枚のMカードで、2万円以上の価値があるものを買えるんだよね……」

梓「……何、それは?」

純「……仲間だよ。仲間を1人作れると思えば、2万円なんていらないじゃない?」

梓「……!」

純「私の言いたいこと、分かるよね、梓?」

梓「純……!」

純(……梓陥落……っと!
   やっぱり組むなら知り合いがいいし、こうやって恩を売れば、裏切られない……。
   さあて、第2ラウンドは誰と当たるのかなー?
   憂? 和先輩? それとも澪先輩? 誰であっても、私は負けない……!)

第1ラウンド「目利きゲーム」終


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